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伝説の奇ゲー『太陽のしっぽ』はいかにして “常識” を打ち破ったのか?「もっと壊せ」という指示にチームメンバーが狂っていくまで。挑戦と野心に溢れた現場を開発陣が30年越しに振り返る【復刻版リリース記念座談会】

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原始人が寝てしまうタイミングは、もはや誰にもわからない

『太陽のしっぽ』開発者インタビュー:伝説の奇ゲー『太陽のしっぽ』はいかにして “常識” を打ち破ったのか?_040

──『太陽のしっぽ』には企画書や仕様書はなかったのでしょうか?

飯田氏:
ほとんどないよね。最初の1枚くらいじゃない?

櫻井氏:
そうですね。でも、作らないといけないリストはありました。フィールドに必要なアイテムと担当者の名前が併記されていて「じゃあこれで」と渡されるんです。

飯田氏:
企画書は作った覚えがないなあ。

──アイテムリストはあっても企画書のようなものはほぼなく、ゲームの方向性についてはみんなでごはんを食べているときや毎朝の『ときメモ』報告会で固めていったわけですね。

櫻井氏:
そういった場でブラッシュアップされた部分は大いにあります。

──『太陽のしっぽ』といえば、走っていても夜になったら急に寝てしまう「スライディング就寝」が語り継がれていますが、改めて実装の経緯をお聞かせください。

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櫻井氏:
「夜になったら寝よう」と話があり、プログラマーさんが一定時間で睡眠が訪れる仕様を作ってくれたんです。

飯田氏:
それを僕が何回もリテイクしたんだよね。一定時間で寝るのは普通だから「もっと複雑にして」と。疲れたときや空腹のときなど、単なる時間の経過だけではなく人間が寝てしまう条件をトリガーにしてほしかったんです。

──なるほど。

飯田氏:
そしたら今度はデバッグがたいへんで(笑)。だって、どういう周期で寝てるのかわからないから。

一同:
(笑)。

飯田氏:
結果的に、だれにもわからない複雑なバイオリズムが生まれました。

──実際にプレイしていると確かに寝るタイミングがわからなくて「さすがにまだ寝ないだろう」と目の前の動物を攻撃して肉にしようとしたら、攻撃した瞬間に寝てしまい、反撃を受けて死ぬということが多々あります(笑)。

櫻井氏:
水に入ったときや寝ているときに攻撃を受けると途中で起きるんですけど、寝たいところをジャマされて起きているので、そういうときは昼間にまた寝ることもあります。

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夜間の睡眠をジャマされると本来は起きている時間帯に寝てしまう

──現実世界の人間みたいですね。

櫻井氏:
これはプログラマーさんが丁寧に作っているからなんです。

飯田氏:
あと、『太陽のしっぽ』の特徴としては「法線ジャンプ」もあるよね。

──ジャンプボタンを押すと “地面に対して垂直” にジャンプするため、たとえば斜面をのぼっているときにジャンプをすると進行方向と逆の方向に背中から落ちるように後退してしまうこともありますよね。

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斜面をのぼっているときにジャンプをすると
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背中から落ちるように後退してしまう

鈴木氏:
あのジャンプって、移動に時間がかかりすぎるから採用したんじゃなかった?

飯田氏:
そうそう、『太陽のしっぽ』には「移動がダルい問題」があって。でもすでにダッシュは搭載してしまっているから、どうしたものかと思っていたんです。そんなとき、ジャンプの実装の途中で「原始人が法線ジャンプするバージョン」があったことを思い出しました。

つまり、斜面を下っているときにジャンプすると斜面を蹴って進行方向に大きく進むことができるためショートカットできるんです。

櫻井氏:
ジャンプの種類はいくつか作っていましたよね。フィールドはけっこう起伏があるので、法線ジャンプであればその地形を活かせるんです。そのため、ジャンプが決まってからはマップをジャンプの仕様に(不具合が出ないように)合わせていました。

飯田氏:
マップを作ってくれたのはインターンで入ってくれていた方だよね。ずいぶん助けられました。僕はマップまで頭が回らなくて、3Dモデルで作りかけては挫折していたので。いまみたいにMaya【※1】もないから建築用のCAD【※2】を使って作っていたんです。

※1Maya
3D制作に必要な全工程をひとつのツールで完結できる3DCGアニメーションソフトウェア。

※CAD
Computer Aided Design(コンピュータ支援設計)の略称。建築、自動車、電子回路などの設計図面をコンピュータ上で作成するシステムを指す。

櫻井氏:
フィールドに点在している手や足など体のパーツのオブジェは、配置する場所を飯田さんが指示していたんですか?

