【ネタバレカット版】
『光のお父さん』を映画化するとは
──「光のお父さん」連載開始から約5年……早いものですね。本日は劇場版の公開を記念して、マイディーさんとお父さんのおふたりに話を伺っていこうと思います。
光のお父さん:
よろしくお願いします。
Maidy Maidyは筆者に抱拳礼をした。
マイディー氏:
よろしくお願いします。
光のお父さん:
失礼の無いように。スーツで来ました。
マイディー氏:
僕ジャージですいませんw
──お父さんはお洒落されていますね。
Maidy Maidyは何かに気づいた表情になった。
マイディー氏:
髪の色も変えたようですよ?
光のお父さん:
トランプさんもタキシードでしたし(今回のインタビューはトランプ米大統領来日から数日後に収録された)。
マイディー氏:
……お父さん、ニワトリ【※】はしまったほうがいいんじゃない?w なんでニワトリ連れてんのw
※ニワトリ
エンキドゥという緑色のニワトリ。光のお父さんは、なぜか収録現場に緑色のニワトリを連れて来ていたのだ。
光のお父さん:
緑の卵を産んでもらうって。
──食べるんですか……。
光のお父さん:
緑のハムエッグにして。
Maidy Maidyは困惑した表情になった。
──なるほど(笑)。さて、まずは映画化の経緯から紐解いていこうと思います。
マイディー氏:
最初に話があがったのが、ドラマの終了直後でした。ぴぃさん(渋谷恒一氏のこと)から連絡があり、「劇場版をやりましょう」となったんです。より多くの人にオンラインゲームの可能性が伝えられるのであればと、ふたつ返事でOKしました。
ただ、そのときは「劇場版をやりましょう」というだけで。『光のお父さん』の続編にするのか、編集版にするのか、そのあたりはまだぼんやりでした。
──続編の可能性もあったんですね。
マイディー氏:
ブログでは、その後「光のぴぃさん」【※】につながるので、「それを映画にする?」という話もあったのですが、吉田PD(吉田直樹氏のこと)が「いい話なのだから、何も恐れずそのままで行きましょう」とおっしゃったと聞いてます。
※光のぴぃさん
『光のお父さん』をドラマ化する過程を綴った「一撃確殺SS日記」の連載。
──ドラマ版は原作に忠実というイメージがありましたが、劇場版はブログが原作というよりも、どちらかというと原案のようなイメージを受けました。「自分が書いた物語が自分の手を離れていく」というのは、ドラマよりも映画というメディアのほうが強いと思うのですが、今回の劇場版はどのようなテーマで作られたのでしょうか。
マイディー氏:
まず、映画やドラマは多くの人がかかわって制作されますので、1本の作品を作るにあたり複数の考え方が存在します。なので、これはあくまで僕がかかわった部分に対する僕の意見としてとらえてもらえると幸いです。
その上でお答えしますと、僕と父の実体験という事実を原石として、ブログという無制限に文章がかけるカッティング、書籍というページ数が限られたカッティング、30分全7話というカッティング、2時間というカッティング。どういう形でカッティングして輝かせてるかの違いはあれど、原石は同じですので、手が離れたという印象は持ってません。
僕自身も完全なドキュメント映画を作っているつもりはなく、実話を原作に2時間のエンターテインメントを作るという気持ちで参加していました。
ただ、「オンラインゲームというのは悪いことばかりじゃないんだよ。考え方や受け取り方、活かし方で 人生においてこんなに素晴らしい物になるんだよ。」という僕の中のテーマはずっと変わっていません。見た後にそう思ってもらえるよう常に心がけていましたね。
あと、父が見て不快にならない内容がいいなと思っていましたが、制作陣はそこを深く理解してくれていたので何も問題はなかったです。
光のお父さん:
ありがたいね。
Maidy Maidyはうなずいた。
──ドキュメント映画ではなく、エンターテインメントですか。とてもわかりやすいたとえですね。またドラマ版のころは、「神様の手を借りてしまったら、プレイヤーと地続きの物語じゃなくなってしまうんです」と、スクウェア・エニックスからサーバーを借りずに、Gungnirサーバーと自身のキャラクターを使って撮影していましたが、今回はサーバーの提供を受けたとお聞きしました。
そして、そのドラマ版の撮影はすべてチャットでやり取りされていましたよね。そこには、「FCメンバーには会わない」というマイディーさんのポリシーがあったと思うのですが、劇場版ではそういったポリシーも変わっていることかと思います。なぜポリシーを変えてまで、今回の映画を撮ろうとしたのでしょうか。
マイディー氏:
今回は映画です。お客様がお金を出して時間を割いて見に来るもの。より高いクオリティのものにするには、ドラマ以上に折らなければならないポリシーはたくさんありました。歯を食いしばって耐えたこともたくさんあります。でもポリシーと言えば聞こえはいいですが、それは同時に僕のエゴでもあり、ゲーマー的言葉で言えば「縛り」でもあるわけです。
ドラマ版ではワガママを言って通させていただきやりきったので、映画に関しては、より高いレベルのエオルゼアパート(ゲームパート)を目指したという感じですね。その為に縛りを解いたという考え方です。
