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カプコンの恐竜TPS『エグゾプライマル』が序盤を越えると化ける“スルメゲー”だった。1000匹以上の恐竜の大群や遠距離から狙撃してくる恐竜と戦ったり、でっかいT-REXを相手にレイドできるゲーム

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 7月14日より、PlayStation 5、Xbox Series X|S、PC(Steam)などで発売中の『エグゾプライマル』は、カプコン開発による完全新作のアクションゲームである。銃火器で戦うスタイルを基本にすることから、サードパーソンシューター(TPS)とも言える。

 その内容を端的に紹介すると、時空のゆがみ「ボルテックス」より現れし恐竜の大群を5人1組のチームで迎え撃ち、生き延びることを目指すというものである。

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 カプコンと恐竜。その組み合わせで脳裏を過ぎる象徴的な作品と言えば、1999年にPlayStation向けに発売され、後に続編が発売された『DINO CRISIS(ディノクライシス)』だろう。後に『逆転裁判』を生み出した巧舟氏が携わった作品としても知られている。
 ちなみに電ファミニコゲーマー掲載のレポートマンガ、『若ゲのいたり〜ゲームクリエイターの青春〜』では、巧氏自ら『ディノクライシス』開発当時のエピソードを振り返る回が掲載中でございます……と、紹介してみた。

 そして、カプコンとTPS。こちらの組み合わせで思い出されるのは、2006年にXbox 360向けに発売された『ロスト プラネット エクストリーム コンディション』だ。こちらも後に続編が発売されている。また、2012年には『ロストプラネット』と世界観を共有した関連作品『エクストルーパーズ』も発売された。
 筆者がカプコンのTPSと聞いて真っ先に思い出すのは『エクストルーパーズ』だ。昨年は発売10周年、おめでとうございます。現行の環境で遊べて、PlayStation 3版限定だったオンライン対戦が実装されたリマスター版の発売を心からお待ちしております。

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 そんなカプコンとしてはややご無沙汰の題材が揃った『エグゾプライマル』は、オンライン専用タイトルとなっている。そのため、プレイに当たってはインターネット接続が必須。基本的にランダムマッチングで巡り会った世界中の誰かか、フレンド同士とチームを組んで恐竜たちとの戦いを繰り広げていくスタイルになっている。オフラインによるシングルプレイは用意されていない。

 その点で見ると、これまでのカプコン製TPSとしては異色さがある。オンライン専用タイトルではある種定番の「シーズン制」も採用されていて、本稿執筆時点では「シーズン1」が10月12日まで開催中である。

 そんな「シーズン1」の時点で、メインストーリーを一通り終えたタイミングで本作を実際に遊んで感じたこと、気になったことを綴っておきたい。

 先んじて結論を言えば、この『エグゾプライマル』……スルメゲーである。

文/シェループ


近未来のパワードスーツを身にまとい、5人のチームで恐竜たちに立ち向かえ

 前述にて、端的な紹介に留めた具体的なゲームの内容を紹介していこう。繰り返しになるが、『エグゾプライマル』はオンライン専用のチーム対戦型アクションゲームである。公式では”チーム対戦型マッシヴアクションゲーム”と称している。

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 プレイヤーは「エグゾスーツ」と称された近未来のパワードスーツを身にまとい、5人のチームの一員になって恐竜の大群に立ち向かう。恐竜たちへの攻撃には、それぞれに備わった武器を使用。これで恐竜たちを倒し、その数が一定に達するとミッションクリアになって、次のミッションへと移るという流れになっている。

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 もう少し詳しく掘り下げると、メインモード「ディノサバイバル」には5人構成の2チームが参加。それぞれが新世代AI「リヴァイアサン」から提示されるミッションを順に攻略していく。ミッションは前述の一定数の恐竜を倒す「目標討伐」を始め、複数のバリエーションが用意されている。そして、それらのミッションをすべて終えると「ファイナルミッション」が開始。

