突然だが、みなさんは「クォータービューSRPG」というジャンルをご存知だろうか?
遡ることおよそ20数年前、1995年にクエストより発売された『タクティクスオウガ』というゲームが最も有名な作品だろう。
「シミュレーションRPG」というジャンルに「奥行き」や「高低差」の概念を与えたことで、「敵の背後から攻撃すればよりダメージが増加する」や「高台から攻撃することで一方的に優位に立てる」などのより深い戦略性を与えた画期的な作品。
さらに、「ヴァレリア」というひとつの大陸の中で繰り広げられる民族闘争を劇的に、かつリアルに描いた完成度の高いシナリオも評価されており、未だにその人気が根強いタイトルでもある。
そんな『タクティクスオウガ』や『FINAL FANTASY TACTICS』などを筆頭にした「クォータービューSRPG」を令和に蘇らせたのが今回紹介する『トライアングルストラテジー』というわけだッ! 『オクトパストラベラー』で培ったHD-2D技術を存分に活かし、新たに表現された「令和のクォータービューSRPG」の魅力を余すことなくこの私が紹介してやると言っているンだよッ!!
よぉし、この記事は『トライアングルストラテジー』をまだ遊んでいないお前たちにくれてやるッ! 好きにしろッ!!
※この記事には『トライアングルストラテジー』の1周目のネタバレが存分に含まれています。もし1周目プレイ途中で、「ネタバレが気になる」という方が居ればここでウォルホート領に帰れッ! しかし、私としては「この記事は未プレイの方にこそ読んで欲しい」と思って書いていますので、「ネタバレがあまり気にならない」かつ「トライアングルストラテジーを買おうかどうか迷っている」方はぜひ読んでいただきたいと思います。一応記載しておきますが、今作に松野泰己氏は関わっておりません。
一羽の鷹のように
まずは今作の世界観の説明から入らなければならない。「ノゼリア」という大陸を舞台に3つの国が繰り広げる戦いの様を描くのがこの『トライアングルストラテジー』。3つの国が戦うから『トライアングルストラテジー』。実に単純明快。
ノゼリアの大河に城を構え、周囲には豊かな自然が広がる「グリンブルク王国」。
北に位置し、厳しい降雪の中製鉄技術を磨く「エスフロスト公国」。
広大なノゼリアの中で唯一「塩湖」を所有している「聖ハイサンド大教国」。
その3つの国の中でも中央に位置する「グリンブルク王国」の御三家筆頭「ウォルホート家」の当主、それが主人公の「セレノア・ウォルホート」。物語は主人公セレノアとエスフロスト公国の公女「フレデリカ・エスフロスト」が許嫁として婚姻を結ぶところから始まる。この婚姻が、ノゼリア全土を巻き込む大乱の幕開けであることを知らずに……。
かつて、このノゼリアでは「塩鉄大戦」と呼ばれる血で血を洗う大戦争が起こっていた。ノゼリアで唯一塩湖を所有し、貴重な塩の独占を続ける聖ハイサンド大教国の支配体制を打ち崩すべく、グリンブルク王国とエスフロスト公国が秘密裏に接触しハイサンドに攻め込んだことがこの戦争の発端となっている。
主人公セレノアの父でもある「シモン・ウォルホート」はグリンブルク王国とエスフロスト公国の同時攻撃に対し防戦一方となったハイサンドの援軍として参戦! その少数ながらも屈強な精鋭部隊によって王国・公国軍を国境線まで撤退させることに成功し、これによりウォルホート家は後に「塩鉄大戦の英雄」とまで呼ばれる名家となる。
なんやかんやあってウォルホート家はグリンブルク王国の「レグナ王」と共に塩鉄大戦を終結に導くのだが……それはまた別の話で、今作の時系列はその「塩鉄大戦」の後を描いている。
塩鉄大戦の終結後、グリンブルク・エスフロスト・ハイサンドの三国友好の取り組みの一環として開始されたノゼリア新鉱山の「三国共同採掘」にて事件は起こる。エスフロスト公国より共同採掘の指揮を任されてやって来た「ドラガン・エスフロスト」はある日新鉱山にてノゼリアの常識そのものを揺るがすレベルの「ある物」を発見してしまう。
以前より野心の強かったドラガンは「ある物」を使いグリンブルク王国とエスフロスト公国に要求を仕掛ける……のだが、「自身を宰相にしろ」というドラガンの要求と策に気が付いていたエスフロスト公国総帥のグスタドルフはあろうことか自国の兵を用いてドラガンを殺害!
さらに畳みかけるが如くグスタドルフ総帥は「ドラガンはグリンブルク王国が殺害したものだ。これは三国の友好を揺るがす大罪である」と偽りの大義を掲げてグリンブルク王国に攻め込んできた! 一夜にして制圧される王都とホワイトホルム城!!
ウォルホート家と共に塩鉄大戦を終結に導き、「賢王」とまで呼ばれたグリンブルク国王のレグナは民衆の眼前で処刑! 王位継承者のひとりでもあったグリンブルク王国第一王子のフラニも弟のロランをかばって死亡!
たった一夜にして揺るがされてしまったノゼリアの平穏。今再び始まろうとしている第二の「塩鉄大戦」を前に、ウォルホート家の若き当主「セレノア・ウォルホート」が立ち向かっていくのが今作のストーリーだ。長いあらすじにお付き合いいただきありがとう!
心を天秤にかけて
今作独自のシステム、それこそがこの「信念の天秤」。
主人公たちが大陸全土を巻き込む大きな争いを目の前にして奮戦するのが今作のストーリーなのは前述の通り。そのため、プレイヤーは物語の要所要所で歴史を揺るがしてしまうほどの大きな決断を迫られる。
上記の画像は一夜にして制圧されたグリンブルク王国から命からがら脱出した直後の選択肢。グリンブルクの王都を落とした次はもちろん王国筆頭御三家が狙われる。
しかもセレノアたちはグリンブルク王国第二王子の「ロラン」を匿っているため、ここで王家の血を途絶えさせるべく帝国最強の将軍「アヴローラ」がウォルホート領に直接乗り込んでくる!
