6月28日から劇場公開されている映画『それいけ!アンパンマン ばいきんまんとえほんのルルン』で描かれる「アンパンマン」と「ばいきんまん」の関係性がとにかく熱い。
彼らが敵対関係にあることは、多くの人が知っているかと思います。ばいきんまんが悪さをしたらアンパンマンがやってきて、アンパンチやアンキックで吹っ飛ばす。ばいきんまんは、いつもアンパンマンに勝てません。だからこそ、ばいきんまんは “アンパンマンが強いこと” をだれよりも知っているのではないでしょうか。
本作はそんなばいきんまんが主役の映画。絵本の世界に迷い込んでしまったばいきんまんが、妖精「ルルン」を救うために愛と勇気の戦士となって奮闘します。しかし、ばいきんまんの力だけでは歯が立ちません。健闘むなしく絶体絶命のピンチに陥ったばいきんまんはルルンにこう伝えます。
「アンパンマンを呼んでこい!」
敵対関係にあるアンパンマンに対して助けを求める行為は、ばいきんまんにとって「自分より強い存在」を認めることになるのではないでしょうか。それでもルルンを救うために潔くプライドを捨てる姿があまりにもかっこよく、その決意に心を打たれました。
本稿では、映画『それいけ!アンパンマン ばいきんまんとえほんのルルン』で描かれるふたりの関係性と、何度失敗しても腐らない “ばいきんまんマインド” について紹介させてください。
文/柳本マリエ
※この先は、映画『それいけ!アンパンマン ばいきんまんとえほんのルルン』の詳しいあらすじやばいきんまんの行動について言及しています。内容について少しも知りたくないという方はご注意ください。
敵対関係にあったアンパンマンとばいきんまんが共闘
本作については、公式サイトにて公開されているあらすじを読んでもらうのがいちばんわかりやすいと思います。
ある日、一冊の絵本を見つけたばいきんまん。絵本から「愛と勇気の戦士ばいきんまん、助けにきて!!」と声が聞こえ、絵本の中に吸い込まれてしまいます。
砂漠の先に広がる大きな森で出会ったのは、森の妖精・ルルン。怖がりで勇気が出せないルルンは、森で大暴れする “すいとるゾウ” をやっつけてほしいとばいきんまんにお願いします。
最初は嫌がりながらも、諦めずに立ち向かうばいきんまんの姿にルルンは勇気がわいてきます。しかし、すいとるゾウの強さに大苦戦! 絶体絶命のピンチの中、ばいきんまんはルルンに「アンパンマンを呼んでこい!」と伝えるのでした── 。
アンパンマンとばいきんまんが力を合わせて大活躍!
こうしてばいきんまんとアンパンマンが共闘するのですが、呼ばれたアンパンマンがただ敵を倒すだけではないところが熱い。
おそらくアンパンマンは、ばいきんまんが「どんな気持ちで自分に助けを求めてきたのか」をわかっていたはず。だから、ばいきんまんの「ルルンに対する気持ち」を尊重したのでしょう。
アンパンマンには、すいとるゾウを吹っ飛ばせる機会もありました。でも、それではアンパンマンがルルンを救ってしまう。ばいきんまんが恥を忍んで助けを求めてきたことをわかっているからこそ、アンパンマンはまずサポートに回ります。
ばいきんまんとアンパンマン、それぞれの立場を考えると胸が熱くなりました。
ばいきんまんとアンパンマンに励まされながら怖がりのルルンが成長していく姿は応援せずにはいられません。「愛」と「勇気」に気がついたルルンが見せる活躍に涙を流したのは筆者だけではないでしょう。
少しでもアンパンマンを知っている人なら刺さるストーリーだと思うので(つまりほぼ全員)、ご興味があればぜひ映画館でこの感動を体験していただきたいです。
失敗しても改善を続ける “ばいきんまんマインド”
今回、ばいきんまんの技術者としてのスキルと改善を重ねるマインドにも驚かされました。というのも、不利な状況下でも諦めずに「いまできる最善」を考えて行動に移していたからです。
たとえば、ばいきんまんはすいとるゾウを倒すためにメカになりそうなものを探しに行くのですが、ルルンに連れられて行ったお城には使えそうなものが見当たりませんでした。そこでばいきんまんは、お城のアイアンシャンデリアを溶かして鉄を抽出するところから始めます。
えっ、鉄を!? そこから!?
