PC3つを同時操作──「足でファンクションキーを押せばいいんです」
──ということは、ほかにもキャラクターがたくさんいそうですね。
最上さん:
全部で12体いますね。
いまはひとつのアカウントで12キャラを作れて、最高レベルが175なんですけど、いちばん下の子がレベル130くらいで、いちばん上の子がレベル171です。
170レベルの子も3体いて、あとはイベントのときに枠を埋めるためのキャラと、トレードのためだけの商人キャラが数体います。金策用とか。
復帰してまだ数ヵ月なので、もっと全キャラレベル上げたいんですけどね。
──そんなに……。複数アカウントは駆使しているんでしょうか?
最上さん:
いまは2アカですね。ひとつのパソコンにひとつのアカウントしか繋げないので、サブPCに露店専用のサブアカを繋げています(笑)。
──サブアカで稼いで、それをメインアカに送るってやつですね(笑)。
最上さん:
そうです。完全に金策をしてくれるキャラクターですね(笑)。売れる商品だけ彼に全部渡して商売をしてもらって、「良い儲けになった」とお金だけ回収して「さよなら」みたいな(笑)。
──(笑)。もっとも多いときは何アカウントぐらいでプレイしていたんですか?
最上さん:
5アカのときがありました(笑)。当時は1アカに3キャラしか作れなかったんですよ。
しかも性別も女性のアカウントには女性のキャラクター、男性には男性と決まっちゃっていたので。とはいえ効率のためでもありましたね……。
先ほどもお話しましたが、家にパソコンの数はあったので、多いときはPC3つの環境でプレイしていました。
──そのときは、それぞれのPCをどう使い分けていたんでしょうか。
最上さん:
その3キャラでパーティーを組むんです。それはプレイヤー数が少ないほうが儲けも大きいじゃないですか。
だからフレンド3人とパーティーを組んでいるんだけど、キャラそのものは9体いるみたいな感じでした(笑)。それでボスを倒したりしていましたね。
──ちょっと真偽を尋ねたいんですけれども……足でPCを操作していたというエピソードがありますよね? それってつまりそのPC3つを操るときのことですか?
最上さん:
そうですそうです。周りにいた廃人が足で操作しているのを聞いて、「便利!」って思ったんですよ(笑)。
──どうやって足で操作を?
最上さん:
足はファンクションキーを押せばいいんです。
──……というと?
最上さん:
ファンクションキーに技のスキルをセットしてあるので、それを足で押すんです。
もともとは目の前にメインのパソコンを置いて、サブは隣の台に置いて……そして3台目は真後ろにあるベッドの上に置いていたんですよ。部屋が狭くて。
でもプレイ中に振り返るのが面倒くさくなって、「どうしたらいいんだろう……」となったときに、一緒に遊んでいた廃人に「俺、足でやってるよ」と言われて(笑)。
そこで足元にノートパソコンを置いてみたところ、「これはありだな」って(笑)。メインモニターには足で操っているキャラも映っているので、それを見ながら足でファンクションキーを押せば操作できるって判ったんですよ。
──それってつまり……ブラインド足タッチができるってことですね(笑)。
最上さん:
はい(笑)。でも何回目かに足を攣っちゃって、「これやばい! 痛い!」と止めたんです(笑)。
──最上さんが我々の想像をはるかに超えるほどやり込んでいるネットゲーマーだったので非常に驚きました……
たびたび“廃人”という言葉が登場しますが、ご自身のことも廃人と認めているのでしょうか? あるいは準廃人ぐらい?
最上さん:
僕は自分のことは一般人だと思っています(笑)。
──一般人!?
