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一緒にJRPGを盛り上げていきたい!! メーカーの垣根を超えた『テイルズ オブ アライズ』×『ソウルハッカーズ2』制作スタッフによる座談会

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 オープンワールドゲームが主流になりつつある昨今、日本独自のゲームジャンルとして発展しているのが「JRPG」だ。

 JRPGの定義についてはさまざまな議論があるものの、「ターン制の戦闘システム」や「一本道のストーリー展開」、「アニメタッチのキャラクタービジュアル」などが特徴としてあげられる。日本のアニメ・漫画文化が反映されている作品が多い。

 そのためJRPGは海外でも人気が高く、ミリオンを達成するタイトルも生まれている。

 そこで今回、電ファミは「JRPG」に力を入れている2社に、直近で発売されたそれぞれのタイトルについて、時代を反映しながらのシリーズ制作についての秘話などを対談形式で取材を決行することにした。

 バンダイナムコエンターテインメントより、これまで45作品以上が発売されている歴史あるタイトル「テイルズ オブ」シリーズの最新作『テイルズ オブ アライズ』(以下、『アライズ』)のプロデューサー富澤祐介氏とディレクター香川寛和氏をお招きし、アトラスからは前作『デビルサマナー ソウルハッカーズ』の発売から25年という歳月を経て完全新作が発売された、『ソウルハッカーズ2』のプロデューサー・石田栄司氏平田弥氏との座談会を実施した。

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左から、平田弥氏、石田栄司氏、富澤祐介氏、香川寛和氏

 シリーズ作を制作するうえでの葛藤・悩み、ファンコミュニティの意見をどこまで取り入れるのかなど、歴史の長さとどう向き合っていたのかを語っていただいた。また、両タイトルに共通する「RPGというジャンル」についても、メーカーの垣根を越えてお互いのタイトルの印象をうかがいつつ、赤裸々に語り合っていただいている。

聞き手/豊田恵吾
文/柳本マリエ
編集/実存
カメラマン/佐々木秀二


「メガテン」の新たなチャレンジでもある『ソウルハッカーズ2』

──どちらのタイトルも1作目が発売されてから長い歴史のあるタイトルです。「テイルズ オブ」シリーズはこれまでに45作品以上が発売され、『ソウルハッカーズ』は1作目からじつに25年の時を経て新作が発売されたということで、それぞれ異なる葛藤・悩み・やり甲斐があるかと思います。そういった、開発者だからこそ抱くテーマをクロストークで語り合っていただくのが今回の座談会の趣旨となります。

平田弥氏(以下、平田氏)
 たしかに『ソウルハッカーズ』のタイトルとしては25年ぶりではありますが、大きなくくりでいうと『真・女神転生』シリーズ、いわゆる「メガテン」から脈々と引き継いでいるタイトルなので、作っている身としては25年ぶりという感覚はそれほどなかったです。
 会社の席のすぐ隣りでは『真・女神転生V』を作っているし、かたや向こうでは別のタイトルが動いていて。そういった中でどのような位置づけとするかはかなり意識していました。

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石田栄司氏(以下、石田氏)
 自分からはまず最初に話しておきたいのですが、残念ながら『ソウルハッカーズ2』は厳しめの評価をいただいていまして、そこはチーム一同真摯に受け止めていますし、今日はできる限り正直にお話ができればと思います。

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『ソウルハッカーズ2』

 先ほど平田が言ったとおり、『ソウルハッカーズ2』はいわゆる「メガテン」とは地続きのタイトルなんです。僕の場合は『真・女神転生 DEEP STRANGE JOURNEY』のディレクションや、その前は『真・女神転生IV』を作っていて、なんらかの形で悪魔が関わるゲームを常に作っていました。そういう意味では世界設定などリセットになるので、シリーズものを作っていながらも毎回新規IPを作っている感覚はありました。
 さらに言うと僕は「変え続ける」というのがアトラスのゲームだと思っているので、「新作の続編」として前作の影は常に意識しつつ、時代に合わせてどのような変化をするのがふさわしいか模索しつくっていました。

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──なるほど。「テイルズ オブ」チームは、いまのお話についていかがでしょう?

