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『アークナイツ』をプレイして分かった“完璧すぎる世界観” ― そもそも“ガチャから人間が出てくる”ことが謎だった

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 2019年の6月ごろの話だろうか、海外ゲームを調査することを仕事とする友人から「『明日方舟』(日本名 アークナイツ)の世界観が完璧すぎるから遊んだほうがいい」という連絡が届いた。

 当時、気になったので海外版で遊んでみたのだが、残念ながら言語の壁に阻まれてその世界観がわからなかったのだが……先行プレイレポート で遊んでみて初めてその意味が分かった。

 『アークナイツ』は、病的なまでに世界観にこだわった美しいゲームで、それだけで遊ぶ価値がある。そういった作品なのだ。

文/寺島壽久


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 『アークナイツ』は、iOS / Android 向けの基本無料・アイテム課金式のタワーディフェンスだ。

 舞台は我々の世界に近い近代的な世界。この世界では“鉱石病(オリパシー) ” という不治の病気に感染し、健常者達の社会から迫害される立場の者と、そうでない者が対立している。

 そんな中で、プレイヤーは“ロドス ・アイランド ”という鉱石病を研究する製薬会社が救出する重要人物として描かれる。

 ロドスは表向きは製薬会社だが、裏では鉱石病の感染者を助け、ときに感染者と健常者の対立を治める武力行使も行う。プレイヤーは記憶を失っているが、ロドスにとっては指揮者であり、重要人物であると語られ……ロドスと共に戦う物語が始まる。

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イラストの繊細さもまた素晴らしい。 登場人物はどこか人間と違う特徴があるようだが……これも、物語に関わるのだろうか。

 こういった記憶喪失から始まる物語は王道で、十分に引きこまれるものではあった。しかし、『アークナイツ』の完璧な世界観は、ストーリーの外にあった。

 “ゲームの都合”による世界観の妥協を一切感じず、それがゲームの物語を高めていたのだ。

 いきなりゲームの都合と言ってもわかりづらいので、ここで少し昔話をさせていただく。とくに2013年以前に登場した運営型の携帯・スマートフォンゲームには、重厚なストーリーとか、凝った世界観は必要ないと言われることがあった。
 家庭用ゲームのような深いストーリーより、プレイヤーはシンプルなゲームのコア部分を遊びたいのだと語られることがあり、実際にその頃はゲーム内でストーリーを語らないシンプルなゲームが流行っていた。

 また、同じゲーム内でイラストのテイストが統一されていなかったり、レアリティの低いキャラクターイラストは露骨にクオリティが低下していて世界観を壊していたりするゲームもあった。システムにおいても、KONAMIの『ドラゴンコレクション』 で確立されたガチャ・合成システムなど、先行するヒット作のルールが盲目的に踏襲される様子も見られ、世界観は後回しにされている状況だった。

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 この記事を見ている皆さんも、ガチャから人間キャラクターが出てきて(なぜ?)、同じキャラクターがユニットとして2人以上バトルに存在して(ドッペルゲンガーか?)、果てはその人間同士を合成できる(どうして?)ことに説明がないゲームに心当たりがあるのではないだろうか。

 もちろん、現在ではソーシャルゲームにおいても現在はストーリーに意味があることが知られているし、キャラクターテイストの統一や世界観やストーリーをより深く描くことが普通に行われていて、これは過去の話になっている。

 たとえば『アイドルマスターシンデレラガールズ スターライトステージ』では強化アイテムはレッスンチケットとして理由づけられていたし、イラストのテイストもシリーズ初期から統一されていた。

 驚くべきことに、そういった現在の状況を考えても、『アークナイツ』はそういったご都合主義を排し、完全にゲーム内の仕組みに物語的な理由をつけ、説明しきる完璧主義者だった。

 同じオペレーター(キャラクター )は戦場に2人存在できないのでドッペルゲンガー現象も起こらないし、デイリーミッションなどはロドスが裏でこなす任務としてそれぞれ名前が付けられて説明されている。例えば強化に必要な資源が大量に出るミッションは“補給任務” として完全にゲーム内で説明がつけられている。

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任務をこなすたびにチケットが切られる演出も、何かしらの組織内での配給的な雰囲気を感じてお気に入りだ。

 強化システムを見ると、強化アイテムは戦闘記録の映像で、これを見ることでキャラクターは成長する。謎の強化アイテムは存在しない。

 いわゆるガチャチケットに当たる“スカウト券”は、人材リクルート会社にヘッドハンティングを依頼するための伝票とされている。ガチャチケットのアイテム説明まで理由がついているのだ。

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 なにより驚いたのはプレイに必要なスタミナの名称だ。これは“理性 ”という単語で示されており、記憶喪失のプレイヤーの背景を連想させる数値となっている。理性がないときは動けないなら、プレイヤーはどんな状態で、何者なのだろう!?