『FFT』で言ったらウィーグラフがまだレベルの上がり切ってない序盤に自国に乗り込んでくるみたいな感じです。
ここでセレノアたちに提示された選択肢は、「たとえウォルホート領に大きい被害が出たとしてもロラン王子を死守する」ルートか、「一度ロラン王子をエスフロストに差し出すことでアヴローラに帰ってもらう」ルートかの2択。
ストーリー上重大な決断を迫られると言えばやはり先達の『タクティクスオウガ』だ。
「バルマムッサの町」【※1】のあの選択肢はあまりにも有名だろう。
こちらは第4話にてとんでもない重大な決断を迫られる。『タクティクスオウガ』ではここの選択肢でどちらを選ぶかによって今後のストーリーが正反対のルートに分岐してしまうのだ。しかもその決定権はプレイヤーに完全に委ねられている。
※1「バルマムッサの町」
今回はトライアングルストラテジーを紹介する記事のため本文での説明は省いたが、タクティクスオウガでは一向に蜂起する気を見せないバルマムッサの民に対して、「蜂起する気がないなら戦争の大義を作るためにお前の手でバルマムッサの民を虐殺しろ」という凄まじい命令が上司から下される。ここで「分かりました。」か「ふざけるなッ!」のどちらの選択肢を選ぶかによって、目的のためには手段を問わないL(ロウ)ルートか、理想を追い求めるC(カオス)ルートかに分岐する。
しかし、『トライアングルストラテジー』においてはセレノアひとりだけでなく、ウォルホート家に所属する全員の信念……平たく言えば「民意」によって進むべき道を決めていく!
しかし大抵の場合意見は真っ二つに割れており、ここがプレイヤーの腕の見せ所というわけだ。
キャラクター達を説得することである程度は自分が進みたいルートの意見に誘導することが可能になっているため、街に出て情報を集めて「進むべき道に説得力を持たせる有益な情報」を元に交渉を進めよう。
集めた情報によっては第3の選択肢が解禁されたりもするし、もちろんキャラクターによって「感情的な選択肢を選ぶべきか」、「理論的な選択肢を選ぶべきか」、「人道的な選択肢を選ぶべきか」の指向性も変わってくる。この辺は段々と掴めてくる部分ではあるが、「このキャラはこういうノリの選択肢を選べば誘導できるに違いない!」と言った攻略法も徐々に見えてくる。
特にセレノアの親友でもある「ロラン」、セレノアの右腕でもあり長年ウォルホート家に仕えてきた「ベネディクト」、セレノアの許嫁でもある「フレデリカ」の意見は特に重要ッ!
「トライアングルストラテジー三大ヒロイン」とまで呼ばれているこの3名ですが……えっ? 女の子ひとりしか居ないって?
しかしセレノア様は最初から「魅力」のステータスがカンストしているような超絶スパダリなので慎重に熟考を重ねて選択肢を選べば、きっと、きっとロランもベネディクトもフレデリカもあなたに付いてくるはず! ……はずッ!!
語るな、我が友よ
続いては今作の戦闘システムにも触れていこう。 ……と言っても、既に『タクティクスオウガ』や『FFT』を遊んでいる方には「いつものアレ」で済んでしまうのですが……しかしゲームライターが「いつものアレ」の6文字で説明を片付けてはいけないような気がするので一応解説しよう!
というか、この辺に関して「いくらなんでもオリジナリティ無くない?」と突っ込まれてしまった場合私も返す言葉がない!
今作がシミュレーションに「高低差」や「奥行き」の概念を導入した作品の血を受け継いでいるのは前述の通り。もちろん高所から敵を攻撃することでダメージが上乗せされる「高さ補正」の概念はあるし、弓兵ユニットが高所に立てば通常よりも射程が伸びる。
敵ユニットの背後から攻撃すればその分火力は上昇するし、ノックバック攻撃で敵を高所から叩き落せば落下ダメージに加えて、高所アドバンテージを握ることもできる。
だがもちろん独自のシステムも存在する! それがこの「追撃」システム!
「味方と味方で敵ユニットを挟んで攻撃することで、反対側の味方が追撃を行ってくれる」というシンプルなシステムだが、これが想像以上に強力。
先ほど「敵の背後から攻撃すれば火力補正が乗る」と書いた通り、攻撃する側もしくは追撃する側のどちらかが敵の背後に立っていればもちろん火力は上がる。
さらにこの追撃システム、なんと遠距離攻撃の場合でも攻撃を仕掛ける側のユニットの反対に近接ユニットが位置していて、なおかつ敵ユニットと隣接していればちゃっかり追撃を行ってくれる!【※2】
※2「遠距離攻撃からの近接ユニットの追撃」
私の説明が分かりにくいのが問題ではあるのですが、一応補足すると「遠距離ユニットが真横から攻撃した場合」は敵の真後ろに立っている近接ユニットによる追撃は入りません。あくまで上下左右の対応する方向でしか挟撃は発生しない形となっています。加えて、遠距離ユニット同士による追撃は発生しないので、「上であれば下、右であれば左の対応しているユニットによる近接攻撃で追撃が発生するシステム」だと思っていただければ。補足まで長くて申し訳ないです。
次の独自システムはこの「TP」。
まあ平たく言ってしまえば「MP」に相当する概念なのですが……。
この黄色のひし形が「TP」となっており、スキルによって必要な消費量が決められている。たとえばエラドールの自身の移動力を上昇させる「駆け足用意」は必要消費量が1、敵をノックバックさせつつダメージを与える「体当たり」は消費量が2……比較的分かりやすく決められているため、この辺も遊びやすさに繋がっている。
えっ、もう特に紹介する戦闘の新システムはないからすごい細かいとこ紹介してないかって……? いや、いやいやいや、そのようなことは断じてないッ! いや……いや……まあ……うん……努力はしている!
空は凍てついて
ハッキリ言ってしまうが、『トライアングルストラテジー』の戦闘周りにあまり新鮮味はない。だけどその分「遊びやすさ」はしっかりと調整されている。
たとえば上記の画像。これは槍を装備しているため「通常攻撃が2マス先まで届く」という特性を持ったロラン王子が攻撃しているシーンなのだが、ここで2マス先の味方のセレノアを攻撃しても、なんとセレノアにはダメージが入らない!
