突然ですがみなさん、強盗したいと思ったことありませんか?(普通はないと思いますが)
『オーシャンズ』シリーズしかり、『ペーパーハウス』しかり、映画やアニメなどで描かれる強盗って否応なくカッコいいなって感じてしまうマジックがありますよね。
さて、前置きはほどほどに単刀直入にこの記事の内容を説明させていただきたいのですが……。あまりにも安売りしすぎているせいで、フレンドの誰かしらが持っている【※】ことでお馴染み『PAYDAY』のナンバリング最新作が10年ぶりに出るので、「全人類にやってほしい!」という記事となっています。
※フレンドの誰かしら持っている
2作目にあたる『PAYDAY 2』は、記事執筆時点での定価が1000円程度であることや、頻繁に実施されていた激安セールの影響もあり、本当に誰かしら1人は所持している。
協力プレイを全面に押し出しているゲームである反面、プレイしたことのあるユーザーは多いので参入障壁は圧倒的に低いはず。フレンドに持っているか聞いてみよう。
なぜあの前置きで『PAYDAY 3』というゲームにつながるのか。その答えはこのゲームのコンセプトに色濃く表れています。実のところ『PAYDAY』シリーズは、映画さながらの強盗を「計画」から「実行」「逃走」までの全てを体験できる「強盗ファンタジー」をテーマにしたゲームシリーズなのです。
強盗ファンタジーという聞きなれないワードが登場しますが、前述の“映画的な表現”の強盗が楽しめることを示しており、このゲームを『PAYDAY』たらしめる一番の大きな要素となっています。
今回筆者は、9月21日にPS5、Xbox Series X|S、PC向けに発売を予定している本作『PAYDAY 3』を先行でプレイさせていただく機会を得られました。
クロスプレイへの対応によってさらに間口が広がった今作を一足先に体験できたほか、『PAYDAY 2』を実際にプレイしていたユーザーとしての切り口で挑んだインタビューもご紹介します。
そのため、これからシリーズに触れたい方だけでなく、『PAYDAY 2』を遊んでいたハイスター【※】な方にも是非読んでいただきたい記事となっていますので、ぜひ最後まで楽しんでいただけたらと思います。
※ハイスター(英:Heister)
強盗(Heist)をする人という意味で使われる英語における俗語。
同シリーズの公式アナウンス等で使用されることもあり、その際は『PAYDAY』プレイヤーを指す。
文/Squ
そもそも『PAYDAY』の何がスゴいのか
冒頭でもお話しした通り、このゲームは「強盗ファンタジー」をテーマにした作品です。前述の通り“映画のような強盗”を体現するゲームです。
もっともな話4人協力プレイを推した強盗ゲームなんて、探せばいくらでもあります。『Grand Theft Auto: Online』をはじめとする犯罪をテーマにしたゲームで、強盗が扱われないことなんてあるのでしょうか?ありませんよね。では、なぜ前作から10年経った今ここで『PAYDAY 3』なのでしょうか。
実は『PAYDAY』シリーズの魅力は、遊びやすさでもグラフィックの良さでもありません。前作『PAYDAY 2』は10年も続いてるのにもかかわらず、一生チュートリアルが足りず、上位層に追いつくための経験値稼ぎもしづらければ、モダンなFPSで出来ることが半分くらいしかなく、結構致命的な部分が多いゲームなんです。
しかしながら、どう考えても値段の安さだけではカバーできない問題を、問題として捉えなくさせる魅力がある。Steamの“最もプレイされたゲーム”チャートで10年近くランク入りし続ける理由が『PAYDAY』というコンテンツには存在するのです。
個人的に『PAYADAY』シリーズは、今も昔もかなり独特な立ち位置にいるゲームだと感じています。よく「映画っぽいゲーム」なんて表現を耳にする機会があるかと思うのですが……、このシリーズはゲーム自体が映画をロールプレイしているんですよね。
いや、意味わからないと思うんです。でも本当にそうなんですよ。「プレイする映画」なんて表現では足りないくらい、自分のことを映画だと思い込んでいる。だってウェブドラマシリーズに飽きたらず、DLCの度に短編映画出てましたからね。本当に意味が分からない。
「ただ友達に誘われただけ」なんてプレイヤーも少なくないはず。ところがフタを開けたら往年のハリウッド映画に通ずる夢の詰まった強盗プランを実行できる。しかも、プレイヤー自身でアプローチは自由自在。不殺完全ステルスを目指すもよし、じんわりドリルで金庫をこじあけ、通信妨害で通報を遅らせ正面から強行突破、武力弾圧で警察を圧倒してもいいわけです。
そしてこのゲームで最もプレイヤーのボルテージを向上させるオールドスクールな音楽……いえ、劇伴が最の高なのです。
ありがとうサイモン・ビクランド……。劇伴はどれも絶妙で程よい、わずか(わずかじゃない)主張でゲームを盛り上げてくれる非常に重要な存在です。音楽とゲームプレイが合わさることが『PAYDAY』にとって重要といっても過言ではないのです。
前作『PAYDAY 2』の時点でリプレイ性と中毒性を兼ね備えていたゲームが、『PAYDAY 3』として欠点を克服して帰ってきたら……。10年のブランクをものともしない、正統進化を遂げていたら……。ロマンがあると思いません……!?
