『ゲームセンターあらし』の昔より、ビデオゲームについてのマンガ、“ゲームマンガ”が数多く描かれてきた。ゲームもマンガもおもしろいものだから、ゲームマンガを見かけるとついつい購読していたけれど、気づけば書棚の一角を占め、これを分類・整理すれば、“ゲームマンガ”から何か時代が見えてくるのでは? と思ったのがこの記事の発端だ。
【永久保存版】国内ゲーム漫画83作品287冊を全冊読破してレビュー。語られざる歴史をベテランゲーム誌編集者が徹底案内【前編】
※前編から2冊増え、後編では計289冊となっています。(編集部)
前編の記事で掲載した「バトルマンガ」、「ゲームプレイヤーマンガ」、「エッセイ・ルポマンガ」編は、筆者の至らなさに端を発するお叱り含め、未読の作品についてなど多くの反響をいただいた。今回は、フィクション寄り・ノンフィクション寄りを問わず、ゲームを作る人々を描いた「クリエイターマンガ」、ゲームがモチーフの「ギャグ・コメディマンガ」、そして近年よく見る「懐古マンガ」についてをお届けしよう。
扱った作品のレギュレーションは、それほど厳しく適用していないが、手持ちの作品のうち以下のものを外した。
・メディアミックスなど、ゲームの原作となる前提で描かれたマンガ
・ゲームをコミカライズしたマンガ
・ゲームを扱ったライトノベルがマルチ展開していくなかでコミカライズされたもの
・単行本化がなされていないもの
そこから残った作品を傾向ごとに分類し、主立ったものをピックアップして書評的に紹介している。今回、紹介しているのは以下の作品だ。インデックス代わりに記しておこう。
【分類1:バトルマンガ】(前編に掲載)
ゲームを通じたバトルをおもに描くマンガ
ゲームセンターあらし/マイコン電児ラン/ファミコンロッキー/バーコードファイター/01 ZERO ONE/ウメハラ To live is to game/ウメハラ FIGHTING GAMERS!/Good Game/七海の623/BATTLE MEXIA/いつかみのれば
【分類2:ゲームプレイヤーマンガ】(前編に掲載)
バトル以外のプレイヤーの遊ぶさまを軸に描くマンガ
ワンダービット インサイダーケン編/空談師/ルサンチマン/ナツノクモ/日がな半日ゲーム部暮らし/すこあら!/神のみぞ知るセカイ/BTOOOM!/かくげいぶ!/ゆうべはお楽しみでしたね/百万畳ラビリンス/廃課金四姉妹/アヴァルト
【分類3:エッセイ・ルポマンガ】(前編に掲載)
ゲームやゲーム周辺を題材にエッセイやルポルタージュの形で描くマンガ
あんたっちゃぶる/おとなのしくみ/犬マユゲでいこう/気になったもんで/ひちゃこのゲーム体験記/4コマゲーム通信 ふぁみもん/福満しげゆきのほのぼのゲームエッセイマンガ/突撃!となりのプロゲーマー/無慈悲な8bit/パパはゲーム実況者~ガッチマンの愉快で平穏な日々~/学研 まんがでよくわかるシリーズ テレビゲームのひみつ
【分類4:ゲームクリエイターマンガ】
ゲームを仕事にする人々を描くマンガ
ドラゴンクエストへの道/あそびじゃないの/ゲームクリエイター列伝/RiNGO/ゲームソフトをつくろう/東京トイボックス/大東京トイボックス/げーむ部!/R18!/超熱ゲームキッド!! クリエイ太/京アミ!/NEW GAME!/EGメーカー/エロゲの太陽
【分類5:ギャグ・コメディマンガ】
ゲームを題材としたギャグやコメディタッチのマンガ
ファミコンランナー高橋名人物語/ファミコン探偵団/大トロ倶楽部/しあわせのかたち/べーしっ君/はまり道/ゴッドボンボン/ニューはまり道/Gセン場のアーミン/ジャングル少年ジャン番外編 ドッキンばぐばぐアニマル/ドキばぐ/ゲームびと公式ガイド/進め!!聖学電脳研究部/セガのゲームは世界いちぃぃぃ!/羽生生純の1ページでわかるゲーム業界/アーケードゲーマーふぶき/ゾルゲ大全集/プリンセス破天荒/P.S.すりーさん/電脳遊戯クラブ/にんしんゲーム天国/えすえぬ家の人々/メガドラ部長りるなちゃん/にゃん天堂/ちきう☆防衛隊! セハガール
【分類6:レトロマンガ】
ゲームを題材に懐古を楽しむマンガ
8bit年代記/ピコピコ少年/れとろげ。/ハイスコアガール/僕らが格闘ゲームに夢中だった頃/RYU-TMRのレゲー解体劇場/懐かしファミコン物語/おばあちゃんとゲーム/ゲームやるから100円貸して!