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 この「ファイナルミッション」を攻略すると1ゲーム終了になり、チームそれぞれの勝敗が決する。勝敗の決め手は相手チームよりもどれだけ早くミッションを達成できたか。要は早い者勝ちだ。このような流れを基本に「ディノサバイバル」は展開される。

 ある程度、オンラインのマルチプレイゲームに慣れた人に向けて表現するなら「PvE(Player versus Environment)」と「PvP(Player versus Player)」が入り混じる構成である。特に「ファイナルミッション」は、種類によって相手チームへの直接攻撃が可能な対戦も発生する。
 また、「ファイナルミッション」限定で「ドミネーター」なる特殊装置も出現。フィールドで回収し、起動させると相手チームにプレイヤーが操作する恐竜を召喚させ、ミッション進行を妨害したり、相手チームのメンバーを直接倒しにかかることが可能になる。

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大型恐竜を自ら操り、時間と体力の許す限り相手チームを蹂躙!

 こうした恐竜に限らず、相手チームの人間に襲撃される危険とも隣り合わせの中で戦闘を繰り広げていくというのが、「ディノサバイバル」の大きな特徴にして見所となっている。

 もうひとつの特徴は「エグゾスーツ」である。「エグゾスーツ」は「アサルト」「タンク」「サポート」の3つの役割(ロール)に分類され、どれを選ぶかによって戦闘時の立ち回りなどが大きく変化してくる。

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 また、ロールごとに性質の異なる3~4種のスーツを用意。銃火器を主要武器とする中~遠距離タイプ、斬撃で戦う近接特化タイプ、防御特化タイプといった様々なスタイルのものが選べるようになっている。(※一部、解禁条件が設定されたスーツも存在)

 そして、この「エグゾスーツ」は戦闘中でも好きなタイミングで変更可能。チームに回復役の「サポート」がいない時に自らそれになったり、堅い恐竜を相手にする場合は攻撃特化のスーツに切り替えるなど、柔軟に対応できる。

 ひとつのスーツに特化して戦うスタイルにも対応しているため、変更自体はそれほど強要されはしない。ただ、チームの生存とミッションの迅速な攻略のため、最善な選択を取れる設計は本作ならでは。チームの一員として自分なりの”答え”を探し出し、突破口を切り開く面白さが表現されたシステムになっている。

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 ほかに「エグゾスーツ」は基本的に武器固定なのだが、それを補う装備として「リグ」と「モジュール」が存在。これを付け替えることで、自分なりの特徴を持ったスーツにカスタマイズすることも可能である。ちなみにリグもエグゾスーツ同様、戦闘中に好きなタイミングで切り替えられる。
 さらに詳細は後述するが、本作はオンラインのチーム対戦を主としながら、1本の大規模なストーリーも用意。それが「ディノサバイバル」を繰り返しプレイするたびに進展していくという、一風変わった方式が取られているのも見所だ。

 とりわけ象徴的な部分に特化したが、このように本作『エグゾプライマル』は戦闘ルール、カスタマイズ、そしてストーリーまで、独自の個性を強調したチーム対戦型アクションゲームにまとめられている。

「ずっと同じことの繰り返し……!?」そんな不安を募らせる、序盤という名の難所

 だが本作……オブラートに包まず言ってしまうと、序盤の印象が非常によろしくない。

 具体的にはゲーム開始からプレイヤーレベルが10に達するまでの「ディノサバイバル」だ。正直、その部分だけを切り出すなら、単調なチーム対戦型TPS(もしくはアクションゲーム)との感想に落ち着いてしまう。

 なぜかと言えば、似たような展開が繰り返されるのである。

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 戦闘の舞台となるマップは最大2種類、登場する恐竜は4~5種類、ミッションは決まって指定された恐竜を倒す「目標達成」、そして「ファイナルミッション」で開催されるルールもわずか2種類。

 まだゲーム開始間もない頃こそ、恐竜の大群にビックリしたり、最終局面で相手チームとの熾烈な争いとなる「ファイナルミッション」のひとつ「データキー輸送」に翻弄されたりなど、刺激を感じていた。だが、3~4回目の「ディノサバイバル」を体験した頃から異変を感じ始めた。「これ、同じことが繰り返されていないか?」と。

