横スクロールの2Dアクションゲームはお好きですか?
探索型ではない、ステージクリア型の王道アクションゲームを欲していませんか!?
そんなあなたにモーレツにおススメしたい新作がある!
その作品の名は『グラビティ サーキット』だ!
この作品は2016年頃にSteamに商品ページが開設され、それ以来、長きにわたって「開発中」となっていた。実に7年以上の年月を経て、2023年7月に満を持して発売を迎えたのである。当時からウィッシュリストに登録していた筆者は即座に購入したのだが、これが2Dアクションゲーム好きの魂を揺さぶりかねないほどの面白さを持った傑作だった。
どれだけ面白かったのかと言えば、最終的に実績をコンプリートするまで遊びこんでしまったほどである。
その面白さを証明するかのごとく、Steamのレビューでは「圧倒的に好評」の高評価を7月の発売以来、長きに渡って維持している。
さらに9月21日から9月24日にかけて、千葉・幕張メッセで開催された「東京ゲームショウ2023」ではNintendo Switch版が出展。
実は筆者もクリアファイルをもらう目的で(さりげなく)遊んでいた。
それでありながらレポートを執筆しなかったのは、すでに本稿を仕上げていたためである。
11月30日をもってついにコンソール版が発売された今!
最高の状態になって日本上陸を果たしたこの時!
改めて、この珠玉の傑作アクションゲームを紹介したい。
ということで、先んじて言わせていただく!
これを読んでいる2Dアクションゲーム好きたちよ。直ちに買えッ!!!
文/シェループ
あの”蒼きヒーロー”の名作に多大な影響を受けた2Dアクションゲーム
いきなり結論付けてしまったが、ゲームの紹介に入ろう。
『グラビティ サーキット』は横スクロール形式のステージクリア型アクションゲームである。PC版にくわえ、11月30日からPS5、Nintendo Switchのコンソール版の販売も開始。ダウンロード版のみならず、パッケージ版も用意されている。
プレイヤーは主人公「グラビティ・サーキット」こと「カイ」を操り、無慈悲なロボットたち「ウィルス軍」と、彼らを裏で指揮する「ガーディアン部隊」との戦いを繰り広げていく。
本作の舞台となるのは、ロボットたちが社会生活を営む惑星。
数十年前、彼らは発掘調査が行われていた土地で「アーク」と称される謎の構造物を発見した。そして、それとタイミングを合わせるかのように「ウィルス軍」が出現。ロボットたちの街を始め、世界各地を襲撃し始めた。
武器を持たず、数でも劣るロボットたちは、「サーキット」と呼ばれる不思議な力で戦う9体の守護者「ガーディアン部隊」にすべてを託すも、戦いは次第に大規模な戦争へと発展。最終的にウィルス軍は撃退されるも、ガーディアン部隊はカイを除く8体が力尽きる形で終戦を迎えた。
そして平和が戻ったかに見えた数十年後の現在、倒したはずのウィルス軍が再び現れ、またもや世界各地を襲い始めた。同じころ、戦争当時のダメージにより、長き眠りについていたカイも目覚め、ウィルス軍に襲撃されている街へと向かう。
そこで目にしたのはガーディアン部隊の仲間「パワー・サーキット」こと「ケーブル」。ウィルス軍は彼らの指示によって動いていたのである。
なぜ、かつての仲間たちであるガーディアン部隊がこのような暴挙に出たのか?
カイは彼らの反乱を阻止し、その真相を突き止めるべく、戦いに身を投じていく……というのがストーリーのあらましである。
ほんの少しだが、ゲーム開始と共に始まるオープニングステージのイベントも含めた。
システム周りは8つあるステージを自由に選んで攻略するステージセレクト、最深部で待つボスを倒すことを目的とした各ステージのクリア条件、ボスを倒すと同時に得られる必殺技こと「バーストスキル」といった要素を特色としている。
2Dアクションゲームに詳しい人なら、これらには「んん?!」となったと思われる。
もう、隠さずに言おう。本作『グラビティ サーキット』は、カプコンの看板アクションゲーム『ロックマン』シリーズに強い影響を受けた、いわゆるフォロワー作品なのである。
厳密には派生の『ロックマンX』および『ロックマンゼロ』が近い。
壁を蹴りながら駆け上がるアクション、カイの基礎ステータスを向上させるパワーアップアイテムを見つけ出す探索要素、拠点マップを介して各ステージへと移動する仕組みがその象徴だ。
ステージ内で助けを求めるロボットを救助する要素もある。
元ネタが分かる人は「げえっ!」と声が出たかもしれないが、安心していただきたい。彼らが敵の攻撃(流れ弾など)を受け、永久に消え去ってしまうようなことはない!絶対にない!(力説)なので、安心して助けちゃってください!