※紹介しているタイトル後の諸元は、全冊数/単行本1巻の刊行年/作者/発売元/掲載誌・掲載サイトを表している。表紙画像は初出時のものを基本としている。文中の人物名は、作家、作中の登場人物、引用的に取り上げた人物問わず、基本的に敬称を略した。出版社、掲載誌、掲載サイトなども刊行時の名前に依った。本稿で使用されている書影などは全て筆者の個人所有のもの。
【分類4:クリエイターマンガ】ゲームを仕事にする興奮と悲哀を描く
若いプレイヤーのゲーム熱が高じると、ゲームクリエイターを職業として意識するのは至極当然なこと。プレイヤーによるバトルマンガから始まったゲームマンガも、読者の興味が高じれば、遊ぶだけでなく、必然的に作ることへの潜在的な欲求を拾い上げ、クリエイターを描くマンガを生み出すこととなった。はじめは伝記的に、やがてノウハウや仕事の内実を描くように。
このように、このジャンルはクリエイターやゲームタイトルに対するノンフィクションのドキュメンタリー的なところに端を発しているのだが、この10年弱でとくに顕著な傾向が現れ始めた。その傾向は、実際に作品群をご覧いただくとひと目でわかるだろう。
『マンガ ドラゴンクエストへの道』──『ドラクエ』の本質をさらりと語る名著
堀井雄二、中村光一、鳥山明、すぎやまこういち、千田幸信(プロデューサー)など、ファミコンRPGの嚆矢にして金字塔たる『ドラゴンクエスト』をこの世に送り出したキーマンたちが、悩み、努力し、そして成功した同作開発秘話をマンガ化したもの。
1982年にエニックスが主催した第1回ゲーム・ホビープログラムコンテスト【※】で堀井と中村が出会い、それがファミコン版の『ポートピア連続殺人事件』(1985年)につながり、一方エニックスのユーザーアンケートハガキに、当時すでに作曲家として高名だったすぎやまが書き込み投函。鳥山を招聘し、皆でいよいよRPGの開発に乗り出す……という、いまではすっかり有名になった流れを丁寧に追いかけている。
※第1回ゲーム・ホビープログラムコンテスト
1982年に創業したてのエニックス(当時)が、販売するための作品集めや有能なプログラマーの発掘のため、賞金総額300万円で開催したゲームホビーに限定したプログラムのコンテスト。入賞作の発表は翌83年に行われ、最優秀賞に森田和郎の『森田のバトルフィールド』、優秀賞に中村光一『ドアドア』ほか1作、入選作のひとつに堀井雄二の『ラブマッチテニス』が選ばれている。同コンテンストは第3回まで開催された。
カタカナでは、イ、カ、キ、コ、シ、ス、タ、ト、ヘ、ホ、マ、ミ、ム、メ、ラ、リ、ル、レ、ロ、ンと濁点、音引きしか使われていないことなどの開発秘話がそこここに見られ、マンガとしては、すぎやまの起用をめぐって千田と中村が対立するあたりや、開発終盤で敵の攻撃プログラムを変更すべく納期を遅らる決断をする部分などがヤマとなる。
エピローグは『ドラゴンクエストIV 導かれし者たち』(1990年)の制作打ち上げ会。ここにさらりと「ドラクエの魅力は人間愛というメッセージ」と書かれているのが心憎い。ソフトの発売間もない1990年刊行のスライム表紙のものと、1991年刊行の勇者コスチュームの表紙のものでは、一部の内容が削除されるなどそこそこ異なっているので、マニアを自称するならどちらも読んでおきたいところだ(ただし、オークションなどの相場が高いことを覚悟)。
『あそびじゃないの』──ネット以前に描かれた貴重なソース
原作の宮岡寛は、雑誌ログインや週刊少年ジャンプの“ファミコン神拳”、週刊少年サンデーのマンガ家養成コーナーなどでライターとして活躍。その後、ライター仲間の堀井雄二の誘いで『ドラゴンクエスト』(1986年・エニックス)の制作に参加し、のちに脱・剣と魔法のRPG『メタルマックス』(1991年・データイースト)を手掛けた人物。