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飯田氏:
指示の内容はハッキリと覚えてないなあ。でもああいうふうにしたかったことは覚えてる。

櫻井氏:
説明書のマップも、実際の全体マップをフォトショップで加工して作ってくれていました。

──当時はこれが全体マップだということにぜんぜん気がつかなかったです。目次に目が行ってしまい、単なる背景だと思っていたんですけど、復刻版で改めて見たとき「これ全体マップだ」と気がつきました。

飯田氏:
ゲーム内にマップは表示されないから全体像がわからないもんね。

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櫻井氏:
説明書のマップ画像は開発終盤に作られたので、じつは開発中も「洞窟どこ?」と聞かれても説明ができないんです(笑)。「スタート地点から斜め下にまっすぐのところ」みたいな。

飯田氏:
地図のない世界だったよね。

櫻井氏:
「マンモスどこにる?」と聞かれても「北にまっすぐ」しか言えなくて。

飯田氏:
「この音楽が聴こえたら、ちょい右」とかね。

一同:
(笑)。

原始人は「透明の武器」をゲーム開始時から持っている

飯田氏:
原始人たちが持っている武器って進化していくんだけど、じつはゲーム開始から “持っている” んです。

──最初は素手で戦い、文化レベルが上がると武器が開発されて木の棒など持つようになりますよね?

飯田氏:
あれはなにも持っていないように見えて、「透明の武器」を持っている状態なんです。フラグを立てると現れるようになっているの。

──なるほど! 最初から武器はすべて持っていて、可視・不可視が切り替わると!

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なにも持っていないように見えても透明の武器を持っている
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フラグが立つと(武器が開発されると)可視化されて武器が見える

飯田氏:
そうしないと都度モデルを作る必要があるから、たいへんなんです。こう見えてじつは技術的なこともやっていました。

──「技術的」でいうとマップもシームレスにつながっていて、独特な作りですよね。

飯田氏:
プレイ中にロード画面(読み込み)がないからね。

櫻井氏:
仕組みとしては、プレイステーションのビデオメモリにあるテクスチャー領域をふたつに分けて管理しているんです。 ひとつは、現在いるエリアを表示するためのデータが入っている領域。そしてもうひとつは、次のエリアのためにデータを読み込んで差し替えていくための領域。 原始人が走っていく方向に合わせて、次に向かうエリアのテクスチャーをバックグラウンドでどんどん読み込んでいくんです。

──へええ、「先にロードしておく」みたいなことですか?

櫻井氏:
まさにそうです。

飯田氏:
そのおかげでなにが起こるかというと、ディスクがずーっと回り続けるんです。プレイステーションが壊れるかと思うくらいに(笑)。

一同:
(笑)。

飯田氏:
だから僕の隠しトラックはその対策でもあったんです。細かいロジックは忘れてしまったけど、「なんらかの音声データを入れておいてください」と言われていたので。

……まあ、いま弁明しても遅いけどね。鈴木さんはもう僕の代わりに怒られちゃってるから。

一同:
(笑)。

なぜ「水」の表現が「和菓子」になったのか

──フィールドに落ちている和菓子についても実装にいたる経緯を改めて教えていただけますでしょうか。

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櫻井氏:
デザインの先輩がアイテムを担当していたんですけど、「描けない」と行き詰っていたんです。3D空間で食べもの(回復アイテム)をどう表現するか、飯田さんと先輩で検討されていました。

そしたらある日、飯田さんが雑誌をペラペラめくって「これだーッ!」と叫んだんですよ。覚えてますか?

