Nintendo Switchへの進出を果たしたモバイルゲームの老舗「カイロソフト」の新作スマホゲーム。
撮影スタジオを設立し、スタッフと出演者を集め、全米が泣く大ヒット映画の制作を目指す、映画スタジオ運営シミュレーションゲームが公開されました。
『映画スタジオ物語』です。
このゲームは「ジャンル」と「テーマ」を組み合わせて娯楽作品を作る、カイロソフトの既存の作品『ゲーム発展国++』や『アニメスタジオ物語』、『ミリオン行進曲』などと同じシステムです。
施設の建設がメインではないため、建物の配置や人の動線を考えなくてもよく、映画の制作もほぼ自動で進みます。
完成させるたびにスタッフがレベルアップするため、長く続けていれば作品の質は自然と向上。
あれこれ悩む必要はなく、カイロゲームの中でも初心者向けの作りですね。
ただし序盤の資金繰りは厳しく、赤字になって行き詰まった人もチラホラいるようで、無駄遣いを控える運用が必要です。
見下ろし型ではなく、真横からの視点で、横方向に施設を増築していくのは目新しさがあります。
ただ、全体を確認するのに大きく横スクロールさせる必要があるため、その部分の評判はあまり芳しくありません……。
価格は600円。買い切りゲームなので課金・広告・スタミナ等はありません。
まずは「監督」を決め、次に「脚本・撮影・特殊技術・音楽・編集」の担当を設定し、撮影チームを作ります。
最初から候補者は何人か用意されているので、その中から好みの人を選べばOK。
チームを作ったらさっそく制作を開始。
「ジャンル」と「内容」を決め、「宣伝計画」を設定します。
ジャンルには「アクション」や「ファミリー」などの6種類があり、最初からすべて選択可能。
ただ、スタッフには各ジャンルの得手不得手があります。
内容は「名探偵」や「ホラー」、「時代劇」や「魔法」などがありますが、手に入れているものしか選べません。
しかも数に限りがあり、使い切ったものは選べなくなるので注意。
そしてジャンルと内容の組合わせによって、映画の「話題性」と「人気」がアップします。
ヘンな組合わせだとガッカリな作品になってしまいますが、意外な組合わせで名作になることも……。
こればかりは色々試してみるしかありませんね。
ただ、少しゲームが進むと、監督に「予想UP」というスキルを習得させることができます。
これがあると事前に結果を察知できるので、当てずっぽうで選ばなくても良くなります。
このタイプのカイロゲームで「結果が事前にわかる」というのは今作が初めてで、ちょっと意外だったのですが、昨今はWikiで答えを調べてしまう人が多いので、手間をかけさせないためスキルで対応できるようにしたのでしょうか?
それよりも重要なのは、宣伝計画の方。
制作発表会や試写会、予告編の制作や映画祭への出展などがあるのですが、どれも当然、費用がかかります。
今作は序盤の資金繰りが厳しく、しかし宣伝費はかなり大きい。
ここで無駄遣いをしてしまうとお金が回らなくなります。
試写会は結構な費用がかかりますが、ファンを増やすためには欲しい所。
映画祭はどうせ当面は受賞できないので回避した方が良く、予告編も費用の割に効果が低いのでパスすべき。
制作発表会やチラシの配布も、残金と相談して決めた方が良いでしょう。
序盤はスタッフのレベルが低いので、大した作品は作れませんから、背伸びしたプロモーションは控えるべきです。
ジャンル・内容・宣伝を決めたら、今度は「出演者」の選択。
「主演」と「脇役」を決めますが、最初から5回の出演契約を結んでいる役者がふたりいるので、彼らを選びましょう。
回数がなくなるまでタダで出演してもらえます。
お金を払って未契約の人を出演させることもできますが、最初はそんな余裕はありません。
設定を決めたら、いよいよ制作スタート。
脚本の執筆、スタジオ撮影、ロケ地での撮影、特殊効果、音楽制作、編集作業の段階を経て、ストーリーやキャラクタ、ロマンスや笑いなど、10項目に及ぶ映画のステータスがアップしていきます。
といっても、制作中はほぼ眺めているだけです。
状況がメッセージで逐次報告されますが、特に操作は必要ありません。
ただ、進行中はスタジオ内でスタッフの皆さんがちょこまかと仕事を行います。
その様子を見るのもカイロゲームの楽しさでしょう。
たまにスタッフがやる気を出して、ステータスボーナスが付くイベントが発生します。
また、ロケの開始時には、プレイヤーがロケ地を選択します。
ロケ地にはジャンルや内容との相性があり、何度も利用しているとレベルがアップ、新たな「内容」も入手できます。