その氏の知見が反映された、スーパーファミコン時代のゲーム制作マンガだ。作画も週刊少年サンデーで『ただいま授業中!』(1980年・小学館)など、一時代を支えた人物。フィクション系のゲーム制作マンガのはしりと言えるだろう。
具体的な内容は、ゲーム制作会社に、場違いなそのスジ方面の人物ぽく見える鮫島が入社し、切れ者の彼がゲーム制作の現場を学んでいく一方で、自分のゲーム作りを目指す若き見習いの茶畑と桃子の苦悩や淡いラブストーリーが描かれる。
ほかにも水見龍一なるクールタイプの合理主義者がライバル的なポジションで登場(『大東京トイボックス』しかり、『エロゲの太陽』しかり、ストーリードリブンのゲーム制作モノには、必ずこの手のクールタイプのライバルが登場する説)。正体不明のアドバイザー源さんという設定や、水見と浮き名を流すスターの“万堂なつほ”というネーミングが時代を感じさせる。
ゲーム制作の仕組み解説や裏話などは、いまの時代となっては、少し興味のあるプレイヤーならネットなどで楽に知り得ることだが、連載はWindows95以前の時代。ゲーム作りに関心を寄せる青少年にとっては非常に貴重な情報源だった。
「おだやかなポルノと甘口のサディズム──それは大衆がいつの時代も娯楽に求めてやまぬ2大要素」など、宮岡の持論も垣間見え、単行本にして4巻ながら読んで得られるものは多い。その4巻にも連載最後の数回分は未収録となっているのがもどかしい。
『ゲームクリエイター列伝』──伝説のドキュメンタリーマンガ
1996年から2000年にかけて週刊少年マガジンで不定期に連載されていた伝説のドキュメンタリーマンガ。クリエイターたちがいかに苦悩して1本の作品を作り上げたかが『プロジェクトX』【※】のように描かれている。
※プロジェクトX
2000年から2005年にかけてNHK総合で放映された、ドキュメンタリー番組『プロジェクトX ~挑戦者たち~』を指す。敗戦後の日本が高度経済成長にさしかかる時代に困難を極めた産業プロジェクトなどにスポットを当て、当事者たちがどのように問題を克服していったかが描かれた。のちの多くのドキュメンタリーに影響を及ぼしたほか、エンディングテーマとなった中島みゆき『地上の星』は長期間売れ続ける大ヒットとなった。
とはいえマンガなりのフィクションや誇張はチラホラ。オチも毎回、「本当に俺たちの作ったものは楽しまれるのだろうか」→「やっぱり誰も買っていないのでは」→突然開くドア(突然鳴る電話)→「見てください! こんなにたくさんの人が楽しんでいます!」とアンケートハガキの入ったダンボールの山やコールセンターばりの鳴り止まぬ電話群に感激するいう展開。そこも含めて楽しめば、掛け値なしにおもしろい。
話題も、1巻が「バーチャファイターを創った男達」、「ダービースタリオンを創った男」、「バイオハザードを創った男達」。2巻が「グランツーリスモを創った男達」、「スーパーマリオBros.を創った男達」、「プレイステーションを創った男達」という錚々たるラインナップ。電ファミの“ゲームの企画書”も知ってか知らずか、この作品と同じようなところから着想を得ているのだろう。
ちなみにテクモ社(当時)の創業40周年記念誌(非売品)に、テクモ回が載っているという噂だが、筆者は未確認。いまいちばん読みたいゲームマンガかもしれない。
『RiNGO』──20年前にバーチャルアイドルがいた
Windows95から98にかけてインターネットが一般的に普及していくさなか、そしてサターン、プレイステーション、ニンテンドウ64の時代に描かれたバーチャルアイドル製作物語。
