去る8月1日~14日、東京・中野ブロードウェイの墓場の画廊にて“『SIREN』誕生15周年記念特別企画 墓場の画廊「SIREN展」”が開催され、大盛況のうちに幕を閉じた。
大盛況とひと口に言うのは簡単だが、入場無料の展示イベントに入るために毎朝抽選が行われるほどの賑わいぶりは、熱狂を感じさせるには十分なものだ。また、ゲーム内でのイベント時間と合わせて8月3日から始まった「異界入り」は、SNS上でいくつもの『SIREN』関連ワードがトレンド入りするなど、平成最後の夏ということもあり、例年以上の盛り上がりを見せた。
さらに、「SIREN展」には出演者たちが足を運んでおり、『SIREN2』で一樹守役を演じた俳優の斎藤工が現れたときには、あまりにも突然の出来事に運営スタッフが軽くパニックになったそうだ。
異常とも言える盛り上がりを見せた「SIREN展」だが、ひとつのIPとして見た場合、「SIREN」シリーズは2008年に発売されたプレイステーション3用ソフト『SIREN: New Translation』以降、関連作品の展開はない。いわば休眠中のタイトルであり、厳しい言い方をするならば、ユーザーの記憶から消えてしまっていてもおかしくはないIPである。そのような状態であるにもかかわらず、ファンの熱量がまるで休止時間の経過に比例して高まっていることは非常に興味深い。
ゲームそのものの異様なまでの作り込み、SNSとの親和性、プレイ動画の広がり、制作者や演者達の熱い愛情、毎年行われる生放送……。盛り上がりが加速している要因はいくつも考えられるが、一連の『SIREN』現象をひと言で定義づけるのは容易いことではなく、また分析しきれる類のものではないのかもしれない。しかし「盛り上がり」は確かにそこあり、コンテンツとして謎の旬を迎えているのもまた事実だ。
8月11日には、墓場の画廊「SIREN展」にて7000円以上を購入した人の中から抽選で選ばれた50名が参加できる記念トークイベントが行われた。
電ファミニコゲーマー編集部は、メディアとして唯一現場へ潜入。予想以上の熱気を帯びたプレミアムなイベントの内容を、参加が叶わなかった『SIREN』ファンに届けるべく、トークイベントの模様を可能な限り正確に記していく。
取材・文/Nobuhiko Nakanishi
取材・撮影・編集/豊田 圭吾
イベントはサイレンが鳴り響くところからスタート。出演者が揃って登場……と思いきや、現れたのは走りながら会場奥に逃げ込む須田恭也役の篠田光亮。続いて現れたのは、屍人メイクを施した石田巡査役の江戸清仁。手には拳銃を所持している。逃げる恭也とさまよう駐在。
そう、これは『SIREN』の眞魚川護岸工事現場での出来事を再現したものだ。うれしいサプライズに観衆は拍手喝采。石田巡査に恭也が撃たれると、白衣をまとい宮田司郎に扮した満田伸明が登場。「さよなら兄さん」とネイルハンマー【※】で江戸さんの頭を叩く演技の後、「『SIREN』トークショー、はじまるよ」の号令で、全員が入場となった。
※ネイルハンマー:「SIREN」シリーズを代表する武器で、主人公のひとりである宮田司郎が使用。攻撃力が高く、最強武器のひとつに挙げられるほど強力でファンから愛されている。
江戸清仁氏(以下、江戸):
というわけで始めましょう。あらためましてSIREN展15周年記念トークショー開始です。本日のメインMCを務めます、石田徹雄役の江戸清仁ですよろしくおねがいします。
外山圭一郎氏(以下、外山):
「SIREN」シリーズディレクターの外山です。よろしくお願いします。
佐藤直子氏(以下、佐藤):
「SIREN」シリーズで屍人や屍霊役をやりつつ、シナリオも担当していた佐藤直子です。よろしくお願いします。
小南千明氏(以下、小南):
四方田春海役の小南千明です。よろしくお願いします。
満田伸明氏(以下、満田):
どうも、宮田司郎、牧野慶役の満田伸明です。
篠田光亮氏(以下、篠田):
須田恭也役の篠田光亮です。よろしくお願いします。
江戸:
まずは今回のSIREN展について出演者の方に伺いしたいんですけど、我こそはという方は?
