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吉田直樹×マイディー FFのドラマ化という前代未聞の偉業と人生の中でのオンラインゲーム【FFXIV 光のお父さん:対談】

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ブログ連載「光のお父さん計画」を吉田氏はどう見ていたか?

――では、ここからはマイディーさんが『光のお父さん』をブログで連載された経緯について聞いていきたいと思います。吉田さんは初めて第1話をご覧になったとき、どのように感じられましたか?

吉田氏:
 「すげぇことするなぁ……」と。あの記事が公開された時点で、本当の時間軸はある程度進んでるわけですよね。だから、既にお父様が『FFXIV』をプレイしているか、しようとしているかくらいまで進んでいるのかな……だとすると、途中でバツンと終ることはないだろうな――という気持ちで、単純に読み手として楽しんでいました。

マイディー氏:
 1話は「友達紹介キャンペーン【※】の2人乗りチョコボがほしい」という始まりなんですが、その時って自分でアカウントをもう一個作る――運営の意図しない行為でチョコボを手に入れていた人が結構いたんですよ。

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※友達紹介キャンペーン……友達にゲームを紹介すると、「2人乗りチョコボ」などの限定アイテムが貰えるというキャンペーン。「2人乗りチョコボ」の正式名称は「グランチョコボ」で、紹介した友達の累積利用期間が90日間を突破すると、チョコボを呼び出す「グランチョコボホイッスル」というアイテムが手に入る。友達と一緒にチョコボに乗ることが出来るため、アイテム欲しさに自分でもう一つアカウントを取得するプレイヤーもいた。キャンペーンは現在も継続中。

 でもそれって不健全じゃないですか。アカウント数は増えてもユーザー数は増えない。僕はそれが悔しくて……そこから友達じゃなくて父を誘おうと思い立ち、1話に関してはそれを冗談のつもりで書いていたんです。

 ところがですね、あの1話が面白いと評判になりまして……「じゃあ本格的にやってみようと」と2話を書き始めました。それからPCサーチ【※1】で父のログイン状況を観察するようになったんですが、真面目にログインしてるわけですよ。これはなかなか面白いと思い、しっかり道筋を立てて――「光のお父さん計画」としてやっていくこと決めました。フリーカンパニー【※2】の皆にもその話をしまして、「今お父さんいますよ!」と教えてもらったり(笑)。

 ちなみに、1話の時点で親孝行をしようという想いはあったんですが、正直なところ照れくさくて書けなかったんですよ。今言うとあとづけみたいですが(笑)。

※1 PCサーチ
ここでいうPCとは、プレイヤーキャラクターのこと。『FFXIV』にはそのサーバーにいるキャラクターを検索することができる「PCサーチ」という機能があり、ログイン状況などが分かる。

※2 フリーカンパニー
いわゆるギルド。ゲーム内のチームのこと。

――ご自身で「これは面白いぞ」と思われたのは何話目ぐらいなんでしょうか。

マイディー氏:
 父が自分のキャラ名を「井上」にしようとした瞬間ですね(笑)。

吉田氏:
 2話ですよね。以前にもお父様は『モンスターハンター』のキャラクターに昔の彼女の名前を付けてしまい、それで家庭が崩壊しそうになった――って話もメチャクチャ面白かったです(笑)。キャラ立ってるなぁと。

マイディー氏:
 なんか父ってそういうところがあるんですよね(笑)。

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マイディー氏提供の撮り下ろしSS

――“気が付いたら雪国にいて、自分の服装が半袖で恥ずかしかった”という理由でお父様がゲームを辞めてしまうエピソードがありますが、それを吉田さんはご覧になられて、「長袖にしてみよう」みたいな考えは浮かんだんでしょうか。

吉田氏:
 僕はプレイヤーとして、オンラインゲーム創世記からいろいろなゲームをプレイしていますので、「初心者が信じられないような理由で辞める」というのは何度も見てきました。だから半袖の件も気持ちとしては分かるんですが、長袖にしたらしたで「ウルダハ【※】暑すぎるだろ!」となってしまう(笑)。

※ウルダハ
ゲームの舞台であるエオルゼアの都市国家群の一つで、砂漠に囲まれた砂の都。

──言われそうですね(笑)。

吉田氏:
 結局問題だったのは「着替え方が分からない」という部分なんです。お父様がクルザスへ行ったときのレベルなら、既に着替え自体はできるはずでしたが、そこが上手くゲームで説明できていないから、そういうことが起きた。着替えることができて、長袖の服を持っていれば、お父様はきっとクルザスで長袖に着替えていたはず。だから、初期服を長袖にするんじゃなくて、改善するべきはそちらだろうなと考えていました。
 いろいろな国で運営している『FFXIV』ですが、着替えや店でアイテムを購入するところが、いちばん伝わりにくいもののひとつなので何度も細かく調整が入ってるんです。

――しっかり理由を深く考えて改善案に反映するんですね。

吉田氏:
 そういえば、ちなみにその回で「よしだああああ!【※】と叫ばれてましたが、マイディーさんのブログでは、実はその叫び、あそこでしか登場していないですよね?