悩みはしましたが、皆さんの収入やお小遣いの中から、お金を払ってもらうということは、そういうことだと思っています。
Maidy Maidyは真剣な表情になった。
──「光のお父さん」を映画化するということは、つまりそういうことなんですね。
マイディー氏:
ええ。そしてブログにはブログの良い所、ドラマにはドラマの良い所、そして映画には映画の良い所があると思います。同じ物語ですが、いろんな角度からカッティングされているので、どのバージョンが一番好きっていう意見は当然出てくると思います。
光のお父さん:
私はドラマ版も好きですね。
光のお父さんはMaidy Maidyにうなずいてみせた。
マイディー氏:
母は映画版が好きっていってましたね。
ちなみに僕が一番好きなのは、ブログになる前の「実体験版」ですねw
各バージョンの『光のお父さん』は、そのドキドキをいろんな人が体験できるように、いろんな表現方法を用いていると僕は考えています。
Maidy Maidyは柔和に微笑んだ。
──その体験を提供したことにより、『FFXIV』を取り巻く環境に変化があると思っていまして。ドラマ版の放送前と後とでは、『FFXIV』やオンラインゲームに対する印象が全然違うと感じているんですよ。
少なくとも、私がマイディーさんと吉田(直樹)さんの対談を収録した段階(2017年6月)では、まだまだオンラインゲームは、プレイヤー以外の方からすればよくわからない存在だったというか、良い部分が伝わりにくい状況だったと思うんです。でも今はそうじゃないのかなと感じていまして。そこの変化って、マイディーさん的には何か感じられていることってありますか?
吉田直樹×マイディー FFのドラマ化という前代未聞の偉業と人生の中でのオンラインゲーム【FFXIV 光のお父さん:対談】
マイディー氏:
ドラマを見た方からいろんな感想を頂いていてそう感じることもありますが、実際は、まだまだ全然だと思ってます。
たしかにプレイヤーは、体感で増えてきているように感じます。だからなんとなく一般的になってきたのかなと思ってしまいそうになりますが、それはあくまでこの世界にいるからそう思うだけであって、一歩外に出るとまだまだ理解されていません。
……理解されていないというか、こんなにも知られてないのだなと、映画を作りながら思い知らされましたね。
だからこそ、今回の映画は、ドラマ版同様にオンラインゲームに対して高い敷居を感じている人や、興味のない人にも見てほしいですね。僕の中のターゲットは常にそこです。
光のお父さんにとってココは居場所だった
──そして映画化の話は、当然お父さんの耳にも早い段階から入ったと思うのですが、最初はどう思われましたか?
光のお父さん:
どこまで話が続くのかなぁー、話だけかなーって思いました。
──話半分で聞かれていたんですね。
光のお父さん:
本当はピンときてなかったかも。それがピンとくるようになったのは、俳優を誰にするか、ということが問題になったときぐらいですかね。大杉(漣)さんが亡くなられて、後が大変だろうなって。
そしてだんだん現実的になって、「そうなんだ、映画になるんだ」って思いましたね。
光のお父さんは考えた。
──そうやって映画化実現が進むにつれて、マイディーさんはお父さんにどのような思いを寄せるようになっていったんでしょうか。
マイディー氏:
もともと父は映画が好きでして、僕が学生の頃は休みの日にずっと映画を見てたんですね。
『光のお父さん』は「“一緒に旅をしていたらその仲間が実の息子だった!”という映画のようなシチュエーションをプレゼントしようと思いついた計画だったので、シチュエーションだけでなく、映画そのものになるという、もう一回り大きな親孝行になるかなとは思いましたね。
Maidy Maidyは拳を突き出した。
──映画好き……だからドラマ版や劇場の光のお父さんは「インディ・ジョーンズ」なんですね(笑)。一方のお父さんは、劇場版をどのように受け取ったのでしょうか。
光のお父さん:
正直、子どもに「親孝行したいです」って言われるのは、本当に恥ずかしいですよ。
Maidy Maidyは笑った。
今、私から見た次世代たちは、「光のお父さん」のように、父とすれ違いが多いんです。それは仕事を通じても感じますね。たとえば、うるさい会長と若い社長さん。
でも、息子は親父を見直すんだと、まずブログを読んだときにそう感じたんです。
そのブログが映画になったわけですが、最後は大泣きしました。最初は娘の登場に少し違和感があり……自分の感情に抵抗していたかもしれません。でも、見ているうちにあの娘がとても好きになって、だんだんと抵抗心がなくなり、映画のなかに吸い込まれていきましたね。
そしてこの映画を通じて、自覚したことがあります。それは、ココが自分の居場所だということです。
光のお父さんは目を閉ざした。
──ココ……つまり、『FFXIV』の世界が居場所だと。
光のお父さん:
そうです。人は居場所を求めて生きているんだと。そして、仲間がいるからこそ、居場所になるんだと。そういうことを教えてくれたのが、我が息子マイディですっ!
