電ファミで取り上げた記事のうち、直近1週間でもっとも話題となったゲームニュースを、ランキング形式でお届けしよう。TwitterとFacebookでそれぞれ人気だった記事のベスト20をリストアップし、気になる話題については、電ファミニコゲーマー編集長のTAITAIが解説していく。
各記事は電ファミ上にピックアップされてから24時間後の数値を集計調査。記事の“勢い”に着目している。
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今週もSwitchと『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』(以下、『ゼルダ』)についてのトピックが数多くランクイン。3月3日の発売以降、すでにいろいろな人によって“語られている”が、今回の『ゼルダ』は本当に傑作なので、それだけ“語りたい”というニーズも大きいのだろう。
というか、筆者も先日の連休をフル活用して、ひとまずクリアするところまでは到達したのだが、そのプレイを振り返ってみても、驚くほど「面倒くさい」だとか、「飽きた」など思うことがなかった。ここまでの没入感を得たのは本当に久しぶり。しかし一方で、「ほかのゲームと比べて何がそんなに違ったのか?」と不思議でしかたがなかった。たとえば、よくあるオープンワールドのゲームだったら、小さなクエストを山盛りに受注して、消化しきれずに「もういいや」となることもあるが、この『ゼルダ』はそうならない。なぜ……?
というわけで、今回は、そんな「なぜ、『ゼルダ』はプレイしていてまったく飽きないのか」について考察をしてみたい。今週、仕事をしながらぼんやりと考えていたことの成果(?)でもあるが、面白くなかったらごめんなさい。
さて。結論から言ってしまうと、あれこれ考えて思い到ったのは、“ゲームのテンポ&リズム”が今回の『ゼルダ』はとんでもなく良くできていて、しかもそれが、この作品の遊びの中核である“広い世界を探索する”という部分と有機的に結合しているから、というものである。これはどういうことか?
要するに、今回の『ゼルダ』をプレイしていると、つねに大なり小なりの何か楽しい瞬間が絶え間なく訪れて、飽きる間がない。その“楽しさのテンポと密度の設計”がもうめちゃくちゃにすばらしいデキなのである。
『ゼルダ』をプレイしている人は、ぜひ思い起こしてみてほしい。いまさら指摘するまでもないが、今作では、とにかくマップを歩いているだけで、つねに何かの“発見”や“判断すべきこと”がある。
たとえば、遠くに見えるタワーや祠を見つけては、まずはそこを目指して向かっていく。道中では、落ちている素材を拾ったり、動物や虫を捕まえたり。あるいは敵と戦ったりというイベントがありつつ、目的地に近付くに連れ、じつは途中に崖があったり、ゴブリンのキャンプがあったりして、どうするかの判断に迫られる。タワーに着いたら着いたで、今度はそこから景色を見下ろしているうちに、新しく行きたいと思う場所が現れ……。また新しい場所を目指して冒険を繰り返していく。
本作では、このプレイのサイクルが、とにかく小気味よく、そして有機的に繋がっていくのである。
加えて本作には、マップの“怪しい場所”に隠れている“コログ”という要素があるのだが、これもまた素晴らしいシステムだったりする。“コログ”がちょっとした崖の上や山頂、海に突き出た岬などに配置されていることで、マップを探索していて「無駄だった」と思うことがほとんどないのだ。
とはいえ、この手の話は言葉ではなかなか伝わらない(ですよね?)。なので、その“構造のすばらしさ”を図で表現すると、以下のような感じになるだろうか。
先日のインタビューでは、「300人による通しプレイ」が大きな話題になっていたが、このあたりの設計やバランスは、単にお金を掛けたからといってできるものではなく(もちろん、綿密に設計する時間があったればこそではあるが)、おそらくはディレクターなりプランナーなりが相当な議論と思案を重ね、このゲームデザインへたどり着いたのだろう。たとえばワールドマップをグリッド状に分割し、その各エリアに配置された各要素のバランスなどを分析したとしたら、今作がどれほど丁寧にレベルデザインされているかが、より具体的に見えてくるような気もしている。
と、ここまで書いてみて思ったのだが、ゲームにおける“テンポとリズム”の重要性は、多くの人にとっては、あまりピンと来ない話かもしれない。正直、筆者もつい最近までは、その重要性に気がついていなかった。
しかし、「ゲームの企画書」の取材をはじめとして、話を伺った一流のゲームデザイナーと呼ばれる人ほど、ゲームの“テンポとリズム”には徹底したこだわりを見せていることも、ぜひここでお伝えしておきたい話でもあったりする。とくに、ことデジタルゲームに限っては、ルールよりもシナリオよりもグラフィックスよりも、下手をしたらこの“テンポとリズム”こそが、最重要な要素なのではないかと、最近思えてならない。
これは、そうしたリズムなどとは縁遠く思える、テキストアドベンチャーゲームなどを想像すると解かりやすい。
たとえばサウンドノベル。『弟切草』を作った中村光一氏は、ボタンを押して出るテキストの早さ、タイミング、音などに徹底してこだわった話を幾度となくしていたし、『逆転裁判』なども、アドベンチャーゲームでありながら、ボタンを押す“気持ち良さ”を相当意識して作り込んでいるのは明らかだ。
『ドラゴンクエスト』のようなRPGにおいても、“テンポ”に関する話をたびたび聞く。たとえば、ウインドウが開いて選択肢を選ぶときの小気味よさの大事さ、戦闘のテンポ(選択時のピッという音、攻撃時のピリリッという音、そしてダメージ音などの、総合的なテンポ&リズム感)についての話を、これも中村光一氏から聞いたことがある。
思い返せば、おおよそ“面白いゲーム”には、プレイを進めていく(もっと言えば、ボタンを押していく)うえで“テンポとリズム”が悪いものはまず存在しない。人間にとって何かしら気持ちの良いテンポで物事が進み、気持ちの良いリアクションが返ってくる。その繰り返しが心地良いから、人はそのゲームに没頭してしまうのだ。
そう考えると、これまでのオープンワールドと呼ばれるゲームにおいて、その“テンポやリズム”をそこまで緻密に設計していたゲームが、はたしてどれほどあっただろうか? とも思う。もちろん、ほかのゲームでも、たくさんのミニクエストがあったり、アイテムが落ちてたりはしたのだが、何かそこまでの心地よさに繋がらなかったというか、むしろゲームのテンポを阻害する要素になっていたことのほうが多かったような気もする。
今回の『ゼルダ』が、なぜ多くの批評家たちからも絶賛され、「新しいオープンワールドの形を示した!」とまで言わしめるのか。個人的には、このあたりの“テンポとリズム”の話だったり、それを実現するための“構造”と各要素のバランス(密度)に、その理由の一端があるような気がしてならない。
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