電ファミで取り上げた記事のうち、直近1週間でもっとも話題となったゲームニュースを、ランキング形式でお届けしよう。TwitterとFacebookでそれぞれ人気だった記事のベスト20をリストアップし、気になる話題については、電ファミニコゲーマー編集長のTAITAIが解説していく。
各記事は電ファミ上にピックアップされてから24時間後の数値を集計調査。記事の“勢い”に着目している。
今週のランキング!(Twitter編)
今週のランキング!(Facebook編)
今週の注目記事!
Twitter 1位(15777件)
Facebook 7位(497件)
「Fate/Grand Order」がもたらす新しいスマホゲームの形――奈須きのこ×塩川洋介が語るFGOの軌跡と未来とは(画像は『Fate/Grand Order』の公式サイトより)
今週Twitterで1位、Facebookで7位となったのは、4Gamerに掲載され、圧倒的な勢いで拡散された『Fate/Grand Order』(以下、『FGO』)の記事だ。このインタビューでは、作品に込められた制作・運営の情熱や工夫などがひとしきり語られている。
いまさら言うまでもないが、『FGO』は、近年のスマートフォン用ゲームの中ではもっとも成功したタイトルのひとつだ。そしてその成功の背景には、『FGO』が取り組んだ“スマホゲームの常識”への挑戦が密接に絡んでいる。要するに、「スマホ用オンラインゲームでありながら、ガッツリと物語や世界観に浸れる」という、『FGO』以前のスマホゲームにはなかったスタイルへの挑戦だ。
そもそも、それまでのスマホ向けオンラインゲームの物語というのは、語弊を恐れずに言えば、非常に淡泊なものがほとんどだった。物語は、あくまでゲームのフレーバーとしての位置付けであって、それそのものを中心に楽しむものというものではなかったからだ。
当時の“常識”では、スマホ用ゲームにおける物語は、どちらかというとキャラクター(ガチャ)などと結びついて断片的な形で提供されることが多く、それがビジネス的にも相性が良いと思われていたのだ。
しかし、そんな中にあって、『FGO』はあえて“物語”をゲームの中心に据えてきた。
じつは『FGO』のスタッフへは、開発中に一度インタビューをしたことがある(取材自体はライターさんが立っていたので、僕は“同席していた”というのが正しい)のだが、シナリオを担当した奈須きのこさんなどは、スマホでプレイするゲームには、「スマホなりの物語の形があるはずだ」という主旨の問題提起を当時からしていた。さらにオンラインゲームでありながらも「終わりがある物語を作る」と明言していたのも、とても印象に残っている。というのも、これから始まるオンラインゲームの話で、スタート前から「終わりの予定がある」と宣言していた作品など、それまで聞いたことがなかったから、とてもびっくりしてしまったのだ。
奈須氏:
それもありますね。本格的に物語が始動するのは2015年になると思うのですが,やっぱり2015年に遊ぶからこそ意味があるゲームを作りたい。2016年には過去のものになってしまうとしても,振り返った時に「2015年にはあのゲームがあったね」と言ってもらえるような,唯一性のある娯楽を提供したい。
4Gamer:
つまり,本作はきっちりと終わりのある物語ということですか?
奈須氏:
2015年で完結させるつもりです。RPGとしていいものにするというのは勿論ですが,同時に明確な終わりを設定することにも意味があると考えています。
※2014年10月のインタビューより。
いま読み返せば、この発言の企図するところは非常に納得できるわけだが、一方でこの内容は、当時の“スマホゲームの常識”ではあり得ないものだった。プレイヤーが楽しむのは、あくまでゲームのメカニクス(コレクション、育成、攻略)であって、骨太な物語などではない。スマホゲームはカジュアルに遊べることが大切で、プレイヤーはそんなもの(重いコンテンツ)は求めていない──そういう声のほうが主流だったからである。
しかし、結果は、読者の皆さんも知るとおり。
『FGO』は、『Fate』シリーズらしい重厚感ある物語をプレイヤーに体験させつつ、さらにそれをオンラインの“ライブ感のある形”で提供してみせた。2016年の年末には、さまざまなイベント/レイドバトルなどを経ながら物語が堂々と完結し、大反響を呼んでいたのは記憶に新しい。雑誌で人気マンガのストーリーをみんなで共有するように、アニメやドラマの放送で、その物語の行く末をドキドキして待ち望むように、『FGO』は、オンラインゲームという形で新しい物語体験のありようを提示してみせたのだ。
数あるスマホ用オンラインゲームの中にあって、なぜ『FGO』が成功に至ったのか。それも、なぜこれほどの熱狂をもって受け入れられているのか。──それは、現代に即した物語体験のありようを開拓してみせたからではないか……と思う次第。本作の成功と、それに至る挑戦には、あらためて称讃を贈りたいと思う。って、なんかエラそうですいません。
さて。最後に少し余談なのだが、2014年の時点での奈須氏の「一過性のある娯楽を提供したい」、「明確な終わりを設定することにも意味がある」という発言は、別の点からも非常に示唆に富んでいる。というのも、昨今、音楽やアニメなどといったジャンルが、それまでのパッケージビジネス(CDやDVDを売る行為)から、ライブ活動などを中心としたビジネスに大きく軸足を移しつつあるからだ。
この流れは、それこそYouTubeのようなものも含め、これだけコンテンツが溢れかえる世の中で、人は何に対して価値を感じるのか(お金を払うのか)という問題への回答でもある。この“ライブ感”や“一過性”というものは、昨今のエンターテイメントの潮流の中で、大きなキーワードとなりつつある。
「人は希少なものに価値を感じる」というのは、ドワンゴ(というか、弊社だ)の川上量生さんの言だが、今後はゲームの世界でも、この一過性の体験というものの価値が、どんどん高まっていくのではないかという気がしてならない。『FGO』は、そうしたエンターテイメント全体の流れを敏感に感じ取った“最先端の事例のひとつ”だと見ることもできる気がする。今後は第1.5部、そして第2部へと続いていくとのことだが、そこでどんな仕掛けを盛り込んでくるのか、いまからその展開が楽しみである。
というわけで、今週気になったゲームの話題はここまで。また来週!