カイが高速で移動する「ダッシュ」のアクションもある。ただ、本作の場合は対応するボタンを押しっぱなしで走る状態になる(離せば解除される)ことから、仕組み的にはやや異なるものになっている。
他にカイのアクションを拡張させたり、特定のステータスを上昇させるなどのパッシブボーナスを付与する「ブースターチップ」なるものもある。これは拠点マップにいる救護ロボット「ナース」から購入する形となっている。
ただ、購入に当たっては前述のロボットを助けた際に手に入る「救助トークン」なる専用通貨が必須。そしてその数も16種類と非常に多いのに加え、装備できるのは3つまで(切り替えはステージ攻略中ならいつでも可能)との制約も課せられている。
こんな具合にゲーム全体の作りは、フォロワー作品らしい”そのまんま”ぶりである。
ところがどっこい!明確に”違う”、本作ならではの特徴があるのだ!
打撃メインで立ち回る、格闘ゲーム風の戦闘スタイル
それこそが戦闘スタイル。
本作はパンチ、キックといった打撃とフックショットの2つを軸に戦うのである。
つまるところ、接近戦がメインの俗に言う“ステゴロ”スタイル。遠距離攻撃はサブ扱いなのだ。
そもそも、本作において遠距離武器と明言できるものはフックショットだけ。それも連射が効かず、主要な攻撃手段として適していない。ゆえに敵を素早く撃退したくば、その懐へと飛び込んでパンチやキックを叩き込む!まるで格闘ゲームのような立ち回りが必要とされる作りになっているのである。
そして、もうひとつ重要な攻撃技で「投げ」がある。
本作は敵にトドメを刺すとそのまま爆発四散せず、少しの間、灰色の状態になってその場に残り続ける。この時にフックショットを命中させると、カイが敵を持ち抱える。
そのままフックショットを射出するボタンを押し続けると持ち続け、離すと同時に敵を投げ飛ばすのだ。この投げ飛ばした敵が他の敵に当たると、なんと一撃必殺!
どんなに耐久力が高かろうが、当たった対象を一撃で倒してしまうのだ(大型系の雑魚敵は除く)。もちろん、当たった敵もすぐに爆発四散せず、その場に残り続ける。なので、再びフックショットを射出すれば、再び持ち抱えて、投てき用の武器として使える。
こうした倒した敵も武器として使えるというユニークな要素が盛り込まれている。また、その特徴通り、投げはフックショットに並ぶ事実上の遠距離武器(技)でもある。しかも、雑魚敵ならごく一部を除いて一撃で倒してしまうという、おそるべき威力を持っている。
しかし、それには倒した敵が必須となる都合上、連発はできない。そのため、結局は打撃で戦うことも必要という形でバランスを取っている。それに一撃必殺になるのはあくまでも雑魚敵だけ。ボスにはそのような効果はまったく発揮されない。そもそも、ボス戦では投げ技を使える機会が限られている。基本、メイン攻撃として用いるのは打撃なのだ。
このように本作は徹底して接近戦を強調したゲームデザインになっている。ただ、遠距離側にも「投げ」のような一撃必殺技があって、使い方次第で難易度を急低下させられる突破口を用意。そんな非常に個性的かつ、極端な一面を持ち合わせたバランスにまとめられているのである。この辺りは明確に本作独自の遊びとして確立されていて、作品全体の大きな特徴のひとつになっている。
答えは己で作れ!似ているようで異なる戦略性を持った「バーストスキル」
もうひとつ、独自性を象徴するもので「バーストスキル」がある。前述にてボスを倒すと解禁されると説明した通り、これは『ロックマン』で言うところの特殊武器に当たる。
「独自性も何もないじゃないか!」と物申したくなるかもしれないが、重要なことなので繰り返そう。倒しても“解禁される”だけ。倒すと“入手できる”とは言っていない。別の言い方をすれば“入手できない”。
