SNK全盛期の開発現場を、当時のクリエイターが振り返る。40周年記念の笑いが絶えない座談会

 『ザ・キング・オブ・ファイターズ』『サムライスピリッツ』『餓狼伝説』『メタルスラッグ』など、数々の名作格闘ゲームやアクションゲームを生み出し、今なお根強いファンを持つSNK。
 2018年で40周年を迎えるのを記念し、10月29日にニコ生で放送された番組が、「【SNKブランド40周年】SNK名作ゲームクリエイター座談会&ゲームプレイ祭り」だ。

 その前半では、SNKの全盛期にゲーム開発に携わっていたクリエイターによる座談会を実施。MCに対戦格闘ゲームファンとしても知られる声優・市来光弘さんを迎え、ゲストとして、元『サムライスピリッツ』チームのアダチヤスシさん福井智章さん、元サウンドチームの山田泰正さん、元『ザ・キング・オブ・ファイターズ』チームの鍬差攻則さんにお集まりいただいた。

(写真右から)MCの市来光弘氏
アダチヤスシ氏(エンジンズ所属/『サムライスピリッツ』シリーズ)、
福井智章氏(エンジンズ所属/『サムライスピリッツ』ディレクター、背景デザイナー)、
山田泰正氏(彩音本舗所属/音楽)、
鍬差攻則氏(ゼストクルー所属/『ザ・キング・オブ・ファイターズ』シリーズディレクター)

 1978年の創業当時の社名「新日本企画」から、1986年に「SNK」へと社名変更した直後にアダチさんが入社。その2年後に入社した福井さん、鍬差さん、山田さんが同期(山田さんは中途入社)という関係だという4人のクリエイターの皆さん。

 今回の対談では、まさにSNK全盛期のソフト開発に携わり、以来30年近く交流があるという皆さんに、「実は開発チーム間で仲が悪かった」という設定(?)のもと、関西ならではのノリで当時の開発の舞台裏や制作秘話を語っていただくことができた。ここでは、その模様をダイジェストでお届けしよう。

【SNKブランド40周年】SNK名作ゲームクリエイター座談会&ゲームプレイ祭り
配信チャンネル──
配信日時2018/10/29 19:00〜
備考タイムシフト視聴可能(2018/11/8現在)

『KOF』でタイトルの枠を超えたドリームマッチが実現したのは?

市来光弘氏(以下、市来氏):
 まずは『ザ・キング・オブ・ファイターズ』(以下『KOF』)で、『餓狼伝説』『龍虎の拳』などタイトルの枠を飛び超えたドリームマッチが実現した経緯を訊きたいんです。

鍬差攻則氏(以下、鍬差氏):
 最初、上司と「なにか格闘ゲームを作ろう」という話になって、打ち合わせのときに上司から、「剣道みたいに先鋒、次鋒とあるようなチーム戦の格ゲーにしたらどうや?」という提案があったんですね。

 でも、当時はゲーム中に最低でも8人ぐらいキャラクターがいたので、「そうなると8チーム用意しないとダメでしょ?」という話になったんです。そうなると、8チーム×3人で24人。当時は24人もキャラクターがいるゲームってなかったですし、「これはちょっと作るの厳しいですよ」と。
 するとその上司が、「だったら『餓狼』とか『龍虎』にキャラ借りればいいやん」という話になってですね(笑)。まぁ、けっこう簡単に。

市来氏:
 軽いんですね(笑)。「うちのキャラ使っとけばいいんじゃない?」……みたいな。

鍬差氏:
 そうそう、「有りもの使えばいいやん」みたいな感じだったんです。だったらいっそのこと、昔あった『東映マンガ祭』みたいなノリで、SNKの今までのゲームキャラが総出演するようなゲームを作りませんか?……という話で。それが始まりですね。

市来氏:
 だから『怒』『サイコソルジャー』も入って、そこにオリジナルキャラクターや『餓狼』『龍虎』も入れた、と。
 でも『サムライスピリッツ』(以下『サムスピ』)もあったわけじゃないですか。それは案には入らなかったんですか?

アダチヤスシ氏(以下、アダチ氏):
 仲が悪いと、なかなか入れてもらえない(笑)。

福井智章氏(以下、福井氏):
 いや、仲良かったですからね! 仲良かったですよ!(笑)

鍬差氏:
 実際はですね、どっちかは詳しく覚えてないんですけど、『KOF’95』『’96』のときに『サムスピ』チームを入れようとして。

市来氏:
 えっ、そんな早い段階で?

鍬差氏:
 実際ドットも描いて、動いてたりもしていましたね。

市来氏:
 動いていた!?

鍬差氏:
 で、実際に『サムスピ』の開発チームにもチェックしてもらって。

福井氏:
 僕らも動いてるのをちょっと遊んでましたよ。

市来氏:
へー! 『’95』とか『’96』の段階で、『サムスピ』が『KOF』に参戦予定だったと。

鍬差氏:
 はい。でも、どうしてもスケジュール的にあわなくて。
 『KOF』の最大の欠点として、年号を付けてしまったがゆえに毎年出さなければいけないという(一同爆笑)、そういう使命がありまして。
 ずっとそれで足を引っぱられていましたからね(笑)。ですから実質、半年ちょいぐらいしかなかったですね、(各作品の)開発期間が。

市来氏:
 新作を出しても1年後にはまた出さなきゃいけないから、すぐ次の会議とか開発とかあったわけですよね。
 ちなみにその『’95』か『’96』に登場予定だった『サムスピ』のキャラって、誰ですか?