最上さん:
『RO』のギルドって、大きく分けてまったりギルド、対人ギルド、攻略ギルドという3つパターンに分かれていて、僕はいま攻略ギルドにいるんですけど、そこはほとんど廃人なんです。
廃人って、「どうプレイヤースキルを磨くか?」ということを真剣に考えていて、僕はそういう廃人を本当に「すごいカッコイイな」って思っているんですけど、彼らに比べると僕なんて全然下のほうなんです。
──それほど環境がスゴいってことですよね(笑)。
最上さん:
(笑)。『RO』自体が15年と長い歴史を持っているので、新規プレイヤーの割合が少なく、古参は必然的に廃人になっていくんですよ。
──なるほど。いわゆる対人ギルドに入っていた時代はあったんでしょうか。
最上さん:
一時期はやっていましたね。でも言葉の荒い人は多いし、揉め事やノーマナープレイヤーも目立つというか、そういうのが嫌になって対人ギルドからは離れちゃったんです。
しばらくして当時有名な4強ギルドのひとつというところに友達の勧めで入ったら、みんな楽しそうにやっててとても居心地よかったんですけど、解散しちゃって。そっから対人はやらなくなっちゃいましたね。
──そして攻略ギルド中心になっていったと。
ネトゲがあったから学生時代を楽しく過ごせた
──そこまでネットゲームにのめり込んでいたのも、先ほど、「当時学校でうまくいってなくて寂しかった」というようなお話をされていましたが、ネットゲームの側が生活の軸になっていたからなんですね。
最上さん:
そうですね。あのときゲームで出会った人たちがいたからこそ、学生時代を楽しく過ごせたというのはあります。
学校が嫌いでしたし、行ってもつまらなかったというか、ちょっといじめにも遭ったりして……そんな何も楽しくなかった時期に出会ったのがネトゲだったんです。
──差し支えない範囲で教えていただけますか。
最上さん:
中学生のときって、学校もあんまり好きじゃなかったし、友達たちと上手く人付き合いできないというか、「友達ってなんだろう」と葛藤していた時期でした。
ですけど、ネットに繋けば誰か知り合いがそこにいる。彼らは僕のリアルを知らないし、僕も彼らのリアルを知らない。もちろん名前や顔、性別だってほとんど知らない。
いろいろとコンプレックスが大きかった時期に、自分の顔どころか年齢も性別も言わずに自分をバーチャルで作れるという感覚が合っていて……ネトゲ仲間と会話するのがすごく楽しかったんです。
──人によってはそれをネガティブに捉える人も居ますけど、そういう自由さがネトゲの魅力ですもんね。
最上さん:
少なくとも僕はネトゲがあったから学生時代を楽しく過ごすことができました。
そうそう、じつは高校生のときに、当時入っていたギルドのマスターから「ゲームは止めたほうがいい」と言われて(笑)。その人は当時もう社会人で、詳しくは聞いてないんですけど、会社の社長さんだったんですよ。
だからゲームでのあだ名も「社長」だったんですけど、「俺はもう社会人なのに、ゲームに時間を費やしてるダメな社会人だよ。でも君はまだ高校生でしょう。これから青春があるんだから、ネトゲなんかに時間費やしちゃだめだよ」ってすごい言われて(笑)。
──年齢的に、そういう彼の気持ちが非常によく解ります(笑)。
最上さん:
でもそういう“学生として普通に過ごしていたら出会えなかった人たち”と出会えることがすごく楽しかったんです。かといってオフ会に出向くなどは全然なくて、「ただゲームの中で楽しめればいい」という気持ちが強かっただけですけど。
なんというか、人との関わり合いを持てたのがネトゲの楽しさでした。そういう原体験があったから、あとからまたゲームにも復帰できたんですね。
心身ともに疲れ果てた彼女が異世界転生を考えた末、ネトゲに復帰するまで
──あらためてなぜゲームに復帰したのかをお伺いさせてください。
最上さん:
去年でんぱ組を脱退したんですが、そのときは体も心もズタボロになっていて。何もやる気が起きなくて、じつは仕事も復帰しない予定で、「半年以上休もう」と思うぐらいには再起不能だったんです。
そこから抜け出したくて「自分の中で楽しいと思えるものを何かしよう」と思ったんですよ。じゃないと気持ちが後ろ向きすぎるから。
それでアニメを見ようと思ったんですが、そのとき観てたのが『幼女戦記』や『Re:ゼロから始める異世界生活』や『この素晴らしい世界に祝福を!』とか、いわゆる“異世界転生もの”。
それでもう「いっそ死んだら転生するんじゃないか」って思うぐらい気持ちが落ちちゃったんですね。
もちろん「でもこれアニメだしなって」とは思っていたんですけど、そういう現実からの転生がすごく羨ましかったんですよ。
でも『ログ・ホライズン』を観たらちょっと元気が出て、あらためて「これまででいちばん楽しかった時期は何だろう」と考えたら、やっぱり「『RO』をやっていたときだったな」って思って。それで復帰したんです。
──『ログ・ホライズン』はオンラインゲームの魅力が詰まった作品ですしね。
最上さん:
そうなんですよ!
