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「ポケモンより面白くしないと意味がない」 聖書をゲーム化する新聞社が次に仕掛ける「宗教改革ゲーム」ってどういうこと?

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<急募!! 宗教改革遊戯>
1517年ルターの宗教改革から500年を記念し、
「宗教改革」をモチーフとしたゲームコンテストを開催!!

「ポケモンより面白くしないと意味がない」 聖書をゲーム化する新聞社が次に仕掛ける「宗教改革ゲーム」ってどういうこと?_001

 「宗教改革」を「ゲーム」に? 10月末に突然発表されたインパクトある告知に、アナログゲーム(ボードゲーム、カードゲーム)界はざわついた。どうやらキリスト教関係の新聞・雑誌を発行するキリスト新聞社(東京・新宿)が企画したものらしい。一体どういうことなのだろうか。

 12月11日に東京ビッグサイトで開かれるアナログゲーム最大のイベント「ゲームマーケット ’16秋」にあわせ、発案者である週刊「キリスト新聞」編集長の松谷信司氏に真相を尋ねてみた。

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週刊「キリスト新聞」の松谷信司編集長。

宗教改革をゲームって……?

――率直にお聞きします。宗教改革をゲームって、どういうことですか?

松谷:
 2017年は宗教改革500周年の節目の年ですが、業界的にいまいち盛り上がってないんですよね。書籍を出すとかシンポジウムをやるくらいしかないので、信者以外も盛り上がるようなことを仕掛けたいなと思っていたんです。そんな中から生まれたのがこの「宗教改革ゲームを公募する」というアイデアです。実は私たちキリスト新聞社は、もう6作品もキリスト教をテーマにしたアナログゲームを作ってきたんですよ。

――6作品も!

松谷:
 第1弾は2014年に発売した「バイブルハンター」です。その後も人狼ゲーム「最後の晩餐~裏切り者は誰だ」、野球カードゲーム「バイブルリーグ」などを商品化してきました。12月11日の「ゲームマーケット ’16秋」にも出品します。おかげさまで累計販売個数は5000個ほどになりました。嬉しいことに購入者の9割が信者ではない方です。

第1弾「バイブルハンター」。聖書の人物を召喚して世界に散らばった聖書を獲得していき、ポイントを競う。
第2弾の人狼ゲーム「最後の晩餐~裏切り者は誰だ」。イエスの処刑を目論む律法学者から使徒はイエスを守れるのか? 中には裏切り者のユダも……?

――聖書の人物をかわいらしく描いたイラストがいいですね。

「バイブルハンター」のイエス(少年期)。

松谷:
 イラストレーターはプロの方ではないんですが、mixiの「オタクなクリスチャン」コミュというところで見つけて、連絡を取ってお願いしました。萌えすぎずダサすぎず、という絶妙なところを意識しました。

mixiの「オタクなクリスチャン(オタクリ)」コミュ。

――そもそもどういうきっかけでゲームを作ろうと思ったんですか?

松谷:
 弊社は「Ministry(ミニストリー)」というキリスト教についての季刊誌を出しているんですが、2010年の創刊1周年の際になにか付録をつけようということになりました。そのときに素人なりに知恵を出し合ってカードゲームのプロトタイプを作ったのがきっかけです。限定100個ですぐに売り切れ、雑誌を読んでいない方からも「商品化されたら欲しい」という声がありました。それから4年間試行錯誤してできたのが、第1弾の「バイブルハンター」です。

季刊誌「Ministry」。最新号はサブカルチャー特集。

 2014年に大阪で開いた「いのりフェスティバル」で初披露したら、わざわざ東京からいらっしゃった方もいましたし、作家でゲームデザイナーの山本弘さん【※】も来てくださいました。「いのフェス」で100個、翌日のゲームマーケット’14大阪で200個、計300個が即日完売しました。紙媒体しかやってこなかった老舗のキリスト教企業がゲームに参入したということで、ギャップを狙って話題を作った部分はありますが、まさかこれほどヒットするとは思いませんでした。

※山本弘
 ゲーム制作集団「グループSNE」の創立メンバーのひとり。多くのテーブルトークRPG(TRPG)のプロデュースに携わっている。SF作家としても『妖魔夜行』・『百鬼夜翔』シリーズ(角川スニーカー文庫)などで知られる。

「教会版コミケ」とも呼ばれる「いのフェス」。

――宣伝活動はされたんですか?

