2023年9月27日13時をもって、サービス終了となることが報じられている『ロックマンX DiVE』(以下、オンライン版とも表記)。カプコンの人気アクションゲーム『ロックマン』シリーズの派生作、『ロックマンX(エックス)』シリーズのスピンオフ作品で、スマートフォン向けの基本無料ゲームアプリだ。
そのサービス終了が報じられたのは2023年6月7日のことだった。
それから約1週間後の6月13日、デジタルイベント『カプコンショーケース 2023.6.13』が開催。そこで今回の『ロックマンX DiVE オフライン』が電撃発表され、サービス終了が決まったオンライン版にさまざまな思いを馳せていたプレイヤーこと”プレーヤ”の方々を始め、『ロックマン』シリーズのファンには衝撃が走ったと思われる。
筆者もまさかの展開にビックリすると同時に困惑した。
そんな『ロックマンX DiVE オフライン』は、カプコン発のスマートフォン向け基本無料ゲームアプリとしては、初めてオフライン版が提供されるタイトルとなる。提供形式としては有料の買い切り型。追加課金なしで収録された全コンテンツを遊び尽くせることをセールスポイントとしている。
それにしても、なぜオフライン版が開発されることになったのか?
そんなオフライン版でプロデューサーであるカプコンの麻田壮氏、オンライン版のプロデューサーを務められたカプコン台湾の依田秀登氏へのメールインタビューの機会を得られたことから、気になる開発経緯とそのコンセプトを伺った。
また、サービス終了を間近に控えたオンライン版の思い出、反響があったプレイアブルキャラクターについても並行してお訊きしてみた。
ちなみに後者の回答に関しては筆者個人、思わず「マジかよ」と声が出た次第である。
聞き手・文/シェループ
“ソーシャルゲームだから”『ロックマンX DiVE』を遊ばれなかったファンと新規ユーザーのため、オフライン版は開発された
──今回、『ロックマンX DiVE オフライン』の発売が決まった経緯とはなんだったのでしょうか。カプコンのスマートフォン向け基本無料ゲームアプリとしては、今回の『ロックマンX DiVE』での試みは初めてのものになると思われます。これは『ロックマンX DiVE』というアプリの人気を踏まえて決定されたものだったのでしょうか。
麻田壮氏(以下、麻田氏):
まずひとつに、これまでオンライン版をプレイしてくださった“プレーヤ”の皆さんに向け、「『ロックマンX DiVE』をなんとか残せる形にしたい!」という思いがありました。
もうひとつは『ロックマンX DiVE』を今まで遊んだことがない『ロックマン』シリーズのファン、新規ユーザーの皆さんに向けてとなります。今まで「ソーシャルゲームだから」ということで遊ばれなかった方にも、ぜひ『ロックマンX DiVE』を遊んでみていただきたいとの思いからオフライン版の開発が決まりました。
ですので、これまでオンライン版を遊んでこなかった『ロックマン』シリーズファンの皆さんはもちろん、新規ユーザーの方々にも、さまざまなゲーム内イベントを含めた膨大なコンテンツを楽しんでいただければと思っています!
──オフライン版の開発はいつごろから始まったのでしょうか?
また、開発体制ですが、カプコン台湾は主にモバイルコンテンツの開発・運営を主としていると、カプコン公式サイトに記載されています。それを踏まえますとパソコン版の開発には別チームが組まれたりしたのでしょうか。
麻田氏:
開発が始まったのは昨年からです。
オンライン版と同じく、カプコン台湾の方でゆっくりと進めていました。
また、日本向けには配信されていなかったのですが……カプコン台湾はすでにSteamでも『ロックマンX DiVE』を配信していました。これを踏まえまして、パソコン版も含めて主要な開発はカプコン台湾で行っています。
そしてプロデュースを始め、さまざまな部分で私を含む日本のカプコンメンバーも参加しているという座組みになっています。
──海外ではパソコン向けにも『ロックマンX DiVE』が配信されているというのは小耳には挟んでいましたけど、本当に展開されていたのですね。
麻田氏:
はい、日本を除く数カ国ではパソコン向けにも配信されていました。そのため、オフライン版はスマートフォンとパソコンという実績のあるプラットフォームにフォーカスする形となっています。
──そんな今回のオフライン版の開発で、最も神経を注いだ部分はなんだったのでしょうか?特にゲーム全体の難易度を始め、バランス調整に関してはオフラインとなりますと、多岐にわたって手を加える必要があったと推察されますが……。
麻田氏:
オンライン版はソーシャルゲームだったこともありまして、いわゆる“ガチャ”部分へのフォーカスが強いコンテンツ構成になっていたんですね。
これをスタンドアローン作品、コンシューマゲームとして楽しんでもらえるように……というコンセプトをオフライン版では掲げています。主に報酬の設定、育成要素に関しては最適なレベルバランスになるよう、全体的に調整を行っています。
──パソコン版のUIはマウス操作を前提にした設計になっていますが、これはスマートフォン版のUIを踏まえた決定だったのでしょうか。また、パソコン版をプレイするに当たってのおすすめの操作環境(プレイスタイル)がありましたら、お聞きしたいです。
麻田氏:
はい、もともとのUIがモバイルを前提にしたタッチ操作でしたので、パソコンに移行するに当たってはマウス操作が最適という形になりました。ただ、『ロックマン』シリーズと言えば王道の横スクロールアクションゲームですから、パソコンでもモバイルでもゲームパッドを使って楽しんでいただきたいと思っています。
もちろん、モバイルの方でバーチャルパッドに慣れていらっしゃる方はそのまま問題なく遊んでいただけます。iOS、Android版はBluetooth対応のコントローラでプレイ可能ですので、お持ちであればぜひお試しください。
──オンライン版の時点でもイベントを含め、かなりのボリュームを誇る内容になっていますが、最終的に全部の要素をやり尽くすまでの平均的なプレイ時間はどれぐらいを想定されているのでしょうか。途方もない時間になりそうですが……(笑)。
麻田氏:
やり込み要素を含めてとなりますと……おおよそ100時間は遊んでいただけるかと!
