日本を代表するロックバンド、ONE OK ROCK。その名は誰もが聞いたことがあるだろう。そんなメジャーバンドでベースを担当するRyota(リョウタ)さんが、ゲームを制作したという情報が電ファミ編集部に寄せられた。
連絡をしてきたのは、Epic Games Japan。そう、Ryotaさんは『フォートナイト』で島(クリエイティブマップ)を制作したというのだ。
島の名はMelty Island(メルティ アイランド)。なぜ、世界的なロックバンドのベーシストがクリエイティブマップを作ったのか? その疑問の答えを求め、電ファミ編集部はRyotaさんへのインタビューを6月某日に実施した。
インタビューから明らかになったのは、『フォートナイト』を通じて「埋もれている若い才能が輝ける場所を作る」というRyotaさんの信念。そして、開発費をすべてRyotaさんが出していることで実現した「好きなものを作る」ということだった。
ちなみに、インタビュー中に実機プレイで島を見せてもらったのだが、こだわりとクオリティの高さ、楽曲のすばらしさに圧倒されたことを最初に述べておきたい。
「アーティストが作った島」と聞いて想像する以上の、驚異的な出来栄えとなっているので、この記事を読んでいるゲーマー諸兄姉は、ぜひ島を訪れてみてほしい。
Ryotaさんが『フォートナイト』でマップ制作を始めたきっかけは「若い才能を世界に知ってもらいたかったから」
──本日はよろしくお願いします。
Ryotaさん:
音楽メディアの取材はいつも受けていますが、ゲームメディアの取材は初めてなので楽しみです(笑)。
──(笑)。まず、Ryotaさんが『フォートナイト』と出会ったきっかけを教えていただけますか。
Ryotaさん:
『フォートナイト』にハマったのはめっちゃ最近で、「島(クリエイティブマップ)」を作ろうというのも、本格的に動き出したのは去年くらいからなんです。僕自身としても、実際に『フォートナイト』内で島……というかゲーム自体を作るなんて、思ってもみなかったことが起こっている状態です。
今回こういう機会を得たことで、「いまの時代は誰でもゲームを作れる時代になったんだな」と強く感じました。僕も知らないことがたくさんあったので、今回のゲーム制作では、いろいろなことを学ばせてもらいましたね。
Ryotaさん:
そもそもなぜゲームを作ることになったのかというと、めっちゃ長くなるんですけど、話していいですか(笑)。僕のメインの活動はやっぱりバンドなんですが、バンド活動においてものすごく助けてくれてるチームがあって、そのチームのメンバーに今回のMelty Island(メルティ アイランド)の音楽を担当している山本修也くんというベーシストがいるんですね。修也くんとは、彼が高校生ぐらいのときに初めて出会いました。
僕は世界中のいろんなベーシストの演奏を聴いて、数々のすごいプレイヤーをこの目で見てきているんですが、そんな中でも彼のベースがいちばんかっこよくて、シンプルにうまいなと。
こんなうまい子が日本にいることが本当にうれしくて、世界的に有名になってほしいと心の底から思ったんです。そんな彼が20歳になったときに「今後の人生をどうしていくか?」といった相談を受けたんですね。その話を聞いて「これは僕が手伝ったほうが、彼の夢をいっしょに叶えられそうだな」と思って、「じゃあ、いっしょにやっていかない?」と声をかけたんです。
──ほかにも、そういった「知ってほしい」と感じる才能の持ち主がいるのですか?