飯田氏:
覚えてる(笑)。

櫻井氏:
「どうしたんですか?」と聞いたら「これだよ!!!」って言うんです(笑)。

一同:
(笑)。

櫻井氏:
それが、和菓子でした。

──原始人と和菓子は異色の組み合わせだと思うのですが、飯田さんは和菓子のどこにピンときたのでしょうか?

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和菓子と獣が同じフィールドに

飯田氏:
当時の僕の視点では「水をどうにかして表現したい」という思いがありました。水は生きるために不可欠なものなのでアイテムとして出したかったのですが、当時の技術では水をリアルな半透明で表現しようとすると、フレームレートが著しく低下してしまうんです。

僕はめちゃくちゃなことをしているように見えるかもしれないけど、いっぽうで学生時代に宮本茂さんからゲーム制作を学んでいたので、「表現の豊かさ」と「ゲームとして成立させるための操作感(フレームレートの維持)」は守りたいと思っていました。

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──ゲームとしての動作を優先しながらもアイテムとして水を出したい、と。

飯田氏:
そんなときに出会ったのが和菓子でした。植物の葉や果物を模したものから抽象度の高い文様までバリエーションが豊かで、水をモチーフとしたものもあります。しかもすべて個体になっているので先ほどのフレームレートの問題も解決できる。これこそが答えだと直感しました。

ただ、よくよくその雑誌の記事を読んだら、創業200年の格式高い老舗「京菓匠 鶴屋吉信」さんの和菓子だったんですよ。

当時の僕は伝統的なものへの素養なんてぜんぜんなかったんだけど、なんとかアポを取り、女将さんと職人さんに会うことができました。

櫻井氏:
それで了承してもらえたんですね。

鈴木氏:
脅したりしてないよね?(笑)

飯田氏:
「原始人のゲームに和菓子を使わせてほしいです!」と一方的に説明したら熱意は理解していただけたようで、和菓子の提供を快諾してくれました。

でも和菓子って季節ものだから各シーズンごとにラインナップが変わり、使わない型は倉庫にしまっていると説明を受けたんですよ。それをダメ元で「全部ください」とお願いしました。

櫻井氏:
そうしたらある日、開発現場にほぼ全種類の和菓子が入った箱が届いたんです。本来ならその季節にしか食べられないはずの和菓子も含めて、はち切れんばかりに詰まっていました。

──ええっ、ということはわざわざ倉庫から型を出して特別に作ってくださったんですね。

櫻井氏:
はい。それらをひとつずつデジタルカメラで撮影していきました。

飯田氏:
あれも深夜だったよね(笑)。撮影が終わったあとはみんなで茶会を開いておいしくいただきました。

櫻井氏:
今回『太陽のしっぽ』の復刻版が発売されるというお知らせが出たとき、和菓子のことを思い出して、日本橋のコレド室町3の店舗で30年ぶりに食べてきました。カウンターに座っていると目の前で作ってくれるんですよ。

飯田氏:
どんな味でした?

櫻井氏:
上品でおいしかったです。

飯田氏:
僕は京都の立命館大学まで通勤してるんだけど、じつは近くに鶴屋吉信さんの本店があるんですよ。もうね、建物から格式高くて買いに行くのも物怖じしちゃうくらい。

僕たちが交渉に行ったのは三軒茶屋の店舗だったから、これがもし本店だったら行けなかったかもしれないね。

あえてBGMを流さない “沈黙の時間” がある理由

──『太陽のしっぽ』は原始時代を舞台にしながらサイケデリックなテクノ音楽が流れることも特徴のひとつだと思います。サウンド面でも飯田さんから指示があったのでしょうか?

鈴木氏:
最初は「ラフなイメージだけどこの曲どう?」と飯田さんに持って行ったんですよ。そしたら「ちょっと普通すぎる」という話になって。

一同:
(笑)。

飯田氏:
普通は「普通」でいいんだけどね。

鈴木氏:
だから、「みんなでアイデアを持ち寄って相談しよう」ということになったんです。そこで集まったのが、ミニマル・ミュージック、ハードコアテクノ、デトロイト・テクノ、果てはパンクまで、いろいろ聴きました。そのなかから、自分たちがやりたい「テクノっぽいニュアンス」を抽出していったんです。

──テクノの持つ反復性は、「マンモスを追いかけ続ける」というゲーム内のルーティン(反復作業)と非常に親和性が高いように感じるのですが、反復によるトランス状態みたいなものを狙って演出されたのでしょうか?