『タクティクスオウガ』では2マス先の味方まで誤って串刺しにして死んでしまううっかりパターンが往々にしてあるのだが、今作は串刺しにならない!
さらに味方の範囲魔法攻撃に味方を巻き込んでも特にフレンドリーファイアは発生しないため、安心して魔法を繰り出せる。恐らくこの辺も「巻き込む仕様の方が良かった」「意図的に味方のHPを下げる戦術が難しくなった」などのさまざまな意見があるとは思うのだが、私としては遊びやすくてありがたいと感じた。
ここから『トライアングルストラテジー』の遊びやすくなっている要素を紹介しよう。まず第一にキャラロストが発生しない。これは『ファイアーエムブレム』などの少し枠組みが違うSRPGでもよくあるシステムだが、一応今作は戦闘中にユニットが倒されたとしてもキャラ自体がロストすることはない。
まあここに関しても「ロストする方が緊張感が生まれて良かったのに」などの意見があるとは思うのだが、こういうものは基本的に表裏一体だし、あくまで「遊びやすさ」に振り切った今作の姿勢を私は評価したい。
続いてはキャラクターの成長システム。今作のキャラクターはジョブ……もといロールのような物が既に定められており、「このキャラは弓兵、このキャラはタンク」と言ったように手札は全て配られている状態から始まる。
こちらも捉え方によっては「キャラクターの性能を自分の好きに決められる自由度が狭まった」と感じるかもしれないが、私としてはゲーム側でちゃんと戦える手札を揃えてくれることにありがたさを感じた。全然ユニットが育ってなくてゲーム中盤で事実上の詰みとか……嫌でしょう!?
さらに武器、装備のシステムも分かりやすく調整されているッ! 兜・鎧・足に至るまで装備できるシミュレーションRPGは細かいジャンル問わずありますが、今作はその中でも群を抜いて簡単な仕様になっている!
新しい武器を買う必要とかは特になく、最初から装備されている武器を強化していくことで最終的には最強武器となり、強力な「武器奥義」も習得可能! 細かい装備品などを揃える必要もなく、ただレベルを上げるだけで基礎ステータスは問題なく上昇する。(流石にアクセサリーを装備する枠は全ユニット共通で2枠用意されています。)
これらの遊びやすい仕様もあってか、今作は初期ユニットがちゃんと最初から最後まで強い!
流石に「全員最後まで一線級か」と問われると怪しい部分はありますが、たとえばセレノアは純粋に火力の高い近接ユニット、ベネディクトは味方にバフを付与するバッファーユニット、エラドールは敵のヘイトを稼ぐタンクユニット……と最初からキャラごとにロールが割り振られているため、「完全な上位互換キャラ」があまり登場せず最後までちゃんとウォルホート家のみんなを使える!
シミュレーションRPG……というかどのゲーム問わず共通していることかもしれませんが、やはり「設定上(シナリオ上)強いキャラが実際にゲーム内で動かした際にもちゃんと強い」と嬉しい。
その点において今作はとても初期ユニットの設計が練られており、セレノア様はちゃんと最後まで頼れる近接アタッカーだし、エラドールも最後まで頼れる盾役として戦ってくれる。
そして私が今作で最も驚いた……というか普通に「いいの!?」とすら思ってしまった仕様がこの「敗北と撤退」。
なんとこのゲーム……あろうことか敗北したとしてもその戦闘内で得た経験値は直接引き継がれる。ユニットのクラスアップに必要な素材を購入できる戦功ポイントや追加ユニットの加入に必要な信念パラメータも引き継がれ、オマケに戦闘中に使用した回復アイテム類は全て戦闘前の状態に巻き戻る。いいの!?
なので、基本的にこのゲームで「詰まり」が発生することはほとんどない。かなり苦しい戦いを強いられるステージはいくつかあるのだが、敗北したとしてもユニットの経験値は戦闘中に得たものをそのまま引き継ぐため、何度か挑戦を繰り返すうちに敵とのレベル差が埋まり、勝てるようになる!
『トライアングルストラテジー』の難易度は、上から順に「Hard」「Normal」「Easy」「Very Easy」の4つに分かれている。勘のいい方は既にお気付きかもしれないが、恐らく「Normal」が『タクティクスオウガ』や『FFT』準拠の難易度となっているため、シミュレーション未経験の人が触るには結構な歯ごたえだ。
私ですら「Normal」でめっちゃ苦戦した。今作はかなり遊びやすくなってはいるのだが、それでも歯ごたえは十二分にある。
細かい仕様のストレスを軽減しつつも、戦闘時の緊張感はあまり損なわれておらず、とても触りやすくなっていると私は感じた。
汝に我が心を捧げ
さてここからはお楽しみの「強ユニット」紹介コーナーへと移ろう!
これは私の持論なので無視して欲しいのだが……シミュレーションRPGは強すぎるキャラでメチャクチャに暴れている時が一番楽しいッ!
最初に紹介するのはこの「ヒューエット」。
ロラン王子の親衛隊を務める女狩人なのだが……先ほど戦闘システムの辺りで説明した通り、このゲームは基本的に「高所」の方が有利である。だから、シーフなどの身のこなしが軽く移動力のあるキャラはそれだけで「高所を取りやすい」というアドバンテージを握っているのだ。(逆に、先ほど紹介した盾士のエラドールや魔法使い系のキャラは動きが遅く、段差も登れないため高所を取りづらい。)
そしてこのヒューエットは最初から鷹に乗った騎乗状態で出撃しているため……もうお分かりだろう。ヒューエットは大抵の高低差は無視して即座に高所を取ることができる!
さらにヒューエットの武器は「弓」であるため、高所補正が乗って平地よりも広い射程で攻撃することが可能だ。「近接ユニットが攻撃できない高所から一方的に攻撃できる」と考えただけで相当強いのだが、さらにヒューエットが所持している「暗闇の矢」「影縫い矢」が強力!
「暗闇の矢」は確率で相手に「暗闇」の状態異常を付与して攻撃の命中率を下げられるし、「影縫い矢」で「足止め」の状態異常を付与すれば敵は2ターンその位置から行動不能になる。誰よりも早く高所を取った上で状態異常まで付与できるこのヒューエットの強さに助けられた方も多いのではないだろうか!?
