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『ダイイングライト2』は一人称視点パルクールアクションのひとつの到達点かもしれない。「ジャングルジム化」されたオープンワールドを一足早く体験してきた

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 スパイク・チュンソフトが、2022年2月4日にPS5/PS4向けに発売を予定しているオープンワールドアクションRPG『ダイイングライト2 ステイ ヒューマン』。本作はテックランド開発による『ダイイングライト』の続編で、本来は今年の12月に発売が予定されていたがクオリティアップのために延期された作品だ。

 今回、都内某所で開催されたメディア向け体験会にて本作を一足先にプレイする機会を得た。先に結論からいうと『デッドアイランド』、『ダイイングライト』の正当進化的な作品でありながら、ある種の到達点ともいえる充実した面白さに満ちた作品になっている。

 約3時間の体験会なので本作の一端に触れたにしか過ぎないが、あえて要約すると「パルクールアクションが格段に面白くなっていた」と「続きが気になって止められないほどストーリーに引き込まれた」という2点が大きな魅力として挙げられる。

 本作をもって、『ダイイングライト2』が前作から磨き上げてきた一人称視点パルクールアクションは、ひとつの完成形を作ったのかもしれない。筆者は本作を「アスレチック・オープンワールド」と名付けたいくらいだ。

 オープンワールドはメインストーリーだけでなく寄り道なども楽しむ自由度の高さが売りだ。だが、今回のメディア向け体験会はその構成から80%をメインストーリーをプレイさせる内容になっていた。

『ダイイングライト2』は一人称視点パルクールアクションのひとつの到達点かもしれない。「ジャングルジム化」されたオープンワールドを一足早く体験してきた_001

 つまりこれは開発のテックランドにして「ストーリーに自信があるので、ぜひそれを体験して欲しい」というメッセージに他ならないだろう。そしてそのストーリーの高い品質は実現されていたと断言できる。本稿ではネタバレにならない範囲でその物語の魅力に触れたい。

 細かい演出やローグライク要素など、そのほかの面白い要素や期待できそうな内容はもちろんあるが、体験会が終わった後は「なるほど、確かにこの内容ならばクオリティアップのために延期も致し方なし」と妙に納得したまま帰路についたほどだ。

 では、具体的に『ダイイングライト2 ステイ ヒューマン』がどのような内容になっているのか紹介していこう。


人類最後の砦で妹を捜索するために奮闘する主人公を描く『ダイイングライト2』

 まず基本情報をおさらいしておこう。本作は第1作『ダイイングライト』の20年後、ゾンビによって文明が崩壊した世界を舞台にした、オープンワールドのアクションRPGだ。前作とは別の主人公、別の地域が舞台となっており、前作が未プレイでも安心して楽しめるだろう。

 舞台となるのは人類最後の大規模移住地「シティ」だ。この地はゾンビの脅威にさらされながらも、人々は争いによっていくつかの勢力に分裂しており、文明は再び暗黒時代へと逆戻りしている。

 主人公エイデンは、妹を探すために外の世界からシティにやってきた存在だ。シティは広大で内部でもいくつかの地域に分かれており、主人公は「セントラルループ」と呼ばれる場所に行くことを目的としている。そのためには各勢力に取り入りながら、その場所を目指さなければならない。

 なお本作の対象プラットフォームは、PS4、PS5、Xbox One、Xbox Series X|S、PC(Steam、Epic Games Store)であり、スパイク・チュンソフトからはPS4、PS5向けに日本語字幕・吹き替えに対応したパッケージ版、ダウンロード版が発売する。

 今回の体験会で筆者はハイスペックなマシン上でPC版をプレイしている。ただし開発版のため日本語吹き替えには対応しておらず、英語音声・日本語字幕でプレイした。今回のPC版では細部まで作り込まれたグラフィックを体験できたが、本作はPS5、Xbox Series X|Sの次世代機にネイティブで対応しているため、高品質なグラフィックには期待していいだろう。

