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もう「中古ショップ」なしに国内ゲーム産業は成り立たない!? 現役ゲオ社員にゲームショップ事情を直撃したら生々しいリアルな裏話が…Switch品薄の舞台裏ドタバタ劇も

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バイヤーの仕事とは――在庫コントロールの“妙”

――さて、ここまで最近のゲームショップ事情を聞いてきましたが、ここからは中古ゲームのバイヤーとはなんぞや、という話を深く聞いていきたいと思います。海津さんは日々、どういう仕事をされているのでしょうか?

海津氏:
 新品の場合は“企業から買う”ですが、中古の場合は“お客様から買う”というのが中心の仕事になります。具体的には、中古在庫の管理や、買値・売値の設定などです。

――価格設定には、何か指数のようなものがあるんでしょうか。

海津氏:
 実は数字を管理する専用ツールがあるんですよ。

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海津氏の言うツールのスクリーンショット。価格設定にまつわる様々な数値が所狭しと入力されている。こちらは『モンスターハンターダブルクロス』のページ

 そのツールでは、新品の販売実績や各店の在庫状況はもちろんのこと、「中古を4000円で売った時は何本売れたのか、それで利益がどれぐらい出たのか」――など、様々な情報を一覧で見ることができます。我々バイヤーは、この数字を見て中古の買値と売値を決めて、変更した価格データを各店舗に送信します。特に最新作に関しては、毎日数字を確認していますよ。

――おおっ、こんなものが……。

片岡氏:
 これは僕も初めて見ました(笑)。

――せっかくですので、具体的なタイトルの価格変動をみてみたいです。

海津氏:
 例えば『モンスターハンターダブルクロス』【※】は、ちょうど先ほど買値を300円下げました。

※モンスターハンターダブルクロス
カプコンより2017年3月にニンテンドー3DS版が発売。人気シリーズ「モンスターハンター」シリーズの最新作にあたる。2017年8月25日には、Nintendo Switch版が発売された。

――それはSwitch版が発売されるからですか?

海津氏:
 いえ、実は中古ゲームには、「これぐらいの在庫は抱えておきたい」という目標在庫数があるんですよ。でも『モンスターハンターダブルクロス』の場合は、2ヶ月くらい前まで、売れた数と買った数がほぼ同じで在庫が増えなかったんです。そこで買い取りアップキャンペーンを行う時期になったので、お盆までに在庫数を増やそうと試みたんですね。

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 それに加えて、7月は新作が多くて、お客様の“売って買う”というサイクルが活発化したんです。その結果、これまでプラマイゼロだった在庫が4桁くらいプラスになった。そうした経緯があり、少し前までは3000円台で買っていたのですが、直近では2000円台まで落とさせていただいた、というわけです。

――なるほど! 具体的にどんな“読み”をしてるのか聞くと、面白いですね。ちなみに、4桁在庫が増えるって結構な数だと思うんですが、そんなに集めてどうするんでしょうか?

海津氏:
 ゴールデンウィーク、お盆、お正月は売り時なので、それまでに数を集める必要があるんです。

 この業界は、商品によっては集めるのに2ヶ月かかってもセールで2日で売り切れることもあります。また、商品が切れてしまうと、店舗で「無いじゃないか!」となってお客様にご迷惑をおかけすることにもなりますしね。だから、そうならないように、先に在庫を持つべく手を打っているんです。

――そうした目標在庫数はどのように設定されているんでしょうか。

海津氏:
 過去の実績と、商品自体が持っている売りのポテンシャル、そして基本的には1ヶ月の販売数の動きを見ながら考えています。

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(画像はAmazonより、Nintendo Switch版)

 例えば『モンスターハンターダブルクロス』の場合、8月上旬だと1週間で1600~1700本は売れてるので、目標在庫数は通常7000~8000本あたりに設定するんです。ただ、このタイトルに関してはセールで今の値段よりも安く売ろうと考えているので、倍くらいの15000本まで見越して上方修正しています。すると、既に在庫が14000本くらいあるのでそろそろ集め終わる――そういった見立てをしているんです。

――かなりの数ですね。そんなに多くの商品をどこに保管されているんですか?