鍬差氏:
 えーっと、たしか「覇王丸」と「ナコルル」と「ガルフォード」だと思います。まぁ、全部ではないと思いますが。

市来氏:
 へぇー、ドットまであったんですねぇ。で、今日はその当時のドットがある?

鍬差氏:
 ええと、どこだったかな……いや、ないです!(一同爆笑)

市来氏:
 ちょっとノっていただいてありがとうございます(笑)。いや、でも見てみたかったなぁ。

当時の開発チームの雰囲気は?

市来氏:
 SNKには、『KOF』と『サムスピ』というふたつのタイトルがあったわけなんですけど、なにかお互いを意識したとか、影響を受けたとか、そういうのはありますか?

アダチ氏:
 今はわからないですけど、あの当時のSNKは、開発の空気として、それぞれ『餓狼』チーム、『KOF』チーム、『サムスピ』チームというのは独立していて。

 それぞれのチームどうしが何か細かく打ち合わせしたりとか、普段ミーティングして議論を高めたりみたいなことは、基本的にはなかったんです。それぞれチーム間は交流していましたけれども、「それぞれのチームはそれぞれのチームで作っている」という感じはありましたね。

市来氏:
 仕事に関しての交流があったわけではないんですね。

アダチ氏:
 そうですね。今ほど大規模開発というのがゲーム業界では一般的じゃなかったんで、部屋が割とコンパクトに仕切られていたというのも、その背景にあって。部屋の中でちまっと作っているという感じだったんで。

市来氏:
 じゃあ、知ろうとしない限りは、ほかのチームのタイトルがどうなっているかというのはわからなかった、と。

福井氏:
 まぁ、ただ現場の人間はやっぱり、他チームの友だちも多いんで、作っている途中のを「ちょっとやらしてー」みたいなのは普通にありましたけどね。

アダチ氏:
 でも『KOF』チームは、ちょっと独特だったよね? 空気として。

市来氏:
 それはどういう風に?

アダチ氏:
 職人が多かったよね。集中してコツコツと作りあげる人がすごく多かったんで、ちょっと独特の空気が……。

鍬差氏:
 そうですね、いい意味でも悪い意味でも変わった……。

福井氏:
 変な人多かったです。

アダチ氏:
 いい意味ででしょ?

福井氏:
 いやもう、良くも……、はい。

市来氏:
 『サムスピ』、『KOF』、『餓狼』、『龍虎』で全部、基本的には人が違ったわけですか?

アダチ氏:
 そうですね。チームが違いますから。

山田氏:
 サウンドだけ、ひとつに固まってたんですよ。ほかの会社だと、開発チームごとにサウンドがいたりするところもあるんですけど、(当時のSNKの)サウンドはひとまとめでずっといってたんで。

市来氏:
 じゃあ、いろんな楽曲を担当されている方も?

山田氏:
 もうそこに全員、サウンドはひと部屋で集まっていましたね。

アダチ氏:
 イメージですけれど、楽しく、いいチームワークだなって感じていたのが……『餓狼』チームがすごく仲のいいイメージだったよね? 開発チームの空気として明るかった。で、『KOF』チームはなんかこう、職人肌が……。

福井氏:
 まぁちょっと、変な人が多くて……。

市来:
 やっぱ仲悪いんですか!?(笑)

福井氏:
 で、『サムスピ』チームは、アウトローな感じでしたかね(笑)。

アダチ氏:
 傭兵軍団みたいな感じで(笑)。

市来氏:
 ワイルドな感じなんですか?

福井氏:
 そうですね、あんまりいうこと聞かない、みたいな(笑)。

社内で恐れられていたアダチさん

アダチ氏:
 僕は今は、もうすっかりいい奴になりましたけど(笑)、昔は本当にひどかったんで。ああしろこうしろって、ひどい感じだったんで割と。
 (鍬差さんに)『サムスピ』チームはどう見えてたんですか、ちなみに?

鍬差氏:
 いや、『サムスピ』チームというか、アダチさんが怖かったですね(一同笑)。

市来氏:
 アダチさんが怖かった(笑)。

福井氏:
 新人の頃に、みんな研修を受けたあと配属されるんですけど、僕がアダチチームに配属が決まったときに、みんなからすごい励ましの言葉を……。

市来氏:
 どういうお言葉ですか?

福井氏:
 「負けるなよ」、「辞めるなよ」、「頑張れ」、「福井頑張れ!」……みたいな励ましの言葉を、僕だけみんなから受けて配属に(笑)。

アダチ氏:
 で、入ってみたら、実はそんなことなかったっていう……?

福井氏:
 僕、デザイナーで入ったので、研修のときに描いた絵を(アダチさんに)見せるわけですけど、「お前これ、自分で自己評価何点や?」と。
 もちろん、僕のなかでは100点なんですけど、まぁ謙遜も入れて「70点ですかね?」と言ったら、もう即「20点じゃ!こんなもん!!」と。

市来氏:
 うわ〜、怖っ! アダチさん怖っ!(笑)

アダチ氏:
 本当にね、そのときの僕に替わってお詫びを申し上げます(一同笑)。こういう公共の場を使ってアレなんですけど、当時のSNKの『サムスピ』チームでご迷惑をかけた皆様に、この場を借りてお詫びを申し上げます(笑)。

一同爆笑&拍手。

市来氏:
 福井さん以外にも謝る方がいらっしゃると。

アダチ氏:
 あぁ、よかった言えて。ありがとう。

1995年、3D対戦格闘ゲームの影響は?