 こういった完璧な世界観構築が、プレイヤーをぐいぐいストーリーに引きこんでいく。ここまで見て、友人の語った「完璧すぎる世界観」が理解できた。スタミナを行動力と称するか、理性と称するのか。そんな小さなことでもゲーム設定に妥協しないことで、物語をより魅力的になるのだ。これは、ぜひ注目してみて欲しいポイントだ。

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 さて、世界観の良さについて力説してしまったのだが、そうすると気になるのは「じゃあ、肝心のタワーディフェンス部分は面白いのか」という点だろう。世界観の良さ、イラストの良さなどを全面に出すゲーム紹介は、ゲーム部分が芳しくないときに行われがちだ。が、これに関しても先行プレイでわかる部分に関しては、かなり自信をもって「良さそうだ」と返答できる。

 『アークナイツ』の基本システムは、見おろし画面の伝統的なタワーディフェンスゲームだ。マップ上の赤い出撃ポイントから敵が登場し、青いプレイヤーの拠点に向けて攻め寄せてくる。これに対してプレイヤーはオペレーターをマップに配置して敵を迎撃し、すべての敵を倒せればステージクリアとなり、逆に敵を止められずに一定数以上が拠点に到達してしまうと敗北となる。

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プレイヤー側はステージ攻略前に最大12人とサポート1人 のオペレーターでパーティーを編成し、その中から状況に応じてキャラクターを配置できるが、いくつか制限がある。

 オペレーターを配置するときには、有限の“コスト”を消費する必要があり、同じジョブであれば消費コストが高いほど能力も高い傾向がある。今回プレイした範囲では時間経過でコストが増えるため、コストの少ない序盤に使用するオペレーター、後半に配置するオペレーターなど、ステージの流れに合わせた編成が必要となった。

 タワーディフェンスにはタワー(このゲームにおけるオペレーター)が敵に破壊されないタイプと敵によって破壊されるタイプがあるが、『アークナイツ』は後者。オペレーターにはHPの概念があり、敵の進路上に配置すると接触時に攻撃され、HPがなくなると退却してしまう。

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マップ上に登場するディフォルメオペレーターはかわいいし、よく動いて見た目にもにぎやかだ。

 敵には重装甲、飛行タイプなどさまざまなタイプの敵が登場し、味方キャラクターにも攻撃ができないが敵を多く足止めできるキャラクター、飛行する敵を狙うキャラクター、範囲攻撃キャラクターなどさまざまなキャラクターが登場し、配置や使い分けに関しても一般的なタワーディフェンスと同等以上の要素が用意されているように感じた。

 これだけならスタンダードなタワーディフェンスだが、本作には注目すべき2つの工夫があった。

 1つはオペレーターの向きという概念があること。多くのタワーディフェンスにおいて、タワーは配置された位置から円形の射程を持つ。しかし、『アークナイツ』ではキャラクターが前面に向かって攻撃をするように作られており、配置するときに向きを指定すると、その向きを基準に前面にしか攻撃を行わない。
 つまり、適当な向きでオペレーターを配置するとオペレーターの性能を発揮しきれないのだ。もちろん、オペレーターの向きを最適化することで火力の相乗効果を期待することもでき、戦術性に深みを加えている。

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向いている方向によって、攻撃範囲が変化する。

 もう1つは、周回が要求されれる運営型ゲームにおいて特徴的な機能だ。現代のスマートフォンゲームの多くは、AIがオートプレイすることで周回をサポートする。本作にもオートプレイが存在するが、その操作はAIが行うものではない。
 オートプレイは“プレイヤーの指揮を記録して再現する”設定になっており、1度プレイヤーがクリアしたときの操作をほぼ完全になぞる。つまり、1度ステージを完璧にクリアできれ何度でも効率よく でオートクリアできる仕組みを導入している。

 今回は1-10までしかプレイしていないが、序盤のみのプレイであっても『アークナイツ』の魅力と独自性は十分に伝わるものだった。

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 かつて、“ポチポチゲーム”などと揶揄されていた運営型の携帯・スマートフォンゲームの名残は、近代まで長く残っていた。もちろん、2019年末の現在に至るまで多くのゲームがその名残を消すことに挑戦し、ほとんどそれは達成されている。

 だが、『アークナイツ』は、そういった旧世代の名残を消し去ったゲームの中でも頭一つ抜けた完璧な世界観を作り上げている。タワーディフェンスとしても、運営型のスマートフォンゲームとしても配慮された特徴がシステムにあり、『アークナイツ』は世界観だけで終わらない期待もある。最後まで面白そうであるとか、そういったことまでは言えないが、注目すべきゲームの1つであることは断言できる。

 サービスが始まったら、ぜひこの世界観は見て欲しい。

著者
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寺島壽久
スマホ黎明期からゲームをプレイし続け、自ブログ「ゲームキャスト」にてひたすら面白い新作ゲームをプレイし、感想を書き続けている。過去にはAppBankでげーむふぁいたー名義で執筆。

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