めっちゃ簡単に言うならこのゲームはほぼ最初から状態異常撒ける弓カノープス【※3】が加入してます。ヤバない?
※3「弓カノープス」
タクティクスオウガにて序盤から加入する俺たちのカノープス。本来彼のデフォルト武器は「槍」なのだが、有翼である彼の機動力を利用するためにあえて弓を装備させる戦術がかなり強力だった。ヒューエットはカノープスのバルタン成分が「鷹」と「人間」に分離したキャラと言っても過言ではないのかもしれない。
続いて紹介するキャラは「アンナ」。
既にこのゲームをプレイしている人には説明不要だと思うのだが……一体彼女のどこが強いのかと問われると、「全て」としか言いようがない。
昨年配信された体験版の時点で「えっ、なんかこの子だけ異様に強くない……?」と薄々気付いてはいたのだが、特に調整されることもなく製品版に参戦!
アンナの強いところを単刀直入に言うと「2回行動」である。特にお膳立てとか下準備とかも必要なく常時2回行動。スパロボで言ったらコイツだけずっと覚醒かかってます。スパロボWのガウルンかよ……
シミュレーション慣れしている人は「常時2回行動」という言葉だけでその強さが伝わると思うのだが……先ほど紹介した「追撃」システムと噛み合うことで恐ろしい戦術を生む!
そう、位置取りさえ上手くいけば「アンナのダブルアクションの2回行動に追撃が発生して計4回攻撃」という驚異の連続攻撃が発生する!
さらにこれをベネディクトが所有している「味方単体が次のターンに2回行動できるようにする」という効果の「連続で行くぞッ…!」と合わせることによって、ダブルアクションの2回行動+ベネディクトの2回行動+追撃で計8回攻撃が成立してしまうッ!!
というかこんなものはまだアンナの強さの序の口でしかない。なんていうか彼女は持ってるアビリティが全部強い。
「ステルス」という技があるのだが、これは「2ターンの間、敵から身を隠す」というその効果の通り、2ターンの間ステルス状態となり全ての敵から狙われなくなる。
このステルス状態を駆使して身を隠したまま敵の後方でコソコソ回復してる医療兵を始末しに行くこともできるし、とりあえず適当に突っ込ませて味方の前線が上がってきたらステルスを解除して前線の近接ユニットと挟み撃ちにしてもいい。
少しレベルを上げれば習得する「スリーピーダガー」を使えば敵を睡眠状態にすることもできる。もちろん2回行動なので、強力な魔法を撃ってくる魔法兵にステルス状態で近付いたままスリーピーダガーで無力化、その次の行動で再度ステルスを撃って身を隠す……などという卑劣な戦法も可能。な、なんなんだこのキャラは!?
その他のアンナの射程の短さをカバーしつつ毒を付与する「ポイズンダガー(射程1~2)」も、TPを1消費することで移動後にさらに1マス分移動する「アン・ウォール」も、ステルス状態で攻撃すれば火力に補正がかかるパッシブの「サプライアタック」も、何もかも強い。「このゲームの序盤をアンナ抜きで攻略しろ」と言われたらだいぶしんどい!
しかし『トライアングルストラテジー』が恐ろしいのは、これからまだまだ壊れキャラが登場するところだ。実際、私は終盤になるとこれほど強いヒューエットもアンナも使わなくなっていた。
ヒューエットもアンナも超えてくるそのキャラの名は「エザナ」。
これは「挿話」という本筋のストーリーとはあまり関係ない寄り道クエストで加入するキャラなのですが、まあ……もうお察しの通り「1ターンの間祈祷し、敵全員に雷属性の魔法ダメージを与え、確率で1ターンの麻痺を付与する」というとんでもない技を持っている。なんでその辺の祈祷師が竜言語魔法【※4】覚えてんだよ!?
※4「竜言語魔法」
タクティクスオウガのエンドコンテンツ「死者の宮殿」にて入手できるゲームを崩壊させかねない性能の超強力な魔法群。味方のアンデッドを人間に転生させて最終的には全ステータス999のユニットを生み出せる「リーンカーネイト」やユニットを武器化する「スナップドラゴン」などの凶悪な魔法が揃っており、エザナの「雷神降臨の儀式」は「アニヒレーション」や「テンペスト」に近い性能。
もう見ての通りの効果です。普通に威力は高いし行動不能の麻痺も付与する雷が敵の全ユニットに飛んでいきます。
しかしこの「雷神降臨の儀」、流石に何も欠点がない完全無欠の敵全体攻撃という訳ではなく「命中率が低い」「素の状態で撃つと思ったほど火力が出ない」「そもそも雷神降臨の儀がTPを5つフルで消費するため燃費が最悪」などの問題が何点か出てくる。
そこをカバーするのが他の挿話加入キャラたち。
同じく挿話で加入する「ユリオ」と「メディナ」がサポーターとしてかなり優秀!
ユリオはTPの操作に特化したキャラとなっており、味方単体にTPを1つ付与して攻撃力を上昇させる「次で決めろ」、攻撃力は上がらない代わりに射程が長く少し離れたユニットにTPを2つ付与する「決めてこい」、果てには自分の所持しているTPを全て味方に託すため最大TP5チャージが可能な「後は任せた」まで習得する!
