──ここから『TATSUJIN EXTREME』の話をうかがわせてください。さきほど齋藤さんからもお話がありましたが、弓削さんはオリジナルの『TATSUJIN』をどう思っていらっしゃったのでしょうか?
弓削氏:
「やり残したことをやりたい。その続きを作りたい」と思ったんですよ。それがいまの会社を作ったきっかけでもあります。当時は技術的に実現できなかったものも、いまだったらできるんだろうなと。

──オリジナルもすばらしいゲームですが、それでも「やり残し」があったんですね。
弓削氏:
ありました。それは『究極タイガー』だろうが『飛翔鮫』だろうが、全部そうです。
──そのやり残しについて、詳しく聞かせてください。
弓削氏:
まず、「見せ方」ですよね。たくさんのオブジェクトが画面いっぱいに広がるとか、そういう表現は当時は叶わなかったんですよ。それによってゲーム性も変わってくるし、そこをブラッシュアップできるだろうと。
あとは音楽。音楽に関しては、『TATSUJIN EXTREME』で劇的な進化を遂げています。いい意味でまったく違うものになっている。東亜プラン時代はいつも不完全燃焼でリリースしていたので、「どこかで整理しておかないといけないな」と長年考えていたんですよ。
──自分が手がけた過去作に向き合うにあたり、気恥ずかしいみたいなところはあったのでしょうか。
弓削氏:
いや、恥ずかしさはありませんでした。逆に、改めてプログラムを解析してみて「これすげえな」って(笑)。「いい仕事してるじゃん」と(笑)。
齋藤氏:
弓削さんからは「『TATSUJIN』シリーズの続編ではなくて、あのときの続きを作りたい」という想いを聞いています。
──ちなみに、本作はTHQ Nordic Japanが販売元で、TATSUJINが開発元となっています。弓削さんは、サウンドとプロデュースを担当されているのでしょうか。
弓削氏:
あとは企画にも参加しています。ディレクションや敵の配置を齋藤がやっているんですけど、それぞれがやりたいことというか、得意なことをやっている感じですね。
──齋藤さんがジョインされて約5年ということですが、『TATSUJIN EXTREME』をいっしょに手がけてみて、お互いの印象はいかがですか?
弓削氏:
自分はもう感謝とリスペクトしかないです。ただ、彼は自分のことを「歯がゆい」と思っていますよ。なかなか私が「捕まらない」し。
──「捕まらない」というのは?
齋藤氏:
言葉どおりなのですが、弓削は代表取締役なので社長業が忙しいんですよ。ですので、捕まえるのがまずたいへんなんです(笑)。入社して最初の1年くらいは、ほぼふたりだけで制作を進めていたんですね。「企画をまず最初に固めよう」と。どんどんアイデアは出していくんですけど、それを弓削に聞いてもらう時間を作るのがたいへんで(笑)。
弓削氏:
その後、毎週1回、強制的に拘束されるようになりました(笑)。
齋藤氏:
それまでは、空いている時間にスケジュールを入れても別の予定が入ってダメになる、というのをずっと繰り返していて。そこで「この曜日のこの時間の1時間だけは、絶対に空けてください」と、強制的に毎週話をするようにしたんです。
──企画の骨子を作るにあたり、もっとも重視されたのはどの部分だったのでしょうか?