満田:
篠田くんが何か言いたいみたいですよ。
篠田:
僕は異界入り初日の8月3日に行かせていただきました。じつは、今日の僕のこの格好(SDK風服装)、全部自腹なんですよ。インターネットで当時っぽいものを購入して。とにかく『SIREN』クラスタの熱量が凄くて、いまも汗が止まらないんですけど。
江戸:
それはこの会場の空調だと思うんですけどね(笑)。
篠田:
でもSIREN展の会場におジャマした日は、ちょっとスターになった気分でした。
江戸:
普段、Twitterであんなにリツイートとか、いいねとか、されないですもんね。
満田:
僕は今回「バズる」ってのを初めて知りました。バズったらしいんですよ。僕いまバズり中なんですよ。この夏、僕バズっちゃってるらしいんですよ。
江戸:
それはみっちゃん(満田)がSNSについてこられてない。
満田:
いやいやわかってますよ。盛り上がってるってことでしょ。『SIREN』がバズってるんですよ。15年前のゲームなのに!
江戸:
15年前のゲームなのに、ありがたいことですよね。SIREN展には毎日300名くらいの入場があるんですよ。人気過ぎて毎日抽選になってしまっていて。
篠田:
延べでどれくらいお客さんが来られたんですか?
江戸:
述べ3000人くらいです。その中で会場に来ることができたのは抽選で選ばれた50人ですからね。
篠田:
選ばれし50名というわけですね。
江戸:
抽選人数がだいたい900人ということで、とんでもない倍率ですよね。
篠田:
すみません、さっきの寸劇で汗が止まんないので、一度退場していいですか(笑)。昨日の夜中に江戸さんから連絡があって「明日、寸劇やるから」って。さっきも直前までリハをやっていたんで、そりゃ汗も止まらないですよ。
佐藤:
ギリギリまでリハをやって、いざ本番になったら江戸さんがひっぱり過ぎてましたから(笑)。
篠田:
じゃあ、汗を拭いてきます(篠田、一時退場)。
江戸:
じゃあみっちゃん、SIREN展と15周年についてどうですか?
満田:
10周年のときにニコ生に出たんですけど、メチャクチャしゃべってしまって申し訳ないなと。だから今日はだまっておこうと思ってたんですけど、もう無理ですね。江戸ちゃんと同じ日にSIREN展行かせてもらってTwitterでつぶやかせてもらいました。この盛り上がり! しかも皆さん若い!! どういうことやねんと(笑)。
江戸:
それはありますよね。15年前にプレイしてないだろと。会場にいらっしゃった方で、15年前に『SIREN』をプレイしたって人はいますか?
一同:
(10人程度が手を挙げるのを見て)おおっ!
佐藤:
ということは皆さん30歳を過ぎていらっしゃると(笑)。
満田:
そこでファンになって、いまもファンってすごいですわ。ほんで宮田のネイルハンマーが売り切れたって聞きましたよ。
江戸:
初日、ネイルハンマーが最初に売り切れたらしいです。
満田:
ほんまですか? うれしいですね。篠田君を超えた。いま篠田君いないから言いますけど(笑)。
江戸:
しかも、ネイルハンマーの値段は4000円ですよ。
満田:
4000円すんのこれ!? えーと、安いですね。えらい安いな(笑)。
外山:
ほぼ原価です。
満田:
宮田司郎の名前が焼き印で入っていますしね。
江戸:
焼き印代が3800円で、残りが200円くらいですかね(笑)。
満田:
ありがとうございます。……僕は今日この感じでいいすか? 宮田とか牧野に寄せてほしいという人もいるんじゃないかなと。
江戸:
ひと言セリフを言ってあげたらいいんじゃないですか。
満田:
最初いうたやん、「さよなら兄さん」って。じゃあ「宇理炎の炎……」。
佐藤:
煉獄の炎ね。
満田:
煉獄の炎、俺の命と引き換えだ。
佐藤:
棒読みすぎ!(笑)
満田:
宮田は棒読みでええねん。ファンからはめっちゃ叩かれてるんですよ。「宮田が棒読み」って。棒読みでええねん。そういう役。
……(小南さんを見ながら)大きなったね。
佐藤:
もう親戚のおじさんだよね。
小南:
15年ってそういうことですよね。四方田春海を演じたときは当時9歳だったんですけど……もうみんな親戚のおじさんですね。
江戸:
当時、小南さんと現場で会ったことある人は?
