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架空のフランス革命下で機械人形として戦うアクションRPG『スチールライジング』はゲームが苦手でも楽しめる「ソウルライク」だった

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 9月8日にPS5、Xbox Series X|S、PC向けに海外向けの発売を予定しているアクションRPG『スチールライジング』。本作は史実をベースにフィクションを交えた「歴史改変SF」となっている。大機械革命により機械人形が量産されるフランスを舞台に、機械人形の乙女「アイギス」を主人公に架空のフランス革命を描くという、ケレン味に満ちた設定が魅力だ。

 先行して公開されたトレーラーでは、18世紀フランスの建築や衣装から伺える耽美な美意識と、無骨な機械の造形美が同居する「架空のフランス革命下」を本編に先立って視覚的に表現しており、その世界観が多くの注目を集めた。

 また、4月20日に公開されたゲームプレイトレーラーにより、本作は『ソウル』シリーズをはじめとするフロムソフトウェアのRPGの影響を受け「ソウルライク」の作品として認知されている。「ソウルライク」と言えば原作をオマージュした無骨なダークファンタジー作品が多いが、本作のアートワークや世界観から伺える「独自の要素を実装する姿勢」も注目される理由のひとつだろう。

『スチールライジング』先行プレイレポート_01

 今回の先行プレイでは、ゲーム前半に位置するステージ1「森林」ステージ3「シテ島」のふたつのステージをプレイする機会を得た。プレイ時間は計40分であり、触れられた要素は本作の一端に過ぎないが、先行プレイでは「ソウルライク」のスタイルをもとに「架空の18世紀フランス」を表現すべくチューニングされている点が印象に残った。

 そのため、「ソウルライク」が苦手でも遊べるゲームデザインやシステムが実装されており、その気になれば主人公を無敵にしてゲームをプレイできる。これにより、18世紀フランスのファッションや現存しない建築を観光するようにも楽しめた。

 本記事は先行プレイで体験できたステージ1「森林」ステージ3「シテ島」のプレイレポートとして、アクションの傾向や特徴、実際に触れることができた「18世紀フランス」らしいアートワークにフォーカスして紹介する。

文/りつこ


「架空のフランス革命下」でルイ16世の機械人形たちと戦う『スチールライジング』

 まず、本作の基本情報をおさらいしよう。

 前述の通り、本作の舞台はフランス革命下である1789年のパリ。歴史改変SFの形式をとる本作においては、ルイ16世は“時計仕掛けの暴君”という異名を持ち、自らが率いる機械人形の軍勢を解き放つことで革命を弾圧した。

 本作の主人公である最高傑作の機械人形「アイギス」は、自らが仕えるマリーアントワネットより命を受け、民衆を救う戦いに身を投じることとなる。

 「機械人形がはびこる架空のフランス革命下」と聞けば、つい何でもありのファンタジー作品を想起するが、あくまでも史実をベースに空想の設定をダイナミックに盛り込む作風が特徴となる。

 また、本作は物語に倣って各マップを順に攻略する形式となっているが、一度進行すれば後戻りができない形式ではなく、ボスを倒したステージに「馬車」を駆使して再び訪れることが可能だ。攻略済みのマップでは未取得のアイテムを獲得したり、サイドクエストを楽しめるため、プレイヤーの好みに合わせたペースでゲームを楽しめる。

ジャンプによる浮遊感。重い動作の「余白」を活かしたソウルライク

 『スチールライジング』は事前情報から「ソウルライク」として認知されているように、敵対する機械人形たちは簡単にひるまないものが多く、一撃のダメージも高い。くわえて主人公の攻撃はそれぞれ予備動作後スキが用意され、敵に突っ込んで連打したところで容易に敗北してしまうリアルな「重いモーション」が特徴ののアクションだ。

 それゆえにプレイヤーは相手の性質や動作から慎重に攻撃のタイミングを伺う必要があり、まさにフロム・ソフトウェアのアクションRPGを想起させる。本作の基本動作には一定の移動距離とスピード感を伴ったステップが用意されており、『ソウル』シリーズ以上に『ブラッドボーン』を踏襲した設計となっている。

『スチールライジング』先行プレイレポート_01

 とはいえ、戦闘中は「高速で切り替わる状況を判断する」という印象はあまりなく、一定の余裕があるアクションの中で「相手の動きを解釈して戦術を練る」ことに重きが置かれている。

 たとえば基本動作として用意されているジャンプは高い飛距離を持っており、『SEKIRO』『エルデンリング』以上に滞空時間が長い。この点により、敵との間合いを作りなおす動作として活用できた。このほか、何発か連発可能で移動距離のあるステップや、氷結属性を持つ「シールドマスケット」による状態異常の付与など、戦闘のペースを調整する手段が多様だ。

 くわえて、前述のとおり各モーションには予備動作や後スキが設定されているが、敵キャラクターのモーションも共通するスタイルでデザインされている。この自身と敵の動作における「余白」により、本作では速すぎず、されど気を抜けないテンポのアクションとなっていた。

 本作には7種以上の武器が用意されており、今回は舞うように戦える、ソウルライクらしい無骨なモーションのハンマー、長めのリーチで戦えるチェーン二刀流武器を使用する機会を得た。先行プレイではステージと相性の良い武器が予め用意されていたが、正式版では敵キャラクターの性質を踏まえて「適切な武器をセレクトする」というプロセスが重要になる。

 また、アクションにおいて注目したいポイントとして、アイギスが踊り子であったという設定を活かした「バレエ」がモチーフの優雅なモーションデザインが挙げられる。

 なかでも、先行プレイで使用した二刀流武器「ファルシオンとサーベル」の特殊攻撃はゆっくりと回転しながら切りつけるモーションとなっており、バレエのピルエットを想起させる優雅さと強力なダメージを携えていた。