齋藤氏:
最初に「『TATSUJIN』らしさは残したい」と私のほうから提案しました。つぎに、「何が『TATSUJIN』らしいか」を話し合ったんですね。でも弓削は、「『TATSUJIN』らしさは全部捨ててくれ」と言ってきたんです。
「『TATSUJIN』の続きというか、やり残したことをやるんじゃないんですか?」と聞いたら「それにこだわっていたら、新しいものは作れない」と言うんですよね。それもわかるんですけど、「それだと『TATSUJIN』という名前じゃなくていいじゃないですか?」となるじゃないですか。その問答をかなりしましたね。
弓削氏:
私は開発に入ると矛盾したことを言うんですよ。
齋藤氏:
たとえば、「3種類のショット」はそのまま出したいと思ったんですね。そこはまず主張したところです。『TATSUJIN EXTREME』の「『TATSUJIN』っぽさ」は私から「入れたい」と打診して入れたものが多いです。それがなければ、まったく別のシューティングになったと思います。
──ちなみに、『TATSUJIN』の、ボムが即発動して敵の攻撃を相殺するという発想は、どのように生まれたのですか。
弓削氏:
そのほうが楽だろうな、と思ったからです。ラグがあると、ボムを落とすあいだに死んじゃったりする。即爆発できる達人ボムだったら生き延びられる、と。緊急回避ボタンの意味合いも当然あるものです。
ショットも空中と地上、上下の撃ち分けが当たり前の時代だったんですね。空中の敵にはこのショット、地上の敵には別のショットでないと当たらないという。この「上下の撃ち分け」をなくしたときも、バイヤーの方を集めて初めて見せたときに、みなさんから「なんでひとつのショットで上下どちらの敵にも当たるの?」と突っ込まれたんですよ。そのときに、「ゲームだからです」と答えて(笑)。生意気な20代でしたね(笑)。
あまり理屈で考えたことはなくて、私のやり方としては「こういうプレイができたらうれしいだろうな」ということを優先しています。
ただ、「ゲームをやるときにどう考えるか」ではなく、日常生活で「こういうことが起きたら、人はこう思うだろうな」ということを基準にしています。

──話を『TATSUJIN EXTREME』に戻しますが、弓削さんが捕まるようになってからはスムーズに進んでいったのでしょうか?
弓削氏:
齋藤とは短い言葉ですぐ意思疎通できるのがすごかったですね。多分、過去のゲームの作り方や、消化する能力が似ている部分があったんだろうな、と。
齋藤氏:
企画での話と、実際にプレイしてみての感触はまた別のものなので、そのときに「こうしたほうがいいんじゃないか?」といった話は何度もありました。その繰り返しでしたね。
──弓削さんが遊んで指摘が入って、ということですね。
弓削氏:
指摘というよりも、自分の好き嫌いを言っただけですよ。どれが「正しい」というのはないので。
齋藤氏:
完成まで、3年近くかかっていると思いますが、こういった泥臭いやり方でした。企画書も何度も書き替えているので、最初の企画アイデアは残っていないかもしれません(笑)。実際、ボツにしたものもたくさんあります。
──『TATSUJIN EXTREME』の見どころをぜひ聞かせてください。
弓削氏:
ひと言で言うと、シューティングをやったことない初めての人から、マニアックな人まで楽しめるように、いろいろなものが用意されています。かなり派手にしていますし、まだ公開していない隠し要素もいろいろあって、それもド派手にしています。
──もう弓削さんの「やり残し」はない?
弓削氏:
いや、やればやるほど新たに出てくるので、困ったもんです(笑)。
サウンドは全部で78曲。過去の楽曲の音源もダウンロードコンテンツとして26曲用意しました。
ステージBGMだけで16曲あるのですが、作るのが本当に楽しかったですね。『TATSUJIN』と『達人王』の楽曲アレンジをすべて行い、それでも足りなかったので新曲として5曲作っています。

──この弓削さんのパワフルさについて、齋藤さんはどう感じられましたか?
齋藤氏:
もうすごいですよ、本当に。『TATSUJIN』アレンジ楽曲の制作を横で見ていましたが、「昔、作曲した時点ではここまでの曲が頭の中にできていた」というのを具現化されたというか。当時はハードウェアのせいで実現できなかったけど、30年経ってできるようになって、それをようやく世に出せる、という作業をやられていたんですね。ですので、「あのときの続きを作りたい」という想いは、収録されている曲に込められていると思っています。
弓削氏:
作成したアレンジ曲をBGMで流しながらクルマを運転していたんですけど、「ん? ここを直したいな」というのがいっぱい出てきて(笑)。
──(笑)。齋藤さんからの見どころや、ここをぜひ体験してほしいというところはいかがですか?