市来氏:
 じゃあちょっと先に、’95年頃に進んでみたいと思います。
 他社にはなるんですけど、『バーチャファイター』『鉄拳』『X-MEN CHILDREN OF THE ATOM』のような、いろんな格闘ゲーム、そして3Dの対戦ゲームなんかも出てきたんですけれど、皆さんは影響というか、意識した部分というのはあるんですか?

福井氏:
 『バーチャファイター』はゲームショウで初めて見たんですけど、正直言って業界の人間は当初『バーチャファイター』の評価は高くなかったんですよ。僕の周りの業界の人たちは評価が悪い方が多かったんです。というのは、「ガードがレバーじゃない」という操作が独特だったんです、当時としては。

 でも僕は「こんな考え方があるのか!」と思って。「3Dで格闘ゲームをやるとこうなるのか!」みたいな衝撃はすごくありまして。いつか僕も、こういうのを作るときが来るのかなぁと……。

(ここで笑いをこらえるアダチさん)

市来氏:
 あれ、なんかアダチさんが笑いをこらえてましたよ? 笑いの理由はあとで聞くとして……まぁ、影響を受けたということですよね。

アダチ氏:
 まぁまぁまぁ(笑)。(鍬差さんに)『バーチャ』はどうでした?

鍬差氏:
 『バーチャ』は……そうですね、最初は確かに、操作系はとっつきにくいといいますか。売れるかどうかまでは、ちょっとわかんなかったんですけど、パッと見た目は、「やっぱかっこいいな」というのは思いましたね。絵的なところ?……絵的じゃないか、動きですね。そういうところはちょっと感じましたね。

アダチ氏:
 僕はそのときはゲームのクリエイター側で、ディレクターとかプランナーとか、アートディレクター的なことは、まだ『サムスピ』チームでもしてたんですよ。プロデュース兼務でやっていたんですけど。
 僕自身が「もうすっかり能力が衰えたんだな」と気付づされたものがふたつあって、ひとつは『ビートマニア』で、ひとつが『バーチャファイター』。「こんなもの絶対売れるか!」と思ったら、ものすごく売れたので。

 そのふたつのタイトルのおかげで、自分の適質をしっかり感じられた。だからあのとき、僕はまったくわからなかったです。これはもう僕の問題だと思うんです。これだけやっぱり皆さんに愛されて、今も愛されているので。
 なので、あのときが僕のターニングポイントでしたね。

市来氏:
 いい話風に(笑)。

アダチ氏:
 まぁ、「僕がダメだった」ってだけなんですけどね(笑)。

市来氏:
 先ほど福井さんのお話のときに、笑いをこらえていたのは?

アダチ氏:
 まぁ、『バーチャ』を見て、「ゆくゆくは俺も」って志を高く持たれて、まぁ皆さんもよくご存じの『サムスピ』チームですから、『サムスピ』でね、3Dのゲーム開発を……。もう、宿命というか、運命というかね。

福井氏:
 まぁ……まぁ……、はい。

市来氏:
 次に行こうかな!(笑)

1996年当時、ゲーム開発の環境は……

市来氏:
 『KOF』は『‘96』からシステムがけっこうガラっと変わったじゃないですか。2年同じシステムが続いたあとに、あの思い切りは?

鍬差氏:
 ほんとはあれ、『’95』で入れるはずだったんですよ。

市来氏:
 えっ、“前転後転”を?

鍬差氏:
 ええ、あのシステムを。ただ、それも間に合わなくて。で、途中で前のシステムに戻して作ったという経緯がありますね。システム担当していたプランナーが途中でぶっ倒れましたからね。

市来氏:
 そんな話があったんですね……。

アダチ氏:
 倒れるっていうのは……?

鍬差氏:
 僕が救急に連れて行きましたからね(笑)。

福井氏:
 あのときはね……。これ言っていいんですかね? いや基本、机の下に布団を敷いてたんで。

アダチ氏:
 まぁ、時代ですよね。

一同:
(うなずきながら)時代です、時代です。

福井氏:
 ただ、僕らは割と、自分から好きでやっていたんで、ブラックという感覚はまったくないんですよね。
 嫌々やらされていたわけじゃなかったんで、「もっと、もっと!」とやっていると時間が足りないので、勝手に会社に泊まっていたという。

アダチ氏:
 でも、幸せな時代ではあったよね。本当に好きなことを朝から夜中までずっとやらせていただいて、皆さんに遊んでいただけて、という。あれは本当に幸せな時代だったですね。

福井氏:
 「帰れ!」って言っても帰らないですからね、みんな。「いやこれ、もうちょっとこう……」って。

山田氏:
 まぁ、帰ってもゲームするだけですからね(一同笑)。

アダチ氏:
 会社の寮に帰ってゲームしてたね。

山田氏:
 うん、してたしてた。

アダチ氏:
 あのとき何してた?

福井氏:
 スーパーファミコンとかの時代ですよね。

市来氏:
 スーパーファミコンは1990年に出たのかな? それから5〜6年じゃ、まだまだスーファミを遊んでたのか。他社さんのゲームをいろいろ遊んで、影響とか?