片岡氏:
 基本的には、店頭で加工して数分後には棚に出していますよ。

海津氏:
 ただ、どこかの店舗であまりに特定タイトルの在庫が多くなった場合は、弊社の流通網を使って他店に移動させていますね。1週間に同じタイトルを数千本買い取ったとしても、弊社の店舗数は1200店以上ありますので、各店舗で割ると1店舗2本とか3本。しかし実際は、多いところだと10本15本も買い取る一方で、0本なこともあります。

 すると、どうしても在庫が少ない店舗が出てくるので、店舗ごとの売り上げ実績に応じて在庫を流し、適正化していくんです。

――その余剰の有無は、タイトルによるのか、あるいは地理的な都市と郊外との格差によるものだったりするのでしょうか。

海津氏:
 どちらもありますね。例えば「モンハンは買えるけどドラクエは買えない」みたいなことが起きる一方で、店や地域によってもやはり違います。
 分かりやすい例をあげると、都心駅前だと据え置き本体はなかなか買えません。なぜなら、みなさん電車やバスで移動されますからね。逆に郊外だと、車での移動なので本体の買い取りは多いですよ。

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 ただ、基本的にムーブメントは都心から広がるので、最新機種の普及自体はやはり都心の方が早い傾向があります。逆に郊外だと今なおPS3の調子が良い店もあったりします。

――そうした、店舗と店舗を繋いで情報収集するシステムは、ゲオの強みのように思います。

海津氏:
 やはり1200店以上で商品を運用していることが大きいですね。一店舗だけで運用されているお店さんだと、たまたま「モンハン」は買えたけど「ドラクエ」は来ないなあとか、「ニーア」は全然買えないなあという状態にどうしてもなっちゃうんですね。

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 それが弊社だと、北海道で買い取ったソフトを沖縄で売ることだってできます。全国でできるだけ平準化することで「どこに行ってもドラクエはちゃんとあるよ」という状況をスピーディーに実現できるのは、たしかに強みかもしれません。

バイヤーから見た国内ゲーム市場の「異変」

――そうしたデータを収集する中で、バイヤーから見て買値・売値が高いタイトルにはどのような傾向があるのでしょうか。というのも、ゲームの良し悪しを中古価格から判断するという考え方もあると思うんです。

海津氏:
 突出しているのは、オープンワールド【※1】と対戦ゲームですね。特にその中でも、DLC【※2】が定期的に配信されるタイトルは、配信都度で買い戻しが発生しているのか、売り上げが上がったりするので高値であることが多いです。

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Rainbow Six Siege……2015年12月に発売されたFPS。PS4版、Xbox One版、Windows版が発売されており、新たな追加コンテンツも配信されている。
(画像はAmazonより)

 ここ最近だと、値段が高いままのタイトルは『Rainbow Six Siege』がいい例ですね。発売が2015年と1年半くらい前なんですけど、弊社だと販売価格が5000円を切ったことは1回もないです。これだけ値持ちするのは珍しいんです。

※1 オープンワールド
広大な世界を用意し、その中をプレイヤーが自在に探索して攻略するコンセプトのゲーム。「Grand Theft Auto」シリーズなどが代表例。AAAタイトルと呼ばれる、世界で何千万本の売り上げを叩き出す海外タイトルの多くが採用している。

※2 DLC
ダウンロードコンテンツのこと。ここではパッケージで発売されたタイトルにおいて、ネット経由で配信される追加のシナリオや装備といったコンテンツを指す。

――1年以上5000円を切らないってすごいですね。その理由はなんでしょう?