だからかもしれませんが、フレンドにリアルで会ったときは、興奮して涙が出てきました。最初は訳がわからなかった……ただ、涙があふれたんです。
マイディー氏:
お父さんを支えていたのが、人だったと心から理解できたのかもですね。
Maidy Maidyは微笑を浮かべた。
光のお父さん:
絶対に会社ではできない経験でした。
光のお父さんは目を閉ざした。
──そう言えば、マイディーさんがお父さんに正体を明かし、ブログのこともそのときお話があったと思うんですが、お父さんはブログ版を自分から見に行かれたんでしょうか。それともマイディーさんから「見てみてよ」みたいな話をされたんでしょうか。
マイディー氏:
僕から見てくれと言いましたね。
光のお父さん:
ですね。
──それは、知ってほしかったからですか……?
マイディー氏:
そのつもりで書いていたので。都度何を思ったのか、どういう気持ちになったのか、それを全て伝えないと、ただのドッキリでしかありません。
子どもの頃どんな気持ちだったのか、幼いころはどんなふうに受け取っていたのか。でも、自分も大人になり、当時のことを今思い出して、その意味がわかりました、ということを伝えたいという気持ちがあって、それを記事に練り込んでいましたので……。
Maidy Maidyは柔和に微笑んだ。
光のお父さん:
ブログを読んだときの感動は別格でしたね。あと、父と子の距離が縮まっていくのを一番近くで見ているのはお母さんだから、『光のお父さん』のドラマや映画は、家族のお母さん方が見ると喜ぶ映画じゃないかなーと思いました。
Maidy Maidyはうなずいた。
──そういえばお母さんは映画を観られたんですか?
光のお父さん:
はい。大杉さんよりも、吉田(鋼太郎)さんのほうが私に似てると。
マイディー氏:
どうかなあ……ただ吉田さんの仕草や間の取り方とかは、「取材したのかな?」と思うくらい似ているときはありました。
光のお父さん:
やめてー。
Maidy Maidyは不敵な表情になった。
──あはは(笑)。そして先ほどお父さんの話にも出てきましたが、劇場版ではオリジナルキャラクターとして妹が登場しましたよね。
光のお父さん:
娘がメッセンジャーになっているときの文句はよかったね。
光のお父さんはうなずいた。
マイディー氏:
みんな好きですね、妹。吉田PDも最初の感想が、「妹イイ!」でしたからw
Maidy Maidyは笑った。
──マイディーさんからしたら架空の妹さんですが、どう見られていますか?
マイディー氏:
まず妹は憧れですよね。でも今回の妹は、うちの家族にはいないタイプだと思いますよ。
光のお父さん:
ですです。「うちも女の子がいればよかったね」と母さんも言ってた。
マイディー氏:
でもあの妹がいたからこそ、2時間で「光のお父さん計画」が完遂できたわけで。
──尺の問題は書籍とドラマの段階でだいぶ苦労されてましたもんね。
マイディー氏:
初期段階では、原作になぞって父とアキオ(作中の僕)が別居している設定だったんです。距離が離れていても通じ合えるという、オンラインゲームならではの表現をしようと思ってましたが、話がなかなか進まなかったんですね。
なので心の距離をドラマよりも広げて、あいだに妹を入れたんです。家族の話としての広がりにもなったので、妹はいてよかったと思います。
(光のお父さんはおもむろにMaidy Maidyのほうを向いた)
光のお父さん:
……ねぇー、マイディの次の目標は?