アダチ氏:
 今みたいにゲームメディアさんが発達してないから、(他社のゲームは、開発の)途中途中が見えないんですよ。触れるときって、いきなり商品として現れてくるので、皆さんと一緒で感激してましたね。特に、やっぱり近くにあったカプコンとか、出てくるものにいちいち感動して。

 で、私カプコングループにあとで移ったんで、(カプコンの開発者に)そんな話をすると、お互いが感動しあっていた感じのようですね。もう出るたびに感動して。それぞれがビデオで録画して、それを再生して止めて、お互いに研究しあっていたというのを、あとでよくわかってきましたね。

1997年、コスプレに喜ぶ開発者チーム

市来氏:
 SNKの話に戻りますが、確か『月華の剣士』が1997年に出ているわけなんですけど、『サムスピ』のチームと『月華の剣士』のチームは当然違ったわけですよね。
 『サムスピ』チームから見た『月華の剣士』ってどうでしたか? 同じ“剣を使うゲーム”として。

アダチ氏:
 『サムスピ』チームは、よくいえば「勢いがあっただろう」と思いますし、振り返って自分たちの作ったものを見てもすごく勢いを感じるんですけれど、『月華』はすごく品良く、「そうか、こんなに品良く作れるんだ!」と(笑)。「すごく細やかに、美しく作ってあるなぁ」という印象はありました。
 僕たちではできないな、という感じでしたね。

市来氏:
 でも、棲み分けは完璧だったんじゃないのかなと。

アダチ氏:
 そうですね、今の僕たちなら、品のいいものを見て、もっときっちり棲み分けて、逆に俺たちは「もっと暴れん坊のほうにいくか」、というのはあったと思いますね、チームの空気としては。

市来氏:
 じゃあ続いて、次の話題に。当時はインターネットがそんなに普及していない時代だったじゃないですか。で、1997年や1998年になってくると、コスプレとか、イラスト投稿とかがちょっと目に付くようになってきたイメージがあるのですが、そういったものを見て反応とかは?

福井氏:
 いつだったか、ゲームショウのSNKブースで大コスプレ大会みたいなのをやったんです。で、SNKのキャラクターのコスプレの人たちがすごく集まってくれて。まぁ、びっくりというか、感動というか。

アダチ氏:
 (それまでは)なかったからね、今は珍しくない光景だけど……。あれは衝撃でしたね。

福井氏:
 コスプレっていうのが、ちょうどそれぐらいから盛り上がってきたのかな。

鍬差氏:
 僕も同じようにAOUで『’94』の直後ぐらいだと思うんですけど、アテナのコスプレをしていた素人の女の子がいて、それがうれしくて(笑)。
 スタッフも何人かで一緒に写真を撮ってたら、上司にめっちゃ怒られました(一同笑)。

アダチ氏:
 でも『KOF』はいいよね、けっこうコスプレイヤーさんが、なんかシュッとしてるやん。みんな男前で。

市来氏:
 『サムスピ』は?

福井氏:
 うちはアースクェイクだの玄庵だの……(笑)。でもね、僕が大会のときに一番好きだったのは、全身緑色に塗って、かぎ爪を作ったのをこうガチャガチャしながら歩いている人を見て。もう、うれしくて。「玄庵おる!」と思ってね。
 握手したかったけどできなかった、かぎ爪だから(笑)。

市来氏:
 もしかしたら、今日(この番組を)見ているかもしれないですよ。当時その玄庵のコスプレをしていた方が。

福井氏:
 そうですね。ありがとうございました。

アダチ氏:
 僕も、そういうのありました。プロデューサーというのは表に出るような仕事ではないので、僕は今までサインというのは基本的にはしてこなかったんですけど、SNKが連れてきた公式レイヤーさんで、本当にモデルさんみたいな女性の方がナコルルの格好でした。
 その方が「サインしてください!」って背中を“クルっ”てしたときには、もう「はいっ!」って(笑)。

市来氏:
 顔がニヤけてるぞ!!(笑)

アダチ氏:
 その方の背中に、自分の名前をフルネームで「足立 靖」って漢字で書きましたけどね(笑)。

市来氏:
 なんの話してるんですか!?(一同笑)

アダチ氏:
 それぐらい、あのときの僕たちゲームクリエイターにとって、自分たちの作ったものをそうやってコスプレイヤーさんにやっていただいて、なおさらかわいい女の子にやっていただいて、なおさらこうやって背中を向けて「サインください」とか言われたら、うれしかった!……って話です(一同爆笑)。

山田さんに聞く、サウンドチーム裏話

市来氏:
 山田さん、サウンドの話をいろいろ訊かせていただきたいのですが、「SNK新世界楽曲雑技団」結成時からご活躍されていた、と。

山田氏:
 なんか、いつの間にか結成されてましたね。名前がついたのはたぶん、僕が入ってしばらく経ってから。
 最初からそんな名前はなくて、CDを出すのに、他のメーカーさんは(サウンドチームに)いろいろ名前あるじゃないですか、ZUNTATAさん(タイトー)とか、矩形波倶楽部さん(コナミ)とか。

 で、「どうしよう、我々の中で公募しよう」と。最初は「正弦波倶楽部」とかパクったものばかり出てきたんですけれど(笑)、ワーワーやっているうちに、やっぱり大阪だから「新世界」って出てくるんですよ、「新世界ナントカ音楽団」みたいな。 
 最初はそんなのだったのが、別のアイデアで「雑技団」というのがあって。「じゃあ、これガッチャンコしたらいいじゃん」……ということになって、「新世界楽曲雑技団」という……なんか言いにくい名前にね(笑)。

市来氏:
 当時の音の作り方といいますか、SE(効果音)の話なんかもしていいですか?

山田氏:
 効果音はね、格闘ゲームが主の会社なので、「いかにテンポよく、気持ちいい音を作っていくか」ということをもうず〜っと念頭に置いて。それを意識して、連続で鳴らしたときに「パンパンパンパン、カーン!」……と、その気持ちよさは常に意識して作っていましたけどね。

市来氏:
 殴ったときに音の気持ちよさといったら『龍虎の拳』が出てくるんですけど。

山田氏:
 あ、『龍虎の拳』の「スコーン!」のこと? そういえば前、トークイベントのときに「スコーン山田」とか言われて、「誰やねん、スコーン山田って!」(笑)、と、知らない間に僕の名前を付けられていて(笑)。

市来氏:
 あの音を作ったばっかりに(笑)。

アダチ氏:
 あれは狙って「スコーン!」にしたんですか?

