ゲームエンジンなどの発展により、ビデオゲームのグラフィックの写実性は日に日に向上している。いっぽう、高精細かつ高画質なグラフィックを表現するには、PCなどのスペックはもちろん「相応のモニター」も必要になる。
BenQのゲーミングブランド「MOBIUZ」の新ゲーミングモニター「EX321UX」は独自AIや、昨今の「ハイエンドなトリプルA級ゲームのグラフィック」を余すことなく表現するモニターになっている。
このたび、ゲーミングモニター「EX321UX」の発表会と、わずかな時間ながら体験会に参加する機会を得た。本記事では実際にゲームや映像を鑑賞した印象を交えて、「EX321UX」の性能や魅力を紹介しよう。
BenQには競技性の高いゲームにおける機能を追求し、eスポーツシーンにおいてさまざまな選手も利用するブランド「Zowie」が存在するが、このたび発表された商品は没入感を追求するブランド「MOBIUZ」の新商品となっている。4Kで144Hz、応答速度が1ms(GtG)の映像を出力できるゲーミングモニターとなっており、没入感を追求した製品でありながら、競技性の高い対戦FPSも充分楽しめる隙のない仕様だ。
技術的な要素としてはミニLEDバックライトや量子ドット、独自のAIを搭載することで色ムラや白/黒つぶれを軽減した美しいグラフィックを実現。また、画面の美しさと共に視認性を高める色調などの調整も可能であり、没入感をベースに全方位的な需要をカバーする商品と言えるだろう。
店舗想定価格は26万5000円で、発売日は5月31日(金)。すでにヨドバシカメラ、ビックカメラ、ソフマップ、BenQのオンラインストアでは予約受付を開始している。また、ヨドバシカメラ マルチメディア Akiba、ビックカメラ 池袋カメラ・パソコン館、ソフマップAKIBAパソコンデジタル館、ヨドバシカメラ マルチメディア梅田にて先行展示も開始している。
本記事などを通じて興味を持たれた方は、ぜひ店頭に足を運んでご自身の目で性能をチェックしてみてほしい。
それでは、具体的な「EX321UX」のスペックを見ていこう。
取材・文/りつこ
ミニLED×量子ドット×独自AIで高まる没入感。クリエイター向けモニターに匹敵する色域の広さと黒の深みをご照覧あれ
前述のとおり本製品には、従来のLEDより小型のミニLEDを私用したバックライトが採用されている。さらに、1152のゾーン分割によるローカルディミング機能を採用し、バックライトの制御を正確に行える。「黒い部分の明るさ」などがモニター明暗の階調の豊かさを左右するが、正確なローカルディミング機能によりレンジの広いコントラストを実現している。
さらに、量子ドットと呼ばれる技術を採用することで高色域も実現。これらにより、高輝度・高色域・高コントラストの映像を出力可能となっている。HDR1000の認可も受けており、最大HDR時で1000カンデラの輝度や黒の深み、色域の広さといった項目を公的に証明された製品と言える。
色域に関しては従来のBenQのゲーミングモニターと比較してもダントツであり、同社が提供するクリエイター向けのデザイナーズモニターに匹敵する色域のカバー率であるという。
昨今では映像やグラフィックデザインの技術を持つ方は増え、仕事であれ趣味であれ決して少なくない方がPCを駆使した制作や編集に触れていると推測される。これに伴い「作業中に正しい色彩で確認できない」という問題があるいっぽう、デザイナーズモニターとゲーミングモニターの双方を用意するハードルは大きい。かくいう筆者もBenQのデザイナーズモニターで無理やり対戦FPSなどを楽しむ始末で、「お金に余裕があればゲーミングモニターも欲しい」と切実に感じている。
本製品の優れた色彩はそういった問題もクリアできるため、「PCでの制作とゲームを一台のモニターで行いたい」という需要にもバッチリと応えてくれるだろう。
もうゲーム中にポチポチ設定を変えなくて良い。なぜならAIが調整してくれるから(手動でもメチャクチャ調整できた)
そして本商品の優れたポイントは、AIによる画面調整など4つの機能で構成された機能「PixSoulエンジン」が搭載されている点だ。