メディナは薬師……要はヒーラーに近いキャラなのですが、レベルを上げると習得する「TP薬学」というパッシブが「HP回復アイテムを使う時対象のTPを1増加させる」効果となっており、アイテムを2回発動する「ダブルアイテム」と組み合わせるだけで、エザナに実質TP2チャージを回すことができる! オマケに「命中強化のスパイス」をエザナに投げておくことで命中率まである程度カバーできる。
ここからは火力の問題となってくるのだが、今作の雷属性魔法はポケモンよろしく「天候が雨の時に威力が上昇する」という仕様になっている。
そしてエザナは……祈祷師なので自分で天候を雨にできる。
おいおいおい……天候パ前提のキャラが自分で天候を始動させるのは禁じ手だろ……
このエザナ・ユリオ・メディナのTPぶん回し雷神チームの最初の動きを軽く説明すると、最も行動が早いメディナが範囲丸薬で3人にTPを1ずつ付与し、ユリオが「次で決めろ」をエザナに使用してTPを1上昇させた上で火力バフを盛り、エザナの行動順が回ってきたら後は「雨乞の儀式」を使用するだけで準備完了。
「雨乞の儀式」の消費TP自体は武器を強化しておけばたったの「1」で済むため、あとはもうひたすら雷神降臨の儀を連打するだけ。雷神自体はTPを5消費するのだが、ユリオが所持しているTPを全て付与する「後は任せた」のタイミングとメディナの行動を上手く合わせればひたすら雷神降臨の儀を連打するだけで敵を全滅させることも不可能ではないッ!!
アンナとヒューエットが終盤スタメンから外れる理由、薄々気付いてきたでしょう……?
続いて紹介するのはこの「デシマル」。
えっ、もう流石に読み疲れてきたって……? いや、まだ私としては折り返し地点に行ったか行ってないかなんですが……。今文字数カウントしたらここまでで11000文字ぐらいらしいです。まだ折り返し地点です。耐えてください。
「範囲内の現在HPが〇の倍数の敵全員に無属性の魔法ダメージを与える」という見覚えがありすぎる性能の技を持っているかわいいロボットですが、まあ見てもらった方が手っ取り早いでしょう。
いやこれ算術士【※5】やんけ!!!
なんかもう戦闘システムの時点でかなり開き直ってるようなゲームですが、もはやここまで開き直ってると逆に笑えてくる。
※5「算術士」
FFTにて猛威を奮ったジョブのひとつ。かなり複雑なジョブではあるのですが、全ユニットの「チャージタイム」「レベル」「exp」「ハイト」のステータスを参照し、「素数」「5」「4」「3」の倍数を指定して魔法を発動するジョブ。たとえば「レベル」「5」「サンダガ」を選択した場合は、敵味方問わずレベルが5、10、15、20……と5の倍数になっているユニットの全てにサンダガが発動する。これを上手く利用することで算術士のターンが回ってくる度に敵全体に最強の白魔法ホーリーが降り注ぐ「算術ホーリー」がかなり有名な戦術。
いやもうこればっかりは、デシマルばっかりは本当に説明のしようがないユニットなのですが、とにかく「敵のHPの倍数や敵の高さを参照して広範囲に高威力魔法をばら撒くユニット」としか言いようがないッ! 広範囲! 高威力! 算術! もう十二分に強さが伝わるはずッ!!
一応、パッシブアビリティの「カラクリ仕掛け」が「ターンの開始時にTPが増加しない」という少々厄介なデメリットを抱えているのですが、これに関しても先ほどのメディナやユリオなどのTPサポーターと組み合わせることでカバーできますし、何よりもうひとつのパッシブアビリティの「ウェイトチャージ」が「1ターン何もせず待機するとTPが3増加する」という効果なため、別に介護役が居なくてもそこまで困ることはない。
いや、なんでこいつ自分の欠点を自分でカバーしてるんだ……?
もちろん本筋とはあまり関係ない挿話加入キャラにもいくつか専用ストーリーが用意されており、デシマルはなんとアンナとの心温まるストーリーが展開される。「萌」ですね……。
続いてのキャラは「コハク」。
かわいい。声優もリアル子役の方が担当されているそうです。
しかしこのキャラ、具体的にどのジョブに該当するのかという説明がかなり難しく……しいて言えば「時魔導士」と言ったところでしょうか? とにかくサポーター最強の一角を担うユニットです。
コハクくんに関しては記述することが多いので早速アビリティの解説に移りますが、まず最初の「~空間巻戻の言葉~」。これは「選択したユニットの位置とHP、および全ての状態異常とステータス変化を術者の1ターン前の時点まで戻す」という効果になっており……まあ見せた方が早いでしょう。
たとえば高所に立っていたコハクくんが盾兵のノックバック攻撃で突き落とされた上にダメージを受けたとしましょう。次にコハクくんのターンが回ってきた際にこの「~空間巻戻の言葉~」を発動させればコハクくんの状態は1ターン前に戻るのでHPが全回復します。
しかも「ユニットの位置」も1ターン前に戻るので突き落とされる前の高所に戻ります。これが効果の届く範囲内であれば全てのユニットに撃てます。えっ、何この身も蓋もないキャラ……。
続いての技は「~空間歪曲の言葉~」。「味方単体を5マス以内の任意の位置に移動する」という効果になっており、要は味方をワープさせることができます。
上記の画像のように本来であれば移動力の低いエザナを強引に敵陣地に突っ込ませる事もできます。しかも上記の船上ステージは本来であれば縄を伝って敵の船に乗り込むステージなのですが、コハクくんのワープは縄とか無視して普通に船から船に移動させます。当然ですが高低差も無視します。どんだけ機動力の無いユニットでもワープはそんなの関係ないので重装備の盾兵だろうがトロい魔法兵だろうが関係なく高所までキャリーします。
え、このユニットなんなん?
そして大目玉がこの「~時間停止の言葉~」。もう技名も書いてあることも恐ろしいので書き上げるのを躊躇するレベルなのですが、「自身以外に2ターンの停止を付与し、一切の行動を封じてさらに別のコマンドを実行できる。ただし移動は1度しか行えない」という効果です。は? 何この効果???
簡単に言うと「コハク以外のユニットを2ターンの間全て停止させて、コハクだけはその間動ける」というアビリティになっています。ちなみにこれは確定で「全ユニット」です。ラスボスにすら普通に入ります。おかしいだろ!
しかし、「2ターン時間を停止させてコハクはその間動ける」という効果はむしろオマケに過ぎず、この「2ターンの時間停止によって起きる副次的効果」の方が真に恐ろしい部分なのです。
『トライアングルストラテジー』の絶対的な原則として、「TPは各ユニットのターン開始時に1増加する」というものがあります。なので、先ほど紹介した雷神降臨の儀でTPを5消費するエザナや、ターンの開始時にTPが増加しないデシマルはできるだけ他のユニットで消費TPの多さをサポートしてあげるのが望ましいのです。
ただ、この時間停止は「2ターンの停止自体は付与される」ものの、「ターン開始時のTP1増加」は普通に処理として行われます。だからコハクが時間停止したら全員動き始めるタイミングには既にTPがフルチャージされたエザナやデシマルが動き始めるのですッ!
