※本記事はメインストーリー第3部のネタバレを含みます。なお、本取材は8月中旬に実施したものです。
長く続くタイトルほど、物語を着地させることは難しくなる。積み上げてきたキャラクターも、伏線も、ユーザーの思い入れも、年数とともにすべてが重くなっていくからだ。
2018年2月15日から配信中の『プリンセスコネクト!Re:Dive』。8.5周年を迎えたこのタイトルのメインストーリー第3部が、ついに完結を迎えた。
ただし、これはただの「第3部の完結」ではない。問題を残したまま幕を閉じた第1部、第2部とは違う。すべての発端だった「ミネルヴァの懲役」【※】に決着をつけ、ハッピーエンドで世界を救う。本当の意味での大団円だ。
※『プリコネR』作中の登場人物たちが、ゲーム「レジェンドオブアストルム」の世界からログアウトできなくなってしまった事件を指す。
そのフィナーレを飾るべく用意されていたのは、まさかのほぼ全キャラ個別エンドだった。100人を超えるヒロイン、その全員ぶんである。8年半をかけて出会ってきたなかから、ひとりを選ぶ。感慨深い思いを抱いた騎士くんも多いだろう。

この節目にあたり、電ファミニコゲーマーでは『プリコネR』開発陣へのインタビューを実施した。シナリオディレクター、コンテンツディレクター、アートディレクター、背景担当と、ゲーム開発のなかでも役割の異なる4人が、ひとつのテーブルに揃った。
話をうかがっていて浮かび上がってきたのは、『プリコネR』がユーザーの感情を大切にしながらイベントや施策を設計してきた、ということである。
たとえば、シェフィの帰還。第2部エンディングの別れから復活までの約1年半、開発陣はシェフィの姿が出ることをゲーム外の展開まで含めて控えていた。
「本当にいなくなってしまったのではないか」という不安の中、満を持して「おかえり」を描きたい。そのための我慢だった。
長く親しまれてきた姿を大きく変える大人コッコロの登場も同様だ。「100パーセントの肯定はまず実現不可能」と最初から予想したうえで、それでも成長を描くために覚悟を決めて世に出したという。
どちらも、ユーザーがどう感じるかを起点にした判断だった。
8年半という時間をかけて積み上げてきた感情に、どう区切りをつけるのか。作り手たちが第3部の完結に込めたものを、開発裏話とあわせてたっぷりと語ってもらった。
取材・文/竹中プレジデント
第3部のフィナーレを飾ったのは、ほぼ全キャラの個別エンドと、ギルドごとの描き下ろしエンドロール
──本日はよろしくお願いいたします。メインストーリー第3部が、いよいよ完結を迎えます。開発を進めるなかで「ここで区切りがついた」と感じた瞬間は、どこだったのでしょうか。
コンテンツディレクター:
完全に「ひと切り」と言えるかは、微妙なところですね。今も第3部に関連する制作物がすべて片付いたわけではなく、細かい事後処理のような作業がポツポツと残っています。
ただ、大きな区切りとしてはふたつありました。そのひとつが、8月16日から実施される【※】特別イベント『エンド・ヴィジョン -幻竜争覇戦-』のエンディング制作を終えたことです。じつは今回のイベントには、特殊な事情のキャラを除いたほぼ全ヒロインの個別エンディングを用意したんですよ。
※取材はレイドイベント実施前。
シナリオディレクター:
レイドイベント自体はこれまで何度も実施しているので、毎回少しずつ「味変」をしたいと考えていました。
今回は第3部の目玉となるレイドですし、ユーザーのみなさんもきっと「自分の推しと気持ちをひとつにして戦いたい」と思ってくださるはずだと。その期待に応えられるように作りましたが……大変でしたね。
コンテンツディレクター:
100を超えるキャラ数ですから、当然ものすごいボリュームになりました。
膨大なテキストを手分けして執筆・監修していると、人間なのでどうしてもクオリティがバラついたり緩んだりしてしまいかねない瞬間があります。でも、そこは絶対に守らなきゃいけない部分でした。キャラクターひとりひとりを愛してくださるユーザーさんに向けて、最高に満足していただける個別エンドを用意するためです。