でも『RO』に復帰した直後は「どうしよう、知り合いもいないし……」と浦島太郎のような状態で。いまの『RO』は他人に喋りかける文化がなくなっちゃっているので、ネトゲなのに誰とも喋れないという状況が少し続いちゃったんです。
それで昔のフレンドたちに「まだやってる?」って連絡して回ったら、ゲームの中で遊ぶことになって。
そのときはちょっと楽しい気持ちになったんですけれど、いざ狩りに行くと、もともといたキャラクターの装備はすでにレベルの低いものになっているし、プレイにも全然対応できなくなっているし……「超弱い、どうしよう?」となりました。
しかもフレンドはみんな社会人なので、「22時から1時までしか狩りできません」という感じで、そのあとは落ちちゃうし、昼間に繋いでも誰もいないし、そもそも交流する相手もいないし……やっぱりもう辞めようかなというシーズンがじつは1ヵ月ぐらいありました。
そこでもともといたサーバーにこだわらないで、違うサーバーでイチから始めてみたら、そこはけっこう人が多くて、賑やかなギルドにも入ることができて……毎日繋ぐのが楽しくなったんです。
──再びゲームに救われたと。
最上さん:
救われましたね。これで2度目ですが(笑)。『RO』をまた始めていなかったから、たぶんお仕事にも復帰していなかったと思います。「ネトゲをやると楽しい」という気持ちを思い出して、「ゲームって、本当に前向きになれる」って思いましたね。
ですから、いま働くことに対するモチベーションは、ファンでいてくださる皆さんに応えることと、課金するお金を稼ぐことのために頑張ろうって(笑)。
──リアリティのある誠実さだと思います。
最上さん:
じつは自分の中で働く意味がわからなくなったときがあって。それがでんぱ組を脱退するくらいのときですね。生きるためにこの世界に入ったのに、「生きているのも苦痛なのに、お金を稼いでどうすんだろう」みたいな気持ちになってしまい。
物欲もなくなって、おしゃれもどうでもいい、服とかも着れればなんでもいいと思っちゃったんです。だからお金も、あくまでも生きるために必要なもので、生きることそのもの以外に使うつもりはなかったんです。
そもそも僕がでんぱ組に入ったきっかけも、けっきょく生きていくのにギリギリになってから、「お金がないと生きていけないから稼がなきゃ」という理由で入ったんですよ。
それが何年も仕事をしていくうちに、ほかの目的も出てきていたんですが……それを一瞬で見失ってしまって……。
いまはとりあえず、「課金のために頑張る」と思っておけば、ちょっとはやる気が出るところがあって。
男性設定の最上もが、ギルメンから恋愛相談を受ける
──そこまで気持ちが浮上したのはゲームの中の仲間たちの影響が大きいと思うんですよ。ネトゲの面白さって仲間に左右されますからね。お話を伺っているといい仲間に巡り合えたようですね。
最上さん:
そうですね。いまは復帰するプレイヤーも増えていて、そういう人たち向けに募集を出してるギルドがたくさんあるんです。
新規の方向けに「装備なくてもいいですよ」、「楽しく雑談しましょう」という雰囲気のところもたくさんあって。
僕が最近はいったギルドはいつも募集をかけているわけじゃないんですけど、たまたま募集が掛っているタイミングに出会ったんです。同時期に新人がふたりぐらい入って来たんですが、「良かった、ちゃんとした廃人が入ってきてくれて」とけっこう感謝されました(笑)。
僕がいちばん最後に入った新人だったんですけど、じつはほかのふたりがめちゃくちゃ廃人で(笑)。
──その文脈で、最上さんが“ちゃんとした廃人”ということは……ほかのおふたりは“かなりヤバい廃人”ってことですね(笑)。
最上さん:
そうなんです(笑)。だから攻略がスムーズにいったり……キャラも揃っていますし、装備も揃っているし、知識もあるから説明しなくても済む。
