「バニーガールが嫌いな人なんているのか?」
4周年を迎える『勝利の女神:NIKKE』の開発陣にバニーについて尋ねると、そんな答えが返ってきた。
バニーについて聞いたのには理由がある。昨年、本作の運営プロデューサーであるReed LU氏に取材した際、「日本ではバニーガールがとても好まれているようです」という言葉を聞いていたからだ。そして今年も、9月にバニーガールイベントが開催され、バニー姿の新たなニケが登場した。
ならば、実際にバニーを作っている開発陣は、どんな思いで手がけているのか。それを直接聞いてみたかったのである。
『勝利の女神:NIKKE』は、SHIFT UPが開発し、Level Infiniteが運営するタイトルだ。「背中で魅せるガンガールRPG」というキャッチコピーに、聞き覚えのある人も多いだろう。
指揮官(ユーザー)は、まず刺激的なビジュアルに目を奪われる。そして遊び進めるうちに、「開発陣には人の心がないのでは?」と言われるほどの物語に胸を締めつけられる。本作は、そのギャップで指揮官を惹きつけてきた。
そんな本作も、2026年11月4日で4周年を迎える。その節目を前に取材に応じてくれたのは、ディレクターのユ・ヒョンソク氏、シナリオディレクターのチョン・ジェソン氏、サウンドディレクターのチュ・ジョンヒョン氏の3名だ。

聞けば、2026年のバニー衣装は「ハイテク(近未来)バニー」がコンセプトだったという。それだけに、開発チーム内では「これがバニーに見えなかったらどうしよう」という懸念が多く、「バニーをバニーたらしめるものはなんなのか」をかなり話し合ったそうだ。
インタビューでは、このバニーの話を皮切りに、ストッキングのデニール数まで指定するというディテールへのこだわり、この1年で反響の大きかったニケ、“人の心がない”と言われる物語の作りかた、そして5年目の展望までを、たっぷり語ってもらった。
好きなものを、全力で作る。そして“しっかり見せる”。そう明かす開発陣のこだわりの数々を、心ゆくまで味わっていただきたい。
※この記事は、『勝利の女神:NIKKE』のメインストーリーに関するネタバレを含みます。物語を楽しみにしている方は、ストーリーをプレイしてからお読みいただくことをおすすめします。
バニーをバニーたらしめるものはなにか。開発チームがたどり着いた答えは、ハイレグと尻尾と耳だった
──『勝利の女神:NIKKE』4周年、おめでとうございます。節目のインタビューだからこそ、まずはこの話題から聞かせてください。バニーについてです。
昨年の3周年インタビューで、運営プロデューサーのReed LUさんは「日本ではバニーガールがとても好まれているようです」と話していました。今年(2026年)の反響はいかがでしたか?
ヒョンソク氏:
まず、バニーガールが好まれているのは、日本に限った話ではないと思います。世界的に見ても、「バニーガールが嫌いな人なんているのか?」と思うくらい、人気のあるテーマですから。
実際、今年のバニーも手応えは悪くありませんでした。ただ、世界的に好まれるテーマは、バニーのほかにもあります。来年からはほかのテーマもいろいろと考えてみるべきではないかと、いま社内で議論しているところです。
──ちなみに、みなさん自身もバニーはお好きなんですか?
ジェソン氏:
それはもう。好きだからこそ作れるんだと思います。
──なるほど。バニー衣装をデザインするうえでこだわっている点はありますか?