なので、「あー!ヤバい!だいぶ追い詰められてる!急に全ユニットにTPが2つ欲しい!!」と思った時はとりあえずコハクくんで時間停止してしまえば盤面がひっくり返ります。(一応、敵もちゃんとTPが2つ増加するのですがコハクくんが参戦する終盤付近ではもはや理不尽を押し付け合うゲームと化すためそんなにデメリットでもない気がします)
えっ、何かこのゲームの根本を揺るがしてない?
紹介した技以外にも時間差ダメージを与える爆弾を敵に付与する「~時間追撃の言葉~」や、自身と選択したユニットの位置を入れ替える「~空間入替の言葉~」などの強力な技が揃っています。
それどころか、最終的には「敵味方全員の位置、HP、TPおよび全ての状態異常とステータス変化を術者の1ターン前の時点まで戻す」という事実上の1ターン分のリスタートを可能にする「~世界巻戻の言葉~」すら習得する! 当然のように天刻の拍動すなーっ!!
しかもこのコハクくん、専用ストーリーにおいてもやたらと優遇されており、敵国でもある聖ハイサンド大教国の七聖人「ライラ・ビザークラフト」との関係が示唆される。
もちろん対ライラ専用セリフもちゃんと用意されている。
ふたりの立ち絵を見比べればまあ大体は分かると思うんですが……まあそういうことですね。ちなみにコハクくんは加入の前提としてBenefit1600というかなり高めのステータスを要求してくるため、このゲーム破壊性能もメインキャラばりの立ち位置も割と納得できる。いや納得できるか?
続いて紹介するキャラは「マクスウェル」。
彼はかなり本筋と関係のあるキャラ……というかゲーム序盤において生き残りの第二王子ロランを始末せんと襲い掛かってきたエスフロスト公国最強の将軍アヴローラに一騎打ちを挑んだ王国最強の「槍聖」と呼ばれた男。
ちなみにアヴローラに負けた際海に落下し、門田ヒロミばりのどう見ても生きてるニチアサ水落を見せてくれる。そして生きていたのでしれっと加入!
王国最強の「槍聖」、CV子安武人、何故か仮面を付けている……ともはや過積載レベルの設定を見て、「あっ、多分コイツオルランドゥ【※6】枠だ……」と気付いた方も多いのでは?
その実際の性能は……割と落ち着いたオルランドゥだった。いや多分「オルランドゥ」という単語を使うと過度に期待してしまう方が多いと思うのだが、オルランドゥほどではないにせよ近接アタッカーとしては最強クラスの性能だ!
※6「シドルファス・オルランドゥ」
文句なしのFFT最強キャラ。全てが強い。シミュレーションどころかゲームの歴史に「バランスブレイカーの代表例」として名を残しているのではないかと思うレベルで強い。オルランドゥが剣を振れば兵士は消し炭となり、嵐は吹き荒び、山は大噴火を起こし、海は割れる。FF14にゲスト出演を果たした際には、「バランスブレイク」というあまりに身も蓋もない名前の奥義を放ってくる。
エザナ、デシマル、コハクの3名が「もはやゲームのルールを崩壊させかねない強さ」だったのに対し、マクスウェルはただただ真面目に強い。
「この技おかしくない?」と思う異様な性能の技はないのだが、1マス先の相手に高火力を叩き出す「トロワーズ」、3マス先の敵に攻撃を浴びせて自身は4マス先に移動する「キャトラーゼ」、ある程度の高低差を無視して高射程の単体攻撃を繰り出す「サンクァンヌ」など、とにかく「かゆいところに手が届く」技が多い。
特に強力なのはパッシブの「起死回生」。まさに死んだと思ったら帰ってきたマクスウェルを象徴するスキルと言っても過言ではなく、その名の通り一度戦闘不能になってもHP全回復で復活するッ!
さらにはあのアヴローラ戦で見せた大技の「カトルヴァンディス」が武器奥義として使用可能。ただこの技、「ジャンプした後の着地点を中心に範囲攻撃を繰り出すため、着地点は空いていなくてはならない(つまり、着地点に敵ユニットが居た場合は発動出来ない)」という少し独特な仕様となっており、意外と運用が難しい。
確かにめちゃくちゃ強いしカッコいいユニットではあるのだが、全体的に「むちゃくちゃすぎる強さにはしない」という方向性を感じる「良調整ユニット」と言えるだろう。
「マクスウェルがむちゃくちゃすぎる強さではない良調整ユニット」という話をした後に紹介するキャラでないことは重々承知しているのですが、最後に紹介するのはこの「アーチボルト」。有識者の方には「アロセール」【※7】と言えばもう一言で全てが伝わるでしょう。
※7「アロセール」
タクティクスオウガにて序盤に加入する弓兵のユニット。先ほど紹介したオルランドゥほどのバランスブレイカーではないのだが、やたらと高い攻撃力を誇る弓兵として大抵のプレイヤーはお世話になるであろう強ユニット。アーチボルトの「万里矢」のような強力なアビリティは持っていないのだが、「ウィングリング」などのアクセサリーで移動力を増強することでアーチボルトにも匹敵する超射程・高火力を見せる。
「セレノアたちがいつも詰所で買い物をしていたよろず屋のジジイは実は塩鉄大戦を弓ひとつで生き抜いた伝説の強者だった」とかいうあまりにも美味しい設定で加入してくる時点でなんかもう薄々察してしまうのですが、恐らくこのアーチボルトは弓兵最強ユニットだと思われます。
アーチボルトの強さはとにかく分かりやすく、ただただ「万里矢」がヤバい。威力270、射程1~12、障害物に遮蔽されない弓矢を放ち敵単体に物理ダメージを与える……と、テキストではあまりピンとこない方も多いと思うので、とりあえず実際に万里矢が炸裂していいるその瞬間をお見せしよう。
なんなんすかねこれ?