ただ、相性は良いか悪いか選択前に表示されるので、良相性の中から選べば良く、難しく考える必要はありません。
完成したら、いよいよ公開。
ただし上映される映画館は、最初は地元にある少数のシアターのみ。
都心や全国、さらに海外で上映を行うには、映画館との契約が必要です。
上映館数は集客や収益に直接影響するため、お金が貯まったら契約を最優先で行いましょう。
公開後は集客状況が随時報告され、上映終了後、最終報告と共に収益が振り込まれます。
そして観客動員数やファンの数が蓄積され、それが一定以上になると映画スタジオのランクがアップします。
ゲームの大きな目標は、このランクを最大の星5にすることですね。
また、「観客の声」というミッションがあり、「ランキング200位以上の探偵映画を見てみたい」といった要望を達成していくことで、新たなスタッフや出演者、ロケ地や施設などを獲得することができます。
映画の上映によってお金が手に入ったら、施設の増築を行いましょう。
最初はオフィスとスタジオしかありませんが、敷地を広げることで公園や温泉などのスタッフ保養施設、レストランや観光ホテルなどの来客用の施設、さらにCGスタジオや演劇教室などの技術施設を建てることができます。
来客用の施設は、見学に来たお客さんからお金をもらうことができます。
ただ、映画館と契約をして、上映館数を増やすことも非常に大事。
また、スタッフ候補や出演者が散歩していることがあり、彼らと契約することで、スタッフを入れ替えたり、5回分の出演権を得ることができます。
しかし映画を作るのにもお金が必要。
次の映画作る資金を残しておかないと身動き取れなくなるので、使いすぎは厳禁。
何度も言うように序盤は資金不足なので、どこにお金を費やすべきか、よく考えるようにしましょう。
「お金が厳しすぎる!」という意見も少なくないようですが、他の部分がシンプルなので、それがなくなったら今作はゲーム性を失う気がします。
映画の撮影中には「研究ポイント」も得られ、これを使ってスタッフの教育とスキルの習得を行わせることができます。
さらに、このゲームのスタッフ教育は「営業活動」ということになっており、お金がもらえます。
筋トレやひなたぼっこなど、とても営業とは思えないものばかりですが、序盤の資金源になるのでお忘れなく。
研究ポイントはスタジオの施設からも得られ、タップで溜まった分を回収できます。
レストランやホテルの収益もタップで回収する必要があるのですが…… その建物の場所まで画面をスクロールしないといけないので、かなり面倒。
App StoreやGoogle Playのレビューでも、この点の不満が多いです。
実はスタジオがランク4になると、すべての施設から一括回収できるボタンが追加されます。
ただ、登場が遅すぎる。
散歩している出演者やスタッフとの交渉も、タップするだけではダメで、その場所に社長が到着しないといけません。
よって移動時間を加味した場所をタップする必要があり、正直わかりづらい。
この辺は調整が欲しいところですね。
スコアは20年目の終わりで集計され、2周目以降はスタッフのレベルとスキル、出演者のレベル、ロケ地や施設のレベルを引き継げます。
また、初期資金も多めになります。
私的には、この作品のシステムには少し飽きが来ています。
あれこれ考える要素が少ないし、このシステムのスマホ用作品は『ゲーム発展国++』、『ふれあい出版局』、『アニメスタジオ物語』、『まんが一本道〆』、『ミリオン行進曲』に次いで6作目(簡易的な『ワクワク!まんが道場』や、ややシステムが異なる『ソーシャル夢物語』も含めると8作目)。
それぞれに特色はありますが、施設配置型のゲームほど変化を感じられず、ややマンネリ化している印象は否めません。
とはいえ、それはカイロゲームをずっと追ってきた人間の意見であり、このシステムが初めての人だと問題はないでしょう。
シンプルなシステムだからこそ、施設配置型より万人向けで、遊びやすい作品といえます。
映画というテーマも多くの人になじみがあるはず。
また、前述した作品のうち『ふれあい出版局』の発売が2014年11月で、他の(ガラケー版の)発売はそれより前なので、このシステムでの完全新作は久々ではあります。
今作も手軽に楽しめ、没頭できる経営シミュレーションゲームです。
カイロファンなら試しておきたいアプリでしょう。
映画スタジオ物語
カイロソフトの映画スタジオ運営シミュレーション
・経営シミュレーションゲーム
・カイロソフト(日本)
・600円
文/カムライターオ
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