ジェソン氏:
バニー衣装を作るうえでいちばん大切にしているのは、「バニーらしさ」です。
これまでさまざまなバリエーションのバニーを作ってきましたが、パッと見て「これはバニーだ」とわかる部分は、守り抜くよう心がけてきました。
──2026年のバニー衣装を作るにあたって、みなさんのあいだで議論になったことがあれば教えてください。
ジェソン氏:
今回は「ハイテク(近未来)バニー」というコンセプトだったので、「これがバニーに見えなかったらどうしよう」という懸念が、開発チーム内ですごく多かったんです。そこで、バニーとはなにか……つまり「バニーをバニーたらしめるものはなんなのか」について、かなり話し合いました。
議論の末、ハイレグの部分や尻尾、そしてバニーの耳だというところにたどり着きました。それで、そうしたシルエットを際立たせる方針にしたんです。結果的には、バニーらしさを保ちつつ、SFの要素もほどよく入った、いい仕上がりになったと思います。
ヒョンソク氏:
バニーとはなにか……。
ジョンヒョン氏:
もはや哲学的な問いでしたね(笑)。
──そうした議論があったからこそ、今年のバニーはあれほど魅力的に仕上がったんですね。
ヒョンソク氏:
ありがとうございます。とくに、ギルティ:マイティバニーは、とてもよく仕上がったと思います。
ジェソン氏:
攻めたポーズでありながら、どこかちょっといじめたくなる。そんなデザインになりましたね。

ヒョンソク氏:
ジェソンさんが「いじめたくなる」と思ったら、それこそ大変なことになりませんか? ジェソンさんは“人の心がない”ですから、ストーリーでどんな扱いを受けるかわかりませんよ。
ジョンヒョン氏:
舞台が遊戯施設であるCOINS IN RUSH(コインラッシュ)だったということもあり、そこまで鬱展開になる話ではなかったので、まだよかったですね。
「抑えて」より「もっと描き込んで」。ストッキングのデニールまで指定する“密度感”へのこだわり
──『NIKKE』といえば、やはり大胆なデザインのキャラクターが大きな魅力です。その魅力を世に届け続けて4年。制作の過程では、どんなフィードバックが出ることが多いのでしょうか。たとえば、「刺激的すぎる」として調整が入ることもありますか?
ヒョンソク氏:
私から出すフィードバックは、抑える方向よりも「もっとディテールを上げてほしい」という方向のほうが多いですね。たとえばストッキングなら、もう少し質感を加えてほしいとか、「何デニールにしてほしい」というところまで細かく指定します。
私たちが追求しているのは「密度感のある絵」なんです。キャラクターを表現するうえで、もっと描き込んで密度を上げられる部分はないか、という点にはかなり気を配っています。
「刺激的すぎる」と止めることもゼロではありません。ただ、あくまで大前提は、みなさんに喜んでいただけるデザインにすることです。
ジェソン氏:
最近制作したキャラクターでは、際どすぎて「これはちょっと」と問題になるケースは、ほとんどありませんでした。開発チームがかなりコツをつかんでいて、「このラインなら大丈夫」と確信を持って作れています。
経験を積んだことで、一線を越えるようなデザインは、開発の過程で自然とふるいにかけられるようになっているんだと思います。
──もしよろしければ、制作の途中で調整が入ったキャラクターや、とくに気をつかったキャラクターの例を教えていただけますか。
ジェソン氏:
「2X2 LOVE」のアルカナ:フォーチュンメイトがそうでしたね。ベースが制服なので、かなり気をつかいながら作らなければならないキャラクターでした。
──逆に、開発を進めるなかで当初の想定よりもフェチの要素が強まっていったニケやコスチュームはありますか?
ジェソン氏:
この1年のキャラクターではありませんが、ブレッディがその一例だと思います。そもそもデザインを依頼した時点では、「少し肉付きがよくて……触るとふわふわしていそうな体型」のキャラクターとしてお願いしていたんです。
そうしたら、一部の人にものすごく刺さるデザインになってあがってきました。そして、その体型が最大の魅力になって人気が出たので、印象に残っていますね。
デザインするうえで最初からフェチを狙うことはもうない。出発点は物語で、フェチはその「結果」としてわいてくる
──フェチの表現にもトレンドがあるように思います。肉付き、透け感、張り、濡れ感など、いま本作の開発チームのなかでとくに熱い表現はなんでしょうか?