主人公の珠雄はバーチャルアイドルのイメージデザインコンテストに応募し、みごと受賞。高校生ながらスタッフに抜擢され、そのバーチャルアイドルRiNGOのイメージ付けなどに奮闘する。RiNGOの声優兼リアルタイムのモーションキャプチャーを担当する藤枝さん(ロングヘアー)、そして幼なじみでパンチラ担当の格闘ゲーマーあかね(ショートカット)との無自覚な三角関係も絡まって……というわかりやすいストーリーが、『スターオーシャン セカンドストーリー』【※】のキャラクターデザインを担当した恋緒の絵に乗って進行する。
※スターオーシャン セカンドストーリー
エニックス(当時)が1998年に発売したプレイステーション用RPG。宇宙を舞台に、ダブルヒーローシステムと呼ばれる2主人公制を採り、クロードとレナ、ふたりのどちらかの視点でプレイができる。プレイステーション版はキャラクターデザインを恋緒みなとが担当して好評を博していたが、キャラクターを脱がせた同人誌を本人が作成し、大きな騒動になった。
RiNGOは、Webカメラ越しにプレイヤーの反応を受け取ったアクター(藤枝さん)がRiNGOになりきって演技。これをモーチョンキャプチャーしたものをサーバー側でリアルタイムでアニメーションとして生成し、動画の形に処理したものをプレイヤー側の端末に送り返すという仕組み。いろいろと予見されていたタイミングではあるが、やはり作者の技術的な先見の明のようなものが感じられるが、そこまでアタマの回る作者がどうして……。
さらにひと世代前にあたるパソコン通信を描いた『オレ通AtoZ』(1996年・講談社)も当時にすれば、最先端でリアルタイムなもの。単行本巻末にある作者自身が監修したパソコン通信用語辞典も、ハード用語からスラングまで均しく怖ろしい密度。オタクがまだギリギリ「おたく」だった時代を色濃く感じられる。
※「おたく」という呼称は、特定の趣味のマニアが会話をするとき、直接的に相手を指さない極めて日本語的な二人称として採用していたのが始まり。こうした言葉遣いの傾向があるマニア層を1983年に編集者・中森明夫が「おたく」とグルーピングして嘲笑したことを発端とし、宮崎勤の事件や宅八郎の活躍を経て、現在の用法にシフトしていく。その過程で言葉の対象が持っていた濃さや湿度が薄らぎ、表記は「おたく」から「オタク」と平板化していった。
『ゲームソフトをつくろう』──子どもの発想を舐めちゃいけない
ゲームクリエイターを目指す子どものための学校に、アシカを引き連れて田舎から出てきた天才クリエイターの息子(ただしゲームは未体験の野生児)が現れ、真新しい発想でつぎつぎと新たなゲームを作り出すというちびっ子クリエイターもの。
その真新しい発想は、「あやとりをカメラで読み取って操作系に充てる対戦格闘ゲーム」や、「最大128人同時プレイのマクラ投げアクションゲーム」などと存分に活かされ、クラスメイトの実家である潰れかけのソフトハウスを救うため、小学生たちはそのままそこの社員となる。
このように子どもの奔放な夢あふれる内容だが、最後に登場する“子供の王国のネットワーク計画”なるアイデアは、連載の6年後に登場する、ネットワークに対応した『おいでよ どうぶつの森』(2005年・任天堂)にも近いもの。夢はファンタジーとは一概に言い切れないのだ。
イマジニアから同時期に発売された同名のゲームソフトとじつはリンクしており、ゲーム中で条件を満たせばマンガのキャラクターたちが登場するという、ある種のメディアミックスもなされている。
『東京トイボックス』、『大東京トイボックス』──ゲームクリエイターマンガのメルクマール
講談社モーニング誌で掲載後に幻冬舎コミックバーズに移籍し、週刊連載から月刊連載となった、ゲーム制作会社スタジオG3と、その中心人物である天川太陽の物語。
有能なキャリアレディ月山星乃が社内政治の果てにG3に出向となり、そこで出遭ったのが、超大手ソリダス・ワークスで幻となったRPG『ソードクロニクル4』のディレクターを務めていた天川太陽。とことんクリエイティブ志向で周囲に耳を貸さないことも多い太陽と衝突をくり返し、愛想を尽かしたときにタイミングよく出向元に帰任することになった月山が、紆余曲折を経て、G3に戻ってくるまでが『東京トイボックス』のストーリー。