──たしかに『光のお父さん』は映画化までされましたから、今後の目標は気になりますね。
マイディー氏:
ドラマを作ったとき、僕はその楽しさに魅了されました。苦しいことや辛いこともいっぱいありますが、やっぱり0から作品を作るのはとても楽しいんですよね。なので、これからもいろんな作品を作ってたくさんの人に喜んでほしいなーと思ってますね。
光のお父さん:
多くの人に幸せをあげてくださーい。
光のお父さんはMaidy Maidyに「イイ!」と示した。
──お父さんは何か目標ありますか?
光のお父さん:
うーん、目標はやっぱり仕事かなぁ。いくつになってもね。
そうや、ゲームではひとつ攻略しないと。絶対買うと決めたゲームがありました。厄介なゲームです。攻略方法を勉強してもテクニックがなかったら倒せないボス。
──『SEKIRO』ですか?
光のお父さん:
イエス。
マイディー氏:
『漆黒のヴィランズ』がんばるぞ! とか言えばいいのにな、と思いましたw
Maidy Maidyは困惑した表情になった。
光のお父さん:
それはもちろん。『漆黒』は予約しましたー。そしていまは、マイディの影響でモンクの修行中です。
マイディー氏:
「疾風迅雷IV」【※】とか使えるのかな……あと、今回は拡張の準備も全部自分でやらないとねw
Maidy Maidyは不敵な表情になった。
※疾風迅雷IV
ジョブ「モンク」固有の特殊状態。自身に「疾風迅雷」が付与されていると、攻撃力と攻撃速度がアップする。これらの効果は、「疾風迅雷II」、「疾風迅雷III」と数字が大きくなるにつれて上昇。これまでは「疾風迅雷III」までだったが、『漆黒のヴィランズ』より「疾風迅雷IV」が実装される。
光のお父さん:
そうなんですよーー。
マイディー氏:
『紅蓮のリベレーター』まではコードの入力とか全部僕がやってましたからねw
光のお父さん:
ですです。
マイディー氏:
もうひとり立ちしてもらわないと……がんばってくださいw
Maidy Maidyは応援した。
光のお父さん:
はいー。
マイディー氏:
あ、ゲームだけじゃなくて仕事もがんばって下さいね!
光のお父さん:
しんどい。
マイディー氏:
本音出たw
Maidy Maidyは大笑いした。
──……では最後に。マイディーさんからお父さんに聞きたいことがあるそうなのですが。
マイディー氏:
お父さんにひとつだけ聞きたいのですが。
光のお父さん:
うん。
マイディー氏:
5年近くがたって映画になって今に至るのですが。
光のお父さん:
はい。
マイディー氏:
この光のお父さん計画は、親孝行になったのでしょうか?
(座っていた光のお父さん、おもむろに立ち上がり、ゆっくりとMaidy Maidyのもとへ)
光のお父さん:
親孝行てなもんじゃない。
光のお父さんはMaidy Maidyの前にひざまずいた。
光のお父さん:
お前は私に感動を教えたんよ。
感謝してる。
居場所をつくってくれて
……ありがとう。
マイディー氏:
僕も感謝しています。それが聞けて良かったです。
光のお父さん:
良き息子よ
マイディー氏:
……それはサービスしすぎやと思うわ!w
Maidy Maidyは眉をひそめた。
光のお父さん:
ですね。
マイディー氏:
ありがとうございます!以上ですw
光のお父さん:
また麻雀さそってな
マイディー氏:
うんうん。
光のお父さん:
少し喋りすぎました。
──好きなゲームにハマってくれるのは嬉しいですね。
マイディー氏:
ですねw
光のお父さん:
完全にハマってます。
光のお父さんは肉体美を誇った。
──あ、そういえば、犬の散歩【※】は……。
※犬の散歩
光のお父さんはPS4で『FFXIV』をプレイしている。そしてそのPS4は、奥さんからの誕生日プレゼントなのだが、PS4を買う代わりに、光のお父さんは“犬の散歩をする”という約束をしていたのだった。だが、奥さんいわく「全然、犬の散歩に行ってくれへんのやっ!!」らしい。
光のお父さん:
行ってません。
(Maidy Maidyは顔を覆った。)
──やはり。
光のお父さん:
確実に。
マイディー氏:
w
Maidy Maidyは光のお父さんをなでた。
(了)
「ファイナルファンタジー」シリーズ初の実写化でもある『光のお父さん』のドラマ化は、まさに奇跡的なものだった。だが、ドラマ化されるまでの経緯を含めて、この「光のお父さん」で描かれた数々の物語は、人と人が出会うことで生まれる無数のドラマと可能性という、オンラインゲームの体験そのものだ。
そしてその物語は、じつに多くの視聴者を魅了し、魅了された者の中から多くの光の戦士が誕生した。彼らは、奇跡とも呼べる出会いの物語を、今まさに、体験している。