鈴木氏:
それはあります。あるんですけど、じつはBGMが流れ始めるとだいたい10〜20秒くらいで切れるんですよ。

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──あっ、確かにそうですね。常にBGMが流れているわけではなく、流れているときと流れていないときがあります。

鈴木氏:
というのも、反復性の高いテクノがBGMとして流れ続けると作業感が強すぎてダメだと考えました。

飯田氏:
ああ、そうだね。

鈴木氏:
新しいエリアに入ったときにBGMが流れ出すんだけど、「これから探検するぞ」「マンモスを狩るぞ」という気持ちを少し煽る程度にしたかったの。時間にすると10〜20秒でじゅうぶんかなと。

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ここのエリアに入ると爽やかな曲「Yboob」が流れる

飯田氏:
それでいうと『アクアノートの休日』も特定の座標から音が鳴るようにしていますね。

──なるほど。一般的なゲーム音楽のあり方と照らし合わせると、いまのお話は独特だと感じました。通常、ゲーム音楽はプレイヤーを飽きさせないために、あるいは作業に没入させるために、あえて中毒性のあるメロディをずっとループさせて流し続けるのが定石です。音を鳴らさない沈黙の時間をどうデザインされているのでしょうか?

飯田氏:
サウンドによる過剰な演出をしたくないんです。「ここで泣け」とか「ここで盛り上げろ」という強制をあまりしたくなくて。でもまったく音がないとさみしいから、その塩梅が難しい。

くわえて、僕はどうしても「なぜここで音楽が流れているのか」「それはキャラクター自身が聴いているのか」「プレイヤーが聴いているのか」と気にしてしまうんです。ずっと流れていると疲れちゃうから、自分が作るゲームではそこを整理しようと思いました。

さっき鈴木さんが言っていたように『太陽のしっぽ』は「探索するぞ」「狩るぞ」という原始人の気持ちがプレイヤーに伝わればじゅうぶんだと思います。

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櫻井氏:
ゲーム実況などを見ていても『太陽のしっぽ』は「音楽がいい」と言われていますよね。

飯田氏:
サウンドテクスチャーもザラついた音を混ぜて使ったりしてね。

鈴木氏:
「ザーッ」という音を混ぜているので、よく「ホワイトノイズ【※】を使ってますよね」と言われるんですよ。だけど、実際は風の音なんです。

飯田氏:
えーっ!

鈴木氏:
風が吹いたときに「ピューッ」と音階のように聴こえることがあるじゃない? あの瞬間を再現したいと思ったんです。それに風って「渇き」とか「飢え」のイメージもあったので、そういう音を取り入れました。

飯田氏:
へええ、そこまでしていたのは知らなかった。

※ホワイトノイズ
すべての周波数成分を均等に含んだ雑音のこと。テレビの空きチャンネルの「ザー」という音に近い。

鈴木氏:
あとはマンモスの声かな。そもそも誰も聴いたことがないから「ゾウなら外さないだろう」とゾウの声をベースにしています。「パオーン」というゾウの鳴き声は金管楽器が鳴ってるように聴こえるので、トランペットを入れて調整しました。

飯田氏:
なるほどね。鈴木さんって絶対音感があるの?

鈴木氏:
えっ、ぜんぜんないよ。

飯田氏:
でもサウンドをやっていると環境音がミュージックに聴こえるんだ?

鈴木氏:
「なんかメロディっぽいな」と思うことはあるね。

飯田氏:
そういえば鈴木さんの音楽のルーツってどこなの?

鈴木氏:
普通にバンド小僧でした。ハードロックもポップスもやったよ。

飯田氏:
えーっ、そうなんだ。

──『太陽のしっぽ』の音楽は「テクノが好きな人が作るテクノ」というイメージがあったのでバンドは意外ですね。ちなみに当時、サウンドはどのような環境で作られていたのでしょうか?

