ヤベー女を見つけてしまった。
それが、筆者が『AKIBA LOST』をプレイし始めて早々の感想でした。
その女は、皆さんの目の前に突然、ド派手な衣装をまとった“マジカル小学生”と自称する形で現れます。
なんかマジカルなステッキでポーズを取りつつ、決め台詞なんかも言ってきます。
おそらく皆さんも、「ヤベー女だ」と思うでしょう。
思わずドン引きして、目線を合わせないようにそっと立ち去ろうとするかもしれません。
ですが、幸か不幸か本作『AKIBA LOST』は現実ではなく、ノベルゲームです。目の前にヤベー女が出てきても、そそくさと脇を通り抜けるわけにはいきません。プレイヤーは否応なく、そんなヤベー女こと遊佐若菜(ゆさ わかな)の物語を読み進めることになります。
やがて筆者はこの痛々しくもヤベー言動に釘付けになり、気づけば視線はずっと若菜ちゃんを追いかけて……だんだんと、彼女の魅力がわかっていきました。
この女、一見ヤベー女に見えて、ただヤベーだけではない。その狂気的な行動の裏には、“オタク”なら誰もが身に覚えのあるだろう「コンテンツに救われた」という経験と、切実な「かつての親友」への熱い想いが込められていたのです。
推せる……いや、推させてくれ!
というわけで本稿では、ミステリー実写アドベンチャーゲーム『AKIBA LOST』に登場する“ヤベー女”若菜ちゃんの魅力を全力で布教……もとい紹介させていただきます。
※本稿には、『AKIBA LOST』の内容に関する一部ネタバレが含まれます。気になる方は、プレイ後にお読みください。
※この記事は『AKIBA LOST』の魅力をもっと知ってもらいたいイザナギゲームズさんと電ファミ編集部のタイアップ企画です。
ヤベー女のヤベー話を知るほどに沼っていく……何だこの感情は!? ~恥ずか死から尊死へ~
冒頭からヤベー女こと若菜ちゃんのヤバさをお伝えしたいのはやまやまなのですが、まずは軽く『AKIBA LOST』という作品がどういうものなのかを紹介させてください。
本作は、かつて秋葉原で発生した連続失踪事件「アキバの神隠し」の真実に迫る群像劇スタイルの実写アドベンチャーゲームとなっています。作中では、かつてアキバの神隠しによって家族を失った新城と、彼の制作するゲームに携わる6人の女性キャラクターの視点を切り替えながら、物語を進展させていくことになります。
筆者の心を奪ってしまった若菜ちゃんもまた、新城氏の制作するゲームにかかわる女性のひとり。ゲーム序盤、新城氏は自身が制作するゲームのため、キャストや制作陣を集めた食事会を開きます。
和気あいあいとした空気の流れるなか、新城は自作のシナリオを女性たちに配り、その感想を聞き出そうとするのですが、そこに……
様子のおかしな人です!!
コスプレ衣装特有の、異様な光沢を放つ服に身を包んだ女性が、突然の決めポーズ&技名乗りを炸裂させます。
唖然とする一同。空気は完全に凍り付き、見ている方も身がすくむ!
しかし彼女は周囲の人間やプレイヤーから放たれる冷たい視線をものともせず、フルパワー全開!
渡されたシナリオが最高であることと、自分がいかに「リリカ」になり切れているかを熱弁!

目が怖いよ!!