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 それでマップ、現れる恐竜、ミッションの内容に注意を向けたところ、バリエーションの少なさに気づかされたのである。「ディノサバイバル」にて案内役を務める「リヴァイアサン」は、「無限に繰り返されるウォーゲーム」と語るが、実際、そのままのことが繰り返される感じになっている。

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「もしかして、この展開がずっと続くのか……?」と、序盤を進めていると不安になってくる。

 何度挑んでも、登場する恐竜、マップなどは決まっていて、バリエーションに乏しいまま。変化らしい変化がない。決して誇張して言っている訳ではないし、冗談でもない。本当にゲーム開始時点はそのような展開に終始する。嫌でもゲームを構成する要素の少なさを意識してしまうものになっているのだ。

 大群で現れては襲いかかってくる恐竜たち。特徴のはっきりした「エグゾスーツ」と、それを使い分ける戦術性。そしてPvPとPvEが入り混じる個性的な内容。面白い特徴を持ちながらも、肝心の要素が少なく、似たような展開の繰り返し!

 この時点で「もしかしてこのゲーム、実はよろしくない類のアレなのでは……」と筆者が考えたのは言うまでもない。
 だがしかし……世の中には「スルメゲー」なるものが存在する。最初はイマイチでも、時間をかけて遊び続けることにより、面白さが勝ってくるゲームのことだ。

 まだ始まって間もない時点のことだ。可能性は残されている。もしかしたら、ちょっとすれば変化するかもしれない。ここで諦めでもしたら試合終了である。賭けるしかない。賭けよう!というか、そうなって!頼む!

 ……と、粘って続けてみた結果、願いは届いた。
 まさにプレイヤーレベルが10に達するタイミングで、明確にゲームが変わり始めたのである。
 それと同時に、本作の意外な見所も見えてくるようになった。

序盤を乗り越えれば、恐竜との戦闘は激化の一途を辿る!

 プレイヤーレベルが10に達したタイミングで何が起きたのか?
 多少、ネタバレする形でその時の出来事を紹介する。

 まず、いつものように「ディノサバイバル」を開始したところ、リヴァイアサンの会話内容が変化。それと同時に新しいマップへと降り立ち、ストーリーに関連するイベントが発生。名ありのキャラクターを護衛する、特別なミッションが始まった。

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 さらに恐竜にも新種が登場。プレイヤーに近づいて自爆攻撃を仕掛けてきたり、遠距離からスナイパーのごとく狙撃してくる「ネオソー」と称される変異型の恐竜が現れ、それまでとは違う立ち回りが求められるようになったのだ。

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 そして、このイベントの終盤、リヴァイアサンが特別なプログラムを始動。なんと1000匹以上の恐竜の大群を相手にするミッションが始まったのである!

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 この後の「ファイナルミッション」でも、今まで体験したことがない新ルールが登場。そして、これらすべてを終えた後の「ディノサバイバル」でも前述の変異体、新ルール、新マップが登場するようになり、戦闘の難易度が上昇。以前のパターンも含めつつ、それまでの単調さが薄れた展開が繰り広げられていくようになったのである。

 さらに詳細は伏せるが、プレイヤーレベルをより上昇させれば、凶悪な大型恐竜に多人数チームで挑むミッション、俗にいう「レイドバトル」も発生。

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多彩な攻撃を見極めて対処するなど、カプコンのアクションゲームらしい戦闘が楽しめる。

 並行して恐竜、マップにも新種が登場するようになり、さらに戦闘が激しく、彩り豊かなものになっていったのである。

 ”序盤の印象がよろしくない”とは、逆を言えば”序盤以降の印象はいい”ということも考えられる。しかし、本当にそうなるのかどうか、前述のこともあって当初は不安に感じていた。幸いにして粘って進めた結果、大きな変化があった。レイドバトルに象徴される特殊なイベントの挿入もあって、違った戦いが楽しめるようになったのだ。同時に「次はどんな変化が起きるのか?」との期待から、積極的に「ディノサバイバル」をプレイするようになっていったのだ。そして、気づいた頃には数時間吸われていた。