鈴木氏:
振り返ると、かなり “しょぼい” 環境ですよ。いまのテクノロジーならパソコン1台でなんでもできますけど、当時はMac用の「サンプルセル」【※】という、ソフトサンプラーの先駆けのようなシステムをメインで使っていました。機材に詳しい人が見れば、なんてことない構成だったと思います。

※サンプルセル
Digidesign(現Avid)が開発した、Macに専用の拡張カードを装着して動作させるサンプラーシステム。

──先ほど、グラフィックで「もっと壊せ」という指示があったとうかがいましたが、音楽でもそれが起きているように感じました。サントラには電車のフィールドレコーディング音が入っていたり、シンセの音色もリバーブが深くかかっていて独特です。当時のメジャーなテクノのフォーマットを踏襲しつつも、「ぜったいこのゲームでしか聴けないだろ!」という音が詰まっていると思います。

一同:
(笑)。

──そうした音作りは、飯田さんから指示があったのでしょうか?

鈴木氏:
テクノといっても、綺麗なテクノはいくらでもあるじゃないですか。でも、このゲームの音はそうじゃない。とにかく、飯田さんは「予定調和」を嫌うんですよ。チームのみんなが「予定調和はナシだ」という共通認識を持った時点から、いい意味で狂っていきました(笑)

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飯田氏:
ゲーム制作でよかったよね。これがどこかのアジトで、詐欺とか企まずに済んでよかったです(笑)。

一同:
(笑)。

鈴木氏:
『太陽のしっぽ』を発売する会社ってすごいよね。

飯田氏:
さっきも言ったとおり上から呼び出されて「こんなゲーム作ってどういうつもりだ」と言われるんですけど、僕からしたら「そっちこそどういうつもりなんだ」と思っていました。野放しにして。

一同:
(笑)。

飯田氏:
でもこうして時間が経つと、アートディンクさんにはよくしてもらったなと思います。これは本当に、本心で。

当時の僕らは若くて失うものもなかったから進退問題も上等だと思っていたわけですよ。それこそゲーム業界が将来どう転ぶのかもわからなかったから、一時的におもしろいことをやっているような感覚でした。

だから、よく許してくれたと思いますね。

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──最後に発売から30年の時を経た『太陽のしっぽ』というゲームをいまどのように捉えているのかお聞かせいただけないでしょうか。

鈴木氏:
いまの若い人が遊んで、原始人がいきなり寝たときにどんな反応をするのか。そのリアクションを見たいですね。アートディンクのゲームって今回の『太陽のしっぽ』みたいに復刻シリーズを展開していくのかな?

──あっ、そうみたいです。アートディンクのゲーム開発の歩みを記録(=ログ)として現代のゲームハードへ移植・復刻するプロジェクト「ARTDINK GAME LOG」の第1弾が『太陽のしっぽ』で、第2弾は『アクアノートの休日』を予定していると情報が出ています。

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櫻井氏:
『太陽のしっぽ』は「元祖オープンワールド」と言われたり、いっぽうで「目的がよくわからない」と言われたり、評価が多方向に分かれるゲームです。ただ、触った人の記憶には強烈に残る

それは、スタッフが納得できるまで作り込んだからだと思います。獣の強さを1体ずつ設定したり、マンモスを倒せない人のために洞窟でもマンモスの牙を拾えるようにしたり。じつはけっこう救済措置もあるんです。

飯田さんから「任せた」と言われた範囲で、おのおのが自分の専門職で時間内に着地させました。「なんでいきなり寝るんだよ」と不条理に感じても、触っているうちに「あっ、睡眠時間が短いからまた寝ちゃうんだな」と納得できる。そういう手触りが、人気を後押ししてくれているのではないでしょうか。

また、そういうふうに『太陽のしっぽ』を支持してくださる人のなかに、『ファイナルファンタジー』シリーズの音楽の生みの親である植松伸夫さんがいたことに驚きました。

飯田氏:
いまの僕、植松さんに似てるよね。ビットサミット【※】で植松さんとすれ違ったとき「あれっ、兄さん???」と思ったから。

一同:
(笑)。

※ビットサミット
2013年から毎年京都で開催されている日本最大級のインディーゲーム展示会。

飯田氏:
では、最後に “主犯” として締めさせていただきます。

正直なところ『太陽のしっぽ』が、こんなに息の長い作品になるとは思っていませんでした。自分のことだけでいうと、当時は『アクアノートの休日』がヒットしたものだから「癒やし系」なんて言われてチヤホヤされていたんです。いっぽうで、新しいジャンルを「開拓した」と言われることに内心ではムカムカしていました。