10年ぶりの新作は伊達じゃない!「モダン」になった銀行強盗
完全新規タイトルではない都合上、前作『PAYDAY 2』と比較してしまうことをご了承いただきたいのですが……、はっきり言って『PAYDAY 3』はめちゃくちゃ進化しています。今回事前に共有していただいたスライドのなかで既存ハイスター向けに魅力的なものは……。
- Unreal Engine 4への対応
- マスク未着用時に出来ることが増えた
- 民間人の使用用途が増えた
- 「捜索」と「交渉」という新たな強盗フェイズの追加
- スキルツリーの自由選択
- モダンFPS的動きが出来るようになった
といったところでしょう。
個人的に何よりもうれしかったのは「市民の使用用途増加」です。これまでの作品では誤射によって報酬の減額が行われるにも関わらず、逃げられるとすぐに警察を呼ばれる非常に厄介な存在であった市民を我々はどうすることもできませんでした。
しかし今回は……、「人間の盾」を発動!
市民を盾にすることで、警察の突入を遅らせる【※】交渉材料にできる!……だけじゃない!
※警察の突入を遅らせる
強盗モノだと案外ありがちだが、前作『PAYDAY 2』では実質できなかった。
というのも人質を拘束することで突入時間が遅くなっていたが、発生タイミングや持続時間など未知数の部分が多く謎に包まれていた。
なんと、市民を盾にするだけで、警官からの攻撃を無効化できる追加効果も存在するのだとか。実際に先行体験を行った際も、他プレイヤーが体力の低いタイミングで盾を利用して凌ぐ姿が褒められていました。
そして、もう一つ大きなものは「探索」フェイズの追加です。これまでの『PAYDAY』では、警備員をはじめとしたAIは決められた巡回パターン通りにしか動きませんでした。しかし、今回新たに追加されたフェーズで、不審な挙動を感知すると巡回ルートから外れて探索するようになったのです。
そしてさらに……、立ち入り禁止エリアだとしても抵抗しなければ追い出されるだけで済んだり、身体が接触するだけで通報することがなくなりました。なんだか前作の警備員が恋しく……なんてこともなく、警備員に人間味が追加されてちょっと嬉しくなりました。
ちなみに、「探索」モード中は“既に怪しい”という理由からカメラの破壊【※】が無視されるとのこと。これは既存プレイヤーにはうれしい仕様……!初めて聞かされた時はビックリしました。
※カメラの破壊
警備員や市民以外の要素として存在する監視カメラは非常に厄介な存在で、無力化できるなら無力化したい。
過去作では、監視カメラの破壊は即バレ・即通報に繋がりやすく悪手とされてきていた。
なお、カメラ同様に注意すべきポイントであった警備員殺害の隠蔽可能回数については、残回数を表示する専用UIが搭載されてわかりやすくなっていた。
最後に操作性に関してですが、個人的に非の打ちどころを感じませんでした。しっかりとモダンFPSの操作感を取り入れており、「『コール・オブ・デューティ』で出来る動きは大体できるんじゃないかな?」といった印象。腰撃ち精度の高さは健在で、狙えば頭に当たるようでした。
そして、前作では走ることが出来なかった現金入りバッグを背負っていても走れるようになっており、バケツリレー【※】をせずとも苦労なくバンまでの運搬が出来るようになっていると感じました。
※バケツリレー
戦利品は複数のバッグになることが多いものの、基本的に人数に対して数が多い。
そのうえで移動速度の低下などのデバフが発生するため、バッグを投げて拾うことを繰り返すことで少しでも早く運ぼうとする作戦。(なお、試遊中も開発スタッフにバケツリレーを提案された)
『PAYDAY 2』を遊んでいたユーザーの切り口で挑む開発者インタビュー
グローバル・ブランド・ディレクターのAlmir氏はこう語ります。“『PAYDAY 3』とは何か?ということを考えるとき多くの人が「MMO」や「シューター」を思い浮かべるが、実際のところは『PAYDAY』にしかなり得ない”。