 まさにこれぞスルメゲーの真骨頂。そうと言わんばかりのものが仕掛けられていたのだ!「よかった!ちゃんと変化があった!続けた甲斐があった!」と、これらを体験して安心したのは言うまでもない。

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 「ディノサバイバル」の内容だけではない。「エグゾスーツ」もまた、プレイヤーレベルの上昇に合わせて装着可能な「リグ」と「モジュール」の種類が増え、カスタマイズの幅が広がっていく。特に「モジュール」はスーツそれぞれの長所を伸ばすものから、短所を補強するものまで様々な種類が用意されている。

 しかし、装着可能な「モジュール」は最大3つまで。そのため、どちらかひとつの方向性に沿って強化することになる。種類が増えればその悩みもまた増え、何を選び、何を選ばないかを判断することになる。
 この辺りも序盤を越えた後、明確に変化する箇所で、その意外に頭を悩ませる作りには文字通り唸ってしまうかもしれない。

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 また意外な見所で、レベルの上げやすさもある。基本的にレベル上昇に応じ、必要な経験値が過度に上昇するようなことはなく、2000~2500ぐらいの値に留まる設定になっている。そして、大体1プレイ当たり獲得できる経験値が約2000、多い時で3000から4000ほど。なので、「ディノサバイバル」を単に遊ぶだけでほぼ必ずレベルは上昇するのである。
 
 さすがにレベルが50以上に達すると必要な経験値量が増え、上がりにくくはなるが。ただ、この辺りまで達すればゲーム的には終盤なので、増加のタイミングとしては理に適っている。

 そして、勝敗はそれほど重要ではない。一応、勝てば1.5倍のボーナスが得られるが、「ディノサバイバル」の「ファイナルミッション優先設定」を「ランダム」にしていれば、勝敗を問わず1.2倍のボーナスを得られる。負けたとしても、少々残酷な敗北ムービーを見せられる程度で、報酬が極端に低くなったりはしないのだ。

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 勝敗がプレイヤーレベルの上昇速度に起因するとなると、心理的なハードルの高さを感じてしまいやすい。だが本作はそれによる差を押さえているため、敗北しても「とは言え、それなりの報酬は得られるし」と気持ちを切り替えやすくなっている。
 こうしたお手軽さ、カジュアルな作りもまた、本作の大きな特徴といってもいいだろう。

 このように序盤を越えた後に本作は明確に“化ける”作りになっている。
 逆を言えば、文字通り序盤が大きな難点になってしまっている。そもそも、プレイヤーレベルが10に到達するまでに要する時間はだいたい5~10時間近く。前述の1.2倍ボーナスの設定でプレイを重ねれば、多少短縮できるものの、根気はそれなりに必要とされる。

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 おそらくはプレイヤーをゲームに慣らせる意図があるのかもしれないが、現時点の所要時間は長すぎるし、返ってゲームに対する悪印象が付きやすくなっている。本作は定期的なアップデートが予定されていることが公式にも告げられているが、まず真っ先にこの序盤のしんどさを緩和してほしい、と筆者は思った次第である。

 それほど勿体ないものになってしまっているし、化け始めるのに時間を要しすぎる。多少、長くても3~4時間ほどに収まる程度に改善されることを願うばかりだ。

恐竜たちとの戦闘だけではない!ストーリーも謎に次ぐ謎の嵐が吹き荒れる

 「ディノサバイバル」を積極的にプレイしていくモチベーションとなるものは、ゲーム内容の変化だけではない。ストーリーの存在もまた、「ディノサバイバル」へのプレイ意欲を適度に刺激するものとして機能している。
 同時にこれが、印象的によろしくない序盤を進めることへの心理的な支えでもある。

 前述の通り、本作はオンラインのチーム対戦(ディノサバイバル)と並行し、1本の大規模なストーリーを用意。「ディノサバイバル」のプレイを重ねるたび、進行していくようになっている。

