「電波ソング」という単語を聞いて、皆さんはなにを思い浮かべるだろうか?
・よくわからないけど楽しくて夢中になれる。
・摩訶不思議な世界に浸れて現実逃避ができる。
・曲を聴くと2次元にいけたような気がする。
おそらくどれも間違ってはいない。
「電波ソング」はその独特の成分によって、刺さる人にはひと際深く突き刺さり、聴く者の心を揺り動かす。
2000年初頭に「電波ソング」という呼称が生まれたのだが、その起源は諸説あり、定かとはなっていない。しかしながら現在に至るまで濃密なコミュニティに支えられている楽曲ジャンルなのである。
そして令和の現代、電波ソングに特化したリズムアドベンチャーゲーム『ゆんゆん電波シンドローム』がSteam向けにアライアンス・アーツより4月24日に発売となった。
ヒキコモリの少女“Qちゃん”が、大好きな2次元キャラクター“ゆんゆん”への愛を電波ソングに乗せて怪文書としてインターネットに発信していくという内容で、タイトルが表すとおり電波成分が全開。
さらには出演陣にも隙がない。
ゆんゆん役を務めるのは、「電波ソング」という呼称がまだなかった1996年から「アキバ系」として音楽活動を行っている桃井はるこさん。
主題歌『電波的妄想美少女Q』を歌唱するのは、「電波ソング」の歌姫として知られ、『恋愛CHU!』で合いの手を生み出したと言われるKOTOKOさん。
Qちゃんを演じるのは、インターネット発の電波ソングの歌い手として注目を集めているななひらさん。
4月某日、「電波ソング」歌姫3人の鼎談を実施しませんか? とアライアンス・アーツから打診を受け、特別鼎談取材を実施する運びとなった。
3歌姫のクロストークから飛び出したのは、「電波ソング」という呼称が生まれるまでの歴史的な証言と歌唱にかける想い、そして電波ソングへの果てしない愛だった。
聞き手・文/豊田恵吾
撮影/永山 亘
※この記事は『ゆんゆん電波シンドローム』の魅力をもっと知ってもらいたいアライアンス・アーツさんと電ファミ編集部のタイアップ企画です。

「電波ソング」はオーディエンスが作った言葉でありジャンル
──本日はよろしくお願いします。まずは、皆さんが「電波ソング」という単語に出会ったとき、それぞれどういう印象をお持ちになったかというテーマからスタートさせてください。KOTOKOさんと桃井さんは「電波ソング」という単語がまだ世に生まれていないタイミングから活動されていましたので、「出会った」とお聞きするのは正しくはないのですが……。
KOTOKOさん:
おっしゃるとおりで、電波ソングという単語に出会ったという感覚はないですね。「電波ソング」という言葉がまだ生まれていない時代からいろいろな楽曲を手がけていく中で、たまたま「ちょっとポップでかわいい曲を作ってください」という依頼をいただいて、それに合わせた曲を作っていたんですね。
そのときに「何か物足りない」と感じて、アイデアとして「こういう合いの手を入れたらどうですか?」と提案したところ、それが思いのほかウケちゃったんです(笑)。それからは「似たような雰囲気の曲をお願いします」という依頼が増えていきました。
そういう曲が私以外の方からも出てくるような時期、そういったちょっと変わった曲調が盛り上がってきたところで、自然発生的にネットなどを中心に「電波ソング」と呼ばれるようになっていったんですよね。誰が名づけたのかもわからないし、どこ起源だったのかもわからない状態で「気がついたら「電波ソング」と呼ばれている?」という感覚です。
桃井はるこさん(以下、桃井さん):
私が「電波ソング」という単語を最初に認識したのは、“笑える電波ソングを集めるガイドライン”【※】というサイトを見たときで……。ななひらさんはこのサイト、ご存じですか?
