KONAMIのVRC技術はものすごい。その時代のゲーム機から鳴るはずがない音が出る
──「VRC」を意識されたのは、いつぐらいからだったのですか?
堀井氏:
ファミコンの『沙羅曼蛇』からだと思います。初期の『がんばれゴエモン』のころだと、さきほどお話したように「データが多いな」くらいの印象でした。『沙羅曼蛇』のときはオプションが3つあったので、「この3つ目がもしかしてVRCのおかげなのかな」と思っていた時期もありました。まあ、違うんですけど(笑)。
上野氏:
VRCって、最初から表立って宣伝されていたんでしたっけ? MSXで使っていたSCC【※】については登場と同時に表に出ていたと思いますけど。
※SCC……Sound Creative Chipの略。KONAMIがMSX用ソフトに搭載した、独自の波形メモリ音源兼メモリーバンク制御チップ。このチップの搭載により、当時のパソコン音源を凌ぐ、表現力豊かなサウンドを実現。
堀井氏:
当時から出していましたね。「コナミカスタムVRC」と『沙羅曼蛇』の時点でもう言っていました。
河北氏:
自分が意識するようになったのは大人になってからですね。チップとかに若干詳しくなったときに、ようやく「2メガってそういうことね」ということがわかってきて。VRCチップというものがあって、それでROMがカスタマイズされることによって、カセットの性能が向上していっていったんだなと。
上野氏:
たしかに、出てきていた当時はそんなに気にしていなかったですね。
河北氏:
『悪魔城伝説』の曲を聞いたときに本当にびっくりしました。

堀井氏:
あれはびびり倒すよね!
河北氏:
「なんじゃこりゃ!」となりましたね。本当にびっくりして、オープニングをずっとループで聞いていましたから。
堀井氏:
当時のゲーム機で鳴るわけがない音が鳴ってましたからね。
河北氏:
それから『ラグランジュポイント』を見たときに、もちろん音もすごいのですが、絵も妙に発色がいいなと。たくさん色が出ていて本当にすごかった。
上野氏:
僕は音のほうから入る感じが多かったので、VRCⅣ〜Ⅵはとくに意識していましたね。
──VRCに代表されるように、当時はROMカートリッジの独自企画を各社がしのぎを削って開発することで、より良くなっていった時代だったのでしょうか。
堀井氏:
そうだと思います。
上野氏:
私もその当時はいちユーザーとして遊ぶ側でしたが、あとから話を聞いたりすると、競い合うという感覚もあったみたいですね。開発者さんたちの「もっとこんなことをしたい」という情熱が、いろいろなチャレンジに向かっていったという印象があります。
──『がんばれゴエモン』シリーズはVRC搭載タイトルが多い【※】ことも特徴としてありますが、移植作業の中でVRCの進化について感じる部分はありましたか?
※『がんばれゴエモン』シリーズのVRC搭載タイトル……VRC搭載:『がんばれゴエモン!からくり道中』、VRCⅡ搭載:『がんばれゴエモン2』、『がんばれゴエモン外伝 きえた黄金キセル』、VRCⅣ搭載:『がんばれゴエモン外伝2 天下の財宝』。『クライシスフォース』もVRCⅣ搭載。
堀井氏:
『がんばれゴエモン』に限った話ではないのですが、KONAMIのファミコンタイトルをずらっと並べると、進化を感じるものがあります。
そこに別の会社さんのタイトルも並べてみると、「切磋琢磨しているな」ということがわかるんですよね。
河北氏:
各社さんが本当にいろいろなことにチャレンジしていて、おもしろかったですよね。
堀井氏:
やっぱりアーケードから出てきている会社さんの技術はとくにすごかったと思います。
河北氏:
ハードを作っているところは技術力がある印象ですよね。自分はレトロアーケードゲーム基板も集めているんですけど、KONAMIさんの基板って研ぎ澄まされた日本刀みたいでものすごく綺麗なんですよ(笑)。
──「基版が綺麗」というのは、なかなか聞かない感覚ですが、どう綺麗なのでしょうか?
河北氏:
もともと基板を集めている方々の中では「KONAMIの基板は配列がすごく綺麗」と言われているんですね。『出たな!! ツインビー』の基板を買ったときに確認して驚きました。メーカーによっては無骨に重ねているところもあるんですけど、KONAMIさんの基板は整然とROMが並んでいて、思わず「美しい! 刀みたいだ!」と言ってしまいました(笑)。
──(笑)。移植にあたって、VRC搭載タイトルの難しさというものはあったんでしょうか?