しかし本当にすごいのはここからでした。こういうとき、一般的には「カンカンカンッ」とやや早送りの描写などで秘密兵器や最強武器が作られたりするじゃないですか。一方で、ばいきんまんが「溶かした鉄から最初に作ったもの」ってなんだと思います?
「斧」や「カンナ」などの “道具” でした。
もはや『マインクラフト』の世界。まず道具から作るのか、と。
道具が揃ったところでばいきんまんはようやく木を切り始めます。しかし切った木はそのままでは使えません。皮をむいて製材する必要があるため、そこで先ほど作ったカンナなどが役に立ってくる。
そのあとは宮大工のような技術であれよあれよと組み立てていきます。骨組においてどうやらばいきんまんは木材の端部に切り込みを入れ、釘などを使わずにつなぎ合わせる工法を用いているようでした。職人すぎる。
しかも、ばいきんまんの横で失敗(結果的にばいきんまんの邪魔)ばかりしてしまうルルンに対して「おれさまなんか何回も失敗してんだ!」など励ましの言葉もかけます。心の広さがやばい。
この、失敗しても挑み続ける “ばいきんまんマインド” は見習うべき考え方だと思いました。子どものころはあまり意識しなかったけど、ばいきんまんはいつも「今度こそ」「今度こそ」と改善を重ねてアンパンマンに挑んでいます。だから決して腐らない。その姿勢にハッとしてしまいました。
いわゆる、PDCAサイクル(計画/実行/測定・評価/対策・改善)を回しまくることで高いモチベーションを維持しているのでしょう。
こうして完成したのが「ウッドだだんだん」。準備段階の描写がかなり細かいので、実際にだだんだんが動いたときは感動しました。本作の注目ポイントのひとつです。
子どもはもちろん大人も開始早々にブチ上がる
じつは劇場に行く前に公式動画を確認したところ「楽しい歌や踊りもたくさん」とアナウンスされていました。
筆者はこれまでアンパンマン映画を観に行ったことがなかったため「なるほど、歌や踊りで子どもたちを飽きさせない工夫がされているんだな」などと思っていたんです。しかし実際に映画が始まると、歌や踊りでブチ上がったのは38歳の筆者でした。
だってどれもこれも歌えるから!
子どもたちを飽きさせない工夫とばかり思っていたのに、まさか自分がこんなに歌や踊りに反応するなんて。とくに「アンパンマンたいそう」のイントロ(ギター)がやばい。
つまり、ストーリーも歌も踊りも最高でした。この映画を多くの人に知ってもらいたいと思い、急いでこの記事を書いています。
「アンパンマンを呼んでこい!」
ばいきんまんがどんな気持ちでこの言葉を放ったのか。アンパンマンはどんな気持ちでこの言葉を受け取ったのか。想像すると胸が熱くなります。
ばいきんまんにとってアンパンマンは、倒したい存在であり敵わない存在。そういう相手に潔く助けを求める姿はめちゃくちゃかっこいい。“ばいきんまんマインド” に心を打たれました。
ちなみに本作は、シリーズ歴代ナンバーワンのオープニング興行成績となったとのこと。「いい大人だからアンパンマンを観に行くのは恥ずかしい」と思っていたら、そこはぜひ勇気を出して劇場に足を運んでいただきたいところ。筆者は観に行って本当によかったと思っています。改めて「アンパンマン」という作品が好きになりました。
映画『それいけ!アンパンマン ばいきんまんとえほんのルルン』は全国の映画館にて公開中です。