Ryotaさん:
修也くんのほかにも、今回の島のデザインモチーフになっているアートを生み出した、スウェーデン人のエミル【※】というアーティストがいます。
※エミル・オールンド……スウェーデン出身のアーティスト。幼少期に虜になったアニメやゲームのキャラクターから多大な影響を受け、想像力あふれる仮想現実を精密なペイントスキルで描く。滴り落ちるインクを模した手作りの支持体が印象的。ONE OK ROCKのアルバム、『DETOX』のジャケットアートワークも手がけている。
──ONE OK ROCKのアルバム、『DETOX』のジャケットアートワークを手がけられた方ですね。
Ryotaさん:
4年前ぐらいに大阪の古着屋に行ったときに、このアートが飾られていたんですよ。
Ryotaさん:
このアートを見たときに「こんなにかわいくてめちゃくちゃすごいのに、なんで世の中に知られていないんだろう。これはおかしい」と思ったんです。絶対に世界のみんなに見てもらったほうがいいアートだなと。いまの時代はSNSですぐにつながることができるので、DMで連絡を取ってすぐに彼がいるスウェーデンに飛びました。スウェーデンのスタジオに行き、「契約してほしい。いっしょに何かを作ろう」と。
──Ryotaさんの慧眼と行動力がすごすぎです(笑)。
Ryotaさん:
もうひとりは、ONE OK ROCKの衣装を担当してもらっているスタイリストの熊原淳詩(じゅんじー)。彼は原宿で「STUDIO KONBINI」という古着屋をやっているんです。彼からはアートだったり、ファッションだったり、いろんなことを学びました。
3人ともめちゃくちゃすごい能力・センスがあるので、「世界中の人たちに3人のすばらしさを知ってもらいたい」、「3人が輝ける場所がどこかにないか」とずっと模索していました。4年くらい前から考えていたんですが、その欲が最近どんどん強くなってきたんです。それで3人には、まずはONE OK ROCKでいろいろと手伝ってもらっていました。
エミルは僕らのアートワークとかアルバムイメージアートなどを全部デザインしてくれて、じゅんじーにはステージ衣装や、アルバムではアートディレクションなども担当してもらい、ベースの修也くんは『DETOX』のベースディレクションとして入ってもらったりしています。

Ryotaさん:
その3人以外にも仲間はいて、みんな若くて才能のある子たちなんですけど、なかなか彼らが表に出られる場所がないんです。ONE OK ROCKとしていろいろと手伝ってもらってはいるんですが、なにかもっと自分のプロジェクトを通して広めていきたいというか、「俺がそういう機会を作らないとダメだな」と考えてるときに、友人が「Ryota、ゲームを作ってみれば? ゲームだったらできるかもしれないよ」と教えてくれて。
──音楽とは違うジャンルでの提案があったんですね。
Ryotaさん:
でも、ゲームは大企業が作るイメージがあって、「そんな簡単に作れるものじゃない」とずっと思っていたのですが、友人いわく「意外と簡単に作れるよ」と。その後、Epic Games Japanの河崎さん(Epic Games Japan代表 河崎高之氏)を紹介してもらって、『フォートナイト』はEpicのエンジン(Unreal Engine(アンリアル・エンジン))を使っていて、「ゲーム内でこういう島が作れるよ」と教えてもらったのが『フォートナイト』との出会いです。
それをきっかけに、「じゃあ『フォートナイト』を遊んでみるか」とやり出したら、めっちゃハマって(笑)。「え、ここでゲームを作れるの?」という驚きがありました。「俺がゲーム内で島を作ったら、やりたかったことが一気に実現できるんじゃないか」と考えたらモチベーションがどんどん上がっていって。
河崎さんからは「どういうゲームが作れるか」というお話を何度も聞かせてもらいました。「もうこれはゲームを作るしかない」と去年から動き出し、実際に制作が始まったのは今年に入ってからです。
──現在の形になるまでにどういった経緯があったのでしょう?