それでいて、みんないい人だし、すごくフレンドリーなんですよ。
ネトゲを続けていると、やっぱりギスギスする人って現れて、いざこざに巻き込まれることがあるじゃないですか。「お前、何でこれやってんだよ」、「装備にこれがあるのは当たり前だろ」みたいな。だからフレンドリーで巧い人っていちばんですよね。
──絡まれたときってどうするんですか?
最上さん:
引きます(笑)。すっと引きますね。まあそもそも、いざこざはいまのところはあまり……いや、ありましたね、そういえば。じつは恋愛相談をされて(笑)。
──あ、そっちのいざこざ。詳しく聞いてもいいですか?(笑)。
最上さん:
いまのギルドではなくて、復帰後すぐに入ったギルドでの出来事なんですけど……“相方”って解りますか?
──定義は人によって異なりますけど、基本的にはゲーム内のパートナーや恋人のことですよね?
最上さん:
そのとおりです。じつはそのギルド内は相方関係が多くて。狩りだけの仲間という人もいるんですけど、結構ガチの恋愛をしているギルドメンバーたちがいて。
相談してくれたのは男の子だったんですけど、どうやら僕を男の子だと思っていたらしいんです。
「いや男同士だからさ、話せるじゃん」って(笑)。「女心って解る?」と言われたときは、心の中で「いや女だし!」ってなりましたね(笑)。
──あははは(笑)。恋愛相談はネトゲではよくある話ですけど、それを最上さんが男性として受けているとなると、なんかもう凄い状況ですね。
最上さん:
でも女だとは言えないので、「なんとなくこうだと思うよ」みたいな返事をしました。じつは僕、けっこうチャラい男という設定で入っていたんですよ。
「いま髪の毛赤いし、ピアスも空いている」、「今日は可愛い女の子とデートしてくるわ」みたいな。まあその可愛い女の子って、きゃりー(ぱみゅぱみゅ)ちゃんなんですけど(笑)。
──これ、相談した本人が読んだらビックリしますよ(笑)。それでどうなったんですか?
最上さん:
「こうしたらいいんじゃない?」という話をして、後日リアルでオフ会したらしいんですよ。そのときはいい感じだったけど、ある日「『あなたとは合わないです。ありがとうございました。さようなら』って連絡が来たんだけど、どうしよう~!」ってまた相談されて。
「落ち着きなさい、女とはそういうものです」、「だいたいそういうのは本当に離れたら寂しくなるから、向こうから連絡が来るよ」ってなだめたら、やっぱり「連絡が来た~!」というやりとりがありました(笑)。
そういう立場でいたら、それ以外にも男女問わずいろいろな相手からいろいろな恋愛相談が来るようになって。
でもけっきょくその積み重ねでギルド自体がゴタゴタした時期があって、「めんどくさいなあ」と思って、僕はギルドを抜けちゃったんです。
──ネトゲあるあるですね。
最上さん:
ですね~。だからいま入っているギルドは、ギルド内の恋愛は禁止と決められているんです。
禁止というよりは、仲が悪くなる元になるので、男か女かを問い詰めたり、年齢を聞いたり、プライベートな情報を聞き出すのは基本的に止めましょうとなっています。
ですから雑談とかはすごいするんですけど、いまは安定してゲームを楽しむことができています。
個人的な感想ですけど、廃人になるほど攻略重視というか、よりゲームを楽しみたいから、恋愛をしたがらないですね。同じように僕も恋人みたいな相方を作りたいとは思わないです。それより効率を上げてくれる相方が欲しいですね(笑)。
──ともあれいいギルドを見つけたようで。
最上さん:
本当に良かったと思っています。そこの人たちに正体は全然バラさず、普通に楽しくプレイしています。
──ちなみにいまは1日にどれぐらいプレイされているんですか?