つまり、変装や覆面を身にまとった強盗団が、怪盗ほどは美しくない現実離れした作戦をこなす姿。子供のころに夢見た“あのワクワク”を自分の手で、本当の意味で仲間と協力して実現できる。それが『PAYDAY』シリーズであり、『PAYDAY 3』なのです。
さて、ここまで、『PAYDAY 3』の魅力をお伝えしてきたわけですがいかがでしたでしょうか。
今回の体験会では、グローバル・ブランド・ディレクターを務める Almir Listo氏とリード・プロデューサーを務めるAndreas Hall-Penninger氏のおふたりに直接質問できるセッションも実施されました。『PAYDAY』シリーズを遊んでいた人にこそ読んでほしい実質時間無制限な高カロリーな内容と思いますので、今回はインタビューと共にお別れしたいと思います。
──ゲーム全体の展開の速さはどのように調整されていますか?『PAYDAY: THE HEIST(PAYDAY 1)』は『PAYDAY 2』よりテンポが速かった印象です。
Andreas氏:
ゲーム全体のテンポについては現在調整中であるものの、確実に速くなると考えています。開発チームとして目指しているのは「ハリウッド映画のようにわかりやすい」ゲームプレイです。なので、なるべく早く状況が変化するようなゲーム体験が出せるように調整していきます。
Almir氏:
もともと『PAYDAY 1』では“リアルな銀行強盗”にフィーチャーしていましたが、『PAYDAY 2』では、そこからさらにゲーム性を意識してテンポの調整を行っていました。今回の『PAYDAY 3』は、一作目に近い「再現性」に焦点を当てているのでテンポ感は似ていると思います。
──初心者がきちんと『PAYDAY 3』というゲームを理解できるチュートリアルなどは用意されますか?
Andreas氏:
チュートリアルに関しては現在制作中です。発売時点で「戦闘」「マスクなしでのステルス」「マスクありでのステルス」といった、強盗に際して重要なゲームシステムごとに理解しやすく解説できるものを用意する予定です。
しかしながら、ゲームデザイン的な意図としてはそこから何かプレイヤー自身の道を切り開いたりしてほしいと思っています。
──何か新しいSpecial Enemy(スペシャル・エネミー)は登場しますか?
Andreas氏:
今回二種類の新しい敵が登場します。一種類目はグレネードイヤー。ガスグレネードを投げてくるんです。あとは、FBIのトラック(バン)が追加されましたね。トラック自体を破壊しない限り永遠にFBIが出現します。
もちろん、クローカーやテーザー、ブルドーザーといったいつものスペシャル・エネミーも登場します。みんな何か新しい特徴を持っているのでぜひ注目してください。
例えばテーザーだったら、「テーザー・マイン」という地雷を設置してくるんです。他にはブルドーザーが突進してきたり。ゲームで一番処理が大変なクローカーにも新要素があって、グラップリングフックを使って天井や壁を登ってきます。
他にも、SWATがユニットごとに団体行動を徹底するので、以前よりも戦略的に行動してくるようにもなりましたね。
──ステルスプレイにおける難易度は『PAYDAY 2』に比べて何か変化していますか?
Andreas氏:
難易度ごとに警備会社が変更され、より強力な警備員が出現するようになりました。プレイヤーの視点を直接妨害する敵や、定期的な無線応答が必要な状況など、難易度ごとに異なるプレイスタイルを楽しむことができます。
また、以前は下見時に警備員に見つかるとすぐに強盗フェーズに移行していましたが、今回はその前に新たな段階を追加したことで、『PAYDAY 2』に比べると余裕を持ったプレイが可能となりました。
前作に比べAIの性能が向上しましたが、出現数を調整するなどのバランス調整は行っています。
──作品として、シリーズとして大きな進化を遂げている『PAYDAY 3』ですが、新規ユーザーにどういうことを伝えたいですか?