注目のAI調整機能は「Shadow Phage」と呼ばれる機能であり、データベースと搭載チップのアルゴリズムにより自動で輝度・色彩・コントラストが調整される。これはモニターで出力されるコンテンツに応じて実施されるため、作品や場面ごとに最適な設定に変化する。
ビデオゲームによっては同一の作品内でもシーンごとに明暗の差が激しい。これにより、ゲームを一時中断して設定を変えたり、自分で施した設定に違和感を感じたりした経験のある方も多いだろう。本機能はリアルタイムでの自動調整が施されるため、上述したようなかたちで没入感を失うことなく、ゲームにのめり込むことができそうだ。
公開された他社製の有機LEDモニターとの比較映像では、本機能をオンにした時とオフにしたときの顕著な違いが伺える。作品に応じて設定を施し直す必要もないという本機能は、画面の色味にこだわりがある方には嬉しい機能である。
モニターでは、同じ色を表示しているのに「画面の中央は明るく、エッジは暗く見える」といった問題がしばしば発生する。そんな問題を解決すべく、本商品は出荷時のキャリブレーションによって均一化が促されているほか、一部のモードで明るさなどを調整し「色ムラを補正する機能」が搭載。さらに、使用時にパネルごとの状態を分析し、輝度の範囲の設定やコントラストを自動で調整する「自動コントラスト調整」機能も用意されている。
くわえて、明確に自分の好みにマッチした調整を行いたい方に向けて、3つのカラーモードも登場。カラーモードは刷新されており、ビデオゲームのジャンルではなくゲームのアートスタイルに対応した「Sci-Fiモード」、「ファンタジーモード」、「リアリスティックモード」がラインナップに並ぶ。カラーモード自体はこれまでも存在したが、今回搭載されるものはさまざまなゲームにおける色やコントラストなどの傾向をBenQが独自に分析し、新たに制作されたものだという。
筆者は発表会にてハッと気づかされたが、ゲームジャンルは同一であっても作品の設定に応じてグラフィックは大きく異なる。アートスタイル毎の傾向や特徴を分析した結果作られた設定であるため、より理にかなったカラーモードとして活用できるだろう。
このほかに、画面の色味を崩壊させないバランスを維持しつつ明暗を20段階で設定できる「Light Tuner」と自然なニュアンスを維持しつつ彩度を変更できる「Color Vibrance」も搭載されている。
とはいえ、ここまで設定項目が多いと「適切な設定」にすることが面倒であるように感じる方もいらっしゃるかもしれない。そこで、カラー設定を保存・共有・ダウンロード可能なソフトウェア「Color Shuttle」の登場だ。
本ソフトは「MOBIUZ」シリーズの製品に対応しており、ゲームタイトルごとにBenQのゲームエキスパートが用意した設定がダウンロード可能というもの。自分で調整する楽しさを楽しめる本商品だからこそ、「お手軽に良い設定」を使いたい方にも寄り添った本機能が搭載されることでより多くのユーザーにマッチした製品に仕上がっていると言えるだろう。
また、本機能はユーザーによる設定の共有も可能であるため、著名なストリーマーらの設定を適用しおそろいの環境を構築することもできる。たとえば「MOBIUZ」がスポンサーであるVtuber・猫麦とろろさんの設定も利用可能となっているので、同氏のファンは推しと同じ形式でゲームをプレイできる。もちろん、自身の設定を保存する用途においても活躍してくれるだろう。
超ハイエンドなモニターでいざリムグレイブへ。真っ暗な「林脇の洞窟」に入ると自動で画面を調整する、魔法みたいな機能が本当にあったぞ
体験会ではフロム・ソフトウェアが手掛けるアクションRPG『エルデンリング』をプレイしつつ「EX321UX」を体験させてもらった。
まず、黄金樹が遠方にそびえ立つリムグレイブはとても豊かな色彩で出力されていた。とくに印象的だったのはコントラストの表現に長けている点で、足元の草木やツリーガードの鎧のディテールなども非常に鮮明である。
ローカルディミングをオフにすると明らかに画面がのっぺりと平面的な印象へ変化したため、1152のゾーン分割によるローカルディミング機能の意義と魅力を如実に思い知らされた。