最上さん:
休みの日は一日中やっていますね(笑)。ネトゲの休憩でほかのゲームもやったり。
──これ、ゲーマーじゃない人からすれば「え?」という感じだと思うんですけど、ネットゲーマーってネットゲームの休憩に別のゲームをしますよね(笑)。
最上さん:
しますね(笑)。昔はみんなで『スカッとゴルフ パンヤ』をよくやったりしていました……。
──『パンヤ』はサービスが終わっちゃいましたね。
『スカッとゴルフ パンヤ』13年の歴史に幕――パンヤは“戦いに疲れた僕たち”にとっての癒しであり別荘だった【書き手:マイディー】
最上さん:
そうなんですよ!
「ネットゲームって終わっちゃうんだ……」とそれで思って。楽しくてずっとやっていたので何だか寂しいです。あとはネット麻雀などもみんなでやっていました(笑)。
でんぱ組に居たころは本当に毎日忙しかったので、ネトゲは完全に断ち切っていたんです。だからいまは5、6年振りのネトゲ復帰ですね。
──スマホのゲームに行く気はなかったんですか?
最上さん:
いくつかはやっていましたが、ソシャゲって僕は飽きちゃうんですよね。
課金しないとある一定以上は強くなれないというシステムがあると苛立ってしまったりとか。あとは課金さえすれば強くなっちゃうから、別にプレイヤースキルって関係ないじゃないですか。
僕はプレイヤースキルを磨きたい派なんで、お金と時間をかければ強くなるというのは性に合わなくて。ただレベルが高いだけで下手な人っていっぱいいるんですけれど、僕はそれがすごく嫌なんです。
──好みの問題だとは思いますが、仰ることはわかります。
「肉体はもう要らないと思っています」
──いまはネトゲ以外にはゲームはしないんですか?
最上さん:
そうですね……『バイオハザード』シリーズや『コール オブ デューティ』シリーズは「無理だこれ、無理だ!」って目を回しながらですがやっていますね(笑)。
あとプレイステーション4があるので、友達と『クラッシュバンディクー』を遊んだり。久しぶりにやったんですけど、めちゃくちゃ下手くそになっていましたね(笑)。
『クラッシュバンディクー』ってけっこうアクションのセンスが問われるというか、練習すれば絶対うまくなるタイプのゲームだと思うんですけど、僕はせっかち屋さんなので、「イエー! イエー!」みたいなプレイをしています(笑)。
ほかだと『いただきストリート』の新作を懐かしいと思いながらやったり、『Astroneer』をやったり。
──『Astroneer』はSteamのゲームですが、そういうタイプのゲームもやられるんですね。
最上さん:
これはゲーム実況を観ていた妹に勧められたんです。オンラインプレイができるので、仲間と一緒に鉱山を堀り起こしたり、そこに建物を作ったり、自分で資源を供給していくのは好きそうだって。
勧められたと言えば、いまお兄ちゃんに「『ARK』をやろう」と言われていますね。でもいまは『RO』しかやりません。
逆に「お兄ちゃん、『RO』をやろうよ」と言ったら、「俺は『ARK』で忙しいから」と言われて、「ああそうですか」となっています(笑)。
──伺う限り、お兄さんはなかなか硬派なガチゲーマーっぽいですね。
最上さん:
お兄ちゃんはヤバいですね。めちゃくちゃいろいろなゲームをやっています。それらを長いことやってみて、「ダメなものは辞める」、「面白いものは続ける」という感じなんですよね。