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 改めて本作のストーリーと世界観を紹介すると、舞台となるのは2043年の近未来。世界各地は3年前の2040年、時空のゆがみ「ボルテックス」の出現に端を発した「恐竜災害」によって、甚大な被害を受けていた。

 そんな「恐竜災害」にエグゾスーツを身にまとって応じる「エグゾファイター」である主人公「エース」は、「ロレンツォ」をリーダーとする非公式部隊「ハンマーヘッズ」の一員として哨戒任務に当たっていた。

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 だがその最中、突如発生したボルテックスによって部隊は3年前、とある事件によって全面封鎖された「ビキトア島」に不時着。そこで遭遇した島を管理するAI「リヴァイアサン」によって、エースは無限に繰り返されるウォーゲームに強制参加させられてしまう。

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 その中でエースは別部隊のエグゾファイター「マグナム」と出会う。そしてマグナムより、リヴァイアサンによるウォーゲームは3年前、2040年の事件発生の初日にファイターたちを並行世界から次元転送し、無限に繰り返す形で開催されている事実を伝えられる。

 なぜウォーゲームは2040年に開催されているのか。リヴァイアサンが恐竜を召喚する理由とは。この一連の謎をプレイヤーは主人公エースとして、「ハンマーヘッズ」のメンバーたちと協力しながら一連の謎を解明し、島からの脱出を目指すというのが大まかなあらすじだ。

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 率直に言ってこのストーリー、非常にボリュームが大きい。全容を解明するだけでも25時間近くを必要とする規模となっている。作中に設けられた謎(ミステリー)も多く、複数の情報が集まって真実が明らかになった……と思ったら、新たな謎が浮上したり、時には全くストーリーと関係しそうにない情報から驚きの事実へと繋がるといった展開が相次ぐ。

 その影響は「ディノサバイバル」本編にも及ぶ。前述の名ありのキャラクター改めマグナムの護衛と、レイドバトルの存在がその象徴である。これらをこなすと同時にストーリーも大きく動き、新たなキャラクター参戦に伴う新展開が発生するのだ。

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 「ストーリーと言ってもおまけ程度なのでは?」と、オンライン専用でチーム戦を繰り返す本作の作りを思うと考えてしまうかもしれない。だが、実際はおまけどころではない。驚くほど大規模かつ、壮大なストーリーになっている。

 さらに「ディノサバイバル」における10人規模のプレイヤーが並行世界から参加する枠組みを始めとするゲームシステムも、ストーリーとの入念な理由付けがされている。そのこともあり、戦闘中はオンラインの対戦や協力プレイを楽しむ気持ちと同時に、リヴァイアサンの手のひらで踊らされているかのような体験も味わえるようになっている。

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 まさにオンライン専用のマルチプレイの枠組みを巧みに活かしたストーリーを描いているのだ。特に序盤以降、新たな恐竜やマップが登場するようになってからは、ストーリー側も盛り上がってくる。

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序盤を越える頃から参戦し始める謎のエグゾファイター「ダーバン」。その正体とは……?

 恐竜災害の真相、リヴァイアサンが今の状態になった背景、そしてエースたちを付け狙う謎のエグゾファイター「ダーバン」とその正体。続々と明らかになる新情報の数々に、どんどん先へと進めたくなってしまうはずだ。

 基本、テキストによる会話劇がイベントの多くを占めることから、演出的な地味さはある。ただ、まるで1本の長編アドベンチャーゲームを遊んでいるかのような濃厚な体験が楽しめるので、ぜひ本作を始めた暁には全容解明に挑んでみていただきたいところだ。

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 なおストーリーの進め方自体は「ディノサバイバル」に参加するだけと非常に単純。それだけで進展に必要な「ロストデータ」が手に入る。絶対にレベルアップしなければならない、勝たなければならないみたいな必要はない。

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 ただ、敗北時にはややショッキングな演出が挿し込まれる所には注意が必要かもしれない。しかし、これでもストーリーはちゃんと進展するのでご安心を。「ディノサバイバル」は2040年の災害発生当日を無限に繰り返す仕組みだからだ。