ジェソン氏:
じつは、最初から特定のフェチ要素を狙ってキャラクターを作ることは、もうなくなっているんです。
サービス開始から長い時間が経ち、ストーリーがたくさん積み重なって、その比重も高まってきました。そのため現在は「その物語にあったキャラクターを制作すること」に注力していて、外見的に「このフェチをいかそう」というアプローチはしていません。
もちろん、制作の過程で「この性格や物語を表現するには、こういう要素があるといいよね」と話すなかで、自然とフェチ要素がわいてくることはあります。ただ、それはあくまで結果で、出発点は物語のほうにあるんです。
ヒョンソク氏:
たしかに、そういう作りかたは減ってきていますよね。新規キャラクターが減って既存キャラクターの比率が増えるにつれて、物語のほうへより重心を移しつつあるのだと考えています。
ただ、SHIFT UPの制作スタイルについて言えば、なにかひとつの要素をトップダウンで掘り下げるというよりは、各担当者が得意とする部分に集中して、それぞれの力量のなかでできることを見つけていくやりかたなんだと思います。
──担当者それぞれが得意とする部分、ですか。
ヒョンソク氏:
ブレッディやエレグがまさにその例で、あのふたりには担当した人たちの好みがモロに反映されています。
これはデザインを手がける人だけでなく、Spine(2Dアニメーション制作ツール)で動きをつける担当者も同じです。それぞれが必要に応じて「自分がやりたい表現」を少しずつ加えながら、キャラクターが完成していく。そんな感覚があります。
──マリアンをはじめ、直近のニケたちのビジュアルを見ていて、「全身黒スーツ(タイツ)」がトレンドではないかと、勝手に予想していました。
ジェソン氏:
マリアンは、ある意味で“クイーンとして新たに生まれた”存在ですよね。ダークマターを触媒にして、生まれ変わるわけです。
だからデザインも、服をたくさん着込むというよりは「生まれ変わった姿なら、こういう見た目になるのではないか」というところから考えました。全身スーツを狙ったわけではないんです。
ヒョンソク氏:
ニケの表現は、決してトレンドを意識して作っているわけではありません。
基本にあるのは、自分たちが好きなものを全力で作り、それをきちんと届けることです。そのうえで、とにかく“しっかり見せる”ことに集中しています。
アイドルのアニスに、水着のシンデレラ。この1年、とくに反響が大きかったキャラクターたち
──ここからは、この1年をふり返らせてください。ユーザーからの反響やセールスの面で、とくにインパクトの大きかったキャラクターを教えてください。
ヒョンソク氏:
いちばんは、アニス:スターだと思います。アイドルを題材にしたコンテンツとして準備していたぶん、不安も多かったのですが、ありがたいことに指揮官のみなさんにとても気に入っていただけて、本当によかったです。
ジェソン氏:
私からは、夏イベントのシンデレラ:クリスタルウェーブを挙げたいです。こちらも非常にいい反応をいただきました。
シンデレラは、私たちにとってもかなりの挑戦でした。ひとりのキャラクターに水着を2着用意するという、いわば“豪華スペック”での実装だったんです。
それだけ盛り込んでも、もともととても美しいキャラクターなので、見事に着こなしてくれました。指揮官のみなさんにも、大いに気に入っていただけたと思います。
──おふたりが挙げたキャラクターは、ユーザーからの反響の面でインパクトが大きかったのでしょうか。それともセールスの面でしょうか。
ジェソン氏:
どちらかといえば、ユーザーからの反響の面ですね。ただ、反響が大きければ、当然セールスにもよい結果がついてきます。
ヒョンソク氏:
ええ。ユーザーからの反響とセールスは、本質的には大きく変わらないものだと思っています。
──水着や周年といった節目には、ユーザーのみなさんの注目も集まりやすいと思います。それ以外のタイミングで、反響の大きかったキャラクターがいれば教えてください。
ジェソン氏:
私はやはり、「2X2 LOVE」のアルカナとプリバティだと思います。
多くの分岐とエンディングを用意した、いわば“美少女恋愛シミュレーション”のようなコンテンツで、私たちにとっても挑戦的な試みでした。ありがたいことに、ふたりともユーザーのみなさんに受け入れていただけて、ひと安心しました。
──意外と人気が出た、というキャラクターはいますか?
ヒョンソク氏:
じつは、そうしたケースは悪役や男性キャラクターに多いんです。なかでもマスタング(旧マスタング)は、私たちの予想をはるかに上回る反響がありました。
ジェソン氏:
もうひとつ、バーニンガムの人気が日に日に高まっていることも、とてもうれしく思っています。
──コスチュームについても聞かせてください。この1年で、とくに人気が高かったコスチュームはありましたか?
ジェソン氏:
こちらもやはり、「2X2 LOVE」で登場したプリバティのコスチューム「シャープレッスン」は外せません。
じつは私、個人的に“メガネ派”なんですよ。だから、メガネの魅力を多くの方に届けられて、すごくうれしかったです。
ただ、少し心配もしていました。メガネのキャラクターは、好き嫌いがはっきり分かれると思っていたんです。それが結果的に大人気となって、ほっとしています。