海津氏:
 ずっと在庫が集まらないんですよ。もともと「レインボーシックス」シリーズは数字が動く商品ではないという認識だったのですが、ここ最近は非常に人気が高くなっているんですよ。『The Witcher 3: Wild Hunt』【※1】とかもそうだったんですが、ここ2、3年の洋ゲー人気はすごいです。

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 そういうこともあって、例えば来年発売予定の『RED DEAD REDEMPTION 2』【※2】とかは、前作が国内で25万本くらいなんですが、今回は最大で50万本ほど売れるかもと想定しています。これは『Grand Theft Auto V』【※3】の売上からの推測です。こういう、今までだと想像もつかないようなタイトルが急に20〜30万本売れる事例が、これから増えるとみています。

※1 The Witcher 3: Wild Hunt
2015年発売のアクションRPG。「The Game Awards 2015」のゲーム・オブ・ザ・イヤーをはじめ、さまざまな賞を獲得し、世界的に話題となった作品。

※2 RED DEAD REDEMPTION 2
米ロックスター・ゲームズ社より発売予定のオープンワールドのアクションアドベンチャーゲーム。2017年秋の発売予定が延期となり、現在は2018年春頃となっている。『RED DEAD REDEMPTION』(2010)の続編にあたる。

※3 Grand Theft Auto V
2013年に発売された、「Grand Theft Auto」シリーズ12作目となるオープンワールド型クライムアクションゲーム。「RED DEAD REDEMPTION」シリーズ同様、米ロックスター・ゲームズ社より発売されている。タイトルの「Grand Theft Auto」=「自動車重窃盗」の通り、プレイヤーは車をはじめあらゆる乗り物を乗り回し、過激な犯罪やミッションを遂行していく。

――他にはどんな作品が売れていますか?

海津氏:
 『NieR:Automata』【※】もすごいですよ。ここ最近やっと在庫が増えてきて、やっと買い取りが3000円台に落とせるかなという感じです。

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 これは『レインボーシックス シージ』と比べると価格が低いように見えますが、ストーリーものに関してはめったにないことなんですよ。スクウェア・エニックスさん的にもそうとう珍しいヒットなのではないでしょうか。

※NieR:Automata
2017年2月にスクウェア・エニックスから発売されたアクションRPG。2010年発売のヒット作『NieR Replicant』と『NieR Gestalt』の後継作品にあたる本作は、国内外で非常に高い評価を得ている。

――素晴らしいことですね。

海津氏:
 この現象って、今までの「マリオ」や「ドラクエ」ありきの国内ゲーム市場の考え方でいくと、とてもじゃないけど想像ができないんですよ。だから最近は海外ゲームにも精通しておく必要が出てきています。

――バイヤーにも変化が求められていると。

海津氏:
 弊社のPS4ランキングトップ10などを見ると面白いですよ。「レインボーシックス」「ウィッチャー」「ニーア」「コール オブ デューティ」「バトルフィールド」……これが今のゲームユーザーのバロメーターです。

 PS2時代だったら「龍が如く」とか「ファイナルファンタジー」みたいに国産タイトルを分かっていればよかったんですが、もうそういう時代ではなくなっています。

ゲームの相場感――難しいのはクソゲーよりも新品?

――逆に、新品の在庫が多すぎて中古を下げるみたいなこともあるのでしょうか。

海津氏:
 そうならないように心がけてはいるんですけどね……。例えば、前作実績が良かったり、ユーザー期待度が高いタイトルなどで、実はあんまり評判が良くなかった……というパターンはなかなか回避できません(笑)。

――言い方は悪いですが、そういった、いわゆるクソゲーと呼ばれる商品は、店舗側からするとやはり迷惑なのでしょうか。

海津氏:
 実は、中古のことだけを言うと、最終的に価格コントロールの結果でどうにでもなってしまうんですよ。残っている新品の方が全部売れたら、最終的に黒転はできるんです。

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 ただ、むしろ新品の方が仕入れが高いので、赤を取り戻すのにそれこそ年単位で時間がかかりますね。

――そう考えると、新品と中古を同時に扱うスタイルって、リスクマネジメント的な意図が実は大きいのでしょうか?