富澤祐介氏(以下、富澤氏)
 「メガテン」という大きなくくりの中でチャレンジされてきたと聞いて、共通するものがあると感じました。「テイルズ オブ」シリーズもタイトルに数字がつくことはたまにありますが、基本的には「テイルズ オブ ○○○」という毎回新しい世界設定やゲームシステムになっています。自由な領域も持ちつつも、守るところは守る。その両軸を考えながらチャレンジをさせてもらっているという意味ではすごく近いですね。

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石田氏
 アトラスは年に一度、ファンの方々にご協力いただくアンケートを実施するんですけど、その中で『ソウルハッカーズ』のリメイクを求める声はずっと上がっていたんです。ただその声に応えるゲーム体験を本当の意味で届けるには、骨子を因数分解し25年後の現代に即したアップデートが必要という両軸の考えがあって、思い切ったリブートにチャレンジする決断から始まりました。

富澤氏
 そうだったんですね。ついアトラスさんに話を戻してしまいました(笑)。『アライズ』については、香川さん、どうですか?

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『テイルズ オブ アライズ』

香川博和氏(以下、香川氏)
 『アライズ』の話をする前にまずお伝えしたのですが、『真・女神転生 STRANGE JOURNEY』は僕がアトラスさんを好きになるきっかけとなったタイトルなんです……!

石田氏
 ありがとうございます(笑)。

富澤氏
 じつは僕は『真・女神転生 DEEP STRANGE JOURNEY』のアニメーションを担当されている平尾(隆之)さんと一緒に、ずっと『ゴッドイーター』をやっていまして……。

石田氏
 そうですよね。じつは『ゴッドイーター』を見て平尾さんにお願いしようと決めました。

富澤氏
 そうだったんですね。じゃあ、もう今日は仲良くなれそう(笑)。

一同
 (笑)。

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シリーズを知らない人からは「なにしてるの?」と疑問に思われる部分も

香川氏
 「テイルズ オブ」シリーズは27年続いているんですけど、基本的に世界設定もゲームシステムも毎回ガラっと変えていくんですね。ですので、その変化に対してはユーザーさんも理解してくださっているように思います。

 ただ、27年続いていると「「テイルズ オブ」とは」みたいなものを問われるところがあって。今回の『アライズ』においてはイチから見直して、ユーザーさんから毎回褒めていただいている部分にまで手を伸ばして調整しています。正直、そのチャレンジは怖かったところでもありました。

 たとえば、バトルのあとの掛け合い。ファンの方からすると評価が高く、「おもしろい」と言っていただける要素ではあるのですが、一方でバトルが続くダンジョンや、探索の際のゲームテンポが悪くなってしまったりと、課題もありました。

 そのどちらの声を取るかはけっこう悩んだ部分でしたが、今回はこの手法を選択させていただきました。

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──ディレクターである香川さんが最終的な取捨選択の判断をされているのでしょうか?

香川氏
 そのときどきではありましたけれど、そういう役目にはなっていましたね。ただ、僕は途中からディレクションを担当しているので、序盤の決定権はまた違う方が行われていました。

富澤氏
 序盤の取捨選択については僕もよくやっていました。それこそ「テイルズ オブ」ではおなじみの「グミ」という回復アイテムですら、その存在意義や新規層にとっての分かりやすさを再検証しました。20年以上もシリーズの中で培われてきた「グミ=回復系アイテム」という文脈は、すでに一つの文化とも言えます。

 ただ、『アライズ』をジャンプアップさせるタイトルとして見たときに、グミは本当に「魅力」として映るのか? 新しくプレイする人の理解を阻害しないか? スムーズに階段をのぼってもらうためにそういったこれまで当たり前だったことの再検証を行いました
 取捨選択といっても完全に捨ててしまうのではなく、「この要素や価値は残すけど見た目を変える」とか「伝え方のテンポ感だけを変える」とか、先ほどのバトル後の掛け合いも「ビジュアルでユーザーさんの時間を止めるのはやめて、プレイに戻りながらでも音声は残す」など、削るというよりも形を変えていくことで、根本的な価値を現代のユーザーにもスムーズに伝えるとういことを目指していました。

