木村拓哉が演じる探偵・八神隆之が、いよいよ新たな事件現場へ舞い戻ってくる。
今月9月24日発売の『LOST JUDGMENT 裁かれざる記憶』(以下、LOST JUDGMENT)のリリースに先駆け、株式会社セガは『LOST JUDGMENT』完成披露記者発表会を2021年9月10日、東京・品川インターシティホールにて行った。
発表会には主演の木村拓哉さんをはじめ、前作から引き続き出演した中尾彬さんが登壇。そこに『LOST JUDGMENT』から新たに出演する、玉木宏さんや山本耕史さん、光石研さんらが参加している。
豪華な出演陣に総合監督である名越稔洋氏も加わり、『LOST JUDGMENT』についてのトークが行われた。大きな話題を呼んだ『ジャッジアイズ』シリーズ最新作では、どのような制作秘話が語られたのだろうか?
取材・撮影・文/葛西祝
「木村さんは頭から “八神”になっていた」木村拓哉が再びゲームの世界に登場する意気込み
まず初めに名越氏は前作『JUDGE EYES:死神の遺言』(以下、『JUDGE EYES』)が国内だけではなく、海外でも高く評価されたことに触れた。「我々が想像する以上に海外のユーザーに受け入れられた」そうで、「嬉しい反面、次回作はそれを越えなきゃ……というプレッシャーがあった」と語った。
木村さんも『JUDGE EYES』が「海外で好評だったことは、すごく嬉しい」と語りつつ、発売後の意外なエピソードも披露してくれた。「ほかの仕事の現場で、インタビューしてくださる女性アナウンサーの方が“じつはクリアしました”とか小っちゃい声で伝えてくださることが多かったです」とのことで、いろんな人々にプレイされたことを意外な驚きとして振り返っていた。
名越氏は木村さんの演技について驚いたエピソードも挙げてくれた。ふたたび木村さんに出演をお願いするとき、前作から時間も経っていたため「まずもう一回“八神”というキャラクターになるところからスタートかなー、と思っていたんです」と、最初は慎重だったそうだ。
ところが実際にボイス収録が始まってみると「……頭から “八神”だったんですよ」と、想像以上にスムーズに収録を進めることが出来たのだという。まさに八神隆之というキャラクターが木村拓哉さんのイメージに繋がっていることを感じさせる逸話である。
木村さんは八神というキャラクターの魅力をこう語る。「前作からそうですが、ずっとブレないというか。彼個人の魅力というよりかは、彼を支えてくれる周りのキャラクターに恵まれたキャラクターと思います」。
八神の前に立ちふさがる半グレ集団——今回初出演の俳優たちが出演して驚いたこと
『LOST JUDGMENT』では、新たにクセの強い登場人物が八神隆之の前に立ちふさがる。半グレ集団「RK」のリーダー、相馬一樹もそのひとりだ。
相馬役を演じたのが玉木宏さん。玉木さんは「このような役をもらえるとは思わなかったので、すごく嬉しかった」と語る。相馬という役について、「八神は何回転んでも立ち上がるに対して、相馬にとっては天敵のような存在」だと振り返っていた。
また今回、玉木さんは初めて龍が如くスタジオ作品に参加することもあって、「これだけのクオリティの高いものを、どうやって作っているのか気になっていた」そうだ。
玉木さんはゲームへの出演は本作が初めてではない。『ローグギャラクシー』や『トレジャーリポート 機械じかけの遺産』といったタイトルにて声優を務めた経験がある。今回の『LOST JUDGMENT』に関しては「声入れに関しては、わりと自由に、実際のお芝居に近い形でやらせていただきました」とのことだ。
一方、非合法な仕事を引き受ける便利屋・桑名仁役を演じた山本耕史さんは、ゲームへの出演に非常に戸惑ったそうだ。 「木村さんと共演するのに、木村さんと会えない、よくわからない瞬間があって、“どういう仕事なの?”っていう。それが最初の印象で、声の仕事で画面の中の木村さんと会話するという不思議な共演だったんです」。
山本さんは「なにもわからなかったからこそ、いろんなご指導をしていただいて、この歳になってすごく勉強になったのが正直なところ」だと、今回の出演について感慨深く答えていた。
