制作会社が直々に「ほぼ原作ファン向けに作った映画」だと明言していたことでも話題になった、映画『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』。
日本公開前までの全世界売り上げは約400億円にものぼり、既存ファン以外への広がりも見せている同作が、ついに2月9日劇場公開を迎えました。
本作は前述の通り「原作ファン向けに作った映画」とのことで、作中には原作を知っている人であれば誰でも気づくあんなネタやこんなネタが盛りだくさん。
お話自体も原作との親和性がしっかり保たれているのですが、自分自身が原作にほとんど触れていなかったりすると逆に身構えてしまいますよね。
実際筆者も、記事を執筆するのが自分でいいのかギリギリまで悩んでいたくらい。第一作目が怖くてクリア出来てなかったんです……。
でも実は本作、初心者だからこそ楽しめる映画でもあります。原作の細かいストーリーを知らなくても、登場するマスコットたちを知っているだけでも解像度はグッと拡がっていくのです。
そこで今回は、初心者が映画『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』を楽しむうえで、知っておくと嬉しいかもしれない基本知識や制作裏話をご紹介。ゲーム『Five Nights at Freddy’s』を知らなくても映画を楽しんでほしいというコンセプトの記事となっています。
文/Squ
※本記事は、本作を配給する東宝東和さんからのご招待による事前鑑賞の上、執筆しています。映画のネタバレには配慮していますが、記事中に予告編以上の情報が含まれている可能性があります。
これから映画を見るために。フナフを知ろうのコーナー
アメリカのゲーム開発者スコット・カーソン氏が手掛けたホラーゲーム『Five Nights at Freddy’s』(以下、FNAF)は、2014年に第一作目がリリースされました。
バッテリーを気にしながら監視カメラを確認するだけというシンプルさや、登場する個性的なマスコットたちが人気を呼んだ、今も世界中で大人気のシリーズです。電ファミ読者の中にも、同シリーズをプレイしていたりプレイ動画を見たことがあるかもしれません。
かく言う筆者も、ファンたちの間で「FNAFの王様(King of FNAF)」と呼ばれる海外の有名YouTuber「Markiplier(マークプライヤー)」氏による動画をきっかけに本作の世界に足を踏み入れた一人。氏が初めて本作をプレイした動画は1億回以上再生され、ブームの火付け役になった人とも言われています。
現在ではゲームの域を超えて小説やアンソロジーなどが展開され、フランチャイズとして確立している『FNAF』シリーズ。廃墟のようなファミリーレストランで「夜間警備員のバイトをするだけ」といういたってシンプルなゲーム内容となっていますが……。
襲ってくるんです、パーティー用の人形が。
映画『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』(以下、フナフ)では、ゲーム第一作では大きく語られなかった主人公・マイクやその家族にフォーカスしています。
主人公・マイクは、過去に発生した弟の行方不明事件をトラウマとして抱えており、仕事もなかなか安定しません。妹の養育も考えなければいけない中で、「フレディ・ファズベアーズ・ピザ」での夜間警備員のバイト求人に出会うわけですが、そこには自ら動き出すマスコットたちの姿が。
全力で襲い来るマスコットたちの存在と、妹の養育を天秤にかけながら警備員の仕事を続けざるを得ないマイク。その中で見えてくる「店の秘密」が物語の鍵となります。
映画版『フナフ』は日本公開前のタイミングで約400億円の売り上げをあげている作品。「原作モノの実写化は難しい」と一般的に考えられてしまう時代に、なぜこれだけの成功をおさめられたのでしょうか。
次項では、本作を制作した映画製作会社「ブラムハウス・プロダクションズ」に注目します。
この映画を作った「ブラムハウス」ってどんなスタジオ?
