タイトル名:Mesmalie
プラットフォーム:PC(Steam、itch.io)
開発元:Rain (orbitaldot)
販売元:Rain (orbitaldot)
発売日:2026年7月10日
価格:1,150円
日本語:未対応
概要:変な夢から目覚めたら、アパートが業火につつまれていた。あなたは新聞広告をたよりに、「どこでもない場所」に建つ魔女の家を訪ねる。出てきたのは、魔女「メスメル」──この女、明らかにやばい。
古めかしいポイント・アンド・クリックと思いきや……
記号的ではあるが、じゅうぶんに人間の室内だとわかる画像のなかに、種々のオブジェクトがある。
あなたはマウスを操作して、それらのオブジェクトに触れる。
すると、主人公の反応や感想がテキストで表示される。ポイント・アンド・クリックだ。じつに古めかしい。
あらわれている画面が主人公の視界だとすれば、すこし認識が歪んでいるのではないかと思われるが、そもそもこれはビデオゲームだし、時計は時計とわかる。ベッドはベッドとわかる。お星様は「Star」とわかる。
「Star」は天井(天上?)に五つあるが、そのうちひとつは米印ではなく、Z印に輝いている。
それはマウスポインタをホバーさせたときにあらわれる「Ztar」という一般名詞の表示からも、あきらかなことだ。
床を見ると、液体をこぼした跡がある。
クリックすると、
「(誰かが液体をこぼしたのだろう。)」
とテキストが出る。
たしかに、そうにちがいない。なぜならば、こぼした跡のそばにあるZをクリックすると、「(誰かがZをこぼしたのだろう。)」とテキストが出るから。
だから、この主人公の推論の能力に問題はない。
外に出る。木が生えている。クリックする。
木だ。そのとおり。
しかし、その木のうしろにいたものは?
室内にもどる。ラッパのついた蓄音機がレコードの音楽を奏でている。クリックすると、
「針を動かして、曲を変えますか?」と出る。イエス。
ラッパのついた蓄音機が用いられていた時代には、まだ存在しなかったはずの音楽、遠くかすれたヘビメタが、微妙にフェイズをシフトしながら流れだす。
窓枠に鳥がとまる。
鳥がしゃべりだす。
「おれはあんたの家のすぐそばの木に住んでるもんだ。
なあ、おたく、ちょっと音量を下げてくれないか。
おれはいいんだが、家族が寝られないんだよ。わかるぜ。おれも、たまには音楽をフル・ボリュームでかけて、踊りまくりたいときがある。
できれば、あんたにもそうしてほしいと思う。しかし、近所づきあいってもんだ。こっちとしても、音楽を止めてくれって言ってるんじゃない。ただ、ちょっと音量を下げてくれって言ってるんだ。
わかるよな?」
あなたはもっともだと思い、蓄音機をクリックする。
すると、蓄音機が消失する。
一瞬の静寂ののち、鳥が言う。
「なあ、あんた、そりゃ、やりすぎってもんだよ。おれは音量を下げてくれって言っただけで、蓄音機をこの世から消せって言ったわけじゃないぜ。
それ、けっこういいものだったろ。いつか、おれもほしいなと思ってたんだ。なんだか、こっちまで悪い気がしてきたよ。
ところで、あんたのそれ、MAGICK(魔術)じゃないのか。」
あなたは室内のオブジェクトをもういちど、片っ端からクリックする。
と、それらは消失する。
ベッドも時計も、「Star」も「Ztar」も、床のしみも床のZも、なにもかも、あなたが触れるものはすべて、消失する。
ほかのすべてのものを消失させたあと、なにも起こらないので、あなたは窓枠の鳥をクリックする。
鳥が消失する。
消失したデジタル時計の液晶の文字が赤く点滅し、アラーム音がけたたましく鳴る。
止めようにも、すでに時計は消えている。
あなたはパニックに陥りながら、その時計をなんどもクリックするが、なにも起きない。
そこに時計は存在しない。
かわりに、ごおーっ、というノイズが、だんだんと大きくなってくる。
「目覚める」のボタンがあらわれる。
場面が転換し、布団をはねのける音とともに、あなたは目覚める。
あなたが眠っていたアパートメントは、業火につつまれている。
このゲームでは、いつでも「逃げ出す」ことができる
以上が、『Mesmalie』というゲームの、冒頭のあらましである。
このあと、主人公は新聞に出ていた奇妙な広告をたよりに、「どこでもない場所」(middle of nowhere)【※】にぽつんと建つ、魔女の家を訪れる。
※「どこでもない場所」というのは、英語における慣用句で、「人里離れた場所」くらいの意味。べつにMagickalな亜空間ではない。
その広告は、とつぜん魔術的な力が目覚めてしまった市井のひとびとにむけて、わたしたち魔女団がその力の使い方を教えます、という、慈善的な性質のものだ(それにしては、「プリーズ・コール・プリーズ」。「電話をかけて〈ください〉〈オネガイ〉」と、頼み込むようなところが、へんだが)。
しかしとにかく、あなたは「どこでもない場所」にぽつんと建つ、魔女の家まで、来てしまった。
なんだか、ぶきみなところだ。あまり近づきたくない。
そう思って、画面をあらためて見ると、左上に、走っているひとのピクトグラムが表示されている。
マウスポインタをホバーさせると、「逃げ出す」とある。
クリックし、ホールドしてみる。
画面が転換し、テキストがあらわれる。
「あなたはどこでもない場所まで足を運んでおきながら、きびすを返して去った。
きょう、あなたは力の使い方(アビリティ)を学ばなかった。」
それで、章選択の画面にもどる。
なるほど、このゲームにおいては、いつでも「逃げ出す」ことができるらしい。
それならば、安心だ。
あなたは一軒家に近づき、ドアをノックする。
半開きの影から、女がこちらをのぞく。
電話をくれたひとかしら、といった質問がある。そこからつづく会話がある。それは選択肢による。
どれを選んでも、彼女はよく喋る。
ただ、ひとつだけ。
あなたが嘘をつくと、そのドアは閉まる。
そして、もう二度と、なにも起こらない。
「逃げ出す」のコマンドを、選ばざるを得なくなる。
変な夢をみて目覚めたら、アパートが火事になっていたこと。新聞広告をみて、電話をかけ、アポをとった者であることを、正直に告げると、彼女はあなたに力の使い方を教えることを快諾し、扉を開き、あなたを迎え入れる。
その家のリビングには紫色の瘴気が漂っている。
自己紹介がはじまる。