そうやって気を引き締めながら進めていると、逆に求めるラインが上がってくる感覚がありまして……。最終的には、初期に手がけたキャラクターのシナリオを、後から書き直したこともありました。
──では、もうひとつの区切りというのは。
コンテンツディレクター:
もうひとつの大きな区切りが、エンドロールのイラスト制作です。これが結構な作業量でした。
全ギルド分、それぞれに個別の1枚絵を用意したんですが、それが20枚……いや、30枚近くありました。それらがすべて完成したとき、ようやくひと区切りついた感覚がありましたね。
アートディレクター:
そうですね。その時点ではすでに第4部の制作が動き出していて、ほっとする間もなく「次を作らなきゃ」と頭を切り替えていました。
ただ、完成したエンドロールを見たときに初めて、「ああ、第3部がここで完結するんだな」という実感が湧きました。
「せっかくなら第1部、第2部も含めて、これまで登場してきたキャラクターたちを見せたい」と、全ギルドの姿を描くエンドロールに
──エンドロールの制作を振り返って、いちばん頭を悩ませたのはどこだったのでしょうか。
アートディレクター:
いちばん難しかったのは、「構成」の部分ですね。ここはかなり初期の段階から話し合っていました。
当初は、第3部の物語を絵本のような形で振り返る、ダイジェスト的な内容を想定していたんです。ただ、それだと登場するキャラクターがどうしても第3部に関わったメンバー中心になってしまいます。
そこで当時他のメンバーとも話し合って「せっかくなら第1部、第2部も含めて、これまで登場してきたキャラクターたちを見せたい」という話にもなり、構成を大きく見直しました。
最終的には、第3部の物語を終えたあとの世界で、各ギルドのキャラクターたちがどのように過ごしているのか、その後のエピソードを見せていく現在の形になりました。
そうなると全ギルドぶん、そのキャラたちが今どうしているのかをすべて考えることになります。そして、それをどの順番でユーザーさんにお届けしていくか。その構成の部分ではかなり悩みましたね。
──並び順は、どういった方針で決めたのでしょうか。
コンテンツディレクター:
これがちょっと複雑なんです。ざっくり言いますと、エンドロールはこれまで描いてきた第1部、2部、3部を、終わりから遡っていく形になっています。第3部のキャラたちからスタートして、2部、1部へ遡るのが基本の流れですね。
ただ、単純にそれだけだと単調になってしまうので、ところどころ入れ替えています。たとえば最初期からいるキャラクターでも、第2部や3部の物語の中で目立った子だったら、そこのパートに入れ替えてみたり。
──明確なルールがあったわけではないんですね。
コンテンツディレクター:
そうですね。あとは、楽曲の曲調に合わせた部分もあります。今回、エンドロールのテーマソングとして、第3部、2部、1部、さらに前作の楽曲まで全部を繋いだメドレーを新規で制作しているんです。
会議室のテーブルにみんなで集まって、「こうじゃないか、いや、こうじゃないか」と何度も入れ替えましたよね。その曲の雰囲気に合わせて、「ここはちょっとフワッと明るくなる感じがあるから、【聖テレサ女学院(なかよし部)】が合いそうだ」といった具合に決めていきました。
アートディレクター:
ありましたね。曲を聴きながら、パズルみたいなことをしていました。
コンテンツディレクター:
じつは最初の最初は、1キャラ1枚ずつイラストを用意しようとしていたんです。本当は、そうしたかったんですが……そのまま作っていたら、数十分のエンドロールになってしまうので、泣く泣くギルド単位にしました。
「第3部だから3つの世界」で決まった裏世界。1年にひとつ描く予定が、気づけば背景チームは3世界同時並行で作ることに
──ここからは「ここが私のベストオブ・レジェンド オブ アストルム」と題しまして、みなさんの印象に残っているシーンをお聞きしていきたいと思います。まずは、背景を作るお立場から挙げるとしたら、どのシーンになりますか?
