クラブ・ホンノージで非業の死を遂げたDJ・オダノブナガ(の亡霊)とともに、テクノでポップなミュージックが席巻する戦国時代でグルーヴする、一風変わった音楽ソーシャルゲームが2018年7月に公開されていましたが……いつしか非業の死を遂げていました。
それが先日、買い切りゲームとして蘇っています。
『DJノブナガ』です。
この作品は『Perfume』や『きゃりーぱみゅぱみゅ』の音楽プロデュースで知られる「中田ヤスタカ」さんが曲を担当しており、ゲームデザインは『グルーヴコースター』や『スペースインベーダー インフィニティジーン』で知られる「石田礼輔」さん。
キャラデザインは『ウゴウゴルーガ』で有名になった「田中秀幸」さんが担当し、さらに『ケイオスリングス』などで知られる「安藤武博」さんも関わっていて、加えて「戦国モノ」で「音楽ゲーム」ということで、私的には大注目していた作品でした。
しかし昨年7月、ソーシャルゲーム版が公開されたとき、私はレビューをスルーしました……。
音楽ゲームというものは、リズムに合わせて叩くから、音に合わせて物理的にノるから、楽しくて気持ちが良いのだと思いますが、このゲームは流れてくるマークを指で「なぞる」もの。
しかもマークは、音やリズムとは無関係に出てきます。
曲自体はノリノリで、画面の演出などで爽快さを出そうとしているのも伝わってくるのですが、私はビートを刻まない音楽ゲームに、本来あるべき“音ゲーの楽しさ”を感じることはできませんでした(そもそも公式は「爽快アクションパズル」と称していて、「音楽ゲーム」とは称していませんでした。「音楽がテーマ」、「音楽とゲームの融合」を称する作品ではありますが)。
ところが今回、買い切りゲームになったバージョンをプレイしてみると…… なにか妙に楽しい。
詳しくは後述しますが、これはおそらく、ソーシャルゲームにしてはいけない作品だったのでしょうね……。
価格は480円。買い切り化により、キャラクター(ブショー)はゲームの進行、及びプレイ報酬の「メダル」でゲットする形に変えられています。
よって課金やガチャはありません。もちろん広告もなく、スタミナも撤廃されています。
ステージを開始すると、画面に星マークが現れます。
上から流れてくる場合もあれば、横から飛んで来たり、パッと現れたり、出現パターンはさまざま。
それを指で触れて消していきます。
連なって出てきた星は、指でなぞれば、まとめて消すことができます。
連続でなぞると「チェインボーナス」を得られますが、違う色の星を消したいときは、一旦画面から指を離さなければなりません。
また、ゲームが進むと触れても消せない星や、触れるとダメージを受ける「ノイズ」が登場します。
これらは星を消すと発生する爆発に巻き込んで破壊します。
そして、赤の星を消すと赤のブショーに、青の星を消すと青のブショーに攻撃力がチャージされ、一区切りがついた後、チャージ分のダメージを敵に与えられます。
ただし、直後に敵からも反撃を受け、以後、どちらかのHPが尽きるまで繰り返し。
ちなみにHPは「ヒップなポイント」の略です。
星を消していくと「フィーバーゲージ」や「スキルゲージ」が溜まっていき、スキルゲージがMAXになれば「攻撃力アップ」や「画面の星をすべて消す」といったブショースキルを発動可能。
そしてフィーバーゲージが最大になると、ターン終了後に大量の星が流れてくる爽快なボーナスシーンに突入します。
ステージは多彩で、上から星が流れてくるだけのステージもあれば、ノイズだらけで慎重なプレイが要求されるステージ、高速スクロールステージなどがあり、弾が出るしかけでノイズを射撃するシーンもあります。
星はリズムに合わせて出てくる訳ではありませんが、意表を突くパターンやパズル的な配置もあって、それがゲームの面白さになっています。
ただ、ソーシャルゲーム版のときは、ガチャでそこそこのキャラを出していれば序盤は非常に簡単で、テキトーにプレイしてもクリアできたため、ステージの変化の面白さをあまり感じませんでした。
ゲームが進めば難易度は上がりますが、攻略に必要だったのはテクニックよりもガチャとレベル上げ。
私はそれでは続ける気になりませんでした。
しかし今回の買い切り版はいきなり強いキャラを得られるようなことはないため、各ステージを適正な強さでプレイします。
よってクリアやボーナスの獲得には相応のプレイ結果が必要で、ガチャ運が悪いと進めないとか、ガチャで強キャラをゲットしたらメチャクチャでもクリアできるとか、そういうことはありません。
これならミスってボーナスを逃したときには再チャレンジしたくなりますし、攻略のために星の配置を覚えて、対応しようともします。
すると、ゲームの面白さもわかってきます。
ブショーの能力も調整されているようで、レベルを上げても攻撃力はほとんど変化しません。
高レアリティの武将だからといって、極端に強いわけでもない。
おかげで、キャラの性能やレベル頼りではないバランスになっています。
ポップなデザインとテクノサウンド、奇抜なストーリーとブショーのプロフィールもこの作品の魅力でしょう。
中田ヤスタカさんのBGMはもちろんのこと、独特でウゴウゴでミルクチャンなグラフィックはいかにも楽しげ。
ストーリーもユニークで、武田シンゲンがパンクロッカーとか、ぶっ飛んだ世界観になっています。
一方で、一見ハチャメチャなブショーのデザインとプロフィールには、戦国ネタが満載。
コアな小ネタをさらにひねっていたりするので、かなり戦国時代に詳しくないと気付けないものも多いですが、知っていると笑えるデザイン&プロフィールばかりです。
最初のうちは誰がどんなに姿になっていて、何を言い出すのか、それだけでも楽しめます。
すべてのキャラにボイスも用意されていて、こうした演出面に力を入れているのは、名うてのクリエイターが集まって作られた作品らしさを感じます。
プレイスキルが重要になったとはいえ、ゲーム自体はそんなに難しいわけではありません。
中盤以降、敵の属性に合わせてブショーを編成する必要がありますが、それだけわかっていれば、誰でも楽しめる万人向けの作品です。
解説も丁寧で、ゲームを知らない中田ヤスタカファンの人が、それだけの理由で買ったとしても普通に遊べるでしょう。
全体としては、クリエイターの作品らしい「デザイナーズゲーム」といった印象も受けます。
はっちゃけていますが、それでいてオシャレな感じ。
手軽に遊べるアプリで、買い切り化したおかげで通信も不要なので、合間の時間に遊ぶゲームとしても良さそうです。
ソシャゲでなくなった今なら、おすすめしたい作品です。
DJノブナガ
テクノミュージックでDJバトルを繰り広げる戦国アクションパズル
・音楽アクションパズル
・協力:ワーナーミュージック・ジャパン(日本)
・開発:アソビシステム(日本)
・開発/販売:スクウェア・エニックス(日本)
・480円
文/カムライターオ
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