松谷:
 新聞や雑誌しか作ったことがないので、ノウハウもないし、宣伝予算もほぼゼロでした。使ったのはTwitterだけです。お金をかけなくても内容が面白ければ拡散してもらえますし、見ず知らずの人からリアルタイムで反応が返ってくることに可能性を感じました。おかげさまで最初の告知ツイートは1400RT以上されました。現在もほぼ毎日私がツイートしています。最近ではネタツイートのしかたも分かってきました。

最初の告知ツイートは松谷さんも驚くほど拡散された。

 Twitterのおかげで、新聞・雑誌の読者数に比べて何百倍もの人と接点が生まれました。今までは宗教系の媒体に広告を打つ以外、露出するということがまずありえませんでしたから。マスメディアで宗教を取り上げるのはハードルもありますし。

聖書はサブカルコンテンツとしても面白い

――たしかにメディアで宗教を取り上げるのは躊躇する部分がありますよね。

松谷:
 そういう意味では『聖☆おにいさん』(講談社)のヒットは大きかったですね。関係者の中では賛否分かれていましたけど、あのマンガを面白がって読む人がたくさんいるというのは新鮮な驚きでしたし、宗教を取り上げるハードルがだいぶ下がりました。非日常としてのキリスト教に興味があったり、サブカルチャー的な関心から知りたいと思ったりしている人がこんなにいるんだと知って、私たちの活動の励みになりました。

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教会関係者も評価する『聖☆おにいさん』。

――不謹慎だという声はなかったんですか?

松谷:
 「こんなことやって怒られないのか」という反応は来ます。怒られるも何も、私たちはキリスト教に基づいて正当にやってきた企業です。私たちからすればそこまでタブー視するほどのことでもないし、信仰をゲームにしたから罰が当たるとか、そういった概念はキリスト教にはありません。もちろん一線はありますよ。エロ・グロはなしとか、クトゥルフ神話が出てくるのはさすがに広げすぎだろうとか。そこさえ守っていればタブーはほとんどありません。その程度のことでキリスト教の根幹には関係ないわけです。

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――なるほど。

松谷: 
 聖書は文学作品やサブカルチャーのコンテンツとして読んでも面白いんだというのを、多くの人に知ってもらえたらいいなと思っています。「中の人」があんなことをやっていたら私たちもやっていいんだ、と宗教に親しむハードルを下げていきたいです。

第5弾の「バイブルリーグ」。聖書の登場人物を9人集めて最強の球団をつくる。

――いずれもゲームデザインは中村誠さん【※】なんですね。

※中村誠
 ゲームデザイナー。マンガやアニメを原作としたアナログゲーム作成を得意とする。2003年にデザインした「金色のガッシュベル!! THE CARD BATTLE」は5億枚以上の売上を記録した。

松谷:
 面識があったわけではないし、名前も存じ上げなかったんですが、「ゲームデザイナー」で検索して一番最初にヒットしたのが中村さんだったんです(笑)。ダメ元で連絡したら思いのほか面白がってくれて、トントン拍子に話が進んだんですよ。

――中村さんはクリスチャンというわけではないですよね。

松谷:
 はい、聖書の知識がほとんどない状態でお願いしました。中村さんは原作モノのゲームを数多く作ってきた方なので、他のゲームとやっていることは同じなんです。聖書というストーリーがあって、その世界観に基づいたキャラクターを作ってゲームにしていく。そのマッチングがうまくいきました。

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子供をポケモンに取られないように

――ゲームづくりにおいて心がけていることはありますか?

松谷:
 「公式が作るコンテンツは面白くない」という考えを打破したいと思っています。聖書の要素を表面的に取り入れてゲームとしては二流、というのは絶対に避けたい。なので中村さんに頼んだんです。ガチなゲーマーの方から見ればゲームのクオリティが高いかどうかは一発で見抜かれますからね。そこで勝負できないと話にならない。教会の中で遊ぶならこの程度でいいか、という気持ちではダメです。

――ゲームとして面白いかが重要と。

松谷:
 教会の中には子供のための日曜学校(教会学校)がありますが、そこの教材は塗り絵やすごろくなど、数十年前からずっと同じです。小中学生に興味を持ってもらえるような教材が欠けているのが現状で、このままではまずいという危機感がありました。子供は正直ですから、ポケモンや遊戯王のほうが面白ければそっちに行ってしまう。ゲームとして面白くなかったら、教義として正しくてもそんなものは全然意味がないと思っています。

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アナログゲームに明け暮れた青春

――もともとアナログゲームはお好きだったんですか?