山田氏:
 ええ、あれは狙って。ただ、作るのにかなり時間がかかった覚えがあって。当時疑似ステレオで……ステレオじゃないんですよ、いちおうモノラルで、偽ステレオみたいなことはしていたんですけど。

 で、効果音って全部モノラルで鳴らしてたんですけど、なんか最後だけステレオにしたら派手かなと思って。それで耳に痛い音を作ろうと思ってできあがったのがアレという……なんの説明にもなってないですけど(一同笑)。
 感覚だけしか言ってなくってごめんなさい(笑)。

市来氏:
 いえいえ、ありがとうございます(笑)。そしてNEOGEOのジングルがあるじゃないですか。

山田氏:
 あ、あのオープニングに流れてる?

<ジングル流れる>

市来氏:
 この音も?

山田氏:
 これもなんと僕です。でもね、これもNEOGEOの立ち上げぐらいのときにサウンドのスタッフって4人ぐらいしかいなかったんですよ。4人か、5人ぐらいで。

 で、全員でコンペをしようと。コンペをしてみんなで作れと。アイキャッチこんな感じの画面ができたから、これに音を作れということになって。で、会社のいろんな人に聞いてもらって投票で決めようというので……。投票で票集めがよかったんですよ。だいぶ撒きましたからね(一同笑)

アダチ氏:
 山田君、あれ、サウンドすごい容量制限きつかったでしょ?

山田氏:
 うん、かなりきつかったですね。

アダチ氏:
 あのNEOGEOのロゴが回るところの演出は、僕が絵コンテ切ったんです。で、彼が音を鳴らしてくれたんですけど、容量がとにかくなくて。
 もちろん僕らだって、もっとかっこいいロゴ回しして、たぶん違う音を作れたけれど、あそこで容量使っちゃうとゲームを始めるのに時間がかかるんで。
 とにかくものすごく限られた容量だったよね?

山田氏:
 そうですね。まぁ、アイキャッチに限らず、常に“容量との戦い”というのはあったので。でもあれは、特に制限のあるなかで……。言われてみればそうでした。

市来氏:
 BGMのほうのお話なんですけれども、「変わったタイトルが多いな」という印象があるんです。いくつかあるんですけど、「ギースにしょうゆ」とか。あれはどういう流れで、ああいうタイトル付けになっていったんですか?

山田氏:
 あのタイトルのハシリは、僕の記憶が間違っていなければ、僕の先輩がちょっとふざけた曲名を付けているんですよね、最初『餓狼伝説』か何かのアルバムを出したときに、ちょっと面白おかしい名前を何曲か付けて。
 で、その先輩はもういらっしゃらなかったんですけど、そのあと僕が『龍虎の拳』をやったときに、『龍虎の拳』の(曲の)タイトルをレコーディングのミックスの待ち時間の間に考えてくださいって言われて。

 30曲ぐらいあるから、「どうしよう、30曲も……じゃあ、馬が出てるから『馬と僕』」とかね(一同爆笑)。「コンティニューは、もう1回したいから『ネェもう 1回しよ』」とか(笑)。

 そしたら、なぜかそれが定着しちゃって、「みんな面白い名前にしよう」と。かっこいい名前を付けられないんですよ、「なんとか・ザ・スカイ」とか……これは全然かっこよくないけど(笑)。何をやっても、こうしかならなかったということですね(笑)。

市来氏:
 あと、「ターくんと北ピー」とか「クリキントン」とか。

山田氏:
 「ターくんと北ピー」も、田中君と北村さんって人がいて、田中さんの「ターくん」と北村さんの「北ピー」で「ターくんと北ピー」。なんの意味もない、がっかりだよ(笑)。

市来氏:
 キャラクターまったく関係ない(笑)。

山田氏:
 『餓狼伝説』のあの、ムエタイやるヤツいたでしょ?

福井氏:
 ジョー・ヒガシのこと?

山田氏:
 そう。そのステージ中の民族っぽい声を、ターくんが作曲はしてるけど、北ピーさんがしゃべっていたかなんかで……。それで「ターくんと北ピー」って。単純にそんな名前……のような気がします。

アダチ氏:
 あのね、僕もあるんですけど……、当時のことを一生懸命お話すると、がっかりされるということがね……(一同笑)。

山田氏:
 はい。がっかりしてください(笑)。

『サムライスピリッツ』開発裏話

市来氏:
 『サムライスピリッツ』の話をお訊きしたいんですけれども、『サムスピ』は素手ではなく、刀・武器を使うシステム。あとは怒りゲージ、つばぜり合い、武器の耐久度とか。『KOF』や『餓狼伝説』にはないシステムがあったわけじゃないですか。
 これはどういった流れで決まって、こういうのを入れていこうとか?

アダチ氏:
 もともと「武器を入れる」というのは、「命を賭けた闘い」というものを真面目に作ろうと決めたので、「命取られるものを持たせた」というのが本当の、最初のきっかけなんです。その他のいろいろなアイデア、怒りゲージとかというのは、実際作りながら日々考えながら企画を立てて……。

市来氏:
 徐々に生まれていった?