背景担当:
私がいちばん印象に残っているのは、第3部の冒頭で「ジオ・テオゴニア」に降り立つシーンですね。
じつは第3部では、3つの世界を同時並行で作っていたんです。タイトなスケジュールのなかで、さまざまなフィードバックをもらいながら、苦労してようやく完成した世界でした。それが、空から舞い降りるようにして、その世界が目の前に広がるんです。
今までの「アストルム」とはまったく異なる世界観を、あの場面でお披露目できました。ユーザーさんに新しい世界をお見せできたという達成感があって、個人的にはベストシーンだと思っています。
──作り手としてだけでなく、いちプレイヤーとして触れたときにも、特別なものがあったと。
背景担当:
ちょっとくるものが……ありましたね。これまではどうしても「ランドソル」を中心に冒険していたので、「ついに新しい世界に足を踏み入れたんだ」と実感できる部分は、第3部ならではの魅力だったと思います。
コンテンツディレクター:
そもそも、あの「3つの裏世界を作る」という構想っていつ決まったんでしたっけ?
シナリオディレクター:
初期段階であがっていたと思います。当時のプロデューサーが「第3部だから3つの世界」と言っていて、ひとつの世界にだいたい1年、それを3年ぐらいかけて描いていこうという形でスタートしました。
アートディレクター:
ところが蓋を開けてみたら、背景としては1年にひとつ順番に作るんじゃなくて、「3つの世界を同時に並行して作る」ことになりまして。あのときは思わず「えっ!?」と声が出ましたね。
──第3部に登場する3つの世界は、どういったところから設計していったのですか。
アートディレクター:
第3部の背景に関しては、「裏世界」という形で3つの舞台が現れます。これまでの「ランドソル」とは違う新しい世界なので、まず3つのコンセプトを考えるところから始めました。
そこから実際の設計に入るのですが、世界観がまったく違うので、気候や天体の設定など、そういった根本の部分から組み立てていくんです。
だから第3部の最初の背景は、単なる見た目のデザインだけではなく「この世界にはこういう特徴があって」という根本の設定から考えてもらい、そこから描き起こしてもらった形になりますね。
背景担当:
とにかく、どんどん案出しをしていましたね。
コンテンツディレクター:
思い返すと、「ジオ・テオゴニア」は3つの世界の中で、いちばんコンセプトアートのリテイク数が多かった気がするんですが……どうでしたか?
背景担当:
やはり第3部で最初の世界だったというのもありましたから、多かったですね。「キャッスル・オブ・パルフェ」をはじめ、空の色合いをどうするか、お菓子の要素をどう馴染ませるかなど、かなり議論を重ねました。
──「ジオ・テオゴニア」の制作にあたっては、どういったテーマのオーダーがあったのでしょうか。
背景担当:
お菓子であったり、カラフルであったり、という方向性です。第2部がシリアスなエンディングだったので「そのギャップとして明るくしてほしい」というお話もありました。ですので「明るく、冒険感あふれるような」といった部分をテーマとして制作させていただきました。
コンテンツディレクター:
そのうえで、もうひとつ要素を追加してもらいましました。一見するとメルヘンな世界が広がっているじゃないですか。ただ、ワールドマップ画面で背景の端のほうに目を移すと……。
──そう言われて見てみると、なにやらノイズのような表現が……。
背景担当:
裏世界がテスト環境であることを表す、グリッチ表現ですね。
シナリオディレクター:
設定書の時点で「開発環境のような場所」と決まっていたので、表の世界よりも不安定な表現をどこかには入れよう、と。純粋なファンタジーというより「ゲームの中の世界」であることをずっと意識して作っていましたよね。
★3イラストもアニメーションも、細部までリテイクを重ねた「シェフィ帰還」
──続いて、アートを作る立場から見て、いちばん印象に残っているシーンはどこですか?