本作を制作したのは、アメリカに拠点を構えるブラムハウス・プロダクションズ。
ハリウッドでも上位に位置する映画制作会社で、日本国内の同プロダクションのファンからは「ブラムハウス」と呼ばれ親しまれています。
AI人形を恐怖の対象として描いた『M3GAN/ミーガン』や、定点カメラの映像だけで語られる『パラノーマル・アクティビティ』など200作以上の作品を送り出し、全世界累計で57億ドルにも及ぶ収益をあげているスタジオ。
実は彼らが作っているのはホラー作品ばかりで、見たことのあるホラー映画を辿ると大体ブラムハウス作品なんてこともしばしば。筆者の体感値としても、「ホラーでブラムハウス製ならハズレない」という印象です。
ゲーム『FNAF』が大ブームになった時、原作者であるスコット・カーソン氏の元には映画化を希望する連絡が数多く来ていたといいます。
その中にはブラムハウスのCEOであるジェイソン・ブラム氏からのオファーももちろん含まれていましたが、当時他の制作会社と交渉を重ねていたカーソン氏は警戒。説得には1年もの歳月を要したとブラム氏は語ります。
カーソン氏によればブラム氏が原案であるゲームに忠実であり続けたことや、カーソン氏自身の直感を尊重したことで信頼を勝ち取れたきっかけとのことで、ブラム氏やブラムハウス・プロダクションズの原作者に対するリスペクトが伺えると同時に、今作が高い評価を得ている理由の一つが垣間見えてくることでしょう。
CGじゃなくて本物!?圧倒的実在感のマスコットたち
本作でもっとも大きな魅力は、なんといっても圧倒的な実在感を誇る本物のマスコットたちです。
彼らはゲーム版『FNAF』シリーズで最も象徴的な存在。この映画において一番重要な要素であり、ファンが最も重要視する部分ではないでしょうか。
映画『フナフ』で登場するマスコットは、クマのフレディ・ファズベアー、ウサギのボニー、ヒヨコのチカ、キツネのフォクシー・ザ・パイレーツの4体。彼ら、全部本物なんです。
今回撮影に使用されたのはなんと、本物のアニマトロニクス。『セサミストリート』のマペットを生み出したことで有名なジム・ヘンソン氏が設立したジム・ヘンソン・クリーチャーショップによって制作されました。
現場にはカーソン氏も定期的に監修に訪れ、世界観やバックストーリーを軸としたアドバイスや、自身の理想像と合致するかのチェックも行われたと言います。
しかし、このマスコットたち。予告編をチェックしていただくとわかると思うのですが、ただのアニマトロニクスとは思えない生命が宿ったような表情を見せてくれるのです。
フォクシー以外のマスコットたちには実際に役者が中に入ることの出来るバージョンも制作されていたとのこと。
映画『フナフ』にカメオ出演しているYouTuberのDawko氏は自身のYouTubeチャンネルに映画のセットに招待された際の様子を投稿しており、その映像からもマスコットたちの豊かな表情や愛くるしさがわかります。
中に人がいるからこそ、本当に生きているように感じることが出来るのかもしれません。
※動画では映画のセットが詳細に映されているため、再生の際はご注意を
作品を知るきっかけに
映画『ファイブ・ナイト・アット・フレディーズ』は「ファンのためだけに作った」という言葉に嘘偽りなく、本当に作品を愛している人たち。そしてリスペクトしている人たちが制作した映画となっています。
アメリカでの公開から待つこと約3カ月半。この映画が完成するまでにかけられた10年という歳月と、カーソン氏、ブラム氏とブラムハウス・プロダクションズ、そしてファンたちのコミュニティが創り出した愛の結晶は原作ファンだけでなく、映画『フナフ』からシリーズに触れた方にも伝わることでしょう。
特にこの作品には、1度見ただけでは見つけきれない、山のようなイースターエッグが仕込まれています。お友達を誘って語り合うもよし、知らない人に布教するもよし。本当にいろいろな楽しみ方が出来る映画だと思います。
映画『ファイブ・ナイト・アット・フレディーズ』は、2月9日より全国で公開中。さまざまな愛に包まれた最高のショーを劇場で味わってみてはいかがでしょうか。