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※よしだああああ!……吉田氏は『FFXIV』のプロデューサーとディレクターを兼任しているため、ゲーム内で不具合や不満があると、プレイヤーの思いをぶつける相手として白羽の矢が立つ。そこで生まれたのが「よしだああああ」という叫び。実際にはネガティブな意味で使われることはほとんどなく、『FFXIV』の鉄板ネタとしてプレイヤーに親しまれている。なお、2015年に発表された運営調査によると、約3分に1回ヨシダ(吉田/よしだ/YOSHIDA/直樹/ナオキ/NAOKIを含む)というワードがゲーム内で使用された。
(画像はドラマ版ゲームパートより、「よしだああああ!」と叫ぶマイディー氏)

マイディー氏:
 元々使いたくなかったんですよ。でもこれは触れなあかんなと(笑)。

吉田氏:
 「吉田ァァァァァァァァァァァーーーッ!!!今すぐ……今すぐ初期服を長袖に変えるんやっ!!!」ってやつ最高に面白かったです(笑)。

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 あと「ワープもええけど……お金かかるからな。」、「誰に払ったらええんや?」(お父さん)、「吉田さんです。お父さん、自動的に吉田さんに支払われます。大丈夫、信頼できる吉田さんです。」(マイディー)というのが妙にツボに入っちゃって。「あ、俺、マイディーさんに信頼されてる!」って(笑)。

マイディー氏:
 父はそういう、僕らがシステムだからと思って流している部分に疑問を持つんですよ。「これ、アイテム出品したら税金取られるけど、その税金で何するねん?」「何か建てていくんか?」とか。そう言われると「ほんまやね」としか答えられないんですが、よくよく考えると確かになんの税金なんやろ……って(笑)。

『光のお父さん』から再考するMMORPGの面白さ

――『光のお父さん』って、初心者のプレイが書かれているので、ベテランプレイヤーからすると「昔オンラインゲームでこんなことあったなぁ」と思い出すような話なんじゃないかと思うんです。吉田さんはどうでしたか?

吉田氏:
 初心者にエモート【※】を教えると、とにかく連発しますよね(笑)。あと、昔のオンラインゲームって、クエストによる導線なんて無いに等しかったんで、どんどん先に進んで帰れなくなり、キャラを削除することになる(笑)。「ここどこかわかん! 何か殺された! てか敵のレベル高すぎだろ!」みたいな。そういうあるあるを沢山思い出しました。

※エモート
キャラクターの感情を表現する動作。『FFXIV』では「手を振る」「笑う」などのコマンドがある。

――コミュニティ面での「あるある」はいかがでした?

吉田氏:
 重なる部分が多かったですね。僕もいちオンラインゲームプレイヤーだったころは、オンラインゲームの情報をWebサイトで発信したり、『Diablo』【※1】や『Ultima Online』【※2】の情報を翻訳したり、ゲーム内外で初心者の方をたくさん支援してきました。基本的なことをマスターするまでサポートして、一通り体験した上で、どうしてもうちのギルドに入りたかったらどうぞ、というスタンスで本当に沢山の人と出会ってきたなあ、と。

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マイディー氏がリーダーを務める「じょびネッツア」は初心者支援に力を入れているフリーカンパニーで、ゲーム内で支援企画をいくつも実施しているほか、ブログでゲームシステムの解説も行っている。「じょび」と略されることも。そもそも『光のお父さん』が成功したのは、「じょびネッツア」の初心者支援能力が異常に高かったからと言っても過言ではない。
(画像はドラマ版ゲームパートより)

 こういうプレイの仕方は、サイト更新も含めてものすごい時間とコストが掛るんですが、その分とてつもなく面白いんですよね……今の僕には時間的に不可能でちょっとさみしい(苦笑)。そんな経験があって、僕が『光のお父さん』を見ていちばん凄いと思うのは、マイディーさんが持っている、もしくは作り上げた、そして所属している「コミュニティというもののチカラ」です。まさに奇跡的だと感じます。