小南:
ここにはいないですね。高遠先生と……校長先生くらいですね。
佐藤:
高遠先生は明日SIREN展に来てくれるって言ってたから、小南ちゃんとはすれ違いになっちゃうね。
本日、#SIREN展 に高遠先生役の細川さんが! 昨日だったら大きくなった春海ちゃんとの奇跡の再会だったのですが…。春海ちゃんメッセージを先生は見ているよ…。 pic.twitter.com/n0lc3ApVAD
— 佐藤直子/Naoko Sato (@310705) August 12, 2018
小南:
先生宛にSIREN展のポップにメッセージを残しておきます。
満田:
恩人やからね、先生は。命をかけて春海を守ってくれたんやから、そりゃお礼を言ったほうがいいよね。15年前はありがとうございましたって。
佐藤:
こんなに大きくなりましたって。
ところで今日お越しくださったみなさんにお聞きしたかったんですが、今回のSIREN展をどこでお知りになったんですか? Twitterですかね? インスタグラムで知った人っていますか?
(Twitterで挙手が多く、インスタグラムでは誰も手を挙げず)やっぱりいないですね。『SIREN』はTwitterのほうが相性はいいと。じつは私、満田くんのSNSの先生なんですよ。今年はジャガー炎上祭【※】を初めて止めにいくと言ってたんで、「この時間にこのタグを付けて発信するといいよ」って指南したんですけど、ひとつも実行しなくて(笑)。
※ジャガー炎上祭:『SIREN』のシナリオ「須田恭也 蛇ノ首谷/折臥ノ森 第2日/7時3分41秒」にて、須田恭也が陽動のために宮田司郎のジャガーに火を点けるシーンがある。異界入り時、『SIREN』クラスタがジャガーを燃やす場面をSNSに投稿しはじめたことから、“ジャガー炎上祭“と呼ばれ、異界入りの名物となった。宮田司郎はゴールド免許所持者でありながら、愛車を燃やされてしまうことになる。
満田:
本当に申し訳ない。
佐藤:
今年は宮田先生が(ジャガー炎上祭を)止めに来ると思ってた人!
満田:
(ほとんどのお客さんが挙手するのを見て)ごめんなさい。
篠田:
(会場に戻り)僕は今年も燃やさせていただきました。気分爽快!
満田:
なにが気分爽快やねん!(笑)
篠田:
来年もジャガーを燃やさせていただきます!
……さっきいなかったので言わせてもらうと、小南さんと会うのは今回が初めてなんですよ。10周年記念ニコ生に僕が出演できなかったので……。放送も観ましたし、ゲームで春海がどうなったのかはもちろん知ってるんですけど、会うのは初めてなんです。
江戸:
どうですか、初めて会って。
篠田:
大きくなったなぁと。
一同:
(笑)。
小南:
やっぱり親戚のおじさんですね(笑)。いや、(髪の毛の色を見せながら、金髪なので)みなさんのイメージを壊すんじゃないかと。
佐藤:
大人になったんだよね。いつまでも三つ編みのままじゃいられないもん。
小南:
春海は赤い水を飲んでいないので(笑)。
佐藤:
赤い水を飲んでる人たちはこの辺の人達ね。
篠田:
あまり変わりがないとよく言われます。
江戸:
ちなみに『SIREN』をクリアまでプレイした人ってどのくらいいますか?
(十数人ほどが挙手して)結構やってますね。
満田:
攻略方法を見ないで?
江戸:
攻略本とか攻略サイトを見ないでクリアした人は?
(ひとりが挙手して)勇者だ。
満田:
クリアまでどれくらいかかった?
手をあげた方:
68時間くらいです。
江戸:
一番難しかったところはどこですか?
手をあげた方:
終盤の屍人ノ巣ですね。
満田:
クリアした時間、数えてたんですか?
