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世紀末では銃よりも斧が強い。荒廃した世界でサバゲーする「MADサバ」がMADすぎる

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 世界が核の炎に包まれたら、あなたはどうするだろうか?

 私は、こうした。

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時は西暦20XX年。世界は核の炎に包まれ、あらゆるゲームメディアは死滅したかのように見えた。しかし、すべての希望が潰えたわけではない。あらゆる娯楽が死に絶え、暴力が跋扈する世界に残った、ただひとつの希望。その名は、電ファミニコゲーマー。

 彼らは、こうした。

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蛮族どもがしのぎを削る世紀末世界に突如現れた、人外・獣人・亜人・ミュータント・サイボーグ・身体改造主義者・人造人間・異能者・半人半妖などの連合体、「メタ・インディゴズ」のみなさん。

 そして、こうだ!

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武器はひとつよりもふたつのほうが強い。世紀末世界で生き延びたいのなら、胸に刻んでおくべき知識だ。

 本稿は、2018年8月18日〜19日にかけて開催された、世紀末体現型サバイバルゲームイベント・「MADサバ8」の体験レポート──いや、世紀末を生きたひとりの記者の手記である。

取材・文/実存
撮影/佐々木秀二


「MADサバ」は“近接武器使用可能”で“世紀末ロールプレイ”ができるサバゲーだ!

 残留放射能によって奇妙な変異を遂げた生物、トゲトゲの肩パットを装備し「ヒャッハー!」と叫びながら弱者に襲いかかるならず者、崩壊した世界で最強の馬力を誇るV8エンジンを崇拝する人々……そんな風景に一度は見覚えがないだろうか。

 映画で言えば『マッドマックス』。漫画で言えば『北斗の拳』。ゲームで言えば『フォールアウト』『ボーダーランズ』『RAGE』

 上述した素晴らしい作品たちが描くのは、現代文明が崩壊したあとの、暴力が第一の原理と化した世界である。それは「世紀末」「終末」と呼ばれ、最近では「ポスト・アポカリプス」【※】とも呼ばれ始めた。

※ポスト・アポカリプス (post-apocalypse)
「終末の後」を意味する英語。“apocalypse”は新約聖書において世界の終末を記したとされる「ヨハネの黙示録」を指し、“post”は「〜の後」を指す。

 BRAIN MIXER ENTERTAINMENTが主催する「MAD WARRIORS SURVIVALGAME」……通称「MADサバ」では、そのような“世紀末”的な世界観を土台にして、参加者が思い思いの衣装や武器を身にまとい、サバイバルゲーム(以下、サバゲー)を行う。

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ドクロとガスマスク、ライフルと釘バットがあしらわれたMADサバ8の旗

 2015年から開催されている同イベントは年々規模が拡大しており、第8回目となる今回の「MADサバ8」での参加者は300人近くにも及んでいる。

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MADサバ8に集結した荒くれ者たち

 通常のサバゲーは、『コールオブデューティ』『バトルフィールド』などのFPSと同じように、参加者がそれぞれ別のチームに分かれ、相手をエアガンで撃って倒していくという、チーム・デスマッチ形式が主流だ。

 MADサバにおいても、参加者は以下のふたつの陣営に別れて戦う。
 各地を放浪しては敵対勢力を撃滅してきた歴戦の蛮族集団「レッドトライブス」と、冒頭でも紹介した新勢力、人外・ミュータントなどの連合体「メタ・インディゴズ」だ。

 ここまでは普通のサバゲーと同じように見えるが、ここからが本番だ。

 MADサバではサバゲーとしては珍しく、“近接武器”による戦闘が歓迎されているのだ。

 刀、斧、ナタ、鉄パイプ、鉤爪、チェーンソー……どんな武器でも、MADサバの武器規定(柔らかい素材を仕様・30cm以上100cm未満など)を満たしていれば使用可能。
 近接武器を防ぐためのや、チャクラムのような投擲武器、ヌンチャクなどの多節武器もOKだ。

 もちろん、MADサバでは銃器も使用可能だが、1度に使える弾は30発までというルールになっている。

 30発撃ち尽くしてしまえば、拠点に戻って弾を込め直すか、近接武器で漢らしく突撃するか、死ぬしかない。世紀末の世界で生き残るためには、腕っぷしの強さも重要になるというわけだ。

 また、普通のサバゲーでは「ヒット!」と叫ぶことで、銃弾が命中したことを報告しなければならない。ビデオゲームと違い、プレイヤーの自己申告によって命中を判定するため、サバゲーが紳士のゲームと呼ばれるゆえんでもある。

 しかし、MADサバでは「ヒット!」と叫んではいけない。
 銃弾が命中したり、武器で斬られたりした場合は、「ヒット!」の代わりに大きな声で「ぎゃああああ」「グエーッ!」「ウワーッ」といった断末魔の叫びを上げることになっている。

 当たったことがわかればよいので、叫び声は「ぬわーーっっ!!」や「ひでぶっ!」でも構わない。これもMADサバの重要なルールのひとつである。

ヒャッハー! 殺せ! よく死んだ!