堀井氏:
幸いなことに、VRCがどうこうの前に、我々が好きなゲームばかりだったので、そもそも仕事とは別腹でやれてしまったような感覚があります(笑)。もちろん簡単にできたわけではないのですが、そもそも13タイトルも詰め込んでしまっている理由も、そのあたりにありましたから。
上野氏:
弊社のほかのコレクションでもVRC搭載タイトルを扱っていたという経験も大きかったですね。
堀井氏:
もし僕が若造のころにKONAMIさんに入っていたとしたら、「KONAMIに入るとこんなすごいものに触れるのか」と感動していたと思うんですね。KONAMIさんは技術だけではなく、サウンドチームもすごかったですし。
上野氏:
VRC後半は、「もっとこうしたい、ああしたい」という開発の熱量が、カスタムチップをどんどん進化させていったような印象ですね。
堀井氏:
サウンドは最終的にFM音源になっていますからね。
──ファミコンでFM音源再現はやりすぎですよね(笑)。当時、「どんな理屈でそうなるんだろう?」と思っていました。
堀井氏:
これはよく言われる話ですが、ファミコンってスタートのころと終わりのころを比べると、アーキテクチャがぜんぜん違っていて、もう別マシンだよな、という感じがしますね。
ゲームボーイカラーの「正解の色」探し
──河北さんは、これまでにエムツーさんが手がけたKONAMIさんのタイトル移植には携わっていたのですか?
河北氏:
そのころはまだ参加していませんでしたね。
──では、今作で実際に移植に携わってみて、難しかったところなどありましたか?
河北氏:
個人的な感想としては、ゲームボーイカラータイトルの『天狗党の逆襲』の再現がかなり難しかったです。
というのも、開発担当者からゲームボーイカラーのバリエーションを何色かパターンで見せてもらったんですが、ゲームボーイカラーの色表現にはさまざまなバリエーションがあるんですね。
ですので、近い色で再現するために、何人かですごく苦労して見比べました。「これだろう」と選んだ色でも、詳しく調べると違っていたり。パターンが何十もあるのですが、正解はその中のひとつなんです。
──正解というのは、オリジナルのゲームボーイカラーの実機での色、ということですよね?
河北氏:
そうです。それがどこかにあるらしいんです(笑)。言葉で説明するのは難しいんですが、赤とかオレンジとか、青も微妙に違っていたりしていて。
ゲームの起動時に出てくるKONAMIさんロゴの色ですら違うんですよ。青になったり、緑だったこともあります。それを見つけ出して合わせるのがたいへんでしたね。
ただ合わせ方はある程度わかったので、ノウハウがひとつ溜まったいう感覚があります。
──今回の収録タイトルで、みなさんがとくに思い入れが強いタイトルを教えてください。
堀井氏:
僕はやっぱり初代ですね。アーケードとはまったく流れの違う、力の入ったタイトルとして意識していました。正直に言うと、自分では買っていないんです(笑)。幸いなことに親友が持っていたので、友人宅で遊んでいました。
記憶に残っているのが、当時の僕らより半回りくらい小さい子が「この人たちはなんで「そうだ、そうだ」と言ってるの?」と不思議そうにしていたんですよ。
ご存じのとおり、『からくり道中』は「御用だ、御用だ」と音声合成で再現されているんですけど、小さい子だから時代劇を見たこともなくて、「御用」という言葉を知らなかったんですよね。だから、「そうだ、そうだ」と空耳してしまったと。ゲームの内容にまったく関係ない話で申し訳ないのですが、このエピソードがすごく印象に残っています(笑)。
河北氏:
私は『ゆき姫救出絵巻』ですね。大学時代に漫研に入っていたんですけど、部室に『ゆき姫救出絵巻』がセットアップされていて、授業のないやつが入れ替わりで遊んでいました。
堀井氏:
それで終わりまで進められるんですか?(笑)。
河北氏:
できましたね。授業が終わったあとに「どこまで進んだ?」と言いながら部室に入っていって(笑)。グラフィックもすごく綺麗ですし、サウンドもインパクトがあったので、好きでしたね。
──たしかに『ゆき姫救出絵巻』は最初に遊んだときに衝撃が大きかったのを覚えています。グラフィックの進化はすごかったですよね。
堀井氏:
スーパーファミコンの初期にこれが作れるのは、すごいですよね。
上野氏:
僕がいちばん印象に残ってるのは『天狗党の逆襲』です。あまり深くは語りませんが、僕がKONAMIに入社して最初のほうに関わったタイトルなので、懐かしさもあり。
多くの方の記憶に残っているタイトルという意味では、『ゆき姫救出絵巻』と『奇天烈将軍マッギネス』、たまに『獅子重禄兵衛のからくり卍固め』という方が多いという印象ですね。
──基本的に当時をそのまま、忠実に移植をされているわけですよね?
