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現実世界でクトゥルフ邪神の降臨を目指す!? 脱出ゲームでチャンバラでTRPG…リアルゲームLARPを初心者にもわかるように解説【LARPイベント体験レポ】

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LARP誕生の歴史とは?

 さて、そもそもLARPとはいつ誕生したのだろうか。明確な記録は無いが、参加者が自分ではない誰かになりきるというイベント自体は、即興劇のような形でかなり昔から行われてきた。あえて今のLARPに近いものをあげるとすれば、欧米で昔から盛んに行われてきた歴史再現イベントである「リビング・ヒストリー」【※】だろう。

※リビング・ヒストリー
過去の時代の衣装を身に纏い、その生活を再現するイベント。歴史的事件や戦争を事実に基づいて「再演」するのではなく、その時代の暮らしにその身を置く事を楽しむ。

 そして1970年代に入ってからは、TRPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ(D&D)』【※】によって巻き起こったRPGブームにより「ロールプレイング」という言葉が普及。ファンタジーLARPで遊ぶ団体が複数誕生した。この時期をLARPの始まりいっても問題はないだろう。

現実世界でクトゥルフ邪神の降臨を目指す!? 脱出ゲームでチャンバラでTRPG…リアルゲームLARPを初心者にもわかるように解説【LARPイベント体験レポ】_023
※1 ダンジョンズ&ドラゴンズ……1974年に制作されたファンタジーTRPG。GM(本作ではダンジョンマスターと呼ばれる)の提示するシナリオによってゲームの雰囲気は大きく異なるが、基軸となるのはダンジョンのなかで、ドラゴンをはじめとするモンスターを倒して宝を獲得するという会話型アドベンチャーである。世界で最初に登場し、もっとも普及したRPGとされる。日本語版は現在ホビージャパン社によって発売されている。
Image by Moroboshi.  Licensed under the terms of cc-by-3.0.)

 それからTRPG業界ではSFTRPG『トラベラー』【※1】やホラーTRPG『クトゥルフの呼び声』【※2】など様々なジャンルの作品が登場し、LARPはそれらの作品に影響を受けるような形でファンタジー以外のジャンルへも広がっていったようだ。

 中でも特筆すべきは、1993年にWhite Wolf Publishingから発売されたLARPのルールブック『マインズ・アイ・シアター』【※3】だろう。TRPG『ヴァンパイア:ザ・マスカレード』【※4】の世界観をベースに作られたLARPで、「最も商業的成功を収めたLARP」と呼ばれ、改版を重ねながら現在でも欧米では多数のコミュニティが存在し盛んに遊ばれている。

現実世界でクトゥルフ邪神の降臨を目指す!? 脱出ゲームでチャンバラでTRPG…リアルゲームLARPを初心者にもわかるように解説【LARPイベント体験レポ】_024
※2 クトゥルフの呼び声……クトゥルフ神話をテーマとするホラーTPRG。1981年に米・ケイオシアム社より発売された。ラヴクラフトの同名の小説を下敷きにしており、1920年代のアメリカを舞台に、探索者たちは「宇宙的恐怖」に襲われながらもサバイブする。「正気度(SAN値)」の設定で有名である。日本語版はホビージャパンとKADOKAWA(エンターブレイン)から発売されており、後者は『クトゥルフ神話TRPG』というタイトルを冠している。

※1 トラベラー
1977年に米・GDW社から発売されたSF-TPRG。57世紀という未来の銀河帝国を舞台にした冒険活劇で、プレイヤーは宇宙船に乗ってさまざまな星をめぐる。その緻密なSF的な世界設定とゲームの遊び方の自由度の高さにより人気を博した。安田均が翻訳を手がけた日本語版は1984年に発売されたのち絶版となったが、2003年に株式会社雷鳴より再販されている。

※3 マインズ・アイ・シアター(Mind’s Eye Theatre)
『ワールド・オブ・ダークネス』の世界を舞台にしたLARPのこと。プレイヤーの自由度は非常に高く、自身のキャラクターだけでなく、ストーリーや環境などを他のプレイヤーとの協働のなかでつくりあげていくことができる。