 これで大体、ストーリーのキモを察したかもしれないが、詳しくは本編にて。

序盤を乗り越えてからが本番のスルメゲー

 ほかに本作の素晴らしい特徴のひとつとして、操作性の良さを挙げたい。

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 これと言って反応の鈍さとかは一切なく、キビキビかつスピーディにどのスーツも動かせる。ボタン配置もバッチリで、ゲームを始めて間もない時点でほぼ思い通り動かせるようになってしまうほど。この辺の動かすだけでも楽しい手触りとレスポンスの良さは、アクションゲームに手慣れたカプコンのお家芸が炸裂している。

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 また、本作は時に数千匹もの恐竜を相手にする戦闘も用意されているが、そうした場面においてもフレームレートの低下、ラグが生じるといったことがない。筆者はPlayStation 4版で遊んだのだが、ストーリーを終えるまでの間、そのような現象に遭遇したことはほとんどなかった。この辺りの快適さに関しても、大量の恐竜を大人数で迎え撃つプレイスタイルを気持ちよく楽しんでもらうためのこだわりを感じさせられるところである。
 
 そして、マッチングに関してもクロスプレイに対応しているのもあって、人数が集まらずにゲームが一向に始まらないということにもなりにくい。少なくとも発売から1週間が経過した時点では十分人がいる感じだ。ただ、今後の推移によっては話が変わってくるかもしれないため、少しでも本作が気になるのなら早いうちにプレイしておくのがお薦めではある。

 なお、マルチプレイはフレンド同士と一緒になってプレイすることも可能だが、本稿執筆時点で異なるプラットフォーム同士のフレンドとのプレイには非対応となっている。公式の情報によれば、実装自体は検討されているようだが、時間を要するとのことなので、そういう形で遊んでみたいと思っている方は待ってみるのも選択肢かもしれない。

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 長々と書き綴ったが、やはり今の時点で気がかりなのは序盤のしんどさ。そこを超えると、ストーリーに関連した特殊なミッションにレイドバトルといった面白い部分が際立ってくるだけに、できればもっと早く本作の“トロ”の部分にたどり着きたいところだ。

 細かな部分でも「ディノサバイバル」終了後に時折挿入されるデモシーンのことがある。

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 このデモというのが「データベース」側に集まっている「ロストデータ」をすべて閲覧済みであることを前提にした内容になっている。つまるところ、まだ閲覧が途中の場合、ネタバレになってしまうのだ。しかもその後、「データベース」で未確認の「ロストデータ」を閲覧し終えると、そのデモシーンが(ご丁寧にも)また再生される。間延びしてしまうのだ。
 ここもプレイヤー側が閲覧済みか否かを判断して再生される仕様にした方がいいのでは……と感じた次第だ。

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 イベント系のミッションが再発生した時にデモシーンをスキップできない、斬撃主体で戦うゼファーの耐久力が若干モロすぎるなど、ほかにも細かに気になる箇所はある。だが、本作は発売後にもアップデートが計画されているタイトル。今後、様々な形で手が加えられて、より遊びやすく、魅力の多いゲームになっていくことを願う。

 今の時点でも「ディノサバイバル」の独特な構成、勝敗がそこまで重要でないことに由来する気軽な遊び心地、そして大規模なストーリーといった見所がある。序盤のこともあって根気が必要とされるが、時間をかければかけるほど、面白さが増していく紛うことなきスルメゲーに仕上げられているので、興味があればプレイいただきたい。勝敗に重きが与えられていないため、気軽に楽しめるシューターを求めている人なら、きっと刺さるはずだ。

 「それでは良い1日を!グッドラックです。」 

ライター
新旧構わず、色々ゲームに手を伸ばしては積み上げるひよっこライター。アクションゲーム(特に『メトロイド』、『ロックマン』)とストラテジーが大好物。フリーゲーム、VRゲームの動向もひっそり追いかけ続けている。
Twitter:@shelloop

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