河北氏:
基本はそうですね。そこにクイックセーブ/ロードや巻き戻しの機能を追加しています。
上野氏:
エムツーさんも我々もそうなんですが、方針としてまずは「オリジナルの感覚をそのままもう1回再体験できる」ということをいちばんに考えています。巻き戻しやクイックセーブ/ロードは「用意しておきましたから、もしよろしければどうぞ」という感じです。とはいえ、いまの時代、もうこれなしじゃクリアできないような気もします(笑)。
河北氏:
そうですよね(笑)。
上野氏:
開発中にオリジナルをプレイし直してみて、改めて「自分も含めて、当時の子どもたちはよくこのゲームをクリアしていたな」と思ったりしたんですけど、よくよく考えてみるとそもそもクリアできてなかったことが多いんですよね。クリアできていたという記憶が自分の捏造で(笑)。ファミコンの、とくに初期のころは、クリアできたゲームなんて本当に数えるほどですよね。
河北氏:
『からくり道中』をプレイしていて、崖下や川に落ちた瞬間にふつうに死んでしまって「は?」となりました(笑)。この時代のゲームは容赦ないですよね。
13タイトルも収録したおかげで、サウンドの総数はなんと約600曲
──サウンドモードの「みゅうじっく」機能については、最初から入れることが決まっていたんですか?
上野氏:
エムツーさんとはその点について一切話をせずに、自然と用意されていたような気がします(笑)。
河北氏:
いつの間にか決まっていましたね。社内で「やる?」聞かれて「はい」と答えて終わる、という感じでした。サウンドに関しては曲数がものすごかったのでたいへんでした。残念ながら『クライシスフォース』の曲はサウンドモードには入れていないのですが、『がんばれゴエモン』シリーズの収録タイトル曲はすべて入っているんですよ。
──収録作の全音楽をまとめるとなると……。
堀井氏:
曲数は数百はあると思いますね。
河北氏:
1作で80曲もあるタイトルがありましたから。
上野氏:
……いまざっと確認したら最終的に600曲ほど収録していますね(笑)。
──(爆笑)。それは……チェックすることを考えると想像したくない数字ですね(笑)。
堀井氏:
ループせずに1日流しっぱなしにできますね(笑)。
河北氏:
開発中、いつもどおりの感覚で曲を入れていたらスタッフから「1回で読み込めません」と言われましたので(笑)。
上野氏:
『グラディウス オリジン コレクション』のときもそうだったんですけど、サウンドモードを入れるとそれだけでROMの容量が増えるんですよ。
堀井氏:
容量が増えると原価に影響しますから……。
──そういった意味でも、相変わらず上野さんとエムツーさんのタイトルは、サービス精神が振り切れているなと(笑)。
堀井氏:
自分たちのために作っている部分もありますからね。
上野氏:
そうですね。『クライシスフォース』についても、いろいろと理由を語りましたけど、結局は「自分がやりたいから」というのが正直なところかもしれません。曲についてはCDボックスとかも考えていかなければ、とも思っているのですが。
──こうやって過去のレガシーを残すのは未来につながりますし、本当にいい取り組みだと思います。
上野氏:
そうなんですよ。もっと言ってください(笑)。
──(笑)。
河北氏:
ちなみに曲名は立札デザインで用意しているのですが、これもすべて縦書きなので1点1点、手作業で作っています(笑)。
──メニュー項目を用意するだけで恐ろしい作業量ですよね。
堀井氏:
1日1個作っていても、確実に開発期間に間に合いません(笑)。
上野氏:
字詰めをどうするとかも話していましたよね。
河北氏:
英語の表記を縦にするか横にするかとか、いろいろ打ち合わせましたね。
堀井氏:
手にした方の全員が触る場所ではありませんが、好きなところをつまみ食いしながら、こういったところにも気づいてくれたらうれしいですね。ほかのところを触ったらまた戻ってきていただいて、「今度はこっちも見てみるかな」と。
河北氏:
別のところでお話すると、ファミコンタイトルを遊んでいるときには右側に操作説明が出てくるのですが、この部分の制作も結構がんばりました。プレイ画面の右側に操作方法や、アイテムの使用方法が出てくるんですね。
上野氏:
これもがんばりましたね。ふつうに遊んでいると「「招き猫」ってなんだ?」、「印籠」ってなに?」となりますから。
──取扱説明書の資料も入っていますよね?
河北氏:
13タイトル、全部入れてあります。これもまた数がすごかったです。
──説明書は、オリジナルのもとデータが残っていたのですか?