※4 ヴァンパイア:ザ・マスカレード
1991年にWhite Wolf Publishingから発売されたTRPG。プレイヤーは現代に生きるヴァンパイアとなりヴァンパイアハンターや他のヴァンパイア血族と戦いながら、自らの血族の支配を広げていくというゲーム。かつて日本語版の展開も行われた。

 近年では、主に欧米にて広く遊ばれており、友人たちと集まってローカルに遊ぶものから、数千人規模のプレイヤーが参加する超大規模な商業イベントまで様々な形態で楽しまれている。

 また、海外のアナログゲームショップでは、ボードゲームやTRPG、ミニチュアゲームと並んでLARPのルールブックが売られており、LARP用の装備を売る店も存在。TRPGのデジタル版ルールブック販売サイト「DriveThru RPG」でもLARPのルールブックも売られている。
 その商品一覧を見るだけでも、どれだけいろんなゲームが遊ばれているかが垣間見える。ちなみに執筆現在での売上一位はやはり『マインズ・アイ・シアター』だ。

日本でのLARPの歴史

 一方、日本におけるLARPの歴史を遡ってみよう。
 アナログゲームの祭典「JGC(ジャパン・ゲーム・コンベンション)」【※1】では2006年から断続的にライブRPGという名称で催しが行われていたことが確認できる。別団体では、西洋剣術スクールである「キャッスル・ティンタジェル」【※2】が主催する形で、ラテックス製の武器とリアルな防具を使いオリジナルのルールで戦うファンタジーLARPが2012年と2013年に開催されている。

※1 JGC
毎年夏に開催されているアナログ・ゲーム(TRPG、ボードゲーム、カードゲームなど)ための宿泊型イベントのこと。アメリカの「オリジン・ゲーム・フェア」や「Gen Con」といったアナログ・ゲームイベントを参考にし、1996年から開催されている。さまざまなゲーム企業の後援のもと、参加者は、3日間の大会期間中にホテルの各部屋で自由にゲームを楽しむことができる。「JGC2016」の開催を最後に、2017年からは「TPRGフェスティバル」として開催される。

※2 キャッスル・ティンタジェル
東京目白に位置する西洋剣術のスクール。日本では唯一本格的にドイツ剣術を習得できるスクールと謳っており、レッスンでは西洋/和甲冑を身につけて剣術を学ぶことができる。和洋の剣術の扱いを学ぶ「騎士道クラス」「ドイツ剣術クラス」「武士道クラス」のほかに、中世ヨーロッパの文化やダンスを教える「コートオブティンタジェル」といったクラスも開講されている。

 他にも非商業で様々なコミュニティが個人サークルという形でLARPを展開しているが、2016年前半頃までは愛好家同士がローカルに集まってプレイするのが中心のジャンルであった。

2017年がLARPの転機となる?

 そんな日本のLARP界隈において、2017年は節目の年になろうとしている。
 まず大きかったのは、先程の『月夜見館のスケルツォ』を主催した、2016年に設立された体験型LARP普及団体「CLOSS」【※】の存在だ。

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※CLOSS……「体験型LARP普及団体」として、「レイムーンLARP」というサークルのスタッフたちが2016年に設立した。これまで「生贄たちの挑戦」「月夜見館のスケルツォ」といったLARPイベントを成功させている。
(画像は体験型LARP普及団体「CLOSS」公式サイトより)

 普及団体と銘打っている通り、同団体はLARPを広めるために精力的に活動を行い、2016年12月に阿佐ヶ谷アニメストリートの「DARKGAME&MAGICCAFE」にて、国内初の商業施設によるLARP『生贄たちの挑戦~狂気の館から脱出せよ~』【※1】を成功させる。
 このイベントはホラーアトラクションを手がける「方南町お化け屋敷オバケン」【※2】とのコラボで誕生したもので、お化け屋敷の演出ノウハウと「CLOSS」のゲームシステムが見事に融合。TRPGの人気ジャンルである「クトゥルフ神話」をモチーフにしたことも功を奏し、チケットはすぐさま完売した。

