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「ハリウッドザコシショウ」のゲーム吹き替え、ファミコン実況。その狂気と笑いについて

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 ハリウッドザコシショウというお笑い芸人をご存じだろうか。ハイテンションでしつこい芸風は、ニッチなお笑い好きや、深夜のお笑い番組「あらびき団」で注目された。2016年にはピン芸人の頂点をきめる由緒があるグランプリである、「R-1ぐらんぷり」で優勝をおさめ一般の知名度も上昇し、活躍の幅を広げている。

 また、彼は大のゲーム好きとしても知られていて、現在放送中の「勇者ああああ ~ゲーム知識ゼロでもなんとなく見られるゲーム番組~」に出演している姿もたびたび見られる。ザコシはファミコン全盛期の80年代当時は小学生。芸人としてのデビューが1993年は、初代プレステ発売年の前年であるため、まさにゲームの著しい成長と共に若い頃を過ごしたと言える。

 そんなゲーム好きな一面が存分に発揮されるのがハリウッドザコシショウ公式YouTubeチャンネルだ。

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(画像はハリウッドザコシショウYouTubeチャンネルより)

 「ドラクエ敵ものまね」「ゲームふきかえのコーナー」「ファミコン攻略」の3つが主なゲームシリーズ動画として大量に投稿されている。この記事ではそのザコシのゲームに対する熱量と、ザコシの一貫性による様式美について書いていきたい。

ザコシ、狂気の吹き替え

 まず、ザコシのYouTubeチャンネルの芸風を知ってもらうために一本の動画を紹介する。狂った具合をより伝えるために文字起こしもおこなったので合わせて読んでいただきたい。

キ◯ガイ キ◯ガイ キ◯ガイが開催するこだわりのグランプリ

尿道輪切りのグランプリ

どこぞのキ◯ガイが開催する こだわりのグランプリ グラン

尿道の輪切りの輪切りの輪切りのグランプリ 選手権 あーコンテストだね 由緒があるよ一回戦は尿道を1mm輪切り輪切りすりゃ勝ち

一回戦は一回尿道1mm輪切りすりゃ通過する通過する

二回戦二回戦勢いをつけて勢いをつけて

尿道に尿道に 塩酸をトクトク入れるよ

注ぎ込む 尿道に 硫酸をトクトクと注ぎ込む

尿道にトクトクと水銀を注ぎ込む 尿道

(死亡)

尿道に塩酸を

尿道にトクトクと塩酸を

尿道にトクトクと硫酸を 注ぎ込む注ぎ込む注ぎ込む注ぎ込む

尿道に尿道に尿道に硫酸水銀

トクトクと注ぎ込む塩酸硫酸水銀水銀

トクトクと注ぎ込むよ注ぎ込む

硫酸塩酸塩酸 熱い鉄熱い鉄トロトロに溶けた鉄 注ぎ込む

 もはや、これはふきかえではなく『魔界村』のBGMに合わせて尿道について歌っているだけなのだが、この同じ言葉を繰り返すことがザコシの様式美となっているのだ。

 特に目のつ「尿道輪切りのグランプリ」というワードは、ほかの動画でもたびたび耳にするワードだ。このミクロな反復とマクロな反復がザコシの動画を作り上げている。このエンドレスな展開が癖になっている読者もたくさん存在しているだろう。

 次は同じ「ゲームふきかえのコーナー」から「ハリウッドザコシショウのゲームふきかえのコーナー(BIOHAZARD編)」「ハリウッドザコシショウのゲームふきかえのコーナー(パラッパラッパー編)完全版」を取り上げたい。

 この2本の動画はシリーズの中でも、ふきかえとして高いクオリティを誇っている。『BIOHAZARD』は、足音やドアの音、ジルやウェスカーのセリフも再現度抜群だ。時計の音も完璧なのだが、とにかくうるさい。

