先月末に発売され、半月にして全世界600万本の出荷を達成した『モンスターハンター:ワールド』(以下、『モンハン:ワールド』)。
そのパッケージアートにも描かれている今作の看板モンスター「ネルギガンテ」を、クエスト開始から1分以内で倒すプレイヤーが登場したことが先週話題となった。『モンハン』は以前からモンスター攻略のタイムアタックが人気のシリーズだったが、海外の凄腕プレイヤーに聞いてみると、今作では世界中のハンターたちがネルギガンテの討伐タイムを競い始めているようだ。
「滅尽龍」とも呼ばれるネルギガンテは、『モンハン:ワールド』の終盤に登場する強敵モンスター。天災に匹敵する力を持つ「古龍種」の中でも、ほかの古龍種を捕食するという異質な存在で、非常に好戦的な性格が特徴だ。
その設定通りに、ゲーム内でも強力な攻撃をもってしてハンターたちを苦しめる存在で、終盤の上位任務においても特に印象深いモンスターとなっている。
ネルギガンテのフリークエスト「古を喰らうもの」は、討伐するまでの時間を競うタイムアタックが人気となっており、国内では先日ついに1分を切る57秒31で討伐するプレイヤーが現れた。
1分を切ったプレイヤーは日本のAmulet氏。武器は「角王弓ゲイルホーン」、スキルは「攻撃 Lv.4」、「見切り Lv.4」、「超会心 Lv.3」、「弱点特効 Lv.3」、「スタミナ急速回復 Lv.2」などで構成されており、動画内で装備が確認できる。またクエスト中は、会心率を上昇させる設置アイテム「達人の煙筒」を活用している。
動画では、弓による駆け上がり撃ちを繰り返しているだけで屠られてしまうネルギガンテの姿が。しかし、しっかりとした準備を整えながら地上で溜め駆け上がり撃ちを急所に確実に当てていく技術は、そう簡単に真似できるものではない。
日本で根強い人気を持つ「モンハン」シリーズでは、以前より強敵モンスターを最速で狩るタイムアタック文化が根付いていた。
とはいえ過去作における討伐記録はモンスターによって違うものの、そのほとんどが数分は必要。今作の看板モンスターであるネルギガンテのタイムアタックが“秒の世界”に突入することを予想した人は、あまりいなかったのではないだろうか。
※海外勢のなかでは幾度も『モンハン:ワールド』タイムアタックに挑戦しているプレイヤーPhemeto氏のネルギガンテ討伐映像。タイムは「ヘビィボウガン」で1分29秒73。再生回数は2月10日の投稿から2月14日時点で2万8000回にコメント数は188件と、なかなかに盛り上がっている。
一方で世界に目を向けると、海外で定番のタイムアタックレコードサイト「Speedrun.com」では、製品版リリース後の記録が収集されていないものの、各地のタイムアタック愛好家たちも『モンハン:ワールド』に注目しつつある。その腕前はタイムアタック攻略が進んでいる日本に負けず劣らずで、たとえば先に挙げた海外のプレイヤーPhemeto氏は、1分台のネルギガンテ討伐記録をさまざまな武器で達成している。
実際にPhemeto氏に話を聞いてみたところ、北米における『モンハン』シリーズのタイムアタックは、シリーズそのものの認知度が低いこともあり、これまであまり広まりを見せなかったという。一方で『モンハン:ワールド』のタイムアタックは徐々に過去作以上の盛り上がりを見せており、氏は「携帯ゲーム機向けにリリースされてきた過去作と比較して、据え置き機向けに発売された同作は映像の配信や公開が簡単になっているからではないか」と推測している。
今作のタイムアタックが過去作以上に盛り上がっている点については、『モンスターハンタークロス』(海外ではMonster Hunter Generations)の「Speedrun.com」におけるリーダーボード上位が日本人で占められていたり、また今作のタイムアタックの投稿数が発売1か月で同作をすでに超えている点からもうかがえる。
そんな盛り上がりの中でも、ネルギガンテはほかのモンスターと比較しても、やはり海外のハンターたちのタイムアタック欲を掻き立てており、たとえば北米最大のインターネット掲示板「reddit」では、現在のネルギガンテの全世界タイムアタック記録を武器ごとに収集したスレッドが立てられている。
またSpeedrun.comでも、昨年から今年にかけて3度実施されたネルギガンテ討伐のベータテストは大きな盛り上がりを見せ、多数の北米・欧州プレイヤーが日本人とともに記録上位にランクインする様子が見られた。
なお余談ではあるが、経済紙「フォーブス」は『モンハン:ワールド』での狩りに関して、先日ユニークな見解を表明。「動物を狩るという行為に後味の悪さを感じてしまうほどリアルである」と評価し、話題になった。
冗談なのか本気なのか判別しづらいその言説は注目を集めたが、“乱獲”され続けるネルギガンテの姿を見ていると、「なぜこの子だけこんなに虐められるのか……」と、なんとはなしに可哀想な気分にならなくもない。
世界的に羽ばたいたシリーズ最新作、その看板をしょって立つモンスターの受難は、世界的にもうしばらく続きそうだ。