松谷:
 そうなんです。私は1976年生まれで、小学校低学年のときにファミコンが発売された世代ですが、厳格なキリスト教の家だったので買ってもらえなくて。そのかわりにアナログゲームをよく遊んでいました。小中学生のころにゲームブック【※1】が流行って、洋書を翻訳したものをよくプレイしていました。『モンスターメーカー』【※2】や『ウィズボール』【※3】もやっていました。TRPGもかなりやりました。友達とサイコロ振ってボソボソ語り合って、傍から見たら怪しい青春時代だったなと思います(笑)。

※1 ゲームブック
 読者の選択によってストーリーの展開や結末が変わるように作られており、RPGのように遊べる本。1980年代に隆盛を誇った。

※2 モンスターメーカー
 1988年発売のカードゲーム。個性的なキャラクターが人気を集め、日本におけるイラスト入りカードゲームの先駆けとなった。ゲームの世界観から派生した小説やマンガも生まれた。

※3 ウィズボール
 1989年発売のカードゲーム。コンピューターゲーム『ウィザードリィ』の世界で野球を行う。

――ガチなアナログゲーマーだったんですね。

松谷:
 まだオタクに市民権がなく、ゲームやサブカルチャーが好きだということを表立って言えない時代で、しかも厳格なクリスチャンの家庭だったので。その反動もあり、アナログゲームはもっと評価されていいはずだという思いがずっとありました。大学以降はしばらくゲームから離れていましたが、雑誌の付録を考えたときに久しぶりにゲームに向き合いました。私の小学生の子にリサーチしたりして、最近のゲームシステムや子どもたちの興味をあらためて勉強し直しました。

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――他の宗教ではこういった取り組みはあまり見かけないような気がします。

松谷:
 実は他の宗教にも刺激を与えているみたいなんですよ。陽岳寺の向井真人さんという僧侶の方が、バイブルハンターを見てこれは仏教界も負けてられないと、「御朱印あつめ」というゲームを作られました。今度のゲームマーケットでも隣のブースで出品します。神道の勉強をしているというプロの漫画家さんからも連絡が来て、「マンガを通じて神道を伝えたい、キリスト新聞社さんの活動に勇気をもらった」というお話を伺いました。

写経を納めて自分だけの御朱印帳を完成させるゲーム「御朱印あつめ」。

「厨二」的アイデアに期待

――今回が初の公募ということですが、どんなアイデアを期待していますか?

松谷:
 Twitterの反応を見ていると私たちが思いつかないような発想が次々と出てきました。「カルヴァンになって自分好みの宗教改革都市をつくる」とか、「ルターと討論して失言に追い込んだら勝ち」とか。信者よりオタク的知識に詳しい方も結構いるんですよ。『新世紀エヴァンゲリオン』から使徒に詳しくなったとか。そういうサブカル的、「厨二」的視点からの新しい発想に期待しています。それは業界の中だけでは絶対に作れないコンテンツなので。

――今後の計画について教えてください。

松谷:
 バイブルハンターは台湾から声がかかって、この前繁体字版を出したんですよ。今後は英語やドイツ語への翻訳もできたらいいなと思っています。2015年のクリスマスにリリースしたスマホゲーム『モーセの海割り』は英語版も同時公開しました。日本のゲームはイラストやゲームシステムのクオリティが高いという信頼があるので、積極的に進出していきたいです。

スマホ向け第1弾としてリリースしたアクションゲーム『モーセの海割り』。

 私たちは人狼も出し、野球ゲームも出し、さらに宗教改革ゲームの公募も始めて。もう相当なことじゃないと驚かれないなというプレッシャーはありますが、これからも皆さんをあっと言わせるようなゲームを世に出していきたいです。

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――ありがとうございました。今後も楽しみにしています!

宗教改革500周年ゲームコンテスト要項】 
■募集作品 宗教改革をモチーフにしたボードゲーム・カードゲーム
■応募資格 プロ・アマ、個人・サークル・法人を問いません
■作品送付先 〒162-0814 東京都新宿新小川町9-1 株式会社キリスト新聞社 聖書コレクション「宗教改革500周年ゲームコンテスト」宛
■応募締切 2017年3月13日(月)必着
■発表 2017年5月14日(予定)
■賞 優秀作1点を商品化(2017年10月31日発売予定)

※12月11日「ゲームマーケット ’16秋」の「聖書コレクション」ブースでも受け付けます。

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