今まで遊んだ中で一番難しいゲームと言えば?
ソウルライク、格闘ゲーム、弾幕シューティング……などなど、人によっていろいろなジャンルの作品が挙げられるだろう。
筆者にとって、今回ご紹介する『CatCube』はもしかすると“人生で一番難しいゲーム”だったかもしれない。「脳の普段使われていない部分」を総動員されるような、自分がこれまで培ってきたゲームやパズルの経験がちっとも役に立たないような、そんな独特の体験を味わったのである。
キュートなドット絵のネコ、左右移動とジャンプ程度の簡単なアクション。にもかかわらず、誇張抜きで“想像の100倍”難しいパズルゲーム。そんな『CatCube』の魅力について、今回は中国・上海で行われた大規模インディーゲームイベント「WePlay Expo 2023」の試遊体験をベースにお届けしていきたい。
「多面」を駆使する頭がよじれるパズル
この『CatCube』というのは恐ろしくヤバいパズルゲームだが、そのベースとなっているのは2Dアクション。プレイヤーはネコを操作して他のネコを起こしてあげたり、ステージ中に用意されたアイテムを集めていく。ネコの操作は左右への移動とジャンプだけ、と非常にシンプルなものだ。
本作の核は、ネコたちが動き回るステージがすべてひとつの「キューブ」としてつながっていること。キューブをグリグリと回転させるとステージの形が変わるが、ネコの位置は全部の面で共通している。分かりやすいパターンで紹介すると、ひとつの面の中では行けない場所へも、他の面を経由すればたどりつけるということである。
またジャンプについても同じようなことが言え、キューブを回している間は時間が止まり、ジャンプ中の猫は空中に静止する。なのでジャンプしながら面を切り替えると、床を通り抜けながら上へ行くような進み方もできるのだ。
このように複数のステージを並列に考えつつ、パズルを解いていかなくてはいけないというのが『CatCube』の恐ろしさのゆえんである。パズルの解法は非常に独特でオリジナリティが強いものとなっており、まず筆者はこのルールに慣れるまでにかなり頭をひねくり回す必要があった。
ただし、実際のゲームは1面からはじまり、各ステージで寝ているネコを起こすと新しい面が解放されるという仕組みになっているため、最初から6面並行して攻略する必要はない。自然と「だんだん難しくなっていく」ようにレベルデザインが整えられてはいる。それでも難しいことに変わりはなかったが……。
なお、各ステージで操作するネコの姿が変化するのだが、これがどれも非常にかわいい。ただし肝心のパズルはまったくかわいくないので、何とも複雑な気持ちにさせられた次第だ。
さらに複雑化していくギミック要素
上で触れた「壁を越える」、「床を越える」方法はごくごく基礎的な部分であり、本作にはさらにプレイヤーの頭をなやませるさまざまなギミックが用意されている。
まず、ひとつ目はキューブの「枠」が足場として活用できてしまうというもの。しかもキューブは上下左右にまっすぐ回すだけでなく、斜めに傾けることもできるので、スロープのような足場を作ることもできてしまう。一見すると自由度が上がってラクになりそうに思えるが、個人的にはむしろ解法の幅が広がって頭がよりおかしくなってしまった。
試遊のふたつ目のステージで登場した「水」のギミックも興味深い代物で、水に落ちたネコはスイーっと水面まで上がってくる。ただ浮かせるだけでは求める高さに達しないが、キューブを傾けて深くまで潜らせ、その後勢いをつけて浮かび上がることによって高くジャンプでき、たどりつきたい足場まで届く……といった具合だった。
このほかにもキューブを回すと一緒に動く足場があったり、ジャンプ不可のエリアでその足場を使って上へ登って行ったりと、解法は非常に多岐にわたるものだった。開発者の方が隣でヒントを出してくれたから何とか進むことができたものの、ひとりでは1面さえクリアできていたかも怪しい。
『CatCube』のパズルは本当に「ふだん使わない脳のパーツ」を使っているような感覚に陥ってしまう魅力があった。ゲームプレイに不思議な“立体感”とでもいうべきものが備わっており、試遊後に会場を歩いていると「ああ、俺はいま平面の世界に戻ってきたんだな」という謎の感慨に浸ってしまったのである。
本作は「WePlay Expo 2023」で発表されたインディーゲームアワード「IndiePlay」における、学生作品部門の候補として出展されていたものだ。そのため現時点では販売などの見通しは定まっていないようだったが、何とかグローバルなプレイヤーが遊べる形でリリースされることを祈りたい。