 またPS4版(PS4 Proではなく通常のPS4)も軽く触ることができたが、処理落ちなどはせずにしっかりと最適化されていることが確認できた。

「アスレチック・オープンワールド」を実現したパルクールアクション

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 筆者は『グランド・セフト・オートIII』など、3Dグラフィックスで描かれた現代的なオープンワールドゲームの始祖的な作品をリアルタイムで経験した世代だ。

 オープンワールドゲームは広い空間を移動することになるので、必然的に徒歩だけではない移動手段が重要な要素になってくる。いったんオープンワールドの定義は置いておくが、先駆的作品を含めて「徒歩以外の移動」の代表例として『ゼルダの伝説 時のオカリナ』における馬の移動にはじまり、『シェンムー』のバスに乘る行為、『グランド・セフト・オートIII』における車、『The Elder Scrolls』シリーズにおけるファストトラベルなどがある。

 とくに近年ではオープンワールドにおける「徒歩の移動」を逆説的に刷新した『デス・ストランディング』は記憶に新しい。ほかにも『ウィッチャー3』や『レッド・デッド・リデンプション』などで馬を呼んだら追従してくれるなどのアクセシビリティもこうした移動の変化の歴史といえる。そしてパルクールを取り入れた『ダイイングライト』もオープンワールドの移動の多様性を示した作品として再評価すべきかもしれない。

 本作もまた前作と同じくゾンビがうごめく街で、屋根と屋根をジャンプしながら駆けつつ、地面では壁などの障害物をんで乗り越えるパルクールアクションが特徴だ。本作はそのパルクール自体の基本的な操作性は前作を踏襲しつつ、オープンワールドのフィールドそのものを進化させる方向に舵を切っている。

 このことによって本作『ダイイングライト2 ステイ・ヒューマン』は、新たなオープンワールドの可能性をはっきりと指し示してくれている。それはフィールド自体を公園の遊具「ジャングルジム」にするということである。

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 具体的には「建物の高低差と立体性の強化」、「中に入って通過することができる建物の増大」、「掴める箇所の簡易化」、そして前作と比較して「ゾンビの高密度化」だ。ゾンビがたくさんいれば危険度は増すが、踏み台にもできるのでより高い位置でジャンプをすることができる。そのパルクールの選択肢が増えるということだ。

 こうしたパルクールのやりやすさによって、街自体がある種のジャングルジムのような柔軟な空間へと変貌しているのだ。テクニック次第で本作の移動はどんどんと派手で流暢なハイスピード・パルクールになっていくだろう。

 パルクールとは走り、跳ぶ、掴み、よじ登るエクストリームスポーツだが、実際のアスリートたちがスーパープレイを披露している動画は見ているだけで楽しい。しかしそういった「パルクールを見ているだけで楽しいゲーム」というのは、これまで実現できていなかったかもしれない。もしかしたら本作はそういった最初のゲームとなるかもしれない。

 もちろん要所、要所ではパズル要素もあり、静的で思考型のパルクールも健在だ。こうした緩急によって忙しいだけのパルクールには陥っていない。

プレイヤーの予想を裏切る一筋縄ではいかないストーリー

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 すでに情報が明かされているとおり、本作は無数の選択肢を通じてストーリーが分岐し、自分だけの物語を体験ができるとされている。シティにはいくつかの勢力があり、どの勢力の味方をするのか、プレイヤーが自ら決断することができるのだ。

 ゲーム序盤のシチュエーションは、シティの勢力である「ピースキーパー」と「サバイバー」の対立の渦中に主人公エイデンは巻き込まれる。ピースキーパーは自分たちの指揮官が何者かに殺されており、その犯人はサバイバーの中にいると推測している。エイデンは、妹を探すためにピースキーパーと協力し、サバイバーの陣営の中に潜入して情報を引き出そうとする。

 ここでひとつ機転が効いているのは、フラットな状態からどちらかの勢力に味方をするのではなく、すでに主人公はピースキーパー側に属していることだ。この状況から「そのままピースキーパー側につくのか?」それとも「裏切ってサバイバーにつくのか?」という選択を決断することになる。

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 サバイバー側に潜入してスパイすることによって、サバイバーにも言い分があることがわかる。そしてキャラクターと接していくと、その陣営にも愛着が湧いてくる。はたしてどちらの陣営に組みすることが正義なのか?どちらの選択が主人公の利益になるのか?