アートディレクター:
私はやっぱり、ベタかもしれませんが「シェフィ帰還」ですね。制作にもものすごく力を入れましたし、私自身もいちファンとして楽しみにしていたイベントだったので、感慨深かったです。
ここはアニメーションにもこだわろうと、アニメチームと密に連携しました。いろいろと協力してもらって、見栄えのするものに仕上がりました。
★3イラストについても、担当スタッフに本当にがんばってもらいました。私のほうからもフィードバックをしながら、すごく細かいところまでリテイクを重ねていったんです。
「表情のこういうニュアンスを、もう少しこんな感じで」と。私自身も一緒に涙するような気持ちで、「泣いているんだけど、ちゃんと笑顔で」という絶妙な表情のニュアンスを追求して。だからこそ、作るものひとつひとつに愛情を込めて形にできたかなと思っています。
──帰還のタイミングでXに投稿された描き下ろしイラストも、かなり反響がありました。
アートディレクター:
あのイラストはもともと別の形での公開を予定していてラフの状態までは制作が進んでいたのですが、いろいろと予定の変更があった影響で公開を一度保留していたんです。
でも、この帰還のタイミングにあわせて何かできないかと思ったときに、「そうだ、あのラフがあるじゃないか!」と思い出して。急遽、イラスト担当のメンバーに「これ、ちょっと完成させて出したいです」とお願いして仕上げてもらいました。
シェフィの帰還を記念して、【美食殿】の4人の描きおろしのイラストをお届け!
— プリンセスコネクト!Re:Dive公式 (@priconne_redive) August 26, 2024
さらに、こちらのイラストを使用したカスタムマイページをみなさんにお贈りします!
ゲームにログインして、プレゼントボックスからお受け取りください♪#プリコネR #おかえりシェフィ pic.twitter.com/i3MgiOYb2j
──それだけ思い入れがあったと。
アートディレクター:
私自身、このプロジェクトに入って最初に描いたのがシェフィだったんです。
たしか3周年のときのお祝いイラストで、【美食殿】を描いていて、そのときに初めてシェフィを描いて、立ち絵も私が担当していました。そのあとは基本的に監修業務を担当することになったので、ゲーム内だと私の最初で最後の作画なんです。
──シェフィ帰還については、離脱してから戻ってくるまで結構な時間があり、ユーザー的にも待ちに待った瞬間でした。
コンテンツディレクター:
シェフィが離脱してから、復帰までは約1年半の期間がありました。私たちとしては、そのぶん「おかえり」という感情を極力最大化したかったんです。
あの期間はあらゆる場所でのシェフィの登場を我慢していました。ゲーム外の展開も含めて徹底していたんですよ。
ユーザーのみなさんの中にも「シェフィは本当にいなくなっちゃったんじゃないか」「もしかしたらもう帰ってこないのかもしれない」という不安な気持ちが膨らむなかで、満を持しての帰還を描きたいなと。正直なところ、作り手である私たちとしても苦しかったです。
たとえば、TVCMで「誇張しすぎたモノマネ」を公開したのですが、シェフィ不在期間だったので、我慢して、残る【美食殿】の3人だけでCMを作りました。シェフィからすれば、むしろ助かったのかもしれないですが(笑)。
──(笑)。そもそもシェフィは第2部で新キャラとして入って、最初は「敵かもしれない」という見えかたでしたよね。
シナリオディレクター:
シェフィについては、シナリオ的な観点でいうと、大変なキャラでした。
というのも、第2部の時点では【美食殿】3人の関係性ができあがっている状態だったんです。そこに新キャラを馴染ませるのは難しかったですね……。その悩んだ結果が、あの「赤ちゃん化」でした。














