『ダイの大冒険』はブラジルでは『フライ:小さな戦士』。各国の『Jump Force』最新映像から見る同作の海外展開

 1月28日、「週刊少年ジャンプ」のキャラクターたちが戦う対戦型アクションゲーム『Jump Force』で、『DRAGON QUEST -ダイの大冒険-』(以下、『ダイの大冒険』)から「ダイ」の参戦が明らかになった。

 興味深いのは、YouTubeの北米向けPlayStationアカウントでは『ダイの大冒険』と『NARUTO -ナルト-』がセットになったトレイラーが公開されているのに対して、PlayStation Europeのアカウントでは『ダイの大冒険』単独のトレイラーが公開されていることだ。以下はその欧州版の映像である。

 『ドラゴンクエスト』シリーズのメディアミックスの一環としてはじまった『ダイの大冒険』は、1989年から原作・三条陸氏、作画・稲田浩司氏のコンビによる漫画版が週刊少年ジャンプ向けに連載された。当初は別名の読み切り作品として始まったものだが、すぐに人気が火がつき7年に渡って連載が続いた。1991年には早くも東映動画(現・東映アニメーション)によってアニメ化されて、全46話が放送されている。

 この時期は『ドラゴンボール』『セーラームーン』など、海外に日本のアニメが盛んに輸出されていたが、『ダイの大冒険』のアニメも同じく90年代中頃に海外に進出。ただし英語圏には輸出されず、一部のヨーロッパ、ラテンアメリカ、アジア、中東で放送されて、好評を博した。

画像はフランス版Amazonより。1999年にフランスで初めて翻訳された『ダイの大冒険』。タイトルが「FLY」になっている。
(画像はAmazon.fr | Fly, tome 1 : Le Précepteur du hérosより)

 海外のアニメ版ダイの名前は、アルファベットの”die”=死との混同を避けるために、「Fly」(フライ)に変更されている。たとえばフランスのアニメ版では、変更された主人公の名前がそのまま『Fly』としてタイトルになっている。ブラジルでは『Fly, o Pequeno Guerreiro』というタイトルで、日本語に訳すと「フライ:小さな戦士」となる。スペインでは『Las Aventuras de Fly』というタイトルになり「フライの冒険」という意味だ。

 なおIGN ブラジルの『Jump Force』でのダイを参戦を報じるニュースのコメント欄では、「Fly, fly, fly」とコメントがあるが、これはFlyを連呼するオープニング楽曲を口ずさんでいるものである。

 アニメが放送終了した後も、フランス、スペイン、メキシコ、タイ、マレーシア、香港、韓国、台湾などでは、原作コミックの翻訳版が発売された。とはいえ、多くの国が90年代後半にコミックが発売したきりで、今は中古を当たらない入手できなさそうである。フランスでは2007年に『Dragon Quest : La Quete de Dai』と、原作と同じダイに忠実に改題されて再販され、現在でも比較的容易に入手できるようだ。

画像はフランス版Amazonより。2007年に再翻訳され、タイトルや主人公の名前も原作に忠実になった。前述した通り、スペインでは再販されていないので、在庫切れになっている。
(画像はAmazon.fr | Dragon quest – La quête de Dai Vol.1より)

 また公用語でアルファベットを使わない国では、ダイの名前はそもそも変更されていない。たとえばアラブ圏では『داي الشجاع』というタイトルになっている。「الشجاع」は勇敢なもの、「داي」が「ダイ」を意味し、日本語訳するとタイトルは『勇者ダイ』となる。オープニングは「Dai dai dai dai dai」と連呼する、妙に癖になる不思議な楽曲が特徴だ。前述したPlayStation Europeのトレイラーのコメント欄には、「Dai」を連呼するコメントが見受けられるが、これはアラブ版のオープニング楽曲が念頭にあると見られる。

 アラブ圏では『ダイの大冒険』のアニメは放送されたが、ゲーム『ドラゴンクエスト』シリーズが公式に展開されたことはない。そのため『ダイの大冒険』のアニメは知っているが、ゲーム『ドラゴンクエスト』は知らない奇妙な現象が起きうる環境となっている。

スペインで海外のコミックを扱うオンライン書店TAJ MAHAL COMICSの『ダイの大冒険』のソート結果。
(画像はTAJ MAHAL COMICS 検索結果より)

 今回公開されたトレイラーのコメント欄を見る限りでは、フランス、ブラジル、アラブ圏で『ダイの大冒険』はいまだに人気があるようである。もちろん『ドラゴンボール』や『セーラームーン』ほど大人気なわけではないが、アニメを幼少期に観て夢中になってくれた一定のファンが確かにいるようで、『Jump Force』のダイ参戦を歓迎しているようだ。

 ただ気になるのは、『Jump Force』のダイの名前が海外でどうなっているかだ。前述した北米向けやヨーロッパ向けでは「Dai」となっており、原作から名前は変更しないようだ。しかしラテンアメリカ圏はまだわからない。バンダイ・ナムコ・エンターテインメント・ブラジルがアップロードしている『Jump Force』のトレイラーの説明文では、ダイのことを「Fly」と説明している。

 もしかしたらラテン・アメリカ版の『Jump Force』では、ダイはFlyになっているかもしれない。ただ今回公開されたトレイラーのゲーム映像そのものは、日本語版の映像に字幕をつけたもので、ゲーム本編がどうなるかはまだわからない。とはいえ、その国のファンが一番親しみやすい名前が一番だろう。

 英語圏の人たちには『ダイの大冒険』が翻訳されなかったため、今回の参戦で知ったという人も少なからずいることが考えられる。海外でも高く評価されている『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』でドラクエを好きになってくれた人には、名作『ダイの大冒険』を知ってもらういい機会なのかもしれない。

ライター/福山幸司

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ライター
福山幸司
85年生まれ。大阪芸術大学映像学科で映画史を学ぶ。幼少期に『ドラゴンクエストV』に衝撃を受けて、ストーリーメディアとしてのゲームに興味を持つ。その後アドベンチャーゲームに熱中し、『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』がオールタイムベスト。最近ではアドベンチャーゲームの歴史を掘り下げること、映画論とビデオゲームを繋ぐことが使命なのでは、と思い始めてる今日この頃。
Twitter:@fukuyaman
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