対戦が始まる前の、キャラクターの登場シーンが痺れるくらい格好いい!
カプコン独自の“RE ENGINE”を駆使し、ややフォトリアル調に近づいたグラフィックは実に美しく、技を繰り出すたびに新鮮な感動がある。東京ゲームショウ2022で『ストリートファイター6』の試遊台に触れ、来年発売のこのゲームへの期待がさらに高まった。
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今回の試遊版では、リュウ、春麗、ガイルといったシリーズでおなじみのキャラクターにくわえて、ジュリ、ルークといった近年の人気キャラクターたちを動かすことができた。そのうえ、新キャラクターのキンバリー、ジェイミーらがプレイ可能。(16日には、こちらもシリーズではおなじみのケンの参戦が発表され、すぐに会場で試遊可能になった。)
今回の記事では、格闘ゲームファンである筆者の視点から、『ストリートファイター6』の簡単なプレイレポートをお届けする。
文/浅葉たいが
プレイヤーを誘い込む美麗な表現
本作を観てまず驚いたのは、フォトリアル寄りのグラフィックで描かれる美麗なキャラクターたちだ。おなじみのリュウや春麗、ガイルなどは装いも変わっているが、それ以上にゲームを描き出すグラフィックが進化している。バトルが始まる前から、その圧倒的表現力を見せつけてくるのには驚いた。
試遊版では、キャラクター選択後に、キャラクターのステージ入場シーンが観られたのだが、これがべらぼうに格好いい。いままでよりもさらに渋くなったリュウVSしなやかな印象となった春麗の入場シーンには、戦いの前の気迫や余裕といったものが凝縮されている。
入場シーンは、バトルのテンポを妨げないためか、かなり短い尺に収められているが、キャラクター2人が戦うための理由が感じられるような素晴らしいシーンだ。
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そのあと、キャラクターの顔がアップで表示されるのだが、このパートでは、キャラクターの表情をキー入力で切り替えることが可能。気迫いっぱいの顔、笑顔、不機嫌な顔など、いくつかの表情が用意されており、これらをコロコロと切り替えるだけでも面白い。
真剣勝負の場でどれくらい活用されるのか、または、対戦相手への「煽り」に使われないだろうかという90年代のすさんだゲームセンターで培われた感覚が心配事を妄想してしまうが、オンオフなどがあればきっと素晴らしいシステムになるだろう。
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バトルも実に美しい。技として見慣れているはずの波動拳や昇龍拳、ソニックブームなども、本作のグラフィックで描かれるとぞくぞくする。技のヒット音なども実に迫力があり、「戦っている」感が常に伝わってくる。このように、表現面はまるで新しくなったが、『ストリートファイター』らしさとでもいうべきものは丁寧に継承されているのも見逃せないところだ。
試遊では、PS5の純正コントローラーとアーケードコントローラーでプレイできたが、コマンド入力のレスポンスや、キャラクターを動かす手触りは過去作に近く、快適そのものだった。(最近格闘ゲームファンの間で人気拡大中のレバーレスコントローラーについては、試遊版では試せなかったので手触りは不明。)
開幕からMAX! かけひきを深化する“ドライブ”システム
『ストリートファイター6』のバトルにおける最大の特徴は、体力の下に表示される“ドライブゲージ”と、それに関連するシステム群の存在だろう。ドライブゲージは、ラウンド開始時に最大の状態で始まり、このゲージを使うことでさまざまな強行動を繰り出すことができるのだ。従来のシリーズでは、ゲージを貯めつつ、試合の中盤以降で使っていくという戦術が主流だったが、本作ではラウンド開始直後から、強力なシステム行動や、過去作のEX必殺技のような行動を仕掛けられるようになっている。
そして、ライブゲージは、攻撃のヒットやガードといったおなじみの方法で回復するうえに、なんと“時間経過”によっても回復するため、試合中に何度も勝負どころが訪れる。ただし、ドライブゲージを使い切ってしまった場合は、オーバーヒートのようになり、しばらくの間ゲージが回復せず、ドライブゲージを使う行動が使用不能となることに注意。
こうなるとかなり苦しい時間が続くため、ドライブゲージをこまめに使いつつ、オーバーヒート状態にならないように立ち回るというのが基本的な戦術になるのかもしれない。
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さて、ここからは、ドライブゲージを使用して繰り出す行動を、もう少し詳しく解説していこう。
まずわかりやすく強力なのが、オーバードライブと呼ばれる必殺技強化要素。こちらはいわゆる強化版必殺技で、オーバードライブ版波動拳は攻撃発生とヒット効果に優れ、オーバードライブ昇龍拳には無敵時間が存在するなどの変化が見られた。過去作におけるEX必殺技的なものというとピンとくる方も多いだろうか。
つまり、本作では、ラウンド開始直後から、オーバードライブを絡めた強力なコンボを狙えるし、それによって大技である“スーパーアーツ”を使うためのゲージが増加していくのだ。
