会社員のかたわら、ムダなモノを作ることが趣味のライター・爲房新太朗(ためふさしんたろう)氏が、またまた電ファミでムダなモノづくりに挑戦!
今回は、先日発売された『Nintendo Labo』を使って、シーソーを楽器にしたり、冷蔵庫内のプリンを監視したり、映画『シン・ゴジラ』のワンシーンを再現したり、セガサターンを起動してみたりと、発売直後に思いついたことをいろいろ試してもらいました。
今回は「Toy-Conガレージ」の画面に加え、Arduinoの回路図とPythonで書いたコードを掲載しているので、本気で作りたいアナタはぜひ参考にしてみてください。(編集部)
著者/爲房新太朗
もう皆さんは、『Nintendo Labo』を買っただろうか。ダンボール組み立てまくりだろうか。
かくいう僕も発売日に買った。もう小躍りしながら買ったのだ。
ほぼ1年前、僕はJoy-Conをラズベリーパイとつなげて真剣白刃取りゲームを作る記事を書いた。
そこで、こう書いていたのだ。
『ちなみに、ジャイロセンサーによる「Joy-Con」の傾きを取得するというのは(今のところは)できない。
世のガジェット改造好きがこぞって解析しているはずなので、情報が出てくるのを待ちましょう。』
10年ほど前、Wiiリモコンを世界中の人がハックしてパソコンとつなげるようにしていた。Joy−Conもそういう流れになるのだろうと思っていたのだ。
そう思っていたところにまさかの『Nintendo Labo』だ。発売前に公開された映像をYouTubeで見ていたら、Toy-ConガレージというモードでNintendo Switch本体やJoy−Conの機能を自分で操れると言っているじゃないか。
任天堂自身が用意してくるとは。心の中で荒波の日本海に向かって「任天堂ー!!」と叫んだ。
ここまでお膳立てされてしまっては、もう作るしかないのだ。今回は全部で4つ、作って遊んでみたので見ていってほしい。
公園のシーソーを楽器にする!
「ピアノToy-Con」など、楽器の要素がしっかり用意されているのが『Nintendo Labo』の特徴のひとつであると思う。
画面をタッチする・ボタンを押すといった入力と、音を鳴らす出力をつなげるだけで楽器になるのだから簡単だ。
僕も楽器を作ってみたいと思う。……そういえば、Nintendo Switchは外でも遊べるゲーム機だ。この特徴を楽器に採用したら面白いのではないか。
そう思ってやってきたのは公園だ。
シーソーだ。遊具撤去のあおりを受けて、今やあまり見なくなってしまった気がする。
シーソーは乗っているふたりの体重のかけ方によってギッタンバッタン傾く。
Joy−Conをシーソーに固定して、その傾きに応じて音を鳴らせばシーソーを遊びながら曲が演奏できるのではないか?
そう考えて作ったのが、この楽器だ。
「かえるのうた」をシーソーで演奏してみた。シーソーに固定したJoy−Conで音階を変える。そして隠れてしまっているが、右手に持ったもう1つのJoy-Conのボタンを押すと、音が鳴るようになっているのだ。
……やってみると太ももがめちゃくちゃキツくなった。一緒にシーソーをやってくれる人もいないのでソロプレイになったため、位置をキープするのがものすごい筋肉に来た。
僕はシーソーをやるには成長しすぎてしまったので、5歳くらいのお子さんがいたらぜひ一緒にやってみてほしい。
ちなみにToy-Conガレージのノードはこのような構成になっている。
Joy−Conの“傾きを測る入力ノード”と、Joy−Conの“ボタン入力ノード”を“ANDノード”に入れている。そして、傾きの角度に応じて対応した“音階の出力ノード”を充てている。
シーソーにいきなりチャレンジする前に、手でJoy−Conを傾けてテストしてみるといい。難しいことはやっていないことがわかると思う。
冷蔵庫のプリンをJoy−Conで監視しよう
冷蔵庫に置いておいたプリンが勝手に食べられてしまった。
……家庭崩壊の危機である。そんな悲しい事態は未然に防がないといけない。
Joy−ConのIRカメラを使って、冷蔵庫のプリンを監視してみるのはどうか。
赤外線を使ってモノの場所や距離を見るのがIRカメラだ。右のJoy−Conのおしりに付いている。
『Nintendo Labo』に付いている再帰性反射材のシールを、モノに貼ることでIRカメラでしっかり認識することができるのだ。