これは各ステージのクリア時間の目安、育成時間を加味しての想定となりますね。
サービス終了が決まったオンライン版で最も反響があったキャラクターはまさかの……?
──9月27日にサービス終了を迎えるオンライン版ですが、リリース後の反響はいかがだったのでしょうか。日本は海外から少し経ってからのサービス開始となりましたが。
依田秀登氏(以下、依田氏):
オンライン版はまず最初に台湾から、という形でサービスインしたのですが、その後に「日本でもサービス開始を!」というユーザーの皆さまからの声を沢山いただいたのはとても印象的でしたね。
その後、待望の日本配信となりまして、日本のユーザーさんからは大変好評をいただいておりました。
──もともと、日本でのサービスが始まった辺りから、すでに『ロックマンX』に限らず、初代『ロックマン』に『ロックマンDASH』といった他の『ロックマン』シリーズのキャラクター、ステージが追加されていましたが、その中で開発チーム側で思い出として残っているものはあったりしますか?
また、逆に開発チーム側で想定していなかった反響……と言いますか。意外なほどウケたことなどもありましたらお聞きできればと思います。
麻田氏:
やはりリコ、ヴィアといった『ロックマンX DiVE』オリジナルのキャラクターたちは印象的で、反響も総じて良かったですね。ただ、感慨深いと言いますと、エックスにエグゼといったメインキャラクターたちになります。
依田氏:
とにかく、これまでの『ロックマン』シリーズでプレイアブル化されたことがないキャラクターが『ロックマン』の世界でアクションしているところを見たい!と思い、検討と実装を重ねてきました。
その中でユーザーの皆さんの反応が特に多く、開発側としてもひときわ印象的だったのは……「ダイナモ」【※】ですね!X(旧Twitter)でもトレンドに「ダイナモ」が入っているのを見ましたよ。
私もそうなのですけど、彼には熱狂的なファンがついているんだなぁと感じましたね(笑)。
※ダイナモ
『ロックマンX5』『ロックマンX6』に登場するイベントボスで、シグマの雇った謎のレプリロイド。
──なんと、まさかの……! 確かに彼は作中での描かれ方もあってか、謎の人気がありますよね(笑)。
そのキャラクターの中で、ひとつ個人的に伺いたい質問があるのですが……『ロックマンX』以外の『ロックマン』シリーズからの登場キャラクターのひとりで、『ロックマンゼクス(ゼクスアドベント)』のパンドラがいました。その相方のプロメテ【※】が登場しなかったのはなぜだったのでしょうか。いずれ追加されそうと様子を見ていたら、サービス終了を迎えることになってしまいましたので。
※プロメテ
『ロックマンゼクス』『ロックマンゼクスアドベント』に登場し、パンドラと行動を共にした”死神”とも称されるロックマンのひとり。大鎌を武器として扱う。なお、『ゼクス』シリーズにおける「ロックマン」とは、英雄たちの魂を宿した金属「ライブメタル」を使って変身した者たちのことを指す。
依田氏:
プロメテの実装はもちろん、予定していました!
なのですけど、検討していた中でサービスの終了が決まってしまいまして……。
結果的に登場できず、パンドラのみという形になってしまいました。
──そうでしたか……。2人は原作での活躍が印象的だっただけに惜しまれます。
コンシューマゲームのように腰を据えてじっくり遊んでいただきたい!
──今回のオフライン版も含め、開発を主導したのはカプコン台湾ですが、社内には『ロックマン』ファンが多かったりするのでしょうか?