プロデューサーさんはなんだと思います?
そう、このアーチボルトの「万里矢」はその名の通り万里を駆ける弓矢。その驚異の「射程1~12」はサイズが小さめのマップであれば端から端まで届く超射程!
このゲームにおいて「高低差」のアドバンテージは絶対。そのため先ほど紹介した「高所が取れる弓兵」のヒューエットが強力なユニットだったのだが……「万里矢」の有効射程高度は「-15~+15」とかいうほとんど「高低差無視します」と書いてあるに等しいテキストとなっている。
なので、アーチボルトにターンが回って万里矢を発動できる分のTPが溜まっていれば敵がどこに居ようが即座にレールガンみたいな威力の弓矢が飛んできて敵が消し炭となる。
シミュレーション全般として、やはり「後方で待機している魔法兵や医療兵をどのように処理して戦局を優位に進めるか」は相当戦略のカギを握るポイントではあるのだが、アーチボルトは初期地点に居ようが万里矢をぶっ放してしまえば後方の医療兵も一撃で始末してしまう。なんか逆に塩試合をしている気分にすらなってくる。
そもそも別に万里矢を使わずとも基礎ステータスがそこそこ高いため、普通に弓兵としても強い。射程は短く遮蔽物には対応していないが敵の防御力を無視してエグいダメージを与える「貫通矢」、自身の前方に扇状の範囲攻撃を行う弓兵にあるまじき性能の「扇状矢」など、別に万里矢が使えなかったとしても普通に強いアビリティが揃っている。伝説の強者だからってやっていいことと悪いことがあるだろ!
嘆きに心が動くならば
さて……この長ったらしい記事もようやく終盤に差し掛かってきましたが、私が思う『トライアングルストラテジー』の魅力のひとつに、「グリンブルク・エスフロスト・ハイサンドの3つの国のどれも正しいしどれも間違っている」という点があると思っています。
セレノアはノゼリアの各地で戦いや選択を突き付けられながらも、グリンブルク王国・エスフロスト公国・聖ハイサンド大教国の真実を目の当たりにしていく。
国是や気風として「自由」を掲げ、人種や階級を問わず実力のある者が上へと登り詰めることができるエスフロスト公国。一見素敵な国にも見えるが、総帥のグスタドルフは独裁者じみており、何より実力を持たない人間に平等は約束されていない。
エスフロストとは反対に全ての民に「塩の女神の元の平等」を約束している聖ハイサンド大教国。しかしその「塩は女神から与えられるもの」という「女神教」そのものが偽りに過ぎず、塩湖では「ローゼル族」が大罪人として不当な扱いを受けている。学問においても「自由」は約束されていない。
主人公のセレノア陣営も属していたグリンブルク王国。賢王レグナの元、三国の中で最もマトモな政治が行われていたかのようにも見えたのだが、その実国内の政治においては「王党派」と呼ばれる貴族が幅を利かせており、昔から続く支配階級の古い因習に縛られ続ける国でもあった。
まさに三者三様。どの国にも良いところがあるし、悪いところがある。どの国にも正義があって、汚い部分がある。ちなみに私はエスフロストが一番好きです。
そんな「ノゼリア」という大地の全てが見えてきたゲーム終盤の第17話「嘆きに心が動くならば」にて、セレノアもといプレイヤーはこのゲーム史上最大の選択を迫られるッ!
正直私も序盤は「なんかパンチが弱いんだよなあ……」と思っていたのですが、『トライアングルストラテジー』はゲーム後半から怒涛の追い上げを見せるッ! その盛り上がりがピークに達するのがこの17話ッ!!
これまで幾度となく迫られてきたその選択が、ついに「エンディングを決める」史上最大の選択肢へと変貌するッ!
第17話にて突きつけられるその選択は「ハイサンドの塩湖に囚われているローゼル族を解放し、ノゼリアとは別の新天地『セントラリア』を求めて旅に出る」フレデリカルートと、「ノゼリアのあまねく民に平等を約束し、仇敵でもあるグスタドルフを討ってハイサンドに下る」ロランルートと、「今起こらんとしている第二次塩鉄大戦を生き残りウォルホート家を存続させるべく、王国を滅ぼしたエスフロストと一時的に手を組みハイサンドを打倒する」ベネディクトルートの3つとなるッ!!
このトライアングルストラテジー三大ヒロインの誰を選ぶかによって、エンディングの内容が大きく分岐するッ! 『トライアングルストラテジー』は「終盤にバルマムッサがやってくるSRPG」と言っても過言ではないッ!!
ここに関しては、もう「貴方が正しいと感じた道を選んでくれッ!」としか言いようがないッ!
政略結婚ではあったが、共に戦いを続ける中で信頼と愛情を育んだ正妻のフレデリカかッ!?
それとも幼い頃から友人として過ごしてきた敬愛するロラン王子かッ!? それとも長年ウォルホート家に仕え続け、父が残した名家を存続させるために全てを懸けるベネディクトかッ!?
どうしてもと言うならば、フレデリカルートのなんとしてでもセレノアを止めようとするベネディクトのウォルホート家に懸ける熱い思いが凄まじいので、ぜひ好きなルートを攻略した後にでもフレデリカルートに進んでみてほしい。
これまでも散々書いた通り、『トライアングルストラテジー』は令和に今再び「クォータービューSRPG」をやるにあたってとても遊びやすい調整が重ねられており、未経験者の方でも十分に楽しめる内容となっている。
同時に『タクティクスオウガ』や『FFT』を遊んでいた方でも苦戦する難易度になっているし、なによりストーリーは後半からの追い上げがすごい! 序盤で「あんまり面白くないな……」と思って詰んでしまっている方も、ぜひもう一度だけ今作を手に取って第17話まで進めてほしい!
流石に「超えた」とまで明言してしまうのは色々な意味で憚られるところはあるのだが、自分は間違いなくこの2作にも負けないタイトルとなっていると感じた。
『トライアングルストラテジー』はNintendo Switchにて好評発売中!
初めての方も、あの時ハマっていた方も、きっと楽しめるタイトルになっているッ!