ということで、プリンに再帰性反射材シールを貼ってマーカーにしてみよう。
プリンがちょっぴりサイバーっぽくなったところで、冷蔵庫に入れたプリンを監視できる位置にJoy−Conを置こう。
ヨーグルトのウラにJoy−Conを忍ばせることにした。これで監視システムのでき上がりである。
試しにIRカメラの様子を見てみよう。「ラジコンカーToy-Con」の「あそぶ」で、IRカメラの映像を見ることができる。
IRカメラはその名の通り赤外線を見ているので、冷蔵庫を開け閉めして光の量が変わってもスイッチ本体上の映像は変化しない。
理屈ではわかってはいたけど、実際に見てみると面白い。
それでは、監視システムの様子を見てみよう。
音でプリン泥棒を驚かせてもいいし、Nintendo Switch本体を持ち出して隣の部屋にいながらにしてプリンを監視→盗まれたら即現場に急行! ということもできる。
ノードはこんな感じだ。
IRカメラの入力ノードは、撮影範囲全体の中にマーカーが映っているかどうかだけを見ている。だが冷蔵庫の中にあるモノによっては、赤外線を反射してしまって誤検知になってしまうことがある。
そこで登場するのが“スポイトノード”だ。プリンが置かれた位置にこのノードを置くと、プリンのマーカーだけを見ることができる。
白くなっているところがマーカーの部分だ。
上は“マーカーは映っているが、スポイトと重なっていないので検知していない”と判断される。
下は“マーカーとスポイトが重なっているため、検知できている”ということになる。
複数のマーカーを使って場合分けをしたいときなどに便利なので、覚えておくと良さそうだ。
プリンと家庭の平和を守ることができたので、次にいってみよう。
指以外でタッチして無人在来線爆弾ごっこをしよう
もう公開から随分経ったしテレビでも放映されたが、映画『シン・ゴジラ』が好きなのだ。劇場に5回観に行った程度には好きだ。
そのクライマックスで印象的なシーンがある。“無人在来線爆弾”だ。もうネタバレ扱いにはならないと思って書くが、ゴジラに電車が突っ込んでいってバーン!! となるやつだ。
これ、「Toy-Conガレージ」で“ごっこ遊び”ができるんじゃないか。手で電車を動かしたりはしない、ちょっと手の込んだ“ごっこ遊び”だ。
材料を用意した。ゴジラ第4形態、かっこいいなー。しっぽ長いな。
線路を引いてセッティングしよう。
舞台は整った。この機を逃すな、無人在来線爆弾、全車投入!
電車が突っ込んでいくと、爆発音とともに高層ビルがゴジラに襲いかかり、ゴジラが吹っ飛んだ!
ちょっと映画の展開とは違うが、完璧な再現には「Toy-Conガレージ」の“出力ノード”に「電車が爆炎とともに飛び上がる」が実装されるのを待たないといけないので、ご容赦願いたい。
ここのポイントは、Nintendo Switch本体へのタッチ操作を“指”以外でやっていることだ。
100均にスマホ用のタッチペンが売っている。これを同じく100均の電車に搭載した。
こうすることで、電車がNintendo Switch本体に突っ込んだときにタッチ入力ができるようになった。
2台の電車を同時に発進させるのは大変なので、「mabeee」という“IoT乾電池”を使ってみた。
この「mabeee」とは、中にBluetoothが入っていて、スマホから操作することで電源をオンオフできる代物だ。連携させる本数を複数にすることで、同時に操作することも可能である。
これで、一気に目標へ突入させることができる。「mabeee」はスマホと簡単に連携させることができるので、「Toy-Conガレージ」と組み合わせるとバリエーションが広がる気がするぞ。
そしてビルは、工作用紙で作った。この記事で最も『Nintendo Labo』っぽい瞬間だ。
ビルを倒すには、『Nintendo Labo』に同梱されている人型のダンボールを使おう。
Joy−Conと組み合わせて、振動させることで倒れるのだ。これをビルの裏側に置いておく。“ドミノ倒し”の要領でビルが倒れていくのだ。
これだけで無人在来線爆弾ごっこができるようになる。
Toy-Conガレージのノードもシンプルだ。
指を使わず自動でタッチ入力ができるようになると、応用しだいでいろいろなことに使えると思う。
取り急ぎ、統合幕僚長になりきって作戦実行を指示していきたいと思う。
『Nintendo Labo』とArduinoを連携させて、セガサターンを操る!