 『パラッパラッパー』は、オープニングからエンディングまで、すべてふきかえをしているため、見終わった時は強い感動を覚える。さらに、再現度を高くするために複数のトラックを録音して、音を重ねていることに気が付く。

 数人のザコシが並んで『パラッパラッパー』のふきかえを行っている映像を想像すると、とても耐えられない気持ちになる。ゲーム実況の動画もあがっているのでセットで見ていただくと面白さが倍増する。

 

ザコシとモノマネ

 「ゲームふきかえコーナー」のシリーズを見ていると、ハリウッドザコシショウという芸人が「モノマネ」という芸風を得意としていることを思い出す。だが彼のモノマネは通常のモノマネとは異なる「誇張」という要素が前面に出ている。もはや原型をとどめていないモノマネは、ザコシの芸風を象徴している。

 「ドラクエ敵ものまね」シリーズは、そんなモノマネ要素で構成された動画だ。見ればすぐわかるのだが、全然似ていないはずなのに、なぜか似ていて非常に面白い。

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(画像はハリウッドザコシショウのドラクエの敵ものまねⅤより)
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(画像はハリウッドザコシショウのドラクエの敵ものまねⅦより)
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(画像はハリウッドザコシショウのドラクエの敵ものまねⅩⅥより)

 この動画シリーズは、ひたすらドラクエの敵のモノマネをするのだが、とにかく数が多い。そして画像を見るとわかるが、ほぼ顔芸と身体で押し切っている。けど、続けてみていくと似ているような気がしてくるので、途中からザコシは鳥山明作画なのではないかと錯覚する。

 このモノマネをフィジカルで押し切ってしまう強さは、「誇張モノマネ」をはじめとする、多くのネタにもみられる特徴だ。そして、このフィジカルで押し切ってしまうことが大きな特徴であり、とても重要な要素なのである。

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(画像はハリウッドザコシショウのものまね9連発より)

 原型を乗っ取ってザコシ色にしてしまうということは、元となったものや、モノマネの手段の必然性がほとんどないということだ。たとえば『魔界村』のふきかえであったら、まず『魔界村』と尿道に関係はない。ザコシの動画やネタのほとんどは、このような必然性のなさによって成り立っている。

クソゲーとザコシ

 ザコシの特徴は必然性のなさにあると前パラグラフで説明した。そしてその特徴は、なんといってもいわゆるクソゲーと呼ばれるものの特徴と近いのではないかと私は思う。クソゲーは、まったく脈絡がなく意味不明なものが多い。その理不尽さが笑えるから、ひとつのジャンルとして成立しているのではないか。

 とくに、『ゴーストバスターズ』に挑戦した回は破壊力がすさまじい。

 もう、『ゴーストバスターズ』がボケすぎて、ザコシが徹底的にツッコミとしての立ち回りをしている。ザコシがただのハイテンション芸人ではなく、その芸歴の長さに比例してか、器用にツッコミとしての機能を果たすこともできることを確認できる。感動だ。そして、それがうまく成立していて、コントを見たかのような感覚に襲われる。

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(画像はザコシのファミコンこうりゃく(ゴーストバスターズ再挑戦編)より)

 必然性のなさというのは大きな可能性だ。子供の遊びやギャクにも必然性がないが、それだからこその面白さがある。必然性があるからこそ失われてしまう面白さも存在している

 我々は、ザコシにもクソゲーにもその面白さがあると理解している。いまのご時世、外に出ることができず家で暇な時間を過ごしてしまう読者も少なくはないだろう。だけど、何もできないからといって落ち込む必要はない。この状況だからこそ生まれるものはきっとあるのではないか。ハリウッドザコシショウの一連の動画は、そんなことを思い出させてくれるだろう。

文/tnhr

ライター
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メイプルストーリーで人との関わり方を学び、ゲームのゲームらしさについて考えるようになる。主にRPG、アドベンチャーゲーム、アクションゲームの物語やシステムに興味のある学生。
Twitter:@zombie_haruchan

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