それは、マイディー氏が10年もの間伝えようとしてきた「オンラインゲームというのは悪いことばかりじゃないんだよ。考え方や受け取り方、活かし方で 人生においてこんなに素晴らしい物になるんだよ」という思いが成就した結果である。
もし「光のお父さん」がブログやドラマになっていなければ、彼らは『FFXIV』の世界に降り立っていなかったかもしれない。世界を救うことも、気の合う仲間との冒険することも、最愛の誰かを見つけることもなかったかもしれない。
こうして広い人々に向けた、ゲームの楽しさを語る普遍的な物語である一方で、『光のお父さん』はマイディー氏個人がたったひとりの父親に向けた親孝行の物語でもある。その行方は今回のインタビューで語られた通りで、本当に素晴らしい親孝行であった。
そうそう、この場を借りて、私が見たある光景をお伝えしておこう。2019年5月23日、東京都・朝日ホールにて、『劇場版 光のお父さん』の完成披露試写会が行われた。
会場には各関係者が参加し、私も観客席からその様子を見ていたのだが、完成披露試写会終了後のロビーにて、楽しそうに会話をしているご年配の方の姿があった。そう、彼こそが光のお父さんだ。周りにはフレンドと思わしき『FFXIV』プレイヤーが数名。親子ほど歳の離れたフレンド相手に、とても笑顔で、そして楽しそうに会話をしていた。
それはまさに、我々が大好きなゲームを語り合っている姿と同じ──いや、それ以上の光景だった。何より、あの年配の男性があんなに心から笑っている姿を見たのは個人的には過去に覚えがない。
インタビューで光のお父さんは「ここが自分の居場所だということです」、「親孝行てなもんじゃない。お前は私に感動を教えたんよ。感謝してる。居場所をつくってくれて、ありがとう」と語っていたが、この時、その真意を垣間見た。マイディー氏と私はそれを少し離れた位置から見ていたが、今でもその楽しそうな姿は鮮明に覚えている。
光のお父さん計画……それは、60歳を超えるゲーム好きの父に『FFXIV』をプレイしてもらい、自分は正体を隠してフレンド登録。共に冒険を続け、いつの日か自分が実の息子であることを打ち明けるという壮大な親孝行計画である。
だが、これは単なる親孝行計画ではない。『光のお父さん』は、少しギクシャクしていた親子の絆を取り戻しただけではなく、すっかり落ち着いてしまっていた年配の男性に、一瞬たりとも目の離せない新鮮な驚きに満ち溢れた新たな居場所を与えたのだ。
そうさせたのが『FFXIV』というオンラインゲームだと思うと、とても感慨深い。
そしてブログ、書籍、ドラマといった形で『光のお父さん』が人々に新たな出会いをもたらしたように、映画『劇場版ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん』もまた、より多くの人々に、さらなる出会いをもたらすことだろう。
お知らせ
今回の撮影は、劇場版のマイディー家(現実世界の家)のお父さんがゲームをプレイしている一室を再現したゲーム内ハウスで行った。ハウジングを手掛けたのは、著名な『FFXIV』プレイヤーであるNora Rappyさん(@norakiba)。
このハウスは、本稿掲載と同時に一般公開されており、実際に訪れることができる。Elemental DCにあるため、全てのプレイヤーが訪れられるわけではないが、スクリーンショットなどは自由に楽しんで頂けるため、もしご興味があれば、ぜひお越しいただきたい。
【ハウス情報】
Elementalデータセンター / Carbuncleワールド / ゴブレットビュート 16区43番地
最寄エーテライト:【拡張街】ナナモ大風車
公開期間:6月21日~7月5日
『劇場版 ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん』
・監督:
野口照夫(実写パート)
山本清史(エオルゼアパート)
・脚本:
吹原幸太
・原作:
「一撃確殺SS日記」(マイディー)/ ファイナルファンタジーXIV(スクウェア・エニックス)
・出演:
坂口健太郎、吉田鋼太郎、佐久間由衣、山本舞香、前原滉、今泉佑唯、野々村はなの、和田正人、山田純大、佐藤隆太、財前直見
・声の出演:
南條愛乃、寿美菜子、悠木碧
配給:ギャガ2019年6月21日(金) TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開
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