Andreas氏:
『GTA Online』をはじめとした強盗を体験できるゲームというのはいくつもあると思うのですが、『PAYDAY』は強盗という行為にミクロレベルで挑戦しています。全ての行動に意味があって、本当に銀行を強盗しているような感覚に陥るのです。なので、この“面白さ”が既存ファン以外にも伝わってほしいと思っています。
Almir氏:
今後は詳細なチュートリアルをゲームに搭載する予定です。新規ユーザーに対してにどれだけハードルを下げられるかがが大事だと思っています。
『PAYDAY』はそれなりに難しいゲームだと思いますが、複数人で遊べるゲームですし、すでに大きなコミュニティが存在しています。フレンドやたまたま出会った人が助けてくれることもあるので、いままでプレイしたことない人もぜひ挑戦してほしいです。
──前作『PAYDAY 2』に搭載されていた「Crime Spree」のようなやり込み要素は実装されていますか?
Andreas氏:
残念ながら発売時点では実装されていません。将来的には「Crime Spree」のようなコンテンツを実装する予定でいます。ただ私たちは発売時点で実装されているコンテンツの量が、みなさんの期待に添えると信じています。
──『PAYDAY 2』では、ユーザーによるModコミュニティの存在が非常に大きかったと感じています。『PAYDAY 3』で彼らをサポートする予定はありますか?
Almir氏:
まったくもってその通りです。現在『PAYDAY 2』のコミュニティには5万種類を超えるModが存在しています。なかには「ゲームは遊ばないけど、他の人を楽しませたくてModだけを作っている人」もいるほどです。
それは、『PAYDAY 2』がModで遊びやすい環境だったからだと思います。P2P接続でファイルは全部ローカル管理でしたから。Unreal EngineでもMod制作が可能な環境を提供できると考えています。ただ、発売時点でModを許可する予定はありません。
でも、Modを作ってくれるという行為は、とても我々に寄り添ってくれているものだと思います。なので、今後必ずサポートを検討する予定でいます。
現時点では何も決まっていませんが、仮にサポートを実現する際は家庭用ゲーム機用にModをリリースする解決策も“技術的”に存在しています。
──『PAYDAY 2』ではP2P通信によるラグや同期ズレが発生していましたが、『PAYDAY 3』では改善されているのでしょうか?
Andreas氏:
『PAYDAY 3』では専用サーバーを用意しました。ユーザー数がかなり増えたので、これが最善手であると考えています。
──『PAYDAY 3』のゲームプレイにおいて、前作『PAYDAY 2』と比べて最もインパクトがあると思うアイディアはどれですか?
Andreas氏:
『PAYDAY 3』の企画が始まった時、私たちは常に「どうしたら“強盗ファンタジー”をよりよいものに出来るか」を考えていました。とくに何かひとつのものにフォーカスする気はなく、ただ「どうしたら“究極の”強盗ファンタジーに昇華させられるか」が大事なんです。
でも、もし個人的に選ぶとすれば「人質の活用」だと思います。いままではただ単に地面にじっとしていただけなのに、『PAYDAY 3』では“人間の盾”にもできるし、無理やり金庫まで連れて行って生体認証を突破したりもできる。私としてはコンセプトだったり体験だったり、全体の役割の意味が際立っている点が気に入っています。
──おそらく『PAYDAY』シリーズに隠された“謎”が好きなファンの多くが気になっていることだと思うのですが……。「First World Bank」で遊ぶことは可能ですか?
Andreas氏:
……初代『PAYDAY』に存在していたマップのことですね。『PAYDAY 3』では新規性やユニークさを出すことを重要視していたので、発売時点で実装されている強盗は全て新規のモノになっています。
もちろん将来的に可能であれば、懐かしのマップをリメイクしたりしたいですが、確約はできません。ただ、今回体験していただいた「Bank Heist(銀行強盗)」では、“テルミット爆弾”を利用して金庫に侵入するのですが、これはFirst World Bankでの“印象的な瞬間”として特徴を取り入れています。
──『PAYDAY 2』では、経験値稼ぎに対しての評判があまりよくなかった印象があります。この問題に関して『PAYDAY 3』では何かしら対応する予定はありますか?
Andreas氏:
ものすごく答えるのが難しい質問なんですが……。複雑なものを抜きにして簡潔にまとめると、「イエス」です。
『PAYDAY』は強盗を何回も何回も繰り返し、常に何かしら稼ぎ続けますよね。なのでプレイヤーのレベルアップに対してもう少しカスタマイズや武器などで自由度を持たせたいとは思います。これらに関しての詳細は今後発表しようと思っています。
──続報を楽しみにしています。本日はありがとうございました。(了)
『PAYDAY 3』は9月21日にPS5、Xbox Series X|S、PC向けに発売を予定している。