だからお兄ちゃんに「このゲームどうだった?」と聞くと、全部説明してくれるんですよ。
「これはね、こうこうこうで。このときにシステムの変更があってみんな離れたんだよね」なんて、何でも知っていて面白いですよ(笑)。
「これを新規で始めるとどうなの」って聞くと、「やってみてもいいと思うけど、チュートリアルだけで一ヵ月ぐらいかかるよ」とか言われたり(笑)。
──ゲームの先生って感じですね。
最上さん:
ほんとそうですね。頭がよくて知識も豊富なので、全部教えてもらえます。
でも一緒には遊んでくれないんです……いまは固定のネトゲ友達がすごくいっぱいいるみたいで、その子たちといろいろなゲームをやるのが楽しいと言っていましたね(笑)。
──最上さんも相当なゲーマーですが、お兄さんはそれ以上かもしれませんね(笑)。
最上さん:
だから僕なんかよりも全然外に出てないんですよ(笑)。小説も大好きで、けっこう創作系の小説とかもいっぱい読んでいるみたいです。
あとはとくにネット系の知識が豊富で。ウチの兄弟ってそういうジャンルに特化しているんですよね。
──ということは妹さんも?
最上さん:
妹はBLに強いですね(笑)。
──(笑)。最近は落ち着きましたが、最上さんはVR/ARといった分野はいかがですか?
最上さん:
VRは酔っちゃうんですけど、いつかVRのMMOはやりたいですね。それこそ『ソードアート・オンライン』みたいなものを。
もうゲームの世界に行きたいんですよ。実際に自分が入れたらどれだけ楽しいんだろうと思います。
──リアルの肉体を捨てて、「データとしてデータの世界で生きる」みたいな。
最上さん:
全然それでいいです。肉体はもう要らないと思っていますから(笑)。
──揺らぎがないですね(笑)。
映画はゴツいのが好き
──映画もお好きだと聞いたんですが、どういったジャンルのものを見るんでしょうか。
最上さん:
映画はホラーをめちゃくちゃ観ます。たとえば昨日は『ダークハウス』(2015)という映画を観ました。そんなに面白いものじゃなかったですけど(笑)。
去年見たホラーで好きだったのが『グリーンインフェルノ』(2015)ですね。完全にスプラッターなんですけど。あとは『ムカデ人間』とかも好きですね(笑)。
──あ、けっこうゴツいほうですね?
最上さん:
ゴツいの好きです(笑)。
そうでなければ『サイレントヒル』(2006)とかは好きですね。『サイレントヒル: リベレーション3D』はちょっと期待外れでしたけど……。あとは『エイリアン』(1979)も大好きです。
──『エイリアン: コヴェナント』(2017)はご覧になったんですか?
最上さん:
観ました観ました。
──けっこううるさいほうだったりします? 「『エイリアン』だったら一作目だよね」、みたいな。
最上さん:
全然そういうのはないです。けっこうホラーだと、どんなにダメな映画でも楽しめちゃうんですよね。
「これ、駄作だな」と思っても変なところに面白みを見出せます。「逆にそこが面白い!」って。
──ではマイ・フェイバリット・ホラーって何でしょう?
最上さん:
ホラー映画はB級から大作まで全部観るぞという気持ちなんですけど……最近衝撃的で良かったのはさっきの『グリーンインフェルノ』ですね。
あ、じつはスマホに観た映画を全部メモしていて、僕なりの点数を全部つけているんです(笑)。
──お。見ても大丈夫ですか?