また、筆者はAIによる調整機能を確かめるべく光源ナシでの攻略が困難なほど暗い「林脇の洞窟」を訪れてみた。洞窟に入り、祝福の先にある暗黒に身を投じてみれば、しっかりと画面の設定が暗所でも視認性が高い設定に変化。従来ではモニターの設定をポチポチと変更する必要があったのに、即座に自動で設定が変更される便利さには、素直に感動した。
いっぽう、AI機能を使用せずとも「EX321UX」は「林脇の洞窟」のようなロケーションを色彩豊かに表現していた印象だ。というのも、完全な暗黒を表現する深い黒色と、その中に垣間見える洞窟の壁面のハイライトが違和感なく識別できる。こういった体験から、マップのディテールを損なわずに表現してくれることの魅力も大いに感じた。
設定は付属のリモコンで操作可能であり、画面の一部にHUDが表示され、画面右上にフレームレートを常に表示する機能も搭載。パソコンの状態や性能を確認する用途でも活用できるだろう。また、シナリオマッピング機能も用意され、入力端子間でカスタムモードを共有できるほか、最大5つの設定を登録可能だ。
このほかに「Sci-Fiモード」、「ファンタジーモード」、「リアリスティックモード」といったカラーモードや輝度および彩度の手動調整機能も体験させて頂いた。いずれも明確に画面が変化するものの「ちゃんと画面が破綻しない」ように設計されており、「こまかく調整しないと正解に辿り着けない」といった仕様を回避しつつ、画面のカスタマイズ性が確保されている点も本商品ならではの長所と言えるだろう。
体験時間が限られていたこともありミニマルな分析と確認のみとはなったが、発表にあたって押し出されている新機能はバッチリと機能していたと感じる。なかでも黒の深みとAIによるリアルタイムの調整は、ぜひ先行展示などでチェックしていただきたい。
宇宙船みたいな「SF」を感じるクールなボディにさまざまな機能がてんこもり。Vtuber・猫むぎとろろさんとのコラボも実施
ハイエンドでサイズの大きいモニターにおいては、その存在感からインテリアとしての側面も自ずと生じる。本商品のデザインは曲線的な造形を採用したSF的なデザインで、「新しい領域に切り込んでいく」というコンセプトから宇宙船をモチーフにしているという。
ボディはマットな白色で、汚れも目立ち辛い仕様。左右が15度、上が35度、下向けが5度傾けることができ、角度の調整も可能だ。
なお、本商品にはスピーカーは内臓されていないが、HDMI eARCのポートを搭載しており、最大7.1chのサラウンドに対応。ESS SABRE DACを内蔵し、スピーカーまたはヘッドホンでノイズの少ないオーディオを楽しめる。ヘッドホン出力においては「サラウンド・シネマ」といったオーディオモードの設定や、ゲインの調整もモニター側で実施可能だ。
接続性に関しても以下の充実っぷり。1組のキーボード・ディスプレイ・マウスを複数のパソコンで共有して使用できるKVMスイッチにより、デスクまわりもコンパクトに整頓できる。
ブルーライト軽減機能、輝度の自動調整機能を搭載し、フリッカーフリーのパネルを搭載していることで目にも優しい。長時間ゲームをプレイして目が疲れた時、業務や事務作業などにおいてはアイケア機能がカバーしてくれるだろう。
・HDMI 2.1 ×3
・DisplayPort 2.1 ×1
・USB Type-C(65w給電) ×1
・USB3.2 Gen(4.5W Downstream) ×3
・USB Type-C(7.5W Downstream) ×1
・USB Type-C(Upstream) ×1
・3.5mmヘッドホンジャック
発表会のラストには、番組にコメンテーターとして出演したVtuber・猫麦とろろさんにちなんだクーポンコード「TORORO10」がアナウンス。同コードをBenQダイレクトで使用すれば、「MOBIUZ」製品を10%オフで購入可能とのことなので、本商品の購入を検討している方はぜひ活用してほしい。
さらに、5月下旬には猫麦とろろさんと「MOBIUZ」による限定コラボグッズも発表予定だ。番組ではモニターの端に取り付けられるメモボードが先行でお披露目・5月31日(金)よりBenQダイレクトでモニターを購入したユーザー向けにプレゼントされるとのことなので、キャンペーンの詳細はBenQの公式サイトをチェックされたい。