入手するには拠点マップで、カイを後方支援してくれる旅人のロボット「ネガ」から購入しなくてはならないのだ。しかも、これすなわち、逆を言えばスキルの入手は任意。ひとつも買わずにゲームを進めることもできる。
「バーストスキル」自体もボス1体を倒すにつき2種類が解禁されるため、その総数は非常に多い。
そして、大事なこととして「バーストスキル」があってもボス戦が極端に簡単になったりはしない。そもそも、ボスたちこと「ガーディアン部隊」の8体に弱点は設定されていない。彼らを楽々と倒す“答え”は存在しないのである。
ただし、すべてのボスに対してノックバック効果を発揮したり、使い方次第で連続ダメージを与えられるスキルはある。そのようなスキルは「どこで使うと一番効果的なのか」と使っては試し、自分ならではの戦闘スタイルを編み出すというのが、この「バーストスキル」にまつわる特徴となっている。まさに「答えは自分で作れ!」。戦闘スタイル同様、格闘ゲームを思わせるコンセプトで設計されているのだ。
こちらは元ネタが存在することから、独自性は多少薄れる。だが、細かい仕様や活用法はまったく違っており、似ているようで違う面白さを演出する要素に仕上げられている。
ほかにも「バーストスキル」発動時に消費する「エネルギー」は全種類共用、スキルの発動は装備したスロットに応じて簡単なコマンド入力が必要になるといった点でも独自性を出している。特にエネルギーは最大値が少なく、前述のパワーアップアイテムで強化しても6目盛りまでのため、非常に枯渇しやすい。回復自体は専用の消費アイテムのドロップ率が高いことから容易だが、それでもずっと頼り切るのは難しい。こうした制限を課しているのも、独自性を物語る部分のひとつだ。
確かにゲームデザインの軸はフォロワー作品としての範疇に留まっている。だが、根幹たるアクション部分は本作ならではのもので、似ているようでまったく違う手応えを強く押し出したものに仕上げられている。
とりわけ戦闘スタイルは最たるもので、実際に触ってみれば、その違いと”格闘ゲーム”っぽさを感じられるだろう。
プレイヤー自身の上達が”圧倒的なスピード感”となって現れる秀逸なゲームバランス
本作最大のセールスポイントは、『ロックマン』のフォロワー作品としての“らしさ”と新作アクションゲームとしての独自性を絶妙なバランスで両立させていること。システム周りはソックリなのに、アクションゲームとしての手触りは全く違い、それでいて元の“らしさ”もある。そんな高度なまとまりを見せているのだ。
別物であることを最も象徴しているのは「投げ」と「バーストスキル」を使いこなす面白さと、それと共に生まれる圧倒的なスピード感だ。
特に打撃(パンチ、キック)なら3~4発ほど叩き込む必要のある敵を一撃で倒す「投げ」は、使いこなすだけでステージの進行速度に決定的な違いが出る。そこに「バーストスキル」による攻撃を適時加えれば、文字通りのノンストップアクションが実現。圧倒的な力と、忍者のごとき勢いでステージを駆け抜ける気持ちよさを味わえるのである。
とはいえ、初見で実現可能なほど簡単ではない。できるようになるにはステージの構造、敵の配置を把握することが必要。だが、どちらにもランダム性はなく、決まったパターンに沿って設計されているため、やればやるほどに経験と記憶が指と頭に蓄積されてくる。それと共に動きも洗練されていき、最終的には前述のようなアクションを難なくこなせるようになっていく。プレイヤー自身の上達がきちんと現れ、それが圧倒的なスピード感という絵的にも仰々しい形で返ってくるようになっているのだ。
プレイヤーの上達がちゃんと結果として返ってきて、見た目でも変化が現れるというのはよいアクションゲームの証でもある。
本作もその醍醐味を見事に押さえると同時に、「投げ」と「バーストスキル」という独自要素を活用して表現。このまとめ方が絶妙で、フォロワー作品らしい“らしさ”と、まったく別のアクションゲームとしての手ごたえを確立させているのである。