外山:
クリアしたときにプレイ時間が出ます。
満田:
そうなんですか。話を戻しますが、僕も篠田君と15年ぶりなんですよ。『SIREN』収録のとき以来です。江戸ちゃんとは同い年だし仲良くなったんですけど、篠田君はイケメンやし、近づかれへんかった。
篠田:
そんなことないですよ。江戸さんは当時同じ事務所でしたね。
江戸:
篠田君は録音ブースで「何回リテイクするんだ?」って状況で。
佐藤:
ほんとごめんね。
篠田:
なにもない状況で、同じセリフを50回くらい繰り返して言わされました(笑)。
佐藤:
それはね、ゲームの音声ってのは少し難しいんです。ゲーム中の音声って何種類も録っておかないと。プレイヤーは同じセリフを聞かせれることになるから。
篠田:
いや面白かったですよ。でも全然音沙汰がなくて、マネージャーに「あれはもうお蔵入りした」って言ってました(笑)。ドラマにしても映画にしても、収録から2年空くってことはないんですね。僕、初めての主役だったんで「これが初めての主役かぁ……」って一瞬、引退を考えましたよ(笑)。でも『SIREN』が出てくれたおかげでいまここにいられるわけで。
佐藤:
役者さんとお仕事するのって外山ディレクターも私たち開発チームも初めてのことだったので、いま思い出すといろいろと失礼なことをしてしまったと思っています。
篠田:
昔過ぎて覚えてないんですけど(笑)。
佐藤:
通常、顔を押さえられて演技しろっていうのはないですよね(笑)。
江戸:
春海ちゃんなんて9歳だったのに、後ろから大人の人に押さえつけられて。
佐藤:
イマジカっていう撮影スタジオに拘束具みたいなものを作り、役者さんを拘束して後ろから頭を押さえ撮影していました。正面からカメラで表情演技のテクスチャを撮影しているので、顔が動いちゃうと困るわけです。
江戸:
当時あそこまでしっかりと実写テクスチャで作られたゲームってなかったですよね。
佐藤:
最初に外山さんからアイデアを聞いたとき、すごいなと思いました。
江戸:
あれは外山さんのアイデアだったんですね。
佐藤:
そうですね。テクスチャアニメーションをポリゴン上でやろうと。
満田:
外山さんちょっとしゃべってくださいよ(笑)。
江戸:
『SIREN』の草案だったりとか、そもそもなんで作ろうと思ったのかを聞かせてください。
外山:
あのころ、いろいろとアイデアが溜まっていたんですね。前の会社で『サイレントヒル』を作り、いまの会社に移ってきて『夜明けのマリコ』に参加して。それが結構タフな現場で。
その間にJホラーブームとかいろいろあって、そういうのを横目で見つつ、「こういうのができるな」とか無駄にアイデアのストックがあって。普通は言っても実現しないんですけど、そのときは周りの人が「とりあえずやってみようか」とポジティブだったんです。だから「アーカイブ」【※】も実物をちゃんと作ってやってみたら面白いんじゃないのかなとか。
※アーカイブ:ゲーム中で入手できる資料的アイテム。『SIREN』、『SIREN2』、それぞれ100種類のアーカイブが用意されている。制作者のこだわりと遊び心が凝縮されており、物語や世界設定を理解するには欠かせないもの。
佐藤:
途中で外山さんに「ほんとに全部作るやついるかよ」って突っ込みが入りました。
外山:
そういうこともあるね(笑)。
佐藤:
外山さんの話からいろいろとイメージが湧いて「これは自分好みの面白いものができるな」って思いました。それで張り切ってやっていたらアーカイブの途中で「ほんとに全部作るやついるかよ」と言われて「えー!?」となりました。
外山:
それはよっぽどのやつね。フォトショップで作っていいじゃんってモノも愚直に作っていたんですよ。役者さんの顔も取り込んで、というのが実現すれば面白いけど、アイデアの半分くらいが実現すればいいかと思っていたのが実現しちゃったみたいなところがありますね。
篠田:
じゃあ、そのとき外山さんの頭の中にあったアイデアは全部実現したと。
外山:
いや、全部ではないかな。最初に考えたところでいうと村人100人全員プレイアブルというアイデアがあったので。
江戸:
MMORPGみたいですね
外山:
プロットを書き始めたらものすごく時間がかかっちゃったので断念しました。
佐藤:
一番最初の草案にはそれがありましたね。
篠田:
いまだったらできるんじゃないですか?
佐藤:
「早すぎたんだ」って話ですね。
満田:
なるほど。先を行き過ぎたんですね。
佐藤:
物理的に無理ということですね。ところで春海ちゃんは撮影のとき、いまやっている仕事はホラーなんだっていう認識はあったの?