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※1 Diablo……Blizzard NorthのアクションMORPG。1996年にリリースされ、オンラインマルチプレイゲームの先駆けとなった作品。吉田氏が最初にプレイしたオンラインゲームであり、全世界で300万本以上の売上を記録する。画像はプレイ画面。
(画像はBlizzardの公式サイトより)

※2 Ultima Online
Origin SystemsのMMORPG。1997年にリリースされ、ゲーム的にも商業的にも成功した最初のMMORPGと言われている。『Diablo』同様に世界中からプレイヤーが集まり、吉田氏もその内の一人だった。

――マイディーさんのフリーカンパニーは、凄いサポートぶりですよね。でも、なんでオンラインゲームって人に勧めたり、人をサポートしたくなるんでしょうね。

吉田氏:
 僕はやっぱり「一緒に遊びたい」と思うからかな。

マイディー氏:
 僕は遊んでほしいというよりも、「見てほしい」ですね。「ここ綺麗でしょ」「このキャラクター可愛いでしょ」という感じで、自分の好きな世界を見てほしいんだと思います。

――吉田さんがそもそもオンラインゲームにハマった理由はなんでしょうか。

吉田氏:
 目の前にいるキャラクターがどこの国の誰だかわからないけれど、人間である――という状況が単純に面白かったからですね。まず動きがおかしくて、コンピューター上のプログラムでは絶対に再現できない動きをするんです。その様子を見ていると、その相手が急に僕に向かって攻撃してきたり……その興奮たるや!「おっ、ちょっ、まってまって!」ってやつが忘れないんです。今まで味わったことのない価値観がそこにありました。

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 『Ultima Online』なんて一つのサーバーに3000人も入れると聞いて、βテストをプレイするまで信じられなかったです。しかも街に行ったらいろいろなキャラが喋りながら走っていて、バンクの前に行くと、みんな「Bank! Guards!」「Bank! Guards!」【※1】と言っている。なんでガードって言ってるのかと思ったら、常にスリに狙われているからなんですよね(笑)。あと「Vendor Buy」(NPCから買い物をするときに使うコマンド)って付けたり。
 ようは「Bank Vendor Buy Guards」というマクロ【※2】を組むだけで、ボタンを押せばバンクも開くし買い物もできると。それを知った時、「この世界では生きていくための知恵を、プレイヤーたちが自分で作っていってるんだ」と衝撃を受けまして……。あの衝撃は一生忘れないと思います。

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(画像はドラマ版ゲームパートより)

 MMORPGには向き不向きがあるので、全員がゲームを続けられなくても仕方ない、と僕は思っているんです。
 でも、目の前で知らないキャラクターが走っている、それは世界中の誰かが操作していて、ゲームが一つの世界として動いている――その衝撃は凄いカルチャーショックをくれると思うので、とにかく1回でいいからその衝撃を体験してほしいなとは常々思います。その価値観を知らないというのは、もったいない。ですので、別のゲームでも良いし、『FFXIV』のフリートライアルで辞めてしまっても構わないので、ともかく一度でいいから多くの人にその衝撃を味わってほしいですね。

※1 Bank Guards
『Ultima Online』は自由度が高すぎるあまり、日常的に様々な犯罪行為が行われていた。もちろんスリも多発しており、そんな中アイテムを無事に預けるためにはどうすればいいのだろうという試行錯誤の末に生まれたのが「Bank Guards」というコマンド。Bankはバンクボックスを開くためのコマンドであり、Guardsはガードと呼ばれる兵士を呼び出し、守ってもらうコマンド。この2つのコマンドを組み合わせれば、ガードに守ってもらいつつバンクを開くことができる。

※2 マクロ
文字列をあらかじめ登録し、1ボタン(キー)で呼び出す機能。毎度「Vendor Buy Bank Guards」と打ち込むのは手間であるため、この文字列をマクロとして登録し、指定のボタン(キー)に割り当てれば、すぐに呼び出すことができる。

――マイディーさんはいかがでしょうか。

マイディー氏:
 現実世界でも味わえるけど、手間がかかることってありますよね。
 でもオンラインゲームだったら、それがコンパクトになってる――からでしょうか。現実世界で「どこか行きましょう!」と言ったら、だいたい「予定が……」ってなりますが、オンラインゲームだったらスッと集まれる。そして何より、人に何かをしてあげやすい。例えば好きな子がいるとして、その子に何かプレゼントをあげたいと。ゲームの中だと、現実世界ほど渡すのに苦労しないじゃないですか。

 しかも相手は人間なので、そこでやり取りが生まれ、その人が自分の人生を変える存在になるかもしれない。これはもうゲームとして割り切るには、あまりにもったいない体験だと思います。

MMORPG歴戦の猛者・吉田氏が考える『FFXIV』の魅力とは?