続く『大東京トイボックス』では、太陽を師匠と慕う新人百田モモが登場。太陽のかつての親友であり、いまはソリダス・ワークスの上層に食い込む天才クリエイター仙水伊鶴とのやりとりで生まれる太陽の煩悶、そして前作以上に各スタッフの入り組んだ心情などが描かれ、群像劇的な魅力や、組織の成長譚としてもおもしろく読める。連載がおよそ7年にわたったため、リアルのゲーム市場も推移し、作中でもその変化が見られる点も興味深い。
組織の中で立ち回らなければならない大人としての理屈と、「おもしろさ」にとことん忠実でありたいという太陽のクリエイターとしての葛藤が多く描かれるなか、読者としてはやはりただひたすらにおもしろいゲームを彼に作ってほしい、そしてそれを遊びたいと願うのみ。極めてマンガ的なご都合のドラマも見られるが、過去にないほどゲーム制作の現場を描写した作品であり、「魂は合ってるか」という言葉に代表される太陽の泥臭さが、読み手を興奮へと誘う。
物語のヤマでは、「テレビゲームが青少年に与える影響」をテーマに、どこか浦沢直樹の『MONSTER』(1995年・小学館)めいたミステリーも展開。最終的にはハッピーエンドを迎えて心地よく読了できるのだが、Apple社の黎明期を描いた『スティーブズ』(2014年・小学館)も含め、“うめ”の掌でいいように転がされている感じがするのが、こそばゆいというか悔しいというか。
若き日の太陽と仙水を描く『東京トイボックス0』や、本編のエピソードを補完する『大東京トイボックスSP』などの別巻も刊行されているうえ、要潤の主演でテレビドラマ化もなされている。
『げーむ部!』──男性向け少女マンガ誌(!)掲載の、ゲーム部手芸部漫画研究部マンガ(複雑)
掲載誌の“コミックハイ!”は男性向け少女マンガ誌を標榜していた雑誌。そのせいか絵柄も非常に柔らかいのだが、パンチラなどお約束的な描写も多数。
物語は、ゲーム部手芸部漫画研究部なる実績のない部活動の廃部の危機に際し、主人公たちが1ヵ月で美少女ゲームを作り、個人的な理由で廃部を目論む生徒会長に突きつけようというところから始まる。
『涼宮ハルヒの憂鬱』(アニメ2006年)や『けいおん!』(マンガ2007年)の作った大きな流れの中にある部活動マンガであり、ある意味正統なオタクマンガと言えるだろう。
『R18!』──名は体を表す!
美少女ゲーム(平たく言えばエロゲー)メーカーを舞台にすると、劇中劇的なメタ描写も含め、必然的に性的なシーンは多くなる。社員が全員女性ならなおのこと。4コマの倍数ベースで進むシチュエーションコメディの一種で、絵柄の愛らしさなどで読者を萌えさせ、ちょっとしたシーンで興奮させるのだ。
後述する『NEW GAME!』や『EGメーカー』と共通する部分も多いが、『NEW GAME!』が人間関係に重きを置き、『EGメーカー』が笑いの方向に突き抜けようとしているのに対し、『R18!』は、もっと直接的(だがソフト)なエロ描写に重点が置かれている。ただ、ときどき挟まれるCGの塗りなどに対してのレクチャーは実用的で、聞けば作者はアダルトゲーム制作会社の元スタッフということに納得。
『超熱ゲームキッド!! クリエイ太』──超時空テイストのキッズクリエイターマンガ
時空を超えて21世紀に現れた、オールドスクールなゲームコミック。作者は『つるピカハゲ丸』(1985年)の、のむらしんぼだ。だが21世紀では主人公がプレイヤーではなく、子どもの憧れの職業とされるゲームクリエイターとなる。
ゲームの大手“楽天堂”に自作を持ち込んだ主人公、栗鋭太は、伝説のクリエイター鮫島鯨魔に遭遇して認められ、小学5年生ながら楽天堂でゲームを開発するようになる。厳しく、そして熱い魂を持つ鮫島が繰り出す課題につぎつぎと応え、斬新なゲームを開発する鋭太だが、皮肉なもので、プレイヤーとして戦う2話ぶんが、必殺技なども登場していちばん『あらし』的でおもしろくもある。