小南:
ありましたよ。さすがに頭をつかまれて撮影をしていたので(笑)。あと控室に怖い資料が並んでいたんですよ。怖いマンガがたくさん。あれ、佐藤さんが用意したマンガですよね。
佐藤:
少女に悪影響を与えちゃいましたね。
江戸:
春海ちゃんはSIREN展でなにか買ったんですか?
小南:
8月7日に来たときにもうほとんど売り切れだったんですよ。あ、でもさっき春海キーホルダーをもらいました。
江戸:
12月に大阪でSIREN展があるので、大阪のイベントに向けてなにか作ってもらいましょう。
満田:
僕はグッズとかよりも、SIREN展にあった須田恭也の撮影スポットの牧野、宮田バージョンが欲しいですね。それを作ってくれたら実家に持って帰りますよ。実家は大阪なんで。
江戸:
大阪では12月4日から19日に開催です。
佐藤:
墓場の画廊WESTで開催されます。今回のSIREN展で販売されたものは通販でも販売される予定ですが、大阪では商品ラインナップが追加される予定です。
江戸:
みなさん、何を作ってほしいですか?
篠田:
宇理炎【※】グッズが少ないなと。ぜひ宇理炎グッズを作ってほしいですね。
※宇理炎:「SIREN」シリーズに登場する神の武器。不死の存在である屍人を永遠に消し去る力を秘めている。剣と盾の紋様が刻まれた2体の土偶の形をしており、一見すると武器には見えない。ちなみに、『SIREN: New Translation』に登場する宇理炎は、四角い立方体。
満田:
宇理炎グッズたくさん作ったらええのに。
江戸:
たくさん作ったら世界が滅亡するでしょ。
篠田:
だったら、お風呂で遊べる宇理炎。宇理炎の目と口から水が出るやつをお願いします。
佐藤:
宇理炎の形でシャンプーとコンディショナーが出るのはいいですね。
篠田:
あとは恭也と美耶子がポスト前に座るシーンを、そのまま貯金箱にしてほしい。500円玉を入れたら音が鳴るとか。セリフ、あらためて入れますから。
満田:
500円入れたらサイレンが鳴るとかね(笑)。
佐藤:
私は宮田の白衣がいいな。襟に宮田って書いてあるものを。
満田:
牧野もなんかほしいですよね。
佐藤:
凍った手ぬぐい【※】とか?
※凍った手拭い:『SIREN』に登場するアイテム。牧野慶のシナリオにて手拭いを入手し、食堂の冷凍庫で凍らせることで、後の宮田司郎のシナリオで終了条件を満たすことができる。
外山:
凍った手拭ぐいを売るの? 凍らせて?(笑)
お客さん:
ロザリオがほしいです!
佐藤:
ああ、ちゃんと数珠がついてあるロザリオね。なるほど。あとは八尾比沙子のベールとか?
江戸:
僕は羽根(編集部注:石田巡査は羽根屍人としても登場する)がほしいですね。
佐藤:
あとは……春海ちゃんが美耶子のために作ったビーズ人形【※】とか。
※ビーズ人形:『SIREN』のアーカイブNo.074。「ビーズで組まれた人形。黒髪の少女がモチーフのようである」と説明文が書かれている。春海と美耶子の親密な関係を示唆するアイテム。
篠田:
やっぱり火掻き棒【※】がほしいですね。火掻き棒耳かきと、火掻き棒孫の手がセットになったものを作ってほしいんですよ。
※火かき棒:その名のとおり、暖炉などで火を掻き出す際に使用する棒だが、「SIREN」シリーズでは立派な武器。ネイルハンマーと並び、「SIREN」シリーズを象徴する武器と言える。
江戸:
宮田のジャガーとかどう?
篠田:
商品化されて購入した人がいたら説教しますよ。「しっかりしろ」って(笑)。
江戸:
春海ちゃんはどう?
小南:
高遠先生と春海の絆を感じるアイテムがほしいですね。ほかには、春海は髪飾りをつけていたので、その髪飾りとか。
江戸:
みんなのアイデアが大阪SIREN展で商品化されているか、楽しみにしてほしいですね。さて、ここからは来場者の方々から質問を受け付けたいと思います。では、挙手をどうぞ。はい、早かった中央の方。
来場者からの質問:
『SIREN』のつぎの作品は出ますか?