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香川氏
 グミについては、「即効性のあるような食べ物にしよう」とか「注射器にしよう」とか、いろいろな声がありましたね。「テイルズ オブ」のエッセンスを残しつつ、新しくプレイする人が疑問に思わないようにするための検討を行いました。

富澤氏
 結果としてグミは残しましたが、シビアなやり取りでしたね。そういった変化についてファンの方々にはなるべく早い段階で言っておくべきだと思ったので、新しくすることの目標を伝えながら説明をしていって。

──10人いれば10人の「テイルズ オブ」像がある中で、統一した答えがあるわけでもないでしょうし、その時点での明確な答えはありませんよね。そういった怖さがありつつも、決断を下す基準みたいなものってどこなのでしょうか?

香川氏
 「ファン以外の方が見たときの見え方」はひとつの基準だったと思います。先ほどのグミの話もそうですが、新たにプレイする人が違和感を抱かないようにする。
 あとは時代の変化とともにユーザーさんの遊び方も変わってきていると思うので、時代性も考えて「いまだったらこちらのほうが受け入れられるだろう」というところも意識しました。

 とはいえ、答えがあるものではないのでずっと不安でしたね。それこそ開発内でも変えるときにはざわついていましたので(笑)。

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富澤氏
 開発がざわついているところを横目で見ながら、変えるところは変えました。新しいユーザーさんをしっかりと呼び込まなければブランドとして永続できないんです。

 『アライズ』は制作に5年かかっていますが、ゲーム開発の規模はHD化や4K化するにつれて、どんなものを作っても時間がかかるようになりました。そうなると既存のファンの方々に楽しんでいただくためには、より多くの新しいユーザーさんに入っていただいて規模を拡大していかないとブランドの維持ができなくなってしまう。それはもう今後も変わらないんですよね。

 継承と進化を両方やっていくことがプロデュース側の全体前提としてあり、開発のみなさんにも伝えました。「富澤、またそんなこと言って……」と思われていると感じつつも、僕が新しくプロデューサーとして入ったタイミングを活用させてもらって結果オーライに持っていくために、そこはブレないようにしようと。

 先ほど香川さんが言ったように、時代性を考えながらJRPGとして求められているものを埋め込む。結果として制作に5年もかかってしまったので「危ない危ない」と思いながら、なんとか出させていただきました。

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「テイルズ オブ」と名前がつかないかもしれないくらいの革新的な試み

平田氏
 グミから検討されたということですが、シリーズとして当たり前のところを見直されていますよね。今回の『アライズ』というのはこれまでのシリーズとは違う立ち位置というか、新生という感じで立ち上がったのでしょうか?

富澤氏
 僕は『アライズ』以前のタイトルについては直接携わっていなかったんですが、2016年に発売した前作『テイルズ オブ ベルセリア』以降、次回作の検討が始まっていました。ちょうどPS3からPS4に変わる時期だったので「エンジンもどうしよう」という話もしていて。RPG全体がハイエンドなルックに寄っている中で、このまま作っていてもニーズにフィットしないのではないかと……。

 そこでブランドがジャンプアップするタイミングと捉え、プロデューサーも交代し、新しいメンバーも加わってチャレンジしていくことになったんです。もう次回作は「テイルズ オブ」と名前がつかないかもしれない、というくらい革新的な試みでした。

 最初はこのタイトルを「テイルズ オブ」ではなく「アライズ」と呼んでいたんです。「発生する」、「生じる」という意味の「アライズ」。最終的には「テイルズ オブ」として整理がなされていくんですけど、ごく初期のときはそれくらい「このチームで新規IPを作る」という気持ちで検討を進めていました

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平田氏
 仮称時に込められていたコンセプトをそのまま継承して正式名称にしたわけですか、なるほど。「アライズ」という名が体を表していたんですね。

富澤氏
 タイトル名はいつも何百もの案を世界中で出すんですけど、「アライズ」が残りました。みんなの中で「ここからやるんだ」という気概が結果的に込められたのかもしれません。