完全にキマっています。どうやら彼女は、十数年前に放送されたアニメ『マジカル小学生リリカ』の大ファンであり、主人公であるリリカのコスプレを年中無休でやっているとのこと。
間違いなく、ヤベー女です。リリカのコスプレ衣装でのゲーム出演を了承した新城氏もどうかしています。
興奮状態の若菜ちゃんは、その勢いをゆるめることなく、自分の好きを爆発させていきます。具体的には、その場でポーズを取り始め、リリカの技をすべてお披露目しようとしてくるのです。
あまりの勢いに、おもわず新城氏も隙を見て逃げ出してしまいました。気持ちはわかりますが、キャストしたのもコスプレでの出演を許可したのも新城氏だということを思えば、自業自得という感じもあります。
とまあ、このような近年稀にみるインパクトとともに、プレイヤーはリリカもとい若菜ちゃんとの出会いを果たします。正直、この時点での筆者は見ているだけで恥ずかしい、俗に言う共感性羞恥的なものに襲われ、全身がぞわぞわとしていました。
しかし一方で、彼女から目を離せない自分もいたのです。何を隠そう、筆者もまたオタクのひとり。自分の“好き”を貫き、全身全霊でそれを表現している若菜ちゃんの行為は、ドン引きする一方で強烈なまぶしさを放ってもいます。
「他人の目を気にせず、ここまで自信をもって好きを叫べたら、きっと気持ちがいいだろうなあ」と考えてしまう自分がいるのは、誤魔化せない事実でした。まあ、若菜ちゃんはどう考えてもやりすぎですが……。
そんな鮮烈すぎる登場シーンで幕をあけた若菜ちゃん。彼女の特徴は、とにかく精神が強いこと。ド級のメンタル。ドメンタルの持ち主です。
恐ろしいことに、彼女は日常生活のすべての局面において、リリカのコスプレをし続けているのです。たとえば、仕事。
コスプレ姿のまま、海外客向けのツアーガイドをやっています。若菜ちゃんは帰国子女とのことで、英語もペラペラ。オタクカルチャーの体現者とでも見られているのか、お客さんに大好評なのは救いです。
このように、日常生活のあらゆる場所でコスプレを貫く若菜ちゃんの「リリカのコスプレ」に懸ける想いは尋常ではありません。彼女がコスプレ衣装を脱ぐ数少ない場所である自宅であっても、若菜ちゃんは頻繁にアニメ『マジカル小学生リリカ』を観返し、細やかな作画へ新鮮に感動し、そのポージングの精度をさらに高めようとしています。
指先の小さな動きにいたるまでワンカットごとに確認し、イメージトレーニングも欠かさない。その執念は、ある種異様なものを感じます。一体、なぜ彼女はそこまでコスプレに、それも「マジカル小学生リリカ」のコスプレに執着し続けるのでしょうか?
今にして思えば、この疑問を抱き、その答えが気になって仕方なくなってしまった時点で、筆者は若菜ちゃんの虜となっていたのかもしれません。
なぜ、彼女は人生をコスプレに捧げるのか? その奇行に秘められた想いを知った時、あなたもきっと「若菜ちゃんガチ推し」に変わる!(かも)
彼女が心酔する『マジカル小学生リリカ』は十数年前のアニメ。当時は爆発的な人気だったとはいえ、いつまでもそのコスプレを続けるのは限界があると思います。
筆者も「リリカじゃないコスプレも見てみたいな…」とチラッと思いましたからね。
しかし、彼女のコスプレはあくまでもリリカ一筋。イメージトレーニングにも余念がなく、初の写真集を出す時もリリカコスのみを収録するというのですから、筋金入りです。
この行動は、彼女の周囲にいる人間から見ても不可解であるようで、ある日、仕事仲間であるカメラマン・肥満田(こえまんだ)氏から、やんわりと「新しいコスプレにも挑戦してはどうか」と提案されます。その意見の正しさは理解しつつも「それは出来ない」とばかりにスタジオを飛び出す若菜ちゃん。
大切な仕事仲間である肥満田氏とすれ違ったままでいたくない。
だが、リリカを捨てることはできない……。
彼女の心は千々に乱れます。
なぜなら、彼女にとってリリカのコスプレは、過去に失った親友に当てたメッセージでもあるから。
ここでようやく、若菜ちゃんがリリカのコスプレに執着し続ける理由が明かされます。
子供の頃、帰国子女だった若菜ちゃんには友人がいませんでした。
日本の学校で一人寂しい思いをしていた彼女でしたが、『マジカル小学生リリカ』を通じて、ひとりの友人ができます。リリカの話で盛り上がり、唯一心を開いた親友……。
しかし親友は13年前の「アキバの神隠し」に巻き込まれ、消えてしまったのです。
どこかへ消えてしまった彼女に「世間が事件を忘れても、まだ自分は貴方を忘れていない」ことを知らせたい。もし、どこかで彼女が生きていれば、この姿を見て会いに来てくれるかもしれない。
そんな淡い希望を抱いて、若菜ちゃんはリリカのコスプレを続けていたのです。
そ、そんな……。ただの24時間コスプレ状態の大迷惑ヤバ女じゃなかったのか、若菜ちゃん……!!