さらに、木村さんとかつてドラマ『華麗なる一族』で万俵鉄平・万俵銀平の兄弟として共演していたエピソードも語られ、あらためて木村さんと共演することについて「やはり緊張しますよね。ゲームの中の木村さんなんですけども緊張しました。ひさしぶりに」と、その存在感の大きさを感じさせる逸話も披露された。
対照的に警視庁巡査部長である江原明弘役を演じた光石研さんは、生き生きと今回のオファーについて振り返った。「こういう何かを背負った男が大好きなんです。そういう役がやりたくて役者の世界にはいったので、とても嬉しかったです。ちょっと大変だけど楽しみましたね」。
最後に、前作から引き続き源田法律事務所所長の源田龍造役を務めた中尾彬さんが今回の出演を振り返った。「前作に出演した時は声が先で、(今作のように)画が後というのは初めてだったんですよね。だからどんな画が出てきて、木村君がどんなリアクションするのかまったくわからない。自分が監督になったつもりでやりました」とゲーム出演の独特さを振り返っていた。
まさかの『うっせえわ』がバズる前からAdoさんに決めていた!? 主題歌に決まった経緯
続いて『LOST JUDGMENT』の主題歌「螺旋」について、名越氏は今回のjon-YAKITORYさんとAdoさんのふたりに決まった意外な経緯を教えてくれた。
※今年7月に公開された『ロストジャッジメント』オープニングムービー【主題歌「蝸旋」jon-YAKITORY feat. Ado】
『龍が如く』シリーズや『ジャッジアイズ』シリーズは、これまでも矢沢永吉やB’z、クレイジーケンバンドや湘南乃風といった著名なアーティストを主題歌に起用してきた。いずれも日本の音楽シーンでギラついた存在感を見せつけ、シリーズを彩ってきた。
それらと比較すると、Adoさんが主題歌に選ばれたのは意外に感じたものだ。筆者は最初『LOST JUDGMENT』の主題歌に決まったのは「やはり昨年にAdoさんの代表曲『うっせえわ』が大きくバズったのに合わせたからか……? すごいスピード感だ」と邪推してしまったが、名越氏によるとどうやら違うらしい。
名越氏は「『LOST JUDGMENT』では高校が舞台のひとつということもあり、うんと若い人に主題歌をお願いしたほうが、音的に親近感あるものが作れるのではと思った」という。しかし若いアーティストを探すも、なかなか決まらず先に進まない時期があったそうだ。
そんなある日、名越氏はたまたまjon-YAKITORYさんの女性ボーカルを聴いて「ぶっとんだ」のだという。その女性ボーカルこそがAdoさんだった。トーク中には明かされなかったが、jon-YAKITORYさんとAdoさんによる楽曲とのことなので、筆者の推測ではあるがおそらくは「シカバネーゼ」か「フェイキング・オブ・コメディ」ではないかと思われる。
「もう他の選択肢が見えなくなった」とまで名越氏は惚れ込み、主題歌の依頼に繋がったそうだ。その後、名越氏はAdoさんが「うっせえわ」で大ヒットを飛ばしたのを知って「こんなにヒットするとは思わなかった。Adoさんはいい意味でメジャーでホットな存在になった」と語っている。
いよいよリリースに向け、体験版の配信も
発表会のまとめとして、木村さんはこう語った。「前作に引き続き、新たなキャスト、スタッフを含め、『LOST JUDGMENT』という作品を作ってみました。ゲームという独特の世界観であると思うんですが、僕が普段やっている実写の立場からするとこんなにもリアルにできるんだ、とちょっとプレッシャーを与えられる世界観が広がっていると思います」。
名越氏はこうまとめる。「私としては、世界中の人が共感できる素晴らしいドラマとなったと思います。このゲームは一人で遊ぶものとして、スマホのゲームとかオンラインゲームがたくさんありますし、本当に面白いものがあるのはわかっていますが、自分ひとりで遊ぶ豊かな時間というのを、本作を通じてあらためて提供できるのではないかな、と考えております。ぜひ気になった方は触っていただき、お買い求めいただければと思います」。
『LOST JUDGMENT』は2021年9月24日、PlayStation5、PlayStation4、Xbox Series X|S、Xbox Oneにてリリースを予定。現在、体験版も配信されており、どんな内容であるかも事前にチェックできる。新たなる事件に出会うのはもうすぐだ。