ファンの間でも知る人ぞ知る傑作と名高い『ロックマンX コマンドミッション』【※】のキャラクターがサービス開始の早い段階から登場している時点で、だいぶ熱狂的な方がいらっしゃるのではと勝手に推察していますが(笑)。
※『ロックマンX コマンドミッション』
2004年にPlayStation 2、ニンテンドー ゲームキューブ向けに発売された『ロックマンX』シリーズ初にして唯一のターン制RPG。
依田氏:
はい、一部に熱狂的と言ってもいいぐらいの『ロックマン』ファンがいます(笑)。
ただ、メンバーは『ロックマン』シリーズに限らず、『モンスターハンター』に『ストリートファイター』といったすべてのカプコンIPを愛するファンが多いですね。
──もしかして、『ロックマンX DiVE』が『ロックマンX』だけにテーマを絞らないコンセプトになったのも、そうした根っからのファンによるものだったんでしょうか。
依田氏:
そうですね(笑)。
最初にカプコン台湾で『ロックマンX DiVE』の企画を立てたメンバーというのが、根っからの『ロックマン』好きだったんです。それで「横スクロールアクションではなかった『ロックマン』シリーズも含め、すべてのキャラクターを横スクロールアクションで遊んでもらいたい!」というコンセプトから、『ロックマンX』シリーズ以外のキャラクターも登場する形となりました。
──そんなカプコン台湾のスタッフの中で、『ロックマンX DiVE』に登場したキャラクターの中でお気に入りは何なのでしょうか。
麻田氏:
「X ダイヴアーマー」とのことです。
本作オリジナルというのもありまして、かなり気に入られているようですよ。
──「X ダイヴアーマー」はオンライン版のオリジナル要素の中でも人気を博していたので、気に入っているのも納得ですね。最後になりますが、オフライン版の発売を楽しみにしているファンの皆さんへのメッセージをいただければと思います。
麻田氏、依田氏:
まず、サービス開始当時よりオンライン版を遊んでくださったユーザーこと“プレーヤ”の皆さまには、心から「ありがとうございます!」とお伝えしたいです。
そして、オフライン版はこれまでオンライン版の『ロックマンX DiVE』を遊んだことのないユーザーの方々も楽しめる最高のコンテンツとなっています。アプリ内課金、ダウンロードコンテンツもありませんので、多くの『ロックマン』シリーズのキャラクターたちから膨大なステージの数々を、コンシューマゲームのように腰を据えてじっくり遊んでいただけますと幸いです!
──本日はお忙しい中、ありがとうございました!(了)
おそらく、『ロックマン』シリーズ……『ロックマンX』のナンバリング全作を遊ばれている人なら、最も反響があったプレイアブルキャラクターに「マジかよ」と声が出たのも納得いただけると思うのだが、いかがだろうか。
件のキャラクターをまったくご存じないという方は、『ロックマンX アニバーサリーコレクション2』収録の『ロックマンX5』、『ロックマンX6』でお目にかかれる(&戦える)。機会があったら、その独特な存在感と話題になる理由(わけ)を確認いただければと思う。
そんな反響のあったキャラクターこと「ダイナモ」は、『ロックマンX DiVE オフライン』なら(多少、解禁条件を達成する必要があるが)ガチャを回す必要もなく入手可能。手に入れることが叶わなかったキャラクターで、さまざまなステージの攻略からボスとの戦闘を楽しめるようになっている。
また、麻田氏がコメントされているが、オフライン版のボリュームは非常に大きい。先行プレイで確認したところでは、メインのストーリーを終えるだけでも20時間は余裕で超えた。そして、スタミナの廃止や報酬の上方修正などが行われたことで、より圧倒的な力を求める“欲”を刺激するアクションRPGへと様相を変えている。
ジャンルとゲームデザインの方向性は異なれど、横スクロールアクションの『ロックマン』作品としては随一のボリュームを誇る作品になっている『ロックマンX DiVE オフライン』。オンライン版をサービス開始当時より遊び続けている“プレーヤ”の方々はもちろん、「ソーシャルゲームだから」という理由で遊ばれなかった『ロックマン』シリーズファン、そして今まで『ロックマン』シリーズを遊んだことがないユーザーの方々も、このボリューム満点で“もっと力を求めたくなる”アクションRPGの世界に足を踏み入れてみてはいかがだろうか。
先行プレイレポートにも書いているが、パソコン版であれば、そのままSteamで販売中の『ロックマン』シリーズへと移って原点を体験するのも容易だ。『ロックマンX』に限らず、Steamではさまざまな『ロックマン』シリーズが販売されているので、『ロックマンX DiVE オフライン』を通して原作に興味が湧いたら、ぜひ挑戦してみて欲しい。