外山:
僕らのモチベーションとかアイデアとかの問題ではなくて、要はマネタイズ。「これ本当に商売になるの」って部分が若干微妙だったんですけど、今回のイベントはすごく後押しになりました! 「すぐに新作を」というのは昔とはかかる予算が全然違うので本当にたいへんなんですけど、ひとつひとつ楔を打っていきたいなというモチベーションをいただきました。ありがとうございます。
篠田:
そうなったら僕は出ます。SDKで。
小南:
私も出たい! 大人になった春海で。
佐藤:
ファンのみなさんも(異界入りで)毎年毎年ループし続けてくれて、本当にありがとうございます。その先のループに何か変化を起こしたいと思っていますので、そのために皆さまのお力添えをいただけたらと思っています。
外山:
やっぱり楽しいじゃないですか、こういうのって。毎年続けていきたいなって思います。
江戸:
15年前はこうなるなんて思ってなかったですもんね。
外山:
全然思っていなかったですね。はっきり言って当時よりいまのほうが盛り上がっていて、びっくりしています。
佐藤:
もうなんか「伝説のカルトゲー」みたいになってますもんね。
外山:
何を作ってもカルトになっちゃうんですよねぇ。
佐藤:
作家性が勝ちすぎるってことですよね。いい意味で
江戸:
ではつぎの質問を受け付けましょう。では、後ろの方。
来場者からの質問:
須田君の生徒手帳の中に「ソルマック胃腸液」というレシートがありましたが、何を食べて胃を壊したんですか?
佐藤:
ネタバレしちゃいますと、あれもがんばって実物を作っていまして、当時自分がコンビニで買い物したときのレシートを入れました。大人の事情のレシートです。
篠田:
『SIREN2』10周年のときに須田恭也の生徒手帳の実物をもらったんですけど、レシートが入ってました。もう風化しているやつが。驚きましたね。
佐藤:
すみません。もっと須田恭也は胃が弱いとか、設定をつけていれば良かったんですが。そのころはまだ解像度が低くて、読まれないから助かっていたんです。
江戸:
続いて、真ん中の方。
来場者からの質問:
「SIREN」シリーズにはいろいろな役者さんが出られていますが、八尾比沙子役の南りさこさんの近況はどなたかご存じでしょうか?
外山:
その辺の事情を説明すると、『SIREN』のときってじつは役者さんに全部やってもらうつもりではなくて、外観は外観、声は声、動きは動きで変えようと思っていたのを、「全部やってもらったほうが面白い」ということになって途中で方針が変わったんですね。で、八尾役を演じてくださった南りさこさんは役者さんではなく、広告モデルなどの仕事をされていた方のため、近況がわからない状況なんです。
佐藤:
演技を学んでいない方々にも、いろいろなことをやっていただいていたので。
外山:
恩田姉妹役の児玉啓さんと、神代亜矢子役の松井亜耶さんも演技経験がないはずですね。
佐藤:
それでいうと安野依子役の水野雅美さんも全然ないですよ。あの方は軽井沢の不動産王の娘さんで、すごいお嬢様ですから。
外山:
当初それを知らなくて、サウンド担当が「あの子のつけているアクセサリー、ただごとじゃないですよ」って言っていて(笑)。
篠田:
当時家が近かったのでいっしょに食事にいったりしてましたけど、お嬢様的な話は一切なかったですよ。
佐藤:
多分庶民の暮らしを楽しんでいたんだよ(笑)。
江戸:
では、つぎは中央の方。
来場者からの質問:
今回は『SIREN』の15周年ですのでしょうがないと思いますが、『SIREN2』のグッズが少なくて……。「『SIREN2』のこんなグッズを出して」という要望はどこに出したらいいですか?