――吉田さんにとっては趣味だったオンラインゲームが仕事になったわけですが、『FFXIV』ならではの魅力や価値観はどこにあると思われていますか?

吉田氏:
 MMORPGは人さえいれば、基本的なインパクトはどのゲームでも同じだと思うんです。そこから先は、価値観をどこに置くかで変わってくる。

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 『FFXIV』の代表的な置きどころのひとつはバトルで、難度の高いコンテンツを、パーティーみんなで頑張って挑み、最後のハードルを越えた時に「よっしゃあああああ!!!」と、声が出るあの感覚。当時の日本において、レイドみたいな概念のゲームはあまりなく、バトルはあえてそういうバランスで作られています。その価値観に慣れない人は、それを「ギスギス」だと言いますが、真剣になれるから生まれるシチュエーションでもあると思っています。
 それともう一つが生活系のコンテンツ。遊具がたくさん置いてある公園を目指している感じでしょうか。沢山のものを置いて、遊びを作ってもらうこともできる。『FFXIV』はこの2軸が大きいかな、と思います。

マイディー氏:
 『FFXIV』は一人のミスが全員のミスになり、それが原因でギスギスしてしまう――よく“大縄跳び”と言われていますが、僕は大縄跳び好きなんですよ。これは父も言っていたんですが、誰かがミスするから面白い。

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光のお父さん第17話「光のお父さんはギスギスに触れた。」より、ガルーダ戦

 ミスすることでその人は負い目を感じるかもしれませんが、みんな励ましたりフォローするじゃないですか。もちろん「なんでそんなんもできへんねん」と強くいう人もいるかもしれませんが、言っていること自体は間違ってなかったり(笑)。それで、100回飛ばなあかん時に90回ぐらいから声が出て、「91! 92!!」って声が大きくなっていきますよね。あれは誰かに指示されたわけではなく、自然とそうなるもんです。そして最終的に努力が花開く瞬間がある。その達成感をドラマ込みで楽しめるのが大縄跳びなんです。

 もし大縄跳びというのが悪ならば、小学校でやらせないですよね。そこから得られるものがあるはずなんです。しかもそれは、機械が用意したものではなく、メンバーによって変わる。時にはバッドエンドかもしれませんが、そこには人と人との触れ合いがあります。この人はこういう考えなんだと学べることがあります。そういう面白さがあるんです。

 もちろん、それは僕がそれなりの歳でいろいろなことを経験しているからそう思えるだけで、そうじゃない方がいらっしゃることも理解しています。ただ、これはもうオンラインゲームがどうこうじゃなくて、社会ってそういうもんじゃないですか。

吉田氏:
 そうですね、あとはゲームなので、スルーしたっていいんです。全員が大縄跳びにチャレンジしなくても良い、ゲームなんだから楽しめる範囲で楽しめばいい。最近は随分と落ち着いてきたなと思いますが、新生して2年くらいは、「全部のコンテンツを消化しないと気が済まない!」という方が多かったですし、しかも「早くクリアすることに価値がある!」という意識も強かったように感じます。レイド経験が初めてに近かった日本の方に多い傾向でした。そして「ギスギスした!」と……。

 高難易度のエンドコンテンツは、学校の部活でいったらインターハイを目指すようなものです。「インターハイ行きましょう!」「頑張りましょう!」という空気感の中で、たくさん練習して、対戦相手のこともたくさん研究して……。だから僕たちも、クリアした時の達成感が大きくなるように、難度を高く設定しています。

――「エンド」と名前に付いているくらいですからね。

吉田氏:
 裏を返せば「ギスギス」という言葉が定着しちゃったのは、『FFXIV』のレイドインパクトが、それだけ大きかったのかな? ある意味成功の裏返しなのかな? とも思ったりしています。単語としてはよくないですけどね(笑)。

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 真剣にやればやるほど熱くなってしまう。でもそれだけ熱くなれるものを提供できているということなので、これから先、新しいオンラインゲームが生まれていくときに、『FFXIV』の価値観を知っている開発者の方が、「じゃあギスギスを生まずにあの興奮を生むにはどうすればいいか」と悩んでくれればいいなと思っています。

 その一方で、失敗があるから、一歩進んだ時やクリアできた時に興奮する。その過程は千差万別。だからこそオンラインゲームは面白いんだと思います。

マイディー氏:
 『FFXIV』に限らず、同じゲームをしていても面白いと言う人と面白くないと言う人がいますよね。それって好き嫌いもありますが、大抵は接しかたや見かたによる差だと思うんです。だから僕は「こういう角度から見ると面白いですよ」というのをブログで提案していきたいなと思ってます。それを共有できるのもオンラインゲームの面白さだし、そういう楽しみかたを見つけてほしいですね。