最上さん:
全然いいですよ。
このメモは2015年からずっとつけていて……三角マークがついているのは劇場へ観に行ったやつですね。2017年に最初に観たのは『バイオハザード: ザ・ファイナル』(2016)ですし、次に観たのは『シャークネード』という超B級ホラーです。
──感想はどこかに書き溜めていたりしないんですか?
最上さん:
観たものを忘れちゃうのが嫌で、ひと言メモみたいなものは付けています。思い出す単語をいちおうメモしておこうと思って。
──その量をご覧になっていたら、一個に対して5行ずつ感想を書けば本になりますよ(笑)。
ネトゲがあるから明日も頑張れる
──いやー、いろいろとお話を伺いましたが、この記事が掲載されたらまた『RO』側から最上さんにアプローチがあるんじゃないですかね。それぐらいの熱量だと思います。
最上さん:
そうだと有難いですね。じつは少し気になっていることがあって……というのも「『RO』のサービスが終わっちゃったらどうしよう」って。
10年以上続いているゲームなんで仕方ないんですが、流石に昔ほど予算もあるわけじゃなさそうじゃないですか……。
だからちょくちょく僕のファンイベントとかでファンの皆さんに「一緒にやろう」と呼びかけているんですよ。「新規アカウントを作ると2週間無料だから!」、「大丈夫だよ、2週間で楽しさを見出せたら、その先は課金して!」って(笑)。
──私設応援団ですね(笑)。
最上さん:
とにかくみんなにやってほしいんです。『RO』がいちばん盛り上がっていたときって、やっぱりたくさんの人たちが接続していたからこそ楽しかったと思うんですよ。だから「廃れないでほしい」という気持ちしかないんです。
いまは少ないサーバーだときっと300人ぐらいしか繋いでいなくて……多くてもたぶん2000人規模だと思います。
10000人繋いでいるのが普通のときにやっていたから、寂しいという気持ちが強いので、サービスが終了しないようにぜひひとりでも多くの人に遊んでほしいという気持ちが大きいです。
──ネトゲはいつか終わりを迎えるものですが、自分が生きている世界がなくなってしまうのはとても悲しいことですからね。でも日本の運営元であるガンホーさん【※】のほかのゲームが元気な限りは、しばらく大丈夫なんじゃないですかね?
最上さん:
そうなんですよ。きっとサービスを辞めたければ辞められるんだろうけど、長持ちさせてくれているのは、きっと運営さんも『RO』に愛着があるんだろうなと思っています。
※ガンホー
ガンホー・オンライン・エンターテイメント。日本での『ラグナロクオンライン』の商用サービスを行っている。『パズル&ドラゴンズ』を手掛けるメーカーでもある。
──たしかにそうかもしれませんね。それではゲーム内の目標などを最後に語っていただければ。
最上さん:
ゲームの目標!? なんかこれ、すごく具体的な話で申し訳ないんですけれど……露店専用キャラ以外のキャラのレベルを全部170にしたいなと思っています。あとは装備を揃えたいですね(笑)。
メインで使っているキャラクターの装備はある程度揃っているんですけど、いざというときに動かすサブキャラの装備もちゃんと揃えて、ギルメンの力になりたいと思っています。
──非常にガチゲーマーらしい(笑)。そのうえで、今後ゲームとお仕事に「こういった形で関わっていけたら」という思いがあればお願いします。
最上さん:
あとそうですね……繰り返しになりますけど、まず「課金のために仕事はしなきゃいけないな」と思っています(笑)。そのうえでなんですが、ゲーム系のお仕事は今後も続けていきたいと思っています。
というのも、過去にもゲーム系のお仕事をさせていただいたのがすごく楽しかったこともありますし、じつはこんなにゲームのお話ができるのはこのインタビューが初めてで、いますごく楽しい気持ちなんです。
それで、あらためて自分が好きでやっていたことを話せる時間って嬉しいものなんだなと思いました。