Ryotaさん:
「『フォートナイト』で練習場を作る」という答えに行き着いたのは、河崎さんと話していたときですね。「このエンジンを使ったら何でも作れるよ。レースでも何でもいいし」という話をうかがっていたので、初めはレーシングゲームや別の案もあったんです。でも、たとえばレースゲームだと、修也くんが作った音楽が僕の中でしっくりこなくて。
作るとなったらやっぱり「俺がいちばん作りたいものを作ろう」と(笑)。初期衝動としては誰かにプレイしてもらいたいとかじゃなくて、「自分が本当に満足できるものを作りたい」というのがいちばんのコンセプトでした。
『フォートナイト』はずっとプレイしていますが、まだまだ下手なんですよね。実戦だとすぐ倒されちゃうので、「ちょっと練習しないとな」と思って、いろんな練習場にいってみたんです。どれも腕を磨くにはすごくいい場所なんですが、遊んでいるうちに「自分だったらどんな練習場を作るかな」と考えるようになって。
──なるほど。そこにRyotaさんらしい要素を加えたいと考えられたんですね。
Ryotaさん:
そうなんですよ。音楽やビジュアルで楽しめる要素があって、さらに技術も学べる練習場を作ったら、みんなが『フォートナイト』をもっと好きになるんじゃないかなと思ったんです。練習場を作るとなったら自分の中でイメージ・ビジョンがぶわーっと湧いてきて、3人のよさも全部活かせそうだなと。
河崎さんに相談したら「それだったらいけるかも」と言われたので、練習場を作ることに決定し、そこから開発を手がけてくれるいい会社さんがいないか探し始めました。そのときに「アート、音楽に強い開発チームはAlche(アルシェ)しかいない」と聞いて、紹介してもらったんです。
初めて打ち合わせをしたときにAlcheのいままでの作品を見せてもらって、「絶対にこの人たちだ。この人たちだったら3人をちゃんと活かしてくれて、俺が好きになれる島を作ってくれる」と感じたんです。
僕をはじめ、こっちのチームはストリートな感じの子たちばかりなので、コミュニケーションの仕方やその場のノリ、空気感が超大事なんですよね。だから「大揮くん(Alche代表:川 大揮氏)だったら、すごく合うかも」と思いました。結果、一気に仲良くなったので本当にAlcheでよかったです。
──縁のつながりがすごいですね。
Ryotaさん:
縁が重なって重なって……。そういうのってなんか楽しいんですよね。僕はもともとぜんぜんゲーマーじゃないですけど、まわりは本当にゲーム好きが多くて。アートを作っているエミルは、毎日絶対にゲームをしてからスタジオに行くんです。ゲームを1本クリアしてそのイメージをもとに作品を作るというか。だから、彼が日本にいるときは、僕は毎日のようにいっしょに秋葉原のスーパーポテト【※】に行っていました(笑)。彼はレトロゲームが好きなので、秋葉原から高円寺に行って、そのあと中野に行って……みたいなカルチャーが大好きなんですよ。
そんな彼らといるうちに、僕もどんどんゲームが日常になっていったんです。バンド活動でたいへんなときもたくさんあるんですが、そういうときにゲームをすると、そのときだけはゲームに集中できるし、リラックスできる効果もある。だから、自分でゲームを作ってそれを遊べば、僕の心はもっと休まるだろうなと(笑)。
なので、自分のこのゲームに関しては大満足しています。本当にいいものができたなって。もちろん、これからもっとよくしていこうとも思っていますが。
※スーパーポテト……レトロゲームを扱っているゲームショップ。在庫数、タイトル数は国内有数で、圧倒的な品揃えを誇る。ゲーマーのあいだでは有名なお店。
「いいものを作っている人たちが、ぜんぜん見られていない」。そんな現実へのモヤモヤが、Ryotaさんを突き動かす
──これまでのお話を聞いて、Ryotaさんは生粋の「クリエイター」なんだなと感じました。何かを発信したり、何かを作り続けていかないとダメな人種といいますか……。
Ryotaさん:
何かをしたいっていう気持ちはつねにあるんですが、「才能を持った彼らをもっと知ってほしい」という気持ちのほうが、僕の中では強いです。僕自身に関してはバンドでいろいろな経験をさせてもらっていて、バンドでも自分のやりたいことを発信できていますし、ファンの反応とかも見させてもらっています。でも、彼らは「こんなにいいものを作っているのにぜんぜん見られていない」というのが、なんかもう本当にモヤモヤしちゃって……。
──自身がクリエイターでありつつ、プロデューサー的な視点を強く持っていらっしゃるわけですね。
Ryotaさん:
その要素は強いです。ライブで10代、20代のプレイヤーたちを見にいくと、本当にみんなすばらしいんです。でも、それを最大限に発揮できる場所があまりないとも思っていて。