※笑える電波ソングを集めるガイドライン……2000年代のインターネット上で、ユーモアや中毒性のある「電波ソング」を愛好家たちが収集・分類していた個人掲示板(サイト)。
ななひらさん:
知っています。全盛期に見ていたわけではないのですが、あとあとサイトの存在を知りました。あ、こんなまとめサイトがあったんだって。
桃井さん:
いまはインターネットで音楽を聴くことがふつうですけど、2000年ごろはCDなどの物理メディアで聴くのが主流でした。多くの人に音楽を届けたい場合は「メジャーデビューして音楽CDを出す」という時代。
そんな時代の中、美少女ゲームのメーカーさんが、オープニングの曲やショートバージョンを公式サイトにMP3で公開するとか、宣伝のためにオープニング映像と曲がついたものを用意して秋葉原の店頭で流すことを始められたんですね。
ただ、MP3データをダウンロードするのも、2000年ぐらいのときはまだPCリテラシーが高い人しかできないことだったわけです。曲を自分で探すのもたいへんだし、ダウンロードするのも簡単じゃない。そういう人たちのために、”笑える電波ソングを集めるガイドライン”さんがまとめてくれていたんですね。
KOTOKOさん:
すごく親切ですよね。
桃井さん:
”笑える電波ソングを集めるガイドライン”はいまでもサイトが残っているんです。このサイトまだあるんですよね。お礼を言いたいので、この記事を読んでいたらぜひご連絡ください(笑)。
KOTOKOさん:
当時はBBS【※】で「この音楽いいよ」と広めてくれたり、口コミ的に宣伝してくれて、それをみんなが知っていくみたいな流れがありましたよね。
※BBS……Bulletin Board Systemの略。インターネットを使ったネット掲示板のこと。掲示板(スレッド)形式で、投稿に対して返信(レス)をする形式が主流。パソコン通信時代からあり、SNS以前のインターネット上の交流ツール。
桃井さん:
いま考えるとすごいですよね。メインストリームとはまったく違うところにそういう流れが勃興していたわけです。ただ、私は「電波ソングっぽいもの作ってください」と言われるのがけっこう嫌だったんですね。というのは、私自身の活動としては「ほかの人がやらないようなことをやりたい」という思いが強くて……。
たとえば、美少女ゲームの曲って、当時はいわゆるメジャー音楽会社の人はまったく眼中になかった状態だったんです。でも私は、美少女ゲームや秋葉原の店頭で流れているPCゲームの曲に影響力があると思っていて。そこで何か「おもしろいことをやりたい!」という思いがあったわけです。
新しいことをやっているつもりが「あれみたいな曲を作ってください」ばかりになると、私の考えと逆になっちゃうので、それが嫌だったんです。いま考えると「桃井さんが作った曲のこれみたいなのをお願いします」と言われるのはとてもうれしいことなんですけど、当時はまだ若かったのでちょっと抵抗みたいなものがあって(笑)。
最初に、UNDER17【※】っていうユニットを作るきっかけになった、”笑える電波ソングを集めるガイドライン”にも書いてある『いちごGO!GO!』【※】という曲を作ったんですね。
※1 UNDER17……桃井はるこさんと小池雅也氏による音楽ユニット。 “萌えソングをきわめる”ことを目的に2002年に結成。
※2 『いちごGO!GO!』……2001年に発売されたADV『いちご打』の主題歌。
その前年に、KOTOKOさんがKOTOKO TO AKIという名義で作られた『恋愛CHU!』【※】っていう曲があって。メーカーの方から「この曲がすごく流行りそうっていうか流行ってきそうな感じだから、これに対抗できるような曲を作ってくれ」みたいなことを言われて、対抗できるような曲を作ったと(笑)。
アキバの店頭で流したら他の電気屋さんの曲にも対抗できるくらいインパクトがあって、耳に残る曲というイメージで。当時は『恋愛CHU!』のようなポップな曲は珍しくて、美少女ゲームの曲はバラードっぽいものが多かったんですよね。
※『恋愛CHU!』……2001年3月23日にサガプラネッツより発売されたADV『恋愛CHU! -彼女のヒミツはオトコのコ?-』の主題歌。

KOTOKOさん:
あ、そうそうそう! 泣ける系のソフトがすごく爆売れしていた時期だったんですよ。なのでバラードが主流で、かわいいポップな曲は少なかったかもしれない。
桃井さん:
私は昔から秋葉原に遊びに行っていたので、2000年に「アキバ系」と自称してCDデビューしたんですね。電波ソングというのは他称で、勝手に周りから言われてたというか。日本初のオーディエンス、ファンが作ったジャンルなんですよね、電波ソングって。
──ななひらさんは世代的におふたりが切り拓いて生まれた「電波ソング」という単語が、すでに広く普及しているタイミングから活動を始められたわけですが、「電波ソング」という言葉、ジャンルに最初に出会った際、どういう印象を持たれたのですか?
ななひらさん:
そもそも電波ソングと言われる曲に出会ったのは偶然なんです。電波ソングを調べようとして調べたわけじゃなくて、誰かが書かれていたブログか何かで、おすすめのアニソンとかゲーム曲を紹介する記事の中に『さくらんぼキッス ~爆発だも~ん~』(以下、『さくらんぼキッス』)【※】が入っていたんです。
「『さくらんぼキッス』ってなんだろう?」と調べて聴いてたときに、「世界にはこんな楽曲があるんだ、これが電波ソングっていうんだ」と感じて、それが出会いでした。
そのときまではテレビとかラジオでよく流れているポップスばかりを聴いていたので、もう世界が広がったという感じでしたね。こんな好きにやっていいジャンルがあるんだ、という衝撃でした。
※『さくらんぼキッス ~爆発だも~ん~』……2003年3月14日に戯画より発売されたADV『カラフルキッス 〜12コの胸キュン!〜』の主題歌。
KOTOKOさん:
ななひらさんのカバーバージョン、聴かせていただきました。すごくかわいらしい声で歌っていただいて。
ななひらさん:
ありがとうございます!