 しかし本作が巧みなのは、プレイヤーがここから想定するであろう展開も織り込み済みであり、一歩先を行くストーリー展開にまで昇華していることだ。

 主人公が最終的にどちらかの勢力に味方をするということは、片方の勢力は優勢になり、片方の勢力は劣勢になるということだ。しかしここから別の価値観が入ってきて一筋縄ではいかない複雑な情勢になる。

 味方をした勢力は本当に信頼できるのか?そもそも事件の真相は何なのか?まるでミステリー小説を読んでいるかのように、選択肢を選んだ後でも本当にその選択は正しかったのか?」と心を揺さぶってくるのだ。

 今回の体験会では、そうしたストーリー構成がとても練られていることが垣間見えることができた。具体的にどのようになっているのかは、ぜひ本編をプレイして確かめて欲しい。

 なお本作は「文明が崩壊して新しい暗黒時代が迎えた世界」が舞台だが、この「暗黒時代」というのもゲームの全体的なテーマにも繋がっているとのこと。どのような思想、テーマを描こうとしているのか、気になるところだ。

パルクールアクションの緩急をつける戦闘やローグライク要素について

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 最後に戦闘の新要素やローグライク要素などにも触れておこう。

 今回はメインストーリーを中心として構成されていた体験会だったため、オープンワールドの華といえるサイドクエストは検証できたとは言い難いが、マップを見る限り豊富なクエストマーカーが確認できたので、さまざまな寄り道要素は健在のようだ。

 また『デッドアイランド』や前作からおなじみである、一人称視点による近接戦闘が本作での主軸となっているが、敵である人間との戦いにおいてパリィのような駆け引きができたり、ゾンビを倒したときにスローモー的な演出が入る演出が本作ではより多くなっている。これらはパルクールアクションと対比するようなシステムとして作用している。

 ゾンビの中には巨大な姿に肥大化したゾンビがフィールドに存在しており、戦いが困難を極めたが、まわりにあるガス缶や爆弾、攻撃を避けながら裏に立ち回って攻撃することによって最終的に倒すことができた。

 本作は前作と同じく武器などにレアリティが設定された、ローグライク要素があるが、こうした巨大なゾンビからは、よりレアリティ度が高いアイテムが手に入りそうだ。

 また今回の体験会では、序盤のエリア「オールド・ヴィレドー」とは違う、主人公が目的としていた経済区のエリア「セントラルループ」もわずかな時間だがプレイすることができた。そこでは昇気流を利用したパラグライダーによる移動が可能となっており、高層ビルとビルの窓を移動するという、序盤のパルクールとは違った遊び方ができる。

 本編ではどのようなエリアやクリーチャーが存在するのか。パルクールアクションは正当進化であり、ストーリーのこだわりが垣間見えた今回の体験会。『ダイイングライト2 ステイ ヒューマン』は2022年2月4日に発売予定だ。

ライター
85年生まれ。大阪芸術大学映像学科で映画史を学ぶ。幼少期に『ドラゴンクエストV』に衝撃を受けて、ストーリーメディアとしてのゲームに興味を持つ。その後アドベンチャーゲームに熱中し、『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』がオールタイムベスト。最近ではアドベンチャーゲームの歴史を掘り下げること、映画論とビデオゲームを繋ぐことが使命なのでは、と思い始めてる今日この頃。
Twitter:@fukuyaman

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