アダチ氏:
 そうですね。最初は『ストリートファイターII』にすごくインスパイアされて考えていった、割とシンプルな、刀を使った剣劇ゲームだったんですけど、増えていったのはいろいろなアップデートっていう感じで。
 (福井さんを指さしながら)こいつが、このあとたぶん……昔のことをムチャクチャ覚えてるんですよ(笑)。

福井氏:
 なんか“ものすごく考えた”感じみたいになってますけど……あの怒りゲージ、あれも対戦格闘でサブゲージという概念を初めて出したんじゃないかと思うんですけど、あの怒りゲージが生まれた誕生秘話みたいなのがあるんです。
 あれは、『サムスピ』開発チームが対戦格闘を勉強するために、お手本として『ストリートファイターII』をすごく真剣にプレイして、仕組みを自分たちなりに解析して……というのをやっていたんです。その一環で、開発チームの誰かが対戦をしたいときは、ガチで対戦するんですよ。

 当時、いわゆるゲームセンターではハメ技とかいろいろマナー的に禁止みたいなものもあったんですけれど、僕らのやる対戦は、そういうのも全部やるという。キャラクターも得意キャラとかじゃなく、サイコロで決めるという方法で。
 それで、僕がアダチと対戦したときに、いわゆるハメ殺しを遠慮なくやったわけですよ。そしたらやっている最中に「お前!! 覚えとけよ!!!」みたいな(一同爆笑)。

市来氏:
 横でキレちゃった(笑)。

福井氏:
 リュウやケンのしゃがみの小足連打でピヨらせるっていう「ダーク」と呼ばれてたんですけど、やっている最中に「お前! 覚えとけよ!!」と言われながら、大笑いしながらハメ殺したわけですよ。

 そしたら、アダチが対戦終わったあとに、自分の席にどーんと座って、しばらく「ムフーッ!」って、たいそうご立腹で(笑)。
 で、突然ですね、「怒りゲージや〜〜!!!!」って(一同爆笑)。これが怒りゲージ誕生の秘密です。

市来氏:
 じゃあ、福井さんがアダチさんを怒らせてなかったら、怒りゲージはなかったかもしれない!?

福井氏:
 怒りゲージの発案はもちろんアダチなんですけど、生み出した、生みの親は僕ですよ(笑)。

アダチ氏:
 プロは(アマチュアとは)違うということ(笑)。そこはやっぱり違いますよ。フィールとかパッションとかをシステムに落とし込んでいくのが、僕らゲームクリエイターなので(笑)。
 『バイオハザード』ならあの“恐怖”という感覚を、どうしたらゲームというシステムに落とし込んでいけるか。

 ここがプロのやることであって、単に“怖がっているだけ”、“単に怒らせるだけ”というのは誰だってできるんですよ(笑)。誰でもできることをやって、俺が作っただの作ってないだのって……。
 悔しいのが、こいつのほうが記憶力いいから、お前がそういうと、俺も「そうかな?」って、ちょっと思い始めるという(笑)。

市来氏:
 (山田さん、鍬差さんに)このエピソードをおふたりは、当時聞いたことは?

鍬差氏:
 今日初めて聞きました。

山田氏:
 そういう話は以前に福井さんが言っていたけど……。

福井氏:
 これね、時間が経って、熟成されて、面白い話になってしまったんですね(笑)。当時はそれが面白い話だとは思ってなかったんですけど。

アダチ氏:
 まぁ、というように『サムスピ』というのは、日々のアップデートを繰り替えしながら完成されていった、と……(一同笑)。

市来氏:
 笑いながら言われましても(笑)。

アダチ氏:
 いやそりゃね、あの当時の作り方は荒かったですね。それはもう、言っていいのか悪いのかっていうぐらいの話が、もうたくさんあって。


 このあと話題は、『サムスピ』の新作の話へ。アダチさん、福井さんとも新作のインプレッションや、喜びを感じていることなどをお聞きすることができた。

 さらにそのあと、話題は『サムスピ』とスマホゲーム『ブレードスマッシュ』のコラボへ。

 アダチさん、福井さんたちへの、スマホのアクションゲーム制作オファーをきっかけに、SNKの協力のもと、あれよあれよという間に極めて密度の濃いコラボが実現した経緯を語っていただいた。

 

 ナコルルの登場だけでなく、なんとSNKの許諾を受けて『サムスピ』シリーズの新キャラ「こさや」(覇王丸と牙神幻十郎に憧れ、彼らの技を彼女なりに身に付けた、という設定)を登場させてしまうという、なんとも斬新で大胆な内容に、市来さんも感心しきりだった。


キャラクターへの思い入れはたっぷり!

市来氏:
ここでまた『KOF』の話にいきたいと思うんですけど、『KOF』シリーズのアテナが、コスチュームが毎回変わっていった理由って、何かあるんですか?

鍬差氏:
 最初、『KOF’94』のときはそういうイメージはまったくなかったと思うんです。『’94』は違うんですけど、『’95』と『’96』は実は僕がデザインしたんですよ、アテナのコスチュームを。
 で、『’95』のときは若干のアレンジぐらいにしていたんですけど、もうここまできたら「毎年アテナは変わるようにしよう」と、『’96』もデザインしましたね。

 ただ僕、『’96』を作って’96年の年末にSNK退社したんですけど、「いちおうオロチ編のストーリー関係の最後まで、こんな感じでまとめてくださいね」というのと、「四天王の残り3人をああいう形にしてください」という指示だけして辞めたんです。
 そのときにもう一個だけ指示したことがあって……「アテナをセーラー服にしろ!」と言ったんですけれど、ならなかったんです(笑)。あれはデザイナーが徹底抗戦してダメでした(笑)。

市来氏:
 あれ? アテナがセーラー服になって戦っていたタイトルって…?