※終わったように見えますが、実はまだこの記事は終わっていません。しかし、ここから先は2周目以降の「真エンディング」に踏み込んだ内容となっているため、まだ1周目をプレイしている途中だったり、真エンディングに到達していない方は流石にここで引き返すことをオススメします。しかし、私としてはこのゲームは真エンディングまで見て完結するゲームだと感じているので、ここまで読んでまだ購入するかどうかを迷っていて、かつ真エンディングのネタバレが気にならない方は読み進めても問題ありません。なんとここまでで20000文字を突破しているのですが、もうしばしお付き合いいただければ幸いです。
鷹は自由に
第17話にてエンディングを左右する大きいルート分岐が発生する……のは前述の通り。そう、『トライアングルストラテジー』は周回要素が存在する。
ユニットや所持品などを引き継いだまま2周目に突入し、1周目では到底入れなかった「真のエンディング」に到達することができる!
2周目以降はキャラクターとの会話で「Benefit」「Moral」「Freedom」のどの信念パラメータが上昇するのかがあらかじめ表示されていたり、未出現の加入キャラがどこまで信念パラメータを上昇させれば仲間に加わるのかなどの細かいステータスがかなり開示される。
真エンディングの解放条件は「信念の天秤を使う際に特定の選択肢を選ぶ」となっており、2周目以降のパラメータ開示によって、より真エンドに向かいやすくなっている。こういう細かい部分にちゃんと気が利いてるのも『トライアングルストラテジー』の良さだ。
【更新 2022/3/25 20:10】記事初版にて真エンディングの条件に「挿話加入のキャラを全てコンプ」をあわせて記載していましたが、スクウェア・エニックス側から「(該当の項目は)解放条件に含まれない」とのご指摘をいただきました。該当部分を訂正のうえお詫び申し上げます。
そして真エンディングの解放は、先ほどフレデリカとロランとベネディクトのいずれかを選択しなければならなかった運命の第17話にて確認できる。
今作の主人公「セレノア・ウォルホート」はもちろんプレイヤーの選択によって意見は変わるのだが、それと同時に「セレノア・ウォルホート」というキャラクター性がしっかりと確立されている。
先ほど「全編通してセレノア様のカッコ良さはガチ」と書いた通り、王子と公女と執事の3人に同時に迫られるんだからそれはそれはもう魅力パラメータがカンストしていると言っても過言ではないのだろう。
そして真エンディングは、フレデリカと共にローゼル族を解放する道でもなく、ロランと共にグスタドルフへの復讐を果たす道でもなく、ベネディクトと共にウォルホート家の当主としてノゼリアの頂点を目指す道でもないッ!
「セレノア自身が選ぶ選択」こそが真のエンディングへと繋がる道なのだッ!!
しかしそれはセレノアの利己的な願いなどではないッ! フレデリカの掲げるローゼル族の解放も、ロランが願うノゼリアの平穏も、ベネディクトが画策するノゼリアの統一も、その3人の願いの全てを叶えるルートなのだッ!! さっすが~、セレノア様は話が分かるッ!
そして明かされる今作独自のシステムでもある「信念の天秤」の本当の存在意義。
「信念の天秤」は仲間たちにその信念を問い、進むべき道を定める道具だった。しかしその傾いた天秤の結果に従うのではなく、仲間たちの信念を等しく受け止め、天秤を傾かせない道を作り出すことこそが真の役割。
そして仲間の先頭に立ち、その道を切り開くことこそがウォルホート家当主としてセレノアが胸に刻むべき「信念」なのだッ!!
恐らく1周目をまだプレイしたままの状態でここまで読んでいる方はいないであろう前提で書いてしまうが、1周目で選択できるルートはどれもややビター気味……完全なハッピーエンドとは言えない終幕を迎える。これは決してビターエンドを否定している訳でもなく、『タクティクスオウガ』や『FFT』にもややビターな終わりが用意されていたため、むしろ大歓迎な方も居るだろう。
しかしこのゲームの真エンディングは、正真正銘の完全無欠のハッピーエンドへと向かい、「最高の終わり」を見つける真エンディングだ!
真エンディングルートでは序盤最大の敵でもあったエスフロスト最強の将軍「アヴローラ」が満を持して加入! もちろんアホほど強い。
そして真エンディングでは軍をフレデリカ隊・ロラン隊・ベネディクト隊の3つに分けて各地で同時に作戦を展開するッ! 戦力が分散する分難易度も跳ね上がるのだが、ここまで進めたプレイヤーなら勝てぬ戦ではないッ!! 本来は袂を分かつはずだった3人の仲間と協力し、共にノゼリアの未来を掴み取るのだッ!!!
正直私は、ニンテンドーダイレクトでこのゲームが出てきた時に「オクトパストラベラー以上に再生産気味なテーマで来たな……」とすら思っていた。
しかし今作は過去作の踏襲や模倣に留まらず、「どちらか一方の選択ではなく全ての問題を解決する本当の道を見つけるべき」という道を提示することで、過去作を超えたその先に向かう意志を見せつけるゲームだと感じた。
「HD-2D」という枠組みそのものが懐古だと感じている人も居るだろう。しかし『トライアングルストラテジー』は過去作へのリスペクトだけでなく、過去作を超えようとする作り手の熱量がひしひしと伝わってくる。私はこのゲームに対し、どちらが上かではなく、「何をどうやってもタクティクスオウガやFFTと比べられるこのテーマにおいてよくぞここまでやり切った」と最大限の賛辞を送りたい。
どうも私は「先達を超えてやる」という挑戦の意志を見せるゲームに対して甘くなってしまうようだ。
そういう私の贔屓目がないと言えば嘘になってしまうが、HD-2Dで古き良き作品を現代に復活させる「懐かしさ」と、過去作にはなかった「新たな道」を提示するこの伝統と革新を両立した温故知新の姿勢と、それを実現させた繊細かつ大胆な作り込みは間違いなく『タクティクスオウガ』や『FFT』にも絶対に負けてないと、私は強く思う。
どうか今後もこのHD-2Dによる新たな表現や新たな技術が発展していくことを願っている。改めて、『トライアングルストラテジー』は最高に面白いゲームだった!
今再びこのシミュレーションRPGを遊ばせてくれて、本当にありがとう!!