齋藤氏:
『TATSUJIN EXTREME』というタイトルのとおり、『TATSUJIN』というシューティングゲームを蘇らせたい、というのはあります。弓削がどう思っているかは置いておいて、私としてはそういう方向でやりたいと思ったので。
遊び方としては、『TATSUJIN』そのものを触っているような感覚になるゲームにしたかった。「いまの時代だからこういうシステムはいるだろう」とか、「新しいゲームシステムじゃないと受け入れられないだろう」という考えは徹底的に排除して、逆に「昔のゲームを遊んでください」というぐらいの気持ちで作ったんです。
ですので、遊んでくれた人が「懐かしいな」と思ってくれれば、それが成功かもしれません。ただ、昔のゲームそのままではありませんので、新しい部分もありますし、「ここは進化したな」と思ってもらえる部分もあります。
『TATSUJIN』に限らず、私がいままでシューティングを作ってきた中でも「これがいちばん遊んでいて気持ちいいな」というところを出したつもりです。
──シューティングファンからすると、おふたりの組み合わせに「東亜プラン×セイブ開発」、「『TATSUJIN』×『ライデンファイターズ』」の掛け算を期待している部分もあると思うのですが、そこで意識されたことはありますか?
弓削氏:
そういった意識というよりも、「絶対にいい化学反応を起こすな」と確信していたんですよ。
私と齋藤の作り方を見ると、自分と違うところもあるし、共通する部分もある。自分ひとりで作るよりも絶対にプラスアルファになっているし、相乗効果が生まれているんだな、という実感があったんですね。
齋藤氏:
私も同じ感覚があります。もちろん違うところもあるのですが、『雷電』系の作り方と東亜プラン系の作り方の両方を経験させてもらって、根本はだいぶ違うな、という感覚があったんですね。私は『雷電』のオリジナルスタッフではないので、口伝で聞いてきた話にはなってしまうんですけども。
そうなってくると、私は『雷電』系のもとで開発の教えを受けて、自分なりの作り方を『ライデンファイターズ』や『雷電III』を作っていくうえで確立したものだったんですけど、弓削の考え方はまた違うんですよ。言葉にするのは難しいのですが……。
弓削氏:
言葉に置き換えると、私が「これがいい」と思っていることがあるとするじゃないですか。「なんで?」と言われると、答えられないことが多いんですよ。「なぜこれがいいのか」というのは、「自分がいいと思っているから」としか言えない。
おそらく『雷電』を作られた方は、多分「理由」が言えるんです。「こうだからこれは絶対受けますよ」と言える。
たとえば『TATSUJIN』のレーザーなんかは、私が夢で見たやつをそのまま映像化しただけなんです(笑)。「それがなぜ売れるの?」と聞かれても「派手だからいいんじゃない」としか答えられないというか。
齋藤氏:
だから言語化は難しいですね。
──ちなみにTHQ Nordic Japanさんから、ゲームの内容に関しての要望はあったのですか?
弓削氏:
何もありませんでした。こちらの人材が不足していたので、直前でパブリッシングをやっていただくことになった、というのが本当のところです。
──『TATSUJIN EXTREME』を作るにあたって、市場分析も行われたのでしょうか?
齋藤氏:
いまでもシューティングはふだんからプレイしていますので、これといった研究・分析はしていません。「いまっぽいシューティングだとこうなるだろうな」というのは感覚的にはあったんですけど、あえてそこを深掘りはせず。逆に『TATSUJIN』や『達人王』を現代でイチからやってみる、という感じでしたね。
『TATSUJIN』はプレイしましたね。当時の私は秋葉原に住んでいたんですけど、「HEY」というタイトーさんのゲーセンに『TATSUJIN』が入っていたんですよ。「ちょうどいいな」と思って毎日行って遊んでいたんですね。それで、『TATSUJIN』のプレイ感覚は取得できたというか。ユーザーとなって『TATSUJIN』をプレイして、開発に活かす、というサイクルを作ったと思います。

弓削氏:
繰り返し楽しんでもらいたいので、できるだけ奥深くしたかったというのもあります。スコアラーがチャレンジを楽しめるように、ランキング機能も入っています。
齋藤氏:
コンシューマーとアーケードの違いは、最初にお金を出すか、お試しでいくつかプレイできるか、その辺の違いになるかなと思っていて。内容的には、私はそんなに違いはないかなと思っていまして、作るうえでの違いはそこまで意識したことはありません。アーケードだからとか、コンシューマーだから、というのはあまり考えていなかったですね。
弓削氏:
強いて言うと「難易度」ですね。シューティングをやったことない人でも入りやすいようにしています。
齋藤氏:
「間口を広げる」という作り方にはしています。根本として作ろうと思ったのは、「アーケードモード」。本当に昔ながらのシューティングをひとつ作って、そこから派生としていろいろと広げていきました。
弓削氏:
シューティングの原点を知ってほしかったんですね。
「間口を広げる」ということでは、物語をコミック的に見せるようにしています。 コミックを担当されているのは、井上淳哉先生。じつは、東亜プランでデザイナーを務めていらっしゃったんです。その辺も、『TATSUJIN』好きの人には刺さるんじゃないかと思っています。
──根源的な質問となりますが、おふたりにとってシューティングゲームはどういう存在なのでしょうか?