海津氏:
 その意味合いは大きいです。やはり新品だけだと利益率は高くならないですし、なにより仕入れ値が確定しています。対して中古だと、自分たちで仕入れ値を設定できて、売値も決められるんですよ。

――中古ゲームって、新作とレトロゲームと大きく2種類あると思うんですが、ゲオは基本的に新作がメインなのでしょうか。

海津氏:
 そうですね。例えば弊社でいま取り扱っているものだけでも1万タイトル以上ありますが、調整を行うのは新作がメインですね価格の変動も、古めのものだと、3か月に1回とかある程度スパンを置いてやっています。

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新作はこのように大きく展開

 そして古くなって店頭に置けなくなったソフトに関しては、定期的にセールを行っています。例えば「1480円以下3本で半額」というセールを行って一気にさばいたりするんです。ただ……極力しないようにはしているんですが、スポーツゲームの古いバージョンとか、本当に無理な商品はどうしても出てきます。そういうのは仕方なく処分させていただいてます。

スマホゲーの影響でコンシューマーが増えている!?

――最後にゲーム市場と小売店の今とこれからについて伺いたいです。今後、ゲーム市場にはどんな変化が起こると感じられていますか?

海津氏:
 まず、国内のコンシューマーゲームのユーザーの数は確実に減っています。今年はSwitchの影響で国内市場は上向きになると思いますが、それでも2007年のピークからずっと落ち続けていますし、それが10年前の7000億に戻るかというと、相当きついと思います。

 とはいえ、コンシューマーゲームをプレイするユーザーがいなくなったわけではありません。例えばPS4で人気の、それこそ「レインボーシックス」や「バトルフィールド」といった対戦ゲームは、弊社のデータを見る限りだと大体20代前半のプレイヤーが多いです。こうした大学生の層は、今までゲームをしてきた層とは考え方が一段階違うんですね。

 そして弊社のデータを見るに、今のボリュームラインは20代中間が一番で、年々きれいに上がってきているんです。おそらく、今後も上がり続けると思うので、より若い世代をどうやって獲得するかは重要な課題となっています。

――それこそ、小学生とかからですよね。

海津氏:
 そうですね。『妖怪ウォッチ』【※】が300万本以上売れていることを考えると、やっぱり小学生にもプレイヤーはいるんです。つまり全体として減っていきますが、コンシューマーゲーム市場自体が急に死んでしまうとまでは考えていません。

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※妖怪ウォッチ……2013年にニンテンドー3DS用ソフトとして発売され、一世を風靡した。日本ゲーム大賞2014「年間作品部門」大賞受賞。多数のメディアミックスを展開している。 
(画像はAmazonより)

――ゲームショップもまだ大丈夫だと。

海津氏:
 「ドラクエ」「FF」「モンハン」「ポケモン」といった昔からあるタイトルは今でも売れ続けていますし、『妖怪ウォッチ』といった大ヒット作がポンと出ることもあります。結局のところ、我々は小売りなので、ヒット作が出るかどうかに左右されるんです。そんな中で、すごく景気がいいわけではありませんが、ヒットの種がないわけではない。だから急にシュリンクしてエラいことになるという未来は、現段階では想像できません。

――よくスマホにコンシューマーのユーザーを取られたという話が出ますが、それについてはどうお考えですか?

海津氏:
 むしろそれなりのユーザー数が、スマホ市場からコンシューマーに流れてきていると思っています。分かりやすい例で言うと、150万本いった3DSの『パズドラZ』【※】、そして『ポケモンGO』と『ポケットモンスター サン・ムーン』の関係などですね。具体的に何人が流れたかは言いにくいのですが、弊社のデータ的には『ポケモンGO』の登場により、「ポケモン」をプレイする年齢層がぐっと上がりました。これは既存のプレイヤー層プラス、新しく今まで以上に年上の層が戻ってきたということなんですね。

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※パズドラZ……2013年発売。2012年より配信されているスマホ向け大人気ゲーム『パズル&ドラゴンズ』のニンテンドー3DS版。
(画像はAmazonより)

 また、PS2時代はそうでもなかったですが、ここ数年はずっと20万本を切るレベルだった「パワプロ」シリーズも『実況パワフルプロ野球2016』で3機種合計で50万本を超えたのもいい例です。そこまで戻ったということは、完全にアプリのユーザーがこっちに来た証拠です。もちろん、全てのスマホゲームとの連携事例が成功しているわけではありませんが。