でもゲームの仕事でいちばんたいへんなのは、やったことのないゲームのオファーが来たときの対応の仕方ですね(笑)。
お仕事をくださる方にも、「ゲーマー=何でもできんじゃん」と思っている方がすごく多いと思うんですよ。
でもゲームを突き詰めている人って、ひとつのゲームを突き詰めている場合も多いので、何でもできるわけじゃないということを知っていただきたいなと。
──プレイしている以上のことは知らないわけで。
最上さん:
ゲームの種類によって向き不向きもすごくありますから。自分が遊んでいないものについては語らないようにと思っていますし、そもそも語れませんから。
まあでも、お話をいただけるのはありがたいので、まずは遊んでみて面白いかどうかを自分で確かめて、ひとつひとつちゃんと見極めていこうと思います……課金のために(笑)。
──課金のために(笑)。
最上さん:
もちろんお芝居やモデルの仕事もいろいろやっていますけど、何かご褒美があるからこそ、それらが全部楽しさに変換できると思うんですよ。僕にとってのご褒美はネトゲなんです。
疲れて帰ってきて、ネトゲに繋いだときに友達と話す時間が楽しいと、「明日も頑張ろう」となれますしね。
それにそういう時間にネトゲをやっている人たちって社会人がほとんどなので、「明日も仕事を頑張ろう」と言っている彼らから元気を分けて貰っているんです。
何事もそうだと思うんですけど、生きるってことは人と繋がり合うってことだと思うので、仕事もゲームも人との繋がりを大事にやっていきたいなと思います。
──最高のまとめになりました(笑)。(了)
「ゲームに救われた」──と言うと、大袈裟だと思うかもしれない。だが最上さんがゲームから受けた影響は、人生を左右するほど大きなものだった。
学生時代に『RO』にハマっていなかったら──でんぱ組引退後に『ラグナロクオンライン』に復帰していなかったら──少なくとも、いまの最上さんではなかっただろう。
“最上もが”として僕らの前に降り立った彼女は、居なかったのかもしれない。その意味でもまさしく彼女はゲームに救われたのだ。
だが最上さんの人生を左右したゲーム体験は、何も特別な出来事ではない。ネトゲ内でいろいろな人と友達になることも、見ず知らずのプレイヤーに助けてもらうことも、恋愛相談を受けることも、そして男女関係のもつれに巻き込まれることも、ネトゲではよく見る日常の光景だ。
リアル世界の苦悩や葛藤の向こうでそれらに触れ、リアルと同等に一喜一憂する彼女の姿は、まったくもって我々と変わらないゲーマーである証だ。
今回のインタビューでは、そんな最上もがさんの新たな一面と、ネトゲが持つ可能性と魅力が垣間見れるものとなっただろう。
【2月22日最上もが2nd写真集『MOGAMI』発売!】
●発売日:2018年2月22日(木)
●予価・仕組み:本体2200円+税・B5判・144P・ソフトカバー
●撮影:桑島智輝 ●ヤングジャンプ特別編集・集英社刊
●特別付録:生写真1枚封入(全4種)
●特別企画:写真集発売記念「最上もがトークライブ」開催
●写真集発売記念イベントも都内某所にて開催予定
【最上もがさんからのコメント】
「一言で言うと、やばかった時期を乗り越えた写真集です。まさに辛かったど真ん中にいた時期だったので、撮影中号泣もしました。そういったことを乗り越えて作ったものなので、満ち足りた、全てに満足している明るい自分だけがそこにいる訳ではありません。
でも、このときの自分は写真に残しておいた方がいい、という時期があると思うんですが、それがこの写真集だったんだろうなと感じています。”生きている最上もが”がこの中にはいると思います。」
【プレゼントのお知らせ】
最上もがさん直筆サイン入り!上記の写真集を抽選で2名様にプレゼント!
詳しい応募方法は電ファミニコゲーマーの公式Twitter(@denfaminicogame)をご覧ください。ご応募お待ちしております!
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