鍬差氏:
 後半の方でありましたね。『XI』ですかね。のちのスタッフが、ちゃんと意志を継いでくれました。ありがとうございました(笑)。

アダチ氏:
 ちなみにアテナの元デザインとなる『サイコソルジャー』のデザインは、僕がしたんです。ドットは恥ずかしながら僕が……(笑)。
 (鍬差さんに)ちゃんと僕の意図をキミが……。

鍬差氏:
 はい。継ぎましたね。

アダチ氏:
 継いでない継いでない(笑)。

市来氏:
 そして先日、『SNKヒロインズ』というタイトルが稼働していますけれども……クリエイターの皆さんには、好きなキャラクターはいるのかな? 『ヒロインズ』に限らず、思い入れのあるキャラクターでいいんですけど。

鍬差氏:
 僕はアテナ好きで、「アテナ、アテナ」って言ってたんで、アテナ一択で。

市来氏:
 あ、やはりアテナ一択ですか。

アダチ氏:
 あ、そうなの? 男子は?

鍬差氏:
 う〜ん……京? 庵?……あ、ルガールでした! 僕、ギースがすごく好きなキャラだったんですけれど、あのキャラをどうやったら超えられるかというのをいろいろ考えて、今までのいろんな悪い奴の要素をぶち込んだのが、ルガールでした。

福井氏:
 僕は、自分が考えてデザイナーと一緒に生み出したというのもあるんですけど、牙神幻十郎と色(しき)ですね。

市来氏:
 色はいいキャラですね、ビジュアルも。

福井氏:
 もうあれは、僕とデザイナーの欲望をすべてあそこに詰め込んで……はい。

鍬差氏:
 あれ、僕も関わっていますからね。もう、辞め際ですよ。「このままおとなしく辞めさせて」と言っていたのに、『サムスピ』チームに放り込まれて、いきなり動作設定を。

アダチ氏:
 あ〜、動作設定してたね。

福井氏:
 なんか突然、彼(鍬差さん)がね、動作設定するからって。「え? そうなの?」って感じで、「じゃあ、このキャラやって」って(笑)。

アダチ氏:
 一緒に仕事していたんだね。

鍬差氏:
 してました。1ヵ月ぐらいです。最後の1ヵ月です。

アダチ氏:
 幻十郎は……ほんと、あのときは神がかってたよね。あの花札のネタ、「花札をモチーフにしよう」というのはパッと思いついたんですけれど、どうしていいかわからなくて、福井の机に花札をぽんと置いて……。
 花札だけパサっと渡しただけなのに、上手にアレンジしてくれたなぁという感じ。あのときは、キミは仕事できましたよね(笑)。

福井氏:
 今もできる……つもりなんですけど(笑)。

アダチ氏:
 山田くん、ちなみにキャラの方は?

市来氏:
 どうなんですか、サウンドチームから見て好きなキャラは?

山田氏:
 自分の思い入れで言うと……僕、『龍虎の拳』をずっとやっていたんで、一番最初に出てくる藤堂竜白というおじちゃんがいてね。僕、あの曲が一番好きなんですけれど、あんまり強いキャラクターじゃないから、いいところに行く前にプレイが終わっちゃうというね(一同笑)。

 せっかく力を入れて作っているんだけど、簡単に瞬殺できちゃう。「え〜! ここ聴いてよ!」みたいな。あと不知火幻庵とか、僕は好きですけどね。

市来氏:
 なんというか、けっこうクセ者というか…。正統派ではないですよね?

山田氏:
 正統派じゃないですか?(一同笑)
 不知火幻庵はね、『サムスピ』のリミックスアルバムを作ったことがあるんです。著名な海外のDJとか、日本のクラブミュージックの人たちにリミックスをしてもらう、と。
 で、不知火幻庵の曲って、ほぼほぼ環境音で、お経が流れているんですよ。お経のような、読経のような。その読経、僕が雰囲気で“なんちゃって”でしゃべっているんですけれど、それを素材でリミックスされているんですね。

 それを日本のアーティストがリミックスしているときに、ジャマイカからアーティストが来ていたんです、そのスタジオに。で、ジャマイカの人たちって、メッセージとかそういうのを大事にするんですよね。
 「この曲や歌はどういった意味があるのか」ということを。それで、リミックスしているアーティストに、ジャマイカ人が「これは何を歌っているんだ?」、「いや、わからないです」、「お前たちは、意味もわからないでリミックスをしているのか!?」って、めちゃくちゃ怒られたという(一同爆笑)。

山田氏:
 で、会社に電話がかかってきて「あれはどういう意味ですか」、「いや、意味ないです」と。
 でも、「意味がない」では話がまとまらない。「ちゃんと説明しなければいけないから、なんか考えて」って上司に言われて「……おじいちゃんが教えてくれた、おまじないの歌」。「よし、それでいこう!」って(一同爆笑)。

市来氏:
 納得したんですか?(笑)

山田氏:
 ジャマイカの人たちはきっと納得して帰っていったんだと思います。

アダチ氏:
 幻庵は、海外の方にすごく評判がいいんですよ。前に海外メディアのインタビューを受けたときに、2時間ぐらいのうち1時間ぐらい“幻庵について”で(笑)、「あれがすごくいい」と言われて。
 僕も、自分が作った立場ですけれど、(思い入れがあるのは)幻庵と……一番突き詰めて作ったのは首斬り破沙羅というヤツです。根暗でダークヒーロー好きなので、とにかく根暗を詰め込んだのが首斬り破沙羅で、いつも血の涙を流しているみたいな設定を書いていたのも覚えてます。

 ボイスを野中(政宏)さんにやっていただいたときも、「とにかくバランスを崩してください。まともな演技はいらないんで」って、バーサクモードでやっていただいたのを拾って。
 死ぬときの断末魔の声で出してもらったのを、そのまま必殺技に使ったりとか、奇声を上げながら飛んでいったりしているのも、あとからとにかくおかしくなる方へ悲しくなる方へ……とやったのが、あのキャラなので。すごく思い入れがありますね。

市来氏:
 「首斬り破沙羅」というネーミングは?