だから「次回も癒し系のものを」と言われるたびに、「俺はそんなんじゃない、本当はめちゃくちゃなんだぞ」と思っていたんです。当時はその誤解がしんどかった。

『太陽のしっぽ』はそういう気持ちが爆発したように感じます。だからあれほど振り切れたんだと。

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その後もゲームを作っていますが、これほど振り切れたことはありません。ある種の倫理観を、いったん壊して突き抜けることができたのはスタッフみんなの力です。今日、鈴木さんと平ちゃんから話を聞いて改めてそう感じました。

『太陽のしっぽ』は阪神・淡路大震災をきっかけに生まれたゲームで、僕は現在その被災地に自ら住んでいます。そこで体験したことは、初めてのことや困難に直面しても恐れずにやっていける人間の “タフさ” でした。

いまは生きるのが大変な世の中かもしれないけれど、若い人たちに「こんなデタラメでもOKなんだ」とケラケラ笑いながら遊んでもらえたら、『太陽のしっぽ』を作った甲斐があります。皆さんの人生を、このゲームで少しでも盛り上げていけたらうれしいですね。(了)

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人は、30年ぶりに再会するとどんな反応をするんだろう。

この座談会が実施されるまで、そんなことを考えていました。30年という年月は「久しぶり〜」のひと言では片付けられない、人生のドラマがあるはずです。外見も中身も価値観も大きく変わり、まったく別人のようになっていてもおかしくありません。

ハグをして喜び合うかもしれない。あるいは接し方がわからなくて口数が少なくなるかもしれない。念のため、裏にガソリン(お酒)も用意して3名をお迎えしました。この座談会は30年という節目のお祝いでもありますからね。

しかしながら、筆者の心配はまったくの杞憂でした。

実際に3名が集まると「昨日も会ってた?」と思うくらい自然に、大きなリアクションはなく、ごく普通のトーンで談笑が始まったからです。開発当時は新卒だった櫻井氏がまるで3兄弟の末っ子のように、飯田氏と鈴木氏から「平ちゃん平ちゃん」と呼ばれる姿に “30年の壁” は感じませんでした。

おそらく、同じ熱量でひとつの作品に向き合った者たちだけが共有できる、深い信頼関係があるからだと思います。

『太陽のしっぽ』開発者インタビュー:伝説の奇ゲー『太陽のしっぽ』はいかにして “常識” を打ち破ったのか?_060

また、途中で語られている「サーベルタイガーが交尾している巣」については実際にその場所に行って確かめてきました。マップが表示されないゲームで特定の場所にたどり着くまでの「旅」を記事にしているので、よかったらあわせてご覧ください。

ちなみに筆者は『太陽のしっぽ』が発売された1996年当時は小学生で、同級生たちと笑い転げながら原始人を操作していました。「移動中にも寝る」「意図しない方向にジャンプする」「マンモスがとにかく強い」など小学生には爆笑ポイントが多く、夢中で遊んでいた記憶があります。

今回の座談会でお話を聞いて、その遊び方でよかったんだと安心しました。根底には「震災」というテーマが流れているものの、『太陽のしっぽ』には人を前向きにするエネルギーがあるゲームだと思います。

筆者のように昔遊んだことがある方や、この記事で興味を持ってくださった方は、ぜひSteamやNintendo Switchで体験してみてください。きっと「なんだこれ!?」と思わず笑ってしまうと思います。

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編集
幼少期からホラーゲームが好き。RPGは登場人物への感情移入が激しく的外れな考察をしがちで、レベル上げも怠るため終盤に苦しくなるタイプ。自著『デブからの脱却』(KADOKAWA)発売中
Twitter:@MarieYanamoto
編集者
ゲームアートやインディーゲームの関心を経て、ライター/編集をしています。

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