電子工作をやっている人なら、『Nintendo Labo』を見た瞬間にこう思ったはずだ。
「これ、Arduinoやラズベリーパイ(ラズパイ)と組み合わせたい…!」
もちろん、僕もそのひとりだ。自作の電子工作と『Nintendo Labo』の連携──これほどワクワクすることはない。
なんと「Toy-Conラボ」に、連携用の機能がしっかり用意されているのだ。
それが出力ノードにある、この「IRひかる」ノードだ。
画面を光らせたり、音を鳴らしたり、Joy−Conを振動させたり、といった他の出力ノードと比べると、赤外線を出すだけのこのノードは『Nintendo Labo』だけを使っている場合、まったく使いみちがないかもしれない。
設定を開くと「電子工作と組み合わせたら…?」と書いてある。『Nintendo Labo』の中だけで完結せずに、他の電子工作と組み合わせることも念頭に置いて、この「Toy-Conラボ」は作られているのだ。
もう完全に任天堂の手のひらの上で転がされているし、太平洋に向かって「任天堂ーーー!!!」と叫ぶほかない。
叫んだところで話は変わるが、先日セガが『シェンムー』のリメイクや「メガドライブ ミニ」など、復刻プロジェクトをいくつも発表した。
PS4版『シェンムー I&II』、『新サクラ大戦』始動、そして「メガドライブミニ」発売。“セガフェス2018”にて発表されたセガの復刻プロジェクト
セガ、すごい頑張っているぞ。この勢いに乗った方がいいのでは!? 『タントア~ル』とか小学生の頃にやったなぁ…。
そんなわけで『Nintendo Labo』とセガサターンの合体技が誕生した。ほら、『SEGA AGES』もNintendo Switchで出ることだし。早速ご覧いただきたい。
完璧なタイミングでセガサターンが起動して嬉しい。せがた三四郎も宇宙空間から笑顔で見守ってくれている気がする。
自分も連携させたい! という人向けに、どういう風に作ったか説明していこう。
まず「Toy-Conガレージ」のノードはこうなっている。
かなり複雑になってしまったが、肝心なのは一番右にある“IRひかるノード”だ。
赤外線がJoy−Conから発射されると、Arduinoという電子工作用のマイコンボードでそれを受信する。
そうしたら、Arduinoがモーターを動かしてセガサターンのボタンを押す、という流れになっているのだ。
赤外線を受信する部分は、いくつか部品が必要になる。主な部品は「赤外線フォトトランジスタ」と「バイポーラトランジスタ」だ。
・赤外線フォトトランジスタ:L-51ROPT1D1
・バイポーラトランジスタ:2SC1815
前者は赤外線を受信すると電圧に変換してくれる。ただし、これは微弱なので、後者のバイポーラトランジスタで増幅してあげると検知できるようになる。
こんな感じで回路を作ろう。
Arduinoで値を読み取るだけのサンプルコードはこんな感じ。
「Toy-Conガレージ」で「画面をタッチ」→「IRひかる」という単純な構成を用意して、どうなるかを試してみよう。
うまくいくとこうなる。
Nintendo Switchの画面をタッチしたときだけ、パソコンに流れている数字が変わるのがわかるだろうか。
この数字が変わったときだけ、モーターを動かすようにしているのだ。やっている内容はかなりシンプルだ。
いろいろな組み合わせを試してオリジナルの工作をしよう!
「Toy-Conガレージ」の出力をArduinoやラズパイで読み取る、というのは、この赤外線を使う以外にも方法はある。
音を鳴らしてマイクで拾ったり、暗いところでNintendo Switchの画面を光らせて照度センサーで値を読んだり、などだ。
ただしこれはNintendo Switch本体が装置として取られてしまうので、ちょっと自由度が下がる。自分の作りたいモノによって選ぶといいだろう。
逆にArduinoやラズパイから「Toy-Conガレージ」に送信したい、という場合もあるだろう。そんなときは“入力ノードのIRカメラ”を使うといい。
設定を開くと「赤外線オフ」という項目がある。他の項目はJoy−Con自身から赤外線を発射して、その反射をIRカメラで読み取っているのだが、内蔵の赤外線を光らせずにArduinoやラズパイ側に用意した赤外線LEDを読み取ることができるのだ。
Arduinoやラズパイ側に赤外線LEDをたくさん用意して、圧力センサーに重いモノを載せたらAの赤外線LEDが光るとか、ボリューム抵抗を回したらBの赤外線LEDが光る……という風にすれば、複数のセンサーの状態を表現することができるだろう。
そして、プリン監視のときに使った“スポイトノード”と組み合わせれば、それぞれの状態を「Toy-Conガレージ」が判断することができるのだ。
ここまで来るともう何でもできてしまう気がする。「かがくのちからってすげー」、だ。
今回の記事では、「Toy-Conガレージ」で使えそうなテクニックをいくつかご紹介した。これを読んだ皆さんが「ちょっと作ってみようかな」、と思ってくれればとてもうれしい。
個人的にはダンボールだけにとらわれるのはもったいないと感じているので、今回のシーソーのように屋外に出て使ってみることに可能性を感じている。
任天堂のハードはしっかりしているので、Joy−Conを外に持ち出して遊んでみるのも面白いだろう。
……その前に、まずは太ももの筋肉を鍛えないと。まだ筋肉痛が残っている。
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