 何より余白があるアクションのリズムと、戦闘モーションの優雅さの愛称は好ましく、18世紀フランスの美術や建築を引用する本作にマッチしているだろう。

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 今回の先行プレイでは確認できなかったが、トレーラーで紹介されているように「空中ダッシュ」やグラップリングフックを活用した「ワイヤーアクション」も実装されるため、随所で滞空し立ち回るという選択肢はひとつ本作のアクションの特徴となりそうだ。

育成で調整できる難易度設定。本当に困ったら「無敵」にもなれるアシストモード

 本作に惹かれる読者において、世界観やアートワーク、設定に魅力を感じているものの、「ソウルライク」というハードルを感じている読者もいるのではないだろうか。

 かくいう筆者もフロムソフトウェアのアクションRPGや「ソウルライク」のゲームはけっして得意ではないのだが、先行プレイではプレイヤーごとに難易度を調整するデザイン救済措置が確認でき、適度な緊張感でゲームをプレイできた。

 プレイヤーが難易度を調整できる要素として挙げられるのは、さまざまな育成および強化要素と、本当に苦手なユーザーも安心してプレイ可能な機能「アシストモード」が挙げられる。

 育成要素そのものは本作独自のシステムではないが、本作では「ソウルライク」の作品らしくレベルアップするたびに任意のステータスを強化でき、装備や武器の強化も行える。くわえて、「アイギス」の背骨には強化アイテム「モジュール」を装備するスロットが4つ搭載されており、息詰まればこれらを利用して自身を強化できる。さらに、サイドクエストが多数用意されているため、レベリングは同じステージを地道に周回せずとも行えるだろう。

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(画像は Steelrising – 5 Minute Gameplay Video | PS5, PS4 – YouTubeより)

 また特筆すべき救済要素は、相手から受けるダメージをパーセンテージで割り引くことが出来るシステム「アシストモード」だ。

 本システムはオプションからいつでもコントロール可能で、数値を100%にすれば無敵になることもできる。ハードなアクション好きには必要がないが、本システムにより「本作を遊びたいがゲームプレイに自信がない」という読者も安心して作品の世界を満喫できる。

 実際に先行プレイでは「アシストモード」を使用し50%にカットしてプレイしたが、そのうえで瀕死のダメージを与えてくる敵が登場する。そんなスリリングな設計の本作には難易度のモード選択が存在しないため、極度に苦手ではない読者も事実上の難易度設定として活用できる。

 なお、周回中にアシストモードを一度でも使用すると獲得できないトロフィーが存在するため、腕に自信がある方はぜひ本機能を使用せずに挑戦していただきたい。

「18世紀フランス」をビジュアライズするファッションと建築

 本作は18世紀のフランスという舞台設定に重点を置いてステージや装備、物語を構築している点が大きな特徴であり、注目のポイントだ。

 高難易度アクションゲームとして開発されながらも「アシストモード」という大胆なシステムを実装していることからも、「プレイヤーに好きなペースで作品の世界を味わってほしい」という意図が伺える。

 最後に、「18世紀のフランス」という設定をどの様にビジュアライズし、実装しているのかを紹介しよう。

 たとえば本作のマップにはパリの著名な建築物が随所に配置されている。先行プレイで触れたステージ3はセーヌ川の中州である「シテ島」となっており、ステージボスとの戦闘エリア付近には「シテ島」の観光名所として知られる「ノートルダム寺院」がそびえ立っていた。

 また、本作の海外向けパブリッシングを行うNaconYouTubeにて公開しているインタビューによると、アンシャンレジームの拠点となっていたグランシャトレや、ナポレオン1世により1808年に取り壊されたタンプル塔など、現存しないパリの歴史的な建造物もステージとして登場するという。

 このように、本作では『アサシン クリード オデッセイ』『アサシン クリード ユニティ』のように現存しない歴史的な空間をゲームとして歩き回り、観光することが可能だ。

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(画像はSteelrising – 5 Minute Gameplay Video | PS5, PS4 – YouTubeより)
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※電ファミ独占画像です
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 建築のみならずファッションにも力を入れており、「アイギス」がまとう装備はいずれも当時のドレスや制服のデザインを踏襲している。また、ステージ3に登場するボス「シテの司祭」は名所であるノートルダム寺院にちなんで聖書を武器として携えている。このように、先行プレイでは主人公やボスといったメインキャラクターの造形ステージの設計などよる舞台設定の表現が味わえた。

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 このほかに、先行プレイではアクションを中心としたものであったため確認できなかったが、「フランス革命」という歴史の転換期がモチーフのシナリオに、歴史上の人物がどの様に登場し、描かれるのかという点にも期待が高まる。

 ボス戦後のイベントシーンでは3つの選択肢も確認でき、マルチエンディングの予感も感じたため、発売に向けて公開されるシナリオの詳細にも注目だ。


 本作の海外版はPS5、Xbox Series X|S、PC(Steam、Epic Games Store)向けに9月8日に発売予定だ。

 くわえて、3gooが手がける日本語版は現時点でPS5向けの発売が予定されているが、発売日は2022年夏とのみ発表されており詳細な発売時期については今後の正式発表を待ちたい。本作のSteamストアによると、Steam版も日本語に対応するという。

 『スチールライジング』をプレイして、あなたも大機械革命を経た18世紀フランスで革命を成し遂げよう。

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編集者
ゲームアートやインディーゲームの関心を経て、ニュースを中心にライターをしています。こっそり音楽も作っています。

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