 さて、前述したとおり、MADサバの戦場では蛮族集団の「レッドトライブス」と人外連合の「メタ・インディゴズ」の2陣営に分かれ、お互いのボスの首を狙って殺し合うのだが……このゲーム、とんでもない“死にゲー”である。

 物陰に隠れ遮蔽物をうまく利用し、敵を狙い撃つような普通の戦術は通用しない。なぜなら、MADでイカれた漢たちは逃げも隠れもせずに突撃してくるからだ。

※GoProを頭に装着し、戦場の様子を撮影した動画。

 戦場で死ぬと拠点に戻ることで復活できるのだが、このときに給料として、MADサバ内の通貨である「CAP」をひとつもらえる。

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2時間にわたる戦闘の結果、筆者が手にしたのはたったの13CAP。カネを稼ぐ難しさは世紀末でも変わらない。

 このCAPは非戦闘領域の「街」(後述)への入場、商品の売買や、イベントへの参加料として使うことができる。

 そしてこのCAP、陣営のボスが気まぐれに発令するミッションを受領する、自力で商売して稼ぐなどの分を除けば、復活時にもらえる1CAPが主な収入源である。

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「殺せ!」、「死んでこい!」とメガホンで檄を飛ばすボス。子分たちは「ヒャッハー!」と喜んで突撃していく。

 そのため参加者はとにかく突撃し、死んで1CAP稼ぎ、また突撃し、死んでいくのだ。
 それを参加者も運営もわかっているのか、「死んでこい!」「よく死んだ!」などといった言葉が飛び交い、この世界では命の価値は非常に軽いということがよくわかる。

いたるところでゲリラ的に繰り広げられる世紀末ロールプレイ

 戦場では殺し合いだけでなく、いたるところで参加者が思い思いの世紀末ロールプレイを繰り広げる。
 ヒッピーが武器も持たず戦場のど真ん中でギターを弾いていたり、連行した捕虜を洗脳したり、CAPと引き換えに自陣営のボスの居場所を売る裏切り者が現れたり……

 殺し合いの最中、拠点近くの車の陰に座り込む男性を見つけた。

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 犬(剥製)を連れたサングラスの男性は、凄惨な殺し合いを前にして心が折れてしまい、戦闘に参加せず、ずっと犬を撫でていたのだ。

 この様子を見かねた『マッドマックス 怒りのデス・ロード』に登場するウォーボーイは、「まだお前は戦える! 諦めるな!」と励ましの激を飛ばす。

 冒頭でも触れたが、MADサバの華は近接戦闘にある。筆者はそのことに気づかず、普通のガスガンで参戦してしまったことを心底、後悔した。

 というのも、どうみても近接戦闘のほうが楽しそうなのだ。

 銃を持っていても、MADな漢がナタを振りかざし襲いかかってくると、応手は「ハジキなんか必要ねぇ!」とばかりに銃を投げ捨て、漢どうし、一対一(サシ)の神聖なる闘いを始める。
 
 そのような美しいドラマを味わわずにいられるだろうか!
 そしてなによりも、MADでイカした格好で突撃してくる世紀末戦士を銃で撃つという行為……それがとてつもなく卑怯なことに思えてくるのだ。

 また、世紀末ロールプレイを楽しむ上で重要なのは“設定”だ。

 あなたはどのような出自で、どのようなスタイルで世紀末世界に生きているのか?
 銃を使うのか近接武器を使うのか、戦士なのか魔術師なのか、蛮族なのかミュータントなのか。

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筆者のコンセプトは「世紀末記者」。ボロボロのワイシャツとスラックスにハンチング帽、「世紀末と言えば」という安直な理由でガスマスクを装着。設定の詰めの甘さゆえ、武装は「護身用の銃」のみ。記者がナタをもちますか? 世紀末にジュネーブ条約は存在しないことに、もう少し早く気づくべきだっただろう。

 まず最初に設定を作り込んでおけば、服装や武器のチョイスもおのずと決まってくるだろう。
 MADサバの公式サイトでは、設定の助けになるスタイルガイドも掲載されている。非常に参考となるので、参戦を考えている方は一度目を通していただきたい。

 さらなる参考として、MADなスタイルを貫き通した豪傑たちの姿を、写真とともに簡潔に紹介しておく。

泣く子も黙るマッド・ウォリアーのエントリーだ!

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弓使いのお姉さん。高い露出度! 得物の弓は、かつて存在したニホンという国の弓職人の手による骨董品だ。
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世紀末ガンジーさん。悪徳と暴力にまみれたMADボーイズのなかにあって、彼の功徳にあふれる出で立ちはひときわ輝く。
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廃材で全身を武装したワン・マン・アーミー。使えるものはすべて使う。それが世紀末の流儀だ。
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HIPPIE……それは崩壊前の世界で、愛と平和を歌い、あらゆる争いに対して反抗した民族だと伝えられている。背中にアンプを背負い、武器を持たずに戦場でベースギターをかき鳴らす彼は、きっとその偉大なる民族の末裔なのだろう。
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地上に残る多量の放射能は、動植物だけでなく人間をも変異させる。この蛮族の漢は右手が異様で巨大な鉤爪になってしまったが、彼がそれを気に病んだことはない。むしろこの鉤爪は、この世界で生き残るために神より賜った贈り物だと考えているのだ。
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『Fallout 4』に登場するパワーアーマーに身を包んだ漢。このアーマーはポーランド在住のアーマースミスによる特注品らしい。攻撃は最大の防御と言うが、圧倒的な防御は無条件の勝利をもたらす。
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ミスター・蛮族! 彼の体をつつむ廃材・アーマーは集落を襲撃するたびにカスタムされ、襲えば襲うほど強くなっていく。足腰に装着したぬいぐるみ人形は、彼の略奪コレクションのなかでもお気に入りの逸品だ。
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『ケルベロス・サーガ』のプロテクトギア風のパワードスーツを装着した漢。口元に取り付けられた、通気性とデザイン性を両立させるノズルの機能美が光る。
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世紀末に正しい悪を! 半端な悪を許さない、「悪役連合」のみなさん。

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