なので、レコーディングのときも若い子たちに「本当に自分がオッケーと思うまで延々とプレイして大丈夫。俺も1日付き合うから」と伝えているんです。ふつう、そういうやり方はないと思うんですよ。レコーディングだったら何回か録って終わり、みたいな。
実力もセンスもあって、これまでたくさん練習もしてきただろうし、引き出しもいっぱいある。だから、とにかく楽しんでほしい。自分のすべてを最大限に引き出してもらって、それがゲームで実際に流れたら、本当にうれしいと思うんです。それが、きっと何かにつながるんだろうなと。そういう若い才能のある子たちがちゃんと輝ける場所を作らないといけないとずっと思っていて、そのツールとしてゲームというか、『フォートナイト』が最適だったわけです。
──音楽があって、ビジュアルがあってという、Ryotaさんが求めていた場所として、『フォートナイト』がバッチリはまったと。
Ryotaさん:
僕が集めたチームメンバーが全員集合できたことが大きいですね。それまでは実現が難しいと思っていて、たとえば「エミルのエキシビションだけ」とか、3人を別々で世に出すことを考えていました。
それをまとめてできるところがこんな身近にあったんだなと。Epic Gamesさんは、とんでもないエンジンを提供してくれているんですよね(笑)。本当に『フォートナイト』に出会えてよかったです。めっちゃ感謝しています。
──「ゲームを作ってみては?」というアドバイスがあったときは、「アンリアルエンジンを使ってゲームを」という意味だったのですか? それとも、『フォートナイト』ありきでのアドバイスだったのでしょうか?
Epic Games 河崎氏:
私が代わりに回答しますね。Ryotaさんからゲームを作ってみたいという相談があったときに、いろいろハードルがあるので悩んでいると感じたんです。そこで、「『フォートナイト』というゲームがあって、自分で島を作ることができて、その島を世界中のユーザーに共有し、遊んでもらうことができるんです」とお伝えしました。説明を続けていくうちに「それはいい」となって。
Ryotaさん:
エミルのアートの特徴である「滴り落ちる表現」が、いかにゲームで描くうえで技術的に難しいかといったことまで、河崎さんが全部教えてくれました。
Epic Games 河崎氏:
エミルさんがレトロゲームがお好きということで、最初は2Dのドットのアクションゲームをイメージされていたんです。「『フォートナイト』ではドット表現は難しい」というお話もしていて、その中で「練習場」というキーワードがRyotaさんから出てきたことで、そこがしっくりきたと。
──なるほど。今年に入ってからの制作とうかがいましたが、制作スピードがかなり速いですよね。
Ryotaさん:
Alcheを含めたチーム全員がすごくがんばってくれました。練習場を作ると決めてからは、明確にコンセプトが定まったので、チーム内でしっかりとコミュニケーションが取れて進められたことがよかったです。Alcheのみなさんだからこそ、ここまでの形にできたんだと思います。
Alcheはエミルのよさをすぐに理解してくれて、音楽を作ってくれている修也くんのことも勉強してくれて、「この音楽だったらこれが合うよね」など、クリティカルな案を出してくれたんです。
川 大揮氏(以下、川氏):
「こういうのをイメージしています」とわかりやすく説明してくださったり、エミルさんの絵も具体的に用意いただいたので、世界設定も作りやすかったんです。
また、Ryotaさんからは開発側へのリスペクトをすごくいただいたんですね。僕らが作ったものに対して「それすごいね! そんなこともできるんだ」と褒めてくださって。そういった反応をいただいたことで、チームとしてもモチベーション高く動けました。ですので、速度感もクオリティもどんどん上がっていったところもあると思います。
Ryotaさん:
基本的には大揮くんに僕の家に来てもらったんです。チームで集まって、大揮くんが「こんな感じだとどうですか?」と細かくプレゼンをしてくれたので、すごくしっかりとしたコミュニケーションを取りながら、ゲームを組み立てられました。
川氏:
エミルさんのアートは、すでに世界観が構築されていますから、それを空間にしていくというのはすごくやりやすかったです。また、練習場という大枠はあったので、「『フォートナイト』のバトロワに近い形で作っていくにはどうすればいいか」というのは、まとまっていたんです。そこに僕らから「こういうものがいいんじゃないか」と提案する形をとって、それをまとめていったという感じです。