弓削氏:
自分はプレイするよりも、作るのが好きなんですね。シューティングゲームに限らず、ゲームを作るのが好き。曲を作るのとすごく似ているんですよ。
曲ってどういう風に作るかというと、そのときの感情があり、そこにメロディーを乗せていく。だから「人生そのもの」なんですね。
齋藤氏:
深く考えたことはなかったですけど、「身近にあるもの」というか。私も「人生」なのかもしれませんね。こんなに長くシューティングを作っていくことになるとは思っていなかったですから(笑)。そもそも、ただのいちプレイヤーだったわけで。
──シューティングゲームの変遷・流行についてはどう捉えていらっしゃいますか?
弓削氏:
ゲームが作られるときって、「◯◯が流行ったから、そういうのを作りましょう」という考えが多いと思うんです。でも私は、東亜プランのときからそれをしてこなかったんですよね。作ったシューティングがたまたま受けたので、「シューティングの東亜プラン」と言われるようになっちゃったんですけど。
そこから衰退が始まっていったわけですが、まずは「難しすぎる」という点について。これはアーケードだからこそのインカムの問題です。プレイヤーがうまくなって「達人」になっていったので、長時間遊ばれてインカムが稼げなくなった。そこから難度を上げていったら、お客さんが離れていって衰退していく、というところだと思うんですけど。
対戦格闘ブームもそうですが、いろんなゲームが登場して多様化していって、シューティングの居場所がなくなってくる時代がありました。でも、シューティングゲームは「ゲームの原点」だと思うんです。
「モノを撃って壊す」というこの単純な爽快感は、すべてのゲームに繋がっているような気がしています。「そこをもう1回ちゃんと見直そう」と思っていて。みんなが諦めてシューティングを作らなくなっているから、なおさら衰退していってしまう。ですので、もっとほかの会社さんにもシューティングをたくさん作ってほしいなと思います。
齋藤氏:
シューティングって、その時代によっていろいろ変化してきたとは思うんですよね。「この時代だからこのシューティングが受け入れられた」というのは、もちろんあったと思うんです。
その変遷を経て、いまはいろんなシューティングの形がある。まさに多様化の時代だと思うんですよね。そうなってくると、「弾幕じゃないといけない」とか、そういう考えはなくなってきているんじゃないかと……。
ですから、あえて昔のプレイスタイルの『TATSUJIN』も受けるんじゃないか、と。むしろ、やったことはないけど、やってみたいという人もいる。そういったところを作れるのは我々しかいないな、と。
シューティングの変遷というより、結局は「自分が作りたいものを作った」というところに落ち着いてきちゃうのかなとは思いますね。「自分の作りたいもの」というところに帰ってきた。そんな気がしました。
──ちなみに、『TATSUJIN EXTREME』というタイトルは、弓削さんが考えられたのですか?
弓削氏:
そうです。「EXTREME」は「スゴいもの」という究極さですね。でも「究極」だと、『究極タイガー』とかぶっちゃう(笑)。
齋藤氏:
入社したときに、弓削が作った企画書を見せてもらったんです。そこには『TATSUJIN 極』と書いてあったんです。漢字で「極」と。そこから「EXTREME」に変わったんですね。
──なるほど。では最後に、本作を楽しみにされている方へ、おふたりからメッセージをお願いします。
齋藤氏:
いろんなゲームのジャンルがありますが、『TATSUJIN EXTREME』のような昔ながらの縦スクロールのシューティングでしか味わえない楽しさやおもしろさがあると思っています。それをぜひ今作で味わってほしいなと思っています。
弓削氏:
さきほど難度の話をしましたが、お客さんを追い詰めるような作り方は今回は一切していません。シューティングゲームの醍醐味が、肌で感じられるものとなっています。各プラットフォームで体験版が配信中ですので、気に入っていただけたら購入してもらえるとたいへんうれしいです。