※1 生贄たちの挑戦~狂気の館から脱出せよ~
「方南町お化け屋敷オバケン」とのコラボレーションのもと、「体験型LARP普及団体CLOSS」が2016年12月に初演、2017年3月に再演したホラーLARPイベント。「クトゥルフ神話」の設定のもと、血みどろの洋館に閉じ込められた8人のプレイヤーたちが脱出を試みるゲームである。日本で初めて商業店舗本格的で開催したLARPであるとされる。

※2 方南町お化け屋敷オバケン
i.h.s groupとHLCが共同で運営するお化け屋敷。「なぜこんな所にお化け屋敷が!?」というキャッチコピーのもと、東京都杉並区方南町の閑静な住宅街に、ミッションクリア型のお化け屋敷として2012年にオープンした。希望によって怖さの度合いを選べるといった特色で、新たなお化け屋敷として多数のメディアにも取り上げられた。貸切のホテルでの宿泊型お化け屋敷「オバケンホテル」や、キャンプ場を舞台にした「オバケンゾンビキャンプ」などのイベントも開催している。

 日本のLARPはこの『生贄たちの挑戦~狂気の館から脱出せよ~』を皮切りに、急速に動き出すことになる。2017年5月には西洋ファンタジー雑貨&LARP雑貨展示即売会「星降る森の魔法市」【※1】がテスト開催され、同じく5月には「電源不要」のアナログ・ゲームのみを対象とする日本最大のゲームイベント「ゲームマーケット」にLARPが初出展される。

 そして前述した商業公演『月夜見館のスケルツォ』が7月に開催され、その翌日、2017年7月23日には、川崎PLATINISTUDIOにてオバケン主催『邪神降臨』【※3】が開催。また2017年9月1〜3日には、JGCが熱海 にて「TRPGフェスティバル」【※3】と名前を変えて宿泊イベントを実施。CLOSSによるLARPもイベント内で行われる。

※1 星降る森の魔法市
西洋ファンタジー的な世界観に沿って演出された「没入型展示販売会」のこと。ファンタジー系のグッズをはじめとする雑貨や、LARP関連の物品が販売される。参加者はランタンを片手に薄暗い会場の即売会を楽しむことができる。2017年5月のテスト開催を経て、2017年9月24日に川崎市産業振興会館での本開催が予定されている。

※2 邪神降臨
「方南町お化け屋敷オバケン」の主導のもと、オリジナルゲーム第2弾として開催されたLARPイベント(2017年7月開催)。「人狼×リアルRPG」をテーマに、黒魔道士のうちに混ざる白魔道士たちが、邪神降臨の儀式の遂行をめぐって争うゲームイベントである。

※3 TRPGフェスティバル
熱海の温泉旅館を貸し切って行われる2泊3日の宿泊型TPRGイベント。前年まで毎年開催されていた「JGC」の新生イベントとして、2017年9月に開催が予定されている。参加者は架空のキャラクターになりきって、さまざまなイベントを楽しむことができる。

 どのLARPも、TRPGのようにプレイヤーに加えて進行役のGMが存在し、実際に自分の身体を動かしてインタラクトしながら即興劇的なロールプレイを行うのが基本的な形となるが、ファンタジーからSF、ホラーなどいろんなジャンルがあり、そのプレイスタイルも多様。
 要するに、RPGが全てドラクエ的な指すわけではないのと同様に、LARPも必ずしも衣装を着て武器を手にファンタジー世界でチャンバラをするという遊びではないのだ。

 そこで電ファミ編集部では、その多様なLARPのあり方を伝えるため、別途『邪神降臨』の方も取材してみた。また既にゲームマーケットのレポート記事でも記述しているが、改めて同イベントで開催された「LARP戦闘体験会」の様子も改めてお伝えする。

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ちなみにこれは『邪神降臨』当日の様子なのだが、これは……教祖様と信者……?


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