アダチ氏:
 そのあたりも、自分の趣味詰め込んだ感じです。

市来氏:
 自分たちの思い入れのあるキャラクターは強くしたいなぁとか、そういうのもあったりしたんですか? 単純に。

アダチ氏:
 ……やっぱり、現れますよね。

福井氏:
 僕は「COM敵」と呼んでいた──いわゆるAIですね、ひとりで遊んでいるときに出てくる敵の全体的なまとめをやっていたんですけれど……もうね、ど〜してもアダチ担当のキャラが強い(一同笑)。『真サムライ』とか。

市来氏:
 露骨に強いと。

福井氏:
 はい。当然アタリ判定とかも見て、「これは強いよ!」という判定が入っているんですけれど、僕は下っ端なのでイジれないわけですよ。

 で、企画の担当者何人かでやるんですけれど、とある担当が……やっぱり自分の持ちキャラを強くしたいんでしょうね。体のダメージを受けるアタリがこんなに小っちゃいのに、攻撃のアタリがこんなに大きいのが入ってるのがあって。
 「ちょっとこれはさすがに」……と思ったら、アダチがぴゅっと直して、ものすごく弱い技にして(笑)。なので、アダチキャラは君臨(笑)。

市来氏:
 僕、『サムスピ』はよくわからないんですけど、それ1作目? 『サムスピ』1作目ですごい強いキャラって誰ですか? 右京?

アダチ氏:
 そう、右京、右京(笑)。

市来氏:
 右京はアダチキャラ(笑)。

アダチ氏:
 全国の右京ファンの皆さん、僕のおかげですよ(笑)。

福井氏:
 ちなみに、シャルロットも幻庵もアダチ。

(場内から「あ〜」と納得の声)

福井氏:
 もう3強ですよね。

アダチ氏:
 あのときのバランスの悪さを、プレイヤーさんのスキルがより面白くしていった。あれ、バランスがとれていたら、あのゲームがあそこまでヒットすることは、たぶんなかった……と。あのバランスのね、絶妙な悪さ?(笑)

福井氏:
 そうなんです。僕なんか逆にちょっとヒネくれているところもあったんで、『真サムライ』の新キャラの牙神幻十郎……本来は強くしないとダメじゃないですか、新キャラですし。

 で、牙神も対空技を持っているんですけれど、その出始めに頭を突き出してこういくんですね。それを僕は、頭をしっかり(相手に)蹴られるように、攻撃のアタリは入れず、「蹴って♪」みたいな感じで“喰らいの判定”をしっかり残して……。
 これを使うプレイヤーはしっかり考えて使ってくれよ、なんでも技出したらええっちゅうもんちゃいますよ、と……。

アダチ氏:
 そういうことを考えるきっかけにもなったってことですよね(笑)。

福井氏:
 そうです(笑)。


 このあと、ゲストの皆さんが今回の座談会を振り返って座談会は終了。最後には、アダチさんが来年から立ち上げるという新規プロジェクト『SABURAU』の紹介も。
 アダチさんが昔から大好きだという侍や忍者を題材に、アニメやゲームなど多くのクリエイターを巻き込んで、その集大成となるものを目指しているのだそう。
 今回ご参加いただいたクリエイターの皆さんの今後のご活躍にはもちろん、アダチさんのプロジェクトにもぜひご期待を!

【あわせて読みたい】

 

『ストII』で格闘ゲームを生んだ伝説の男、西谷亮が挑むジャンルの再構築──『FIGHTING EX LAYER』にアリカが社運をかけて臨む理由【聞き手:「鉄拳」原田勝弘】

 格闘ゲームの世界に帰ってきた西谷氏は、どのような考えのもとで『ストII』を生み出し、これまでの格闘ゲーム界をどのように見てきたのか。そして開発中の新作にどんな思いを込めたのか。西谷氏を「天才」と言い切る原田氏とともに、編集部は『ストII』誕生の背景や『謎の格闘ゲーム(仮)』について、西谷氏本人から話を訊くことにした。

 

 インタビューを行ったのは11月16日──偶然だがこの日は、『謎の格闘ゲーム』の正式名称が『FIGHTING EX LAYER』であることが明かされた日だった。

関連記事:

格ゲー“暗黒の10年”は、『鉄拳』を世界一売れる格闘ゲームへと鍛え上げた──世界市場に活路を拓いた戦略を訊く【バンダイナムコ原田勝弘インタビュー/西田宗千佳連載】

「会社が僕らのたまり場だった」国産格ゲータイトルを支える男たちの、青春の日々を今こそ明かそう【初対談:『GUILTY GEAR』石渡太輔×『BLAZBLUE』森利道】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
電ファミのDiscordでこの記事について語ろう!

関連記事

SNSで話題の記事

新着記事

新着記事

連載・特集一覧

カテゴリ

ゲームマガジン

関連サイト

その他

若ゲのいたり

カテゴリーピックアップ