河北氏:
はい、KONAMIさんからご提供いただきました。
上野氏:
オリジナルの取扱説明書をスキャンして収録しました。多言語対応していたらこれも翻訳しなければならなかったわけで……。多言語対応だった場合、この仕様は入れなかったかもしれません。
説明書の中に、当時実施していた「ユーザーさんからのアイデア募集」を紹介しているページもあるんですけど、今回の収録にあたって同意の確認をとるのが難しく、氏名に関しては残念ながら伏せ字になっています。
上野氏:
ですので、「これ俺が送ったやつ」と、プレイヤーのみなさんからどんどん発信していただければ……。それで盛り上がっていただけたらうれしいです。
『ゴエモン大集合』を作ったのは「自分が老後に遊べるソフト」を用意しておきたかったから
──そろそろ締めとさせていただければと思うのですが、「ここはアピールしておきたい!」というポイントや、言い忘れていたことがあればぜひお聞かせください。
河北氏:
タイトル画面はかなりがんばったので、ぜひ注目してください。最初に、とにかく処理落ちしてもいいから、最大限まで動かすようにしておいて、そこから削っていくという制作方法で作っていったんですね。
扉が開いてメニュー画面に入っていくという演出があるんですけど、そこから世界観に入ってもらうというイメージで、かなりこだわって作っています。『ゴエモン大集合』の世界に没頭できるように作っていますので、ぜひ手に取って楽しんでもらいたいですね。
──シリーズの順番通りに遊ばないといけない、というわけではないんですよね。
河北氏:
好きなタイトルをつまみ食いしてくれれば大丈夫ですね。
上野氏:
むしろ最後まで触らないタイトルがあってもいいと思っています(笑)。
河北氏:
アクションだけじゃなくて、RPGもありますからね。
上野氏:
年末まで遊べるんじゃないですかね(笑)。
とくに、スーファミのアクションゲームは遊び倒していただけるものになっていると思ってます。開発中、何周したのかわからないくらいですから(笑)。半日かからずにクリアできますし、ちょうどいい楽しさなんですよね。外伝のRPGもターボ機能のおかげで、すごく遊びやすくなっています。
──ちなみに、上野さん的に『がんばれゴエモン』らしさをどう定めていらっしゃるのですか?
上野氏:
『がんばれゴエモン』らしさ…………と悩んでしまう感じが『がんばれゴエモン』らしさじゃないでしょうかね(笑)。
──(笑)。
上野氏:
なんでもありなんですよね。いい意味で関西のおふざけというか、お笑いも含めた「関西ノリ」のような部分があるのかなと思います。
あとは変に大人ぶらない、というのもそうだと思います。どこまでいってもいい意味で子ども向けというか。
──では最後に、本作をすでに遊んでいる方、楽しみにしている方に向けて、それぞれメッセージをいただければ。
河北氏:
長年続いている『がんばれゴエモン』シリーズですので、自分がいちばん好きなタイトルからまず遊んでいただいて、その流れのまま『がんばれゴエモン』ワールド全体を感じてください。オリジナルを遊んでいた方々は、プレイしながら昔を思い出して、長く遊んでもらえるとうれしいですね。
堀井氏:
『がんばれゴエモン』がひさしぶりに現行機に帰ってきます。「待ってました」という人もたくさんいると思うので、ぜひ好きなように遊んでください。「なんであのタイトルが入ってないんだよ」というご意見もあるかと思いますが、そこは未来にご期待いただけるとうれしいです(笑)。
ベストを尽くして開発しましたので、たくさん遊んで、感想をそこらじゅうに書いてもらって、またお会いできる機会があればいいなと思っています。
ゴエモンたちも「ようやく出番が来た」と思っているんじゃないかな(笑)。その出番を、みんなで迎えてあげてください。本当にいいものになりましたので、よろしくお願いします。
上野氏:
私からは……たいへん長らくお待たせいたしました……ほかに何を言おう(笑)。
「もう1回遊びたいな」、「こう遊べたらいいな」と思っていた形を目指して、エムツーさんといっしょに作らせてもらいました。本当に末永く、一生遊べるゲームになったんじゃないかなと思います。昔遊んでいた方はぜひ手に取っていただければうれしいです。(了)
シリーズ13作ものタイトルに加えて、初移植となる『クライシスフォース』、約600曲のサウンドから、各タイトルの取扱説明書まですべてを収録。異様な大ボリュームとなった本作は、まさに開発者たちが「やりたかったこと」が詰め込まれた作品だ。
話を聞けば聞くほど、「やりたいからやる」という作り手の熱意に圧倒される。それは河北氏らを始めとする本作の開発メンバーだけでなく、「VRC」という当時からすれば変態的な技術によってゲーム表現をとことんまで追求した、かつてのKONAMIスタッフにも通じる姿勢だろう。
やらなくても、ゲームとしては成り立つ。でも、やりたいから、やる。
だからとんでもないボリュームにもなるし、おまけのシューティングゲームも全力で作る。本作は、そうしたクリエイターたち自身の思い入れと遊び心によって生み出された作品なのだ。