佐藤:
会場の後ろにいるタイガー原君がSIREN展の企画者です。ですので彼のTwitterアカウントに鬼のようにメッセージを送ってください。
外山:
ちょうど昨日呑んでいるときに「『SIREN2』の15周年もやらなきゃね」って話してました。
佐藤:
折角なのでタイガー原君の話をさせてもらうと、このイベントってソニー・インタラクティブエンタテインメントから「やろう」と言いだしたわけじゃなくて、本来起きるはずのなかったイベントなんですよ。なんで実現できたかというと、原君がずっと「SIREN」シリーズが好きで、大学生のときに当時のソニー・コンピュータエンタテインメントに面接に来てくれたんですね。結果、落ちたんですけど……。
タイガー原氏:
その話はもうやめてください(笑)。
佐藤:
落ちたんですけど、ソニー・デジタルエンタテインメントに潜り込んでくれて、外山ディレクターも私も「続編が出ていないゲームのイベントなんてありえないよ」って言ってたのを、墓場の画廊さんとタッグを組んで企画プレゼンにきてくれて、ここまで成し遂げてくれたという、『SIREN』ファンの鑑みたいな子なんです。
外山:
墓場の画廊さんも大手の商品になりにくいものを愛だけでやってくれてありがとうございます。ということで、要望はTwitterでガンガンぶつけてください。
江戸:
続いて手前の方どうぞ。
来場者からの質問:
宮田さんは白衣に名前を書いていましたけど、他の物にも名前を書いているんですか?
佐藤:
宮田ってサイコパスのような扱いを受けていますけど、じつはすごくまじめなんです。その基盤があってのあの性格なので、いろんなところに名前を書いているんじゃないですかね。……と思っていたらネイルハンマーにも名前が書いてあったと。
満田:
書きそうにないキャラですもんね。
佐藤:
でも真面目なんだよ。
満田:
だから演じていて、宮田がどういう性格なのかいまいちつかめなかった部分があります。
佐藤:
収録中「宮田ってなんなんですかね」って聞かれて、私も15年以上考え続けていました。でも、このあいだコミックスで対談【※】させていただいて。
※コミックスで対談:ソニー・インタラクティブエンタテインメント原作、酒井義脚本、浅田有皆作画によるマンガ『SIREN ReBIRTH』の単行本1巻には、佐藤氏と満田氏の対談が掲載されている。
満田:
コミックスで対談、ありがとうございました。
佐藤:
今日もどういうキャラでいこうか、満田さんが悩んでいたので「満田さんはそのままでいいよ」って(笑)。
満田:
これでもだいぶ抑えてますけどね。
江戸:
じゃあ最後にちょっとセリフしゃべってよ。
佐藤:
「①さよなら、兄さん」、「②煉獄の炎、俺の命と引き換えだ」、「③ああ今行くよ」、会場のみなさん、どれがいいですか?
満田:
(会場の拍手で②になって)じゃあ、みんな目をつぶってください。「煉獄の炎、俺の命と引き換えだ」。
佐藤:
似てる! 本物みたい(笑)。
江戸:
じゃあ篠田も最後になんかやってよ
篠田:
「お前じゃなくて、須田恭也」
佐藤:
それは私も頬が赤くなりますね(笑)。
篠田:
最後にまた汗をかきましたね(笑)。
会場は終始笑顔に包まれたまま、1時間ほどのトークイベントはあっという間に終了。イベントを終え、会場を出られる前に外山氏と佐藤氏にコメントをいただいたので、最後にその言葉を記そう。
──イベントを終えられての率直な感想は?
外山:
15年経ってこんなことになるとは、まったく微塵も想像していなかったので感慨深いです。今回、決意を新たにしたのは、ファンの皆様の声にもっと応えていかなければということ。がんばりたいと思います。
佐藤:
今日は来場ありがとうございました。女性のユーザーが多いことを知って驚きました。もともとホラーゲームは女性に受けるんじゃないかと『SIREN』を作っているときから思っていましたが、15年熟成されてこういう結果になるんだなと、予想を超える展開で驚いています。制作者が好きで、おもしろいと熱く思っているタイトルは、こうやって時間を越えて人に伝わるんだなと。また、そうやって皆さんの心に届くものを作れたらいいなと思っています。
──トークイベントでも「発売当初よりもいまのほうが盛り上がっている」という発言がありましたが、時代が移ろって『SIREN』の変わったもの、変わらないものというのは?