吉田氏:
 ネットは本当にいろいろな可能性があるはずなんです。特にインターネット黎明期を経て『Ultima Online』が出た時に、インターネットの可能性を強く感じました。ところが、今はあまりよくない方向へ進みつつあるのかなと。まだまだ可能性や広がりがあるはずなのに、止まりつつあるようにも感じます。だからこそ、今回のドラマ化は非常に意味があったと、僕はそう思っています。インターネットを通じてオンラインゲームがあり、それを題材に話題を発信するブログがある、その先には読者がいて、それを見て感動した人が、別のエンターテインメントへと波及させようとする……。

マイディー氏:
 僕は今のネットの悪い部分は変えられると信じてます。

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(画像はドラマ版ゲームパートより)

 自由にできるが故に悪さする人もいますが、だからこそプラスのことを発信していくというのは、非常に意味のあることだと思いますし、どんどんそうなっていくべきだと思っています。

「マイディーさんのブログを見てると僕も書きたくなります(笑)」

――そういう意味では、マイディーさんのブログはネットの良い使いかたですよね。

吉田氏:
 正直うらやましいですよ。マイディーさんのブログを見てると僕も書きたくなります(笑)。

マイディー氏:
 月・金だけ寄稿されますか!?

吉田氏:
 雑誌さんのコラムで手一杯です……(苦笑)。
 そういえば、お父様が知らない間にコンテンツファインダー【※1】を使っていたとブログで書かれていましたが、ということは「じょび」【※2】以外の方とダンジョンに行ってるわけですよね? その中には良い人もいれば悪い人もいたと思うんですが、そういうところに対して、お父様は何か言われていましたか?

※1 コンテンツファインダー
気軽にパーティーを組み、コンテンツに挑める『FFXIV』のマッチングシステム。条件を選んでセットすれば適合したメンバーが揃い次第、自動的にパーティーメンバーがマッチングし、コンテンツに突入する。

※2 じょび
マイディー氏がリーダーを務めるフリーカンパニーで、正式名称は「じょびネッツア」。設立は2013年だが、初代「じょびネッツア」は『エミル・クロニクル・オンライン』というMMORPGで2007年に立ち上げられた。

マイディー氏:
 ブログには書かなかったんですが、プレイヤースキル(プレイヤー自身の技量)が高くなかったころはよくキック【※】されていたらしいです(笑)。

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※キック……「コンテンツファインダー」に実装されている機能「投票除名」を行って、プレイヤーをパーティーから離脱させる行為の通称。「投票除名」はパーティー人数の半数以上の同意があれば成立するが、「投票除名」を行うには「離席」「オフライン」「迷惑行為/ハラスメント」「不正行為」という正当な理由が必要であり、端的にプレイヤーを追い出すための機能ではない。
(画像はドラマ版ゲームパートより)

吉田氏:
 えっ、お父様が!?

マイディー氏:
 「何かな……気が付いたら追い出されて……外に立っててん。これ、どういうことなん?」って言われまして、ものすごく辛くなりましたね(笑)。

吉田氏:
 どこの誰ともわからない相手に、自分の父親がキックされたわけですもんね……。

マイディー氏:
 そうなんです(笑)。これは悲しいな……と思いつつ、一応理由を言ったんです。そしたら「そらしゃーないな、俺下手くそやから」って言うんですよ。決してバカにされているとは思わない。「みんなの邪魔して悪かったな……」と受け入れたんです。この人は、そうやって成長してきたんだなと今になって知りました。

吉田氏:
 それでいうと、あの攻略本についた付箋の写真! 実はあれが『光のお父さん』の中でいちばんグッと来たところで。普通は攻略本はあんなにボロボロにはなりませんよ。あの写真を見て、意志さえあればいくつになっても新しい趣味は始められるんだなと痛感しました。

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ボロボロになった攻略本

マイディー氏:
 一生懸命さはボロボロの本を見たときにすごく感じましたし、自然と涙が流れてきました。自分が好きなものをこんなにも一生懸命好きになろうとしてくれているのだなと感じたので、とても嬉しかったですね。

 でも面白いのが、ところどころ間違えてるんですよ……きりんちゃん(ヒーラー)とか。「タンクやっちゅーねん!」って(笑)。でも攻略本に訂正を入れるわけにもいかないんで、ゲームの中で「きりんちゃんはタンクですから」って言いました(笑)。

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