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また、地上の攻防で重要なシステムになりそうなのが、“ドライブパリィ”と“ドライブラッシュ”というシステムだ。ドライブパリィは、相手の攻撃を自動でガードするというアクションだが、ここから直接攻撃には派生せず、「普通に」成功した場合は、ドライブゲージが回復発動するというメリットが得られる。
つまり、このシステムを積極的に使うことで、ドライブゲージを効率よく補充できるというわけだ。とはいえ、普通に成功したとしても大幅に有利フレームを得られる機会は少なく、反撃をたたき込むチャンスというのもなかなか作れない。
しかし、ドライブパリィには、繰り出した瞬間に相手の攻撃を受け止めたときだけ発生する“ジャストパリィ”という要素も備わっている。こちらが発動すれば、技を受け止められた側には大きな硬直が発生し、その後の反撃が成立しやすくなる。攻略がすすめば、相手の攻撃を読み切ったら、ジャストパリィから反撃に転じるというシーンも観られるだろう。
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ドライブパリィ、またはキャンセル可能な通常技から派生できる“ドライブラッシュ”は、『ストリートファイター4』のセービングキャンセルダッシュのような挙動で、動作をキャンセルして前にステップする。
攻撃からキャンセルすることでコンボを組み立てることも可能だが、このキャンセルは“キャンセル可能な通常技”にのみ適用されることに注意。中足→波動→ドライブラッシュといった行動はできない。このため、試遊版では、歩きながらリーチの長いキャンセル可能通常技をばらまき、ドライブラッシュを狙うという戦術が強力に見えた。
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試遊した時間はそれほど長くなかったので、本作の読みあいの深いところには至らなかったが、ドライブラッシュが地上の攻めにおいて実に強力な要素で、それに対抗する手段としてドライブパリィが用意されているように感じた。
たとえば、キャンセル可能なしゃがみ中Kなどから仕掛けるドライブラッシュは、密着状態よりかなり手前から攻めこむ手段となる。こうした動きに対して、歩きからドライブパリィを合わせにいくという戦術が機能するようだ。『ストリートファイターⅤ』のハイレベルな対戦では、相手の攻撃をガードしながら歩きでじりじりと前に出る「歩きガード」が戦術として注目された。
しかし、この戦術は、難度もかなり高く、習得するのはかなりの練習と経験が必要だった。対して『スト6』のドライブパリィは、実に気軽に狙える攻防一体のシステムとなっており、数試合対戦しただけでも熱い戦いを楽しむことができた。
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『スト6』、良さそうですよ!
短い試遊の時間はあっという間に終わった。実に楽しかったからだろう。プレイヤーの挙動を実況してくれる「自動実況」システムもすこぶる好印象だ。実は、この要素は、プレイするまでかなり疑っていた要素だった。シーンにあった実況がどれほどの精度で、しかもワンパターンではなく行われるのか気にしていたのだ。
しかし、蓋を開けてみると、シーンにあった適格な実況かつ、決してワンパターンではない。そのうえ、プレイヤーを盛り上げてくれるボイスが多く、実に好印象だった。「わたし、褒められてる感!」がたまらない。強豪プレイヤーが出場する大会さながらの実況を浴びながらプレイするというリッチな体験ができるのも本作の見どころになるだろう。もちろん、合わないという方は、この機能をオフにして遊ぶこともできるようだ。
格闘ゲームとしての新作感もひしひしと伝わってきた。今回試遊できたリュウや春麗、ガイル、ジュリ、ルークといった、過去作から登場するキャラクターは、お馴染みの技を持ちつつも、本作ならではの新要素も多く見られた。リュウで新しい特殊技があったり、ガイルに便利なターゲットコンボが追加されていたり、春麗に過去作より使いやすそうな対空技が増えていたりと気になる要素が目白押し。
新キャラクターのジェイミーやキンバリーは、過去作のキャラクターと関係性があるということで、よく似た雰囲気の技もいくつか見られたが、自身のオリジナル技も多く、存在感を放っていた。こうしたさまざまなキャラクターに、奥深く多彩なシステムが加わることで、今作でも間違いなく熱い戦いが見られるはず。
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本作も、前作と同じく、格闘ゲームの中では操作は比較的簡単だが、その操作の組み合わせが幾通りも用意されており、自由度の高い戦術が組み立てられるのではないだろうか。
歩きガードはまだ必要なのか、打撃と投げの読み合いはどう変化しているのか、ドライブパリィの対策は……などと試遊時間では調べきれなかったことが今も気になっており、一刻も早く再びプレイしたいと思っていたところ、2022年10月7日から、10月10日にかけて、クローズドβテストが開催予定とのこと。
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