外山:
コンテンツ側、僕ら側としては、なにもアクションをしかけてはいないので……。僕らの感覚で言うとやっぱり世情の変化。とくに、プレイ実況とTwitterですね。ゲーム中での時系列がはっきりしているからTwitterが盛り上がるとか、いわゆる『SIREN』のもともとのキーワードだった地続き感というのが、フィクションだけど自分たちと続いているような、そういった曖昧感がいまの時代にマッチしたのかなという分析ですかね。本当にこの盛り上がりはよくわからないんですが(笑)。
佐藤:
SIREN展の来場者で大学の卒論を異界入りをテーマに書かれたという方がいて、お願いして論文を読ませていただいたんですね。異界入りについては、Twitterを通じてみんなが『SIREN』のストーリーを毎年毎年、共通体験として更新していくという行為で、『SIREN』の物語は新たに生まれ直している、再生産されているという切り口で分析されていて。
それはすごく納得するものがあって、お祭り、儀式というのは、過去にあった出来事をみんなでもう一度追体験するという様式で生まれているとすると、『SIREN』の世界観、ストーリーそのものが、祭りにまで進化しちゃったのかな、と。それは制作者が想定したものをはるかに超えて、ユーザーさんが生み出した新しいゲーム性で、本当におもしろいなと。
外山:
『SIREN』はすごく隙間が多いゲームで、想像の余地が働きやすいのかなと。
佐藤:
魅力的な余白を作るということは参加型のストーリーになるのかなと。今後の作品に活かしたいと思います。
──平成最後の異界入りでしたが……。
佐藤:
正直、大阪での開催まで決まるとは思っていなかったので、自分たちの想像を超えて、どんどん『SIREN』が拡大中で、このあと、もっとおもしろいことが大阪展で起こりそうなので楽しみにしています。夏休みって毎年ワクワクするものですが、本能的に平成最後の異界入りは異常な盛り上がりを感じていて、みんなもそう感じてくれたのかなと。そういうシンクロニシティ的なものも『SIREN』らしいなと思いました。
外山:
時代の節目というのも『SIREN』らしいと思っていて、平成最後の年にファンの方と接するイベントができたのはありがたかったですね。これで全部終わりというのはぜんぜんないと感じたので、僕もこの先がまったくわからないですけど、どう変わっていくのか、想定外の新しい形で『SIREN』がどう生き続けていくのか、楽しみにしたいですね。(了)
イベント後の佐藤氏のコメントにもあるが、会場を見渡して率直に感じたのは参加者の「若さ」と「女性の割合の多さ」だ。発売15年周年を迎えたタイトルのイベントに参加する層にはとても見えなかった。本編をオンタイムでプレイした方も、本編をクリアしている方も、挙手された数はそれなりにはいたが、決して大勢を占めてはいない。
これはひとつのビデオゲームのイベントとしては相当に不思議なことで、つまり15年の歳月を経て熟成された『SIREN』というIPが、ビデオゲームという枠を飛び超えて一種の「文化の触媒」としてのコンテンツになりつつある傍証と捉えても差し支えないだろう。仮にプレイしていなくても、仮にクリアできなかったとしても、『SIREN』というタイトルを幹にして派生していく文化に触れることは許され、むしろ歓迎される土壌がそこにはある。
ビデオゲームのタイトルがその幹になっていること自体が稀有なことだが、10年間休眠中のタイトルで、ということを加味すれば奇跡的な現象と呼びたくもなる。その要因はともかく、すべての現象の下支えがあらゆる媒体を通じて『SIREN』の魅力に取りつかれたユーザーの持続する熱量であるのは間違いない。
ホラーゲームというジャンルの現状を考えれば、続編へのハードルの高さは充分に理解できる。しかし外山氏がイベント中で「つぎに繋がる後押し」と発言し、佐藤氏は「ループの先に変化を起こしたい」と語った。その言葉はきっと『SIREN』ファン達の熱意の反響音だ。
平成最後の夏が過ぎ、新たな元号を迎えようとしているいま。これからの『SIREN』の盛り上がりと、ユーザーの熱量が、『SIREN』というIPにどのような変化をもたらすのか、引き続き注視して見届けたいと思う。
なお、「SIREN展」は大阪でも12月4日~12月19日、心斎橋BIGSTEP「墓場の画廊WEST」にて開催を予定しているので、『SIREN』 に少しでも興味がある方はぜひ足を運んでみてほしい。
【プレゼントのお知らせ】
外山圭一郎氏と佐藤直子氏のサイン入り
— 電ファミニコゲーマー (@denfaminicogame) September 7, 2018
墓場の画廊 #SIREN グッズの絵馬を
抽選で1名様にプレゼント@denfaminicogame をフォロー& このツイートRTで応募完了
締切:9/14 23:59 当選はDMにてお伝えします
『SIREN』15周年トークショウ記事はこちらhttps://t.co/bTTL2taVyT pic.twitter.com/X9MM5w9BzX
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