単行本内の調整ページに描かれた4コママンガが、『つるピカハゲ丸』【※】を彷彿させる良いくだらなさで非常に楽しい。
※つるピカハゲ丸
1985年から10年にわたりコロコロコミックに掲載されていた、のむらしんぼのギャグマンガ。主人公の小学生、ハゲ田ハゲ丸の「つるセコ」と呼ばれるケチ臭いセコさを漂わせた日常を描いた。キッズのハートをわしづかみにする、ダジャレや短絡的な行動が笑いを誘う。
『京アミ!』──油断するとすぐにパンツや乳首
タイトルは、物語の舞台となる“京都アミューズメント学園”の略。ここに集った学園女子たちが、組んずほぐれつエロゲーを作るという話。油断するとすぐにパンツや乳首が登場するため、人前での読書にはあまり適さない。
『げーむ部!』といい、『R18!』といい、この『京アミ!』といい、タイトルが4文字程度で末尾に “!”が付くマンガはそれだけでたとえオリジナリティがあったとしても、そう看做されにくいのがもったいない。『京アミ!』は内容といい、作品名といい開き直っているのが潔くあるが。
『NEW GAME!』──コツコツと積まれる人間関係が心地よさに
非常に整った絵で語られる、女性だけのゲーム開発会社の日常譚。とはいえ作者は元ゲーム会社勤務で、知識と経験に支えられた土台がある。エロではなく、ときおり下着が登場する程度の萌えかたで、話もゲーム開発の実際やなんたるかなどを問うものではなく、職場の人間関係や交流が4コマベースでコツコツと積むように描かれる。それだけに、長く読むとキャラクターへの理解が進み、職場の一員として日常を覗き見ている気になれる。
ただ、テーマがテーマゆえ、職場の机周辺で片付く話が多く、基本的にあまり動的な展開が見られないが、最新刊の6巻になって、主人公をライバル視する新人の登場やキーマンの離脱など、物語としても大きな変化が現れた。さらにこの7月からはアニメの第2期も始まり、いまいちばん盛り上がっているゲームマンガのひとつだろう。両者とも今後の進展が気になるところだ。
『EGメーカー』──エロネタでリビドーと笑いのツボを同時マッサージ
繰り返しになるが、エロゲーメーカーを舞台にすると、劇中劇的なメタ描写も含め、必然的に性的なシーンは多くなる。
掲載誌は『ふたりエッチ』(1997年)のヤングアニマル(これが『3月のライオン』(2007年)、そして『ベルセルク』(1989年)と併載されているという奇跡)であるためか、かなり明け透けなエロネタでリビドーを刺激しに来つつ、笑いを取りにくる。絵柄の愛らしさもあって、結果、シチュエーションコメディとして楽しく読めるものとなっている。
『エロゲの太陽』──ドラマに潜む生々しさは、じつは本物
超メジャー誌で掲載されていた、エロゲー制作会社の物語。商社のエリートだった主人公が濡れ衣をかけられて会社を離れ、エロゲー会社に拾われる。エロゲー制作会社マンガ(!)の常として、スタッフは女性だらけだが、主人公が男性であることで他と一線を画している。
原作者はエロゲー制作会社を立ち上げ、潰したことがあるというリアルのゲームクリエイター。各巻のあと書きや本編の細部にリアリティの片鱗が宿る一方で、マンガならではの誇張やエピソードも多く、読み応えも十分。なかには(踏み込みは甘めだが)業界ゴロの話や不正コピーの話など、生々しいテーマのエピソードも。舞台となっている会社が倒産してからの立ち上がりは、ご都合的だが、読後感はいい。
作者コンビは現在、姉妹編に相当する『スマホゲームの大地』というマンガ制作のクラウドファウンディングのプロジェクトを進めている。すでに出資が400%を超えており、いづれ読めるようになるだろう。