この時点で筆者はガンギマった目でリリカの魅力を語るヤベー女としての若菜ちゃんと、その内心に秘められた切実な願いのギャップに胸を打たれていたわけですが、輪をかけて素晴らしいのは、彼女のコスプレは親友へのメッセージであるのと同時に、彼女が作品へ向ける愛そのものでもあり、どちらも譲れない、大切なものであるということです。
現在のつながりである肥満田と、過去のつながりである親友。その狭間で揺れる思いに悩みつつも、自宅に戻った彼女は、リリカの使う回復魔法、「リリカルケアルーン」を唱えます。
唱えながら、ぽろぽろと涙をこぼし続けるのです。

クセが強いだけの痛いコスプレイヤーだと思っていた彼女が、華やかな衣装の中に親友への切ない願いを込めていることがわかってしまうと、もうダメ。
けなげすぎて……その思いが報われるか分からないのも、つらすぎて……。
そんなん……もう……応援するしかないですやん!!
若菜ーーーッ俺だーーーーッ結婚してくれーーーッ!!
(脊髄反射でパッションを軽率に叫ぶ大げさオタク仕草)
若菜ちゃん推しには、偉大なる“先達”がいた! 彼女を支える頼れすぎるバディ、いにしえオタクの煮凝りカメラマン・肥満田三郎
と、このようにして筆者は立派な「若菜推し」になりおおせたわけですが、本作には筆者よりもずっと早く、身近な距離で、若菜の魅力を理解し彼女を支え続ける“先達”がいます。
その名も、肥満田三郎。さきほど仕事仲間としてちょろっとだけご紹介していた肥満田氏その人です。

彼は懐かしき「いにしえオタク」の容貌をしており、バンダナ・指ぬきグローブ・チェック柄・眼鏡・ウエストポーチでオタクファッションのロイヤルストレートフラッシュ!
「~ですぞ」などという言い回しも含めて、いにしえのオタク仕草満載。
彼はコスプレイヤーにはつきもののカメラ小僧(カメコ)であり、若菜ちゃんと同じく『マジカル小学生リリカ』のリリカファンであるという「同志」であり、若菜ちゃんの写真集を作るための仕事仲間でもあります。互いに敬意を払いつつも、同好の士として気の置けない関係で交流する様子にはホッコリするのですが……。
肥満田氏の若菜ちゃんアゲが群を抜いているのです!
巨体で転がりながら「至福の極みでござる!」「最高ですぞ!」と奇声をあげてシャッターを切る姿は、公共の場ではなかなかに厳しいものがあります。周囲の人たちがドン引きするのも、無理ないことでしょう。
ですが、若菜ちゃん推しとなった筆者には、彼のすごさがビシビシと伝わってきます。彼もまた、若菜ちゃん推し。それも、筆者などとは比べ物にならないほどのツワモノ!
もちろん、我らが若菜ちゃん推しの先達である肥満田氏は、ただ転がって写真を撮るだけの迷惑なカメコではありません!
作中で肥満田氏が若菜ちゃんを撮影し、出来上がった写真を見た若菜ちゃんが「もっと大胆で変化のある写真が欲しい」と率直な意見を出したときのこと。
現場撤収の時間が迫っていたにも関わらず、肥満田氏はその意見を考慮し、「自分がもっと動くことで写真に躍動感をあたえる」と途轍もない解決策を申し出ます。
仕事人としてもしっかりした面を見せてくれる彼は、若菜ちゃんの仕事仲間としても頼もしい! 頼れるシゴデキ人間、みんな好きだろ…?
そして実際にグイグイ動き回る! この躍動感!
……この体格で「動けるタイプのオタク」なの、純粋にすごいな。
肥満田氏が新スタジオを立ち上げた時も、一番最初に若菜ちゃんの撮影会を開催。自らも参加し、(奇声を上げながら)若菜ちゃんのベストショットを撮りまくってくれる!
リリカコスプレにこだわる若菜ちゃんに苦言を呈した時だって、今後、世界に羽ばたくであろう若菜ちゃんの未来を、より高みに引き上げたいからこその進言! (だからこそ、若菜ちゃんも悩みぬくんですよね……)
という具合に、とにかく彼は「陰日向なく若菜ちゃんのために体を張る男」なのです(菩薩かな?)。彼の滅私奉公スタイルがあまりにも完璧すぎて「そこ代わってくれ」とも言いづらい……!
むしろ「若菜ちゃんをずっと支えてあげてくれ!」と懇願したくなります。
トップオタクって、きっとこういう人のことを言うんでしょうね。

