香川氏
 開発的には不安でしたけどね(笑)。特に最初は本当にどうなるかわからなかったので。先ほど述べたとおり、「テイルズ オブ」チームが作る新しいRPGと考えていましたので、「テイルズを変えなきゃいけない」というのが逆に命題でした。

 「「テイルズ オブ」以外を作るにはどうしたらいいのか」というのはすごく悩んだ部分でもありました。結果的にさまざまな部分、さまざまな要素を自分たちで見つめ直す機会ができたことは非常によかったと思っています。自分たちも「テイルズ オブ」シリーズを好きで作っているので、そこを変えることに対しての抵抗感は当初、かなりありましたね。

石田氏
 『アライズ』は世界設定がびっくりするくらいシリアスですし、キャラクターデザインもいままでと異なっていて、まったく違うものを遊んでいるような感覚がありました。

香川氏
 開発中、ほかのプロジェクトのスタッフから「それ「テイルズ オブ」なの?」と言われていたので、そのあたりはずっと不安でした。期待もありつつの不安、ですが。

富澤氏
 発売後のゴールが見えているわけではないので、変えることに対しては「富澤が……」と言っておいてもらえたらいいかなと思っていました。壊したあとに「もう1回「テイルズ オブ」にしますよ」というつもりでやっていたわけではないので。できたものを見ながらみんなで話し合った結果として『テイルズ オブ アライズ』になっていきました。

「このままでいいのか」開発者が抱き続ける葛藤

石田氏
 確証がない中で作り続けるのは本当に難しいですよね。自分の中では「ここのコンセプトはブレずに残っているから、これは『ソウルハッカーズ』なんだ」と思い、スタッフに資料を作って説明するんですが、なかなか共通認識として浸透するのは難しかったです。

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香川氏
 発売まで不安しかなかったです……。『ソウルハッカーズ』チームの中にも、「『ソウルハッカーズ』はこうだ」と思っている方がいらっしゃって、そういった方々から「これでいいんですか?」みたいなことを言われたりすると思うんですけど、まさに我々も開発者側ですら「これで出していいんだろうか?」という葛藤をずっと持っていました。

石田氏
 これまでの『真・女神転生』シリーズは、わりと「背景のない主人公=自分の物語」だったので、あまりパーソナルな話を描いていなかったんです。でも『真・女神転生 デビルサマナー』あたりから色がついてきて、キャラクターと周辺の人々、そしてその周辺の社会に主人公=自分がどうアプローチして接するか、という関係性が強くなってきました。

 今回『ソウルハッカーズ2』は主人公がしゃべるのですが、「しゃべるのは違うんじゃないの?」と言われたりもしましたが、キャラクターに重きを置く「異端者」であるというところを今回の『ソウルハッカーズ』のテーマだと決めて、そこはしっかりやり切ろうと。
そういった「変えることで新たな魅力が生まれる」土壌は『真・女神転生』シリーズのベースにもともとあって。そこからいくつか派生タイトルが生まれた経緯はありますね。

香川氏
 たしかに、いままで主人公はしゃべってなかったですもんね。自分はサイゾーとアッシュの関係が大好きなんですけど、パーソナルな部分を凝って作られているという印象があって。そこを大事にしてらっしゃるというのは、非常にわかりやすくユーザーさんにも伝わっているところだと思います。

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(画像はYouTube – 『ソウルハッカーズ2』PV04より)

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副編集長
電ファミニコゲーマー副編集長。
編集
幼少期からホラーゲームが好き。RPGは登場人物への感情移入が激しく的外れな考察をしがちで、レベル上げも怠るため終盤に苦しくなるタイプ。自著『デブからの脱却』(KADOKAWA)発売中
Twitter:@MarieYanamoto
デスク
電ファミニコゲーマーのデスク。主に企画記事を担当。 ローグライクやシミュレーションなど中毒性のあるゲーム、世界観の濃いゲームが好き。特に『風来のシレン2』と『Civlization IV』には1000時間超を費やしました。最も影響を受けたゲームは『夜明けの口笛吹き』。
Twitter:@ex1stent1a

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