――『パズドラZ』に至っては、完全にスマホからコンシューマーの流れですしね。

海津氏:
 PS4で『グランブルーファンタジー』【※】も出ますし、こういう連携は期待しています。お互いの得意な面と苦手な面が上手く融合していくかたちが取れているんですね。こういった状況が続く限り、ゲーム市場とゲームショップはまだまだ大丈夫だと言えると思っています。

※グランブルーファンタジー
2014年に配信開始されたスマホ向けRPG。2017年7月には、登録ユーザー数が1600万人を超える。2018年には新作『Project Re:LINK』の発売が予定されている。

ゲームショップのこれから――デジタル化との戦い

――続いて片岡さんにお伺いしたいんですが、ここ10数年で店舗に変化はありましたか?

片岡氏:
 システム的な部分を除いて基本的には変わってません。ただ、外に向けた情報発信は変化していて、例えばTwitterを使った新作ゲームの予約情報のアナウンスなどは、昔はやっていませんでした。また、ゲオのアプリの存在は大きいです。新作ゲームの予約はもちろん、買い取り価格も見ることができるんですよ。

――その上で、アマゾンなどのECショップの存在に対して、どういう施策を考えていますか?

片岡氏:
 アマゾンさんって巨大な一企業じゃないですか。人のライフスタイルを一企業で全部終わらすような(笑)。そこと同じ土俵では絶対に勝てないと思っています。

 ですから、“直接お店に来て、選んで、買う”という部分で差別化していこうと思っています。そもそも、現物を見たり触ったりしながら買うって楽しいじゃないですか。そこがECショップとの違いだと思っています。

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 そして、リアル店舗でしか演出できないことがあるとも思っています。例えばゲームや周辺機器に詳しいスタッフがお店にいたり、POPで店内を装飾したり……。

海津氏:
 要はサジェストですよね。デジタルのサジェストとはちょっと違いますよね。

片岡氏:
 あと最近は、ネット通販で注文した商品が届かない問題なんかもありますよね。そんな中で、リアル店舗には「そこに行けば売っている。ちゃんと発売日に買える」という安心感があると思うんです。

 『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』のときは、発売日に並ばれること自体をイベントとして捉えているお客様もいらっしゃいました。中には走って帰るお客様や、聞いてもいないのに嬉しそうに「帰ってやります!」というお客様もいたりします(笑)。
 リアル店舗にはそういう一体感やお祭り感を演出できる。そしてお客さんもまだまだそれを求めているんだと思います。(了)

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 さて、読者の皆さんは、今回の話はどうだったろうか。
 中古ソフト撲滅キャンペーンから15年――これがゲームショップの今である。

 我々がなにげなく売り、そして買っている中古ゲーム。だが、その裏で起こっていることやその仕組みは実に興味深いもので、やはり我々はその重要性を見落としていたのだと、あらためて気づかされる取材だったように思う。
 特に在庫コントロールの話題は、興味深い。ショップを営むには中古が必要であり、その利益こそが新作の仕入れを促している――これは様々な産業で普遍的に見られる構造ではあると思うが、やはりゲームと絡めて語られると新鮮ではある。

 そして、ある意味では皮肉なことに、この中古市場の存在こそがゲームメーカーの新たな挑戦を後押ししている面もある。中古ゲームによるリスクヘッジがあるからこそ、ポテンシャルが未知の高単価商品である新作ゲームの仕入れにも、ショップが積極的に動ける事情があるからだ。

 ゲームはクリエイターが想いを込めた「表現」であると同時に、経済活動の中で流通する「商品」でもある。今回の取材からは、決して一筋縄ではいかない、産業としてのゲームのリアルが垣間見えたのではないだろうか。

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インタビュアー・著者
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新聞配達中にトラックに跳ね飛ばされたことがきっかけで編集者になる。過去に「ロックマンエグゼ 15周年特別スタッフ座談会」「マフィア梶田がフリーライターになるまでの軌跡」などを担当し、2017年4月より電ファミニコゲーマー編集部のメンバーに。ゲームと同じぐらいアニメや漫画も好き。
Twitter:@ed_koudai
インタビュアー
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週刊ファミ通、ファミ通.comなどを経て、電ファミニコゲーマーに参加。
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