『ニンジャスレイヤー ネオサイタマ炎上』は、『ニンジャスレイヤー』を原作とした本格アクションゲームタイトルだ。
6月にニンテンドーダイレクトにて行われた発表では、新旧多くのファンがSNS上で「忍殺語」を使った反応を見せトレンド入りを果たすなど、大きな盛り上がりを見せた。『ニンジャスレイヤー』シリーズのファンにとっては、まさに今最も注目すべきタイトルだろう。
2024年7月19日〜21日にかけて開催された日本最大級のインディーゲームの祭典“BitSummit Drift”では、そんな本作を発売に先駆け体験することができた。
さらに、本作のディレクターを務めるSkeleton Crew Studioの立石真基(たていし まさき)氏に直接お話を伺うこともできた。
今回の記事では、『ニンジャスレイヤー ネオサイタマ炎上』を実際に遊んでみた感想と、立石氏へのインタビューの二本立てでお送りしよう。
ハイスピードで雑魚を蹴散らす2Dアクションが気持ちいい!
まずは本作の感想から。
本作のジャンルは2Dアクションだが、公式が「ハイスピードニンジャアクション」を謳っている通り、高い機動力を活かしたスピード感溢れるプレイが特徴的だ。
プレイヤーは主人公である「ニンジャスレイヤー」となり、道中の雑魚敵を様々な必殺技で蹴散らしながらステージを突っ走る。そして、エリアの最奥にいるボスを倒せばステージクリア。
非常にシンプルかつ分かりやすいシステムで、道中では雑魚を全て倒さないと進めない箇所が存在したり、ボスを倒すと新たな必殺技を獲得出来たりと、往年のアーケード作品やファミコン時代の名作2Dアクションを想わせる作りとなっていた。
一方で、ゲームスピードはかなり現代風だ。
敵は攻撃を浴びせればすぐにサヨナラしてしまう雑魚ばかりなので、攻撃ボタン一つで敵を蹴散らす無双アクションのような気持ちよさを味わえる。しかし、敵の火力もかなり高いので、油断するとこちらがやられてしまうなんてことも……。
また、ニンジャスレイヤーは非常に優れたジャンプ力、足の速さを持つほか、2段ジャンプ、壁キックなども行えるため、プレイヤーは画面の上下左右を縦横無尽に飛び回ることが可能となっている。
画面に飛び交う敵の絶叫、激しいスリケンとミサイルの応酬、そして目にもとまらぬスピードで画面を駆け抜けるニンジャスレイヤー。気持ちよさを全開に押し出した作りは、アクションゲームファンにもうってつけだろう。
必殺技やカットシーンには、原作要素たっぷり!
本作は優れたアクションゲーであると同時に、優れたキャラゲーでもある。ニンジャスレイヤーのとるブリッジ回避やツヨイ・スリケンなど、各種アクションは原作を基にしているほか、多数ある必殺技には専用カットインも用意されている。
また、ステージ開始時やボス戦前に挟まれるカットシーンでは、原作でお馴染みのセリフも登場。ボス戦では恒例の”あの挨拶”も観ることができる。ボスキャラは全部で8体以上、それぞれが原作にも登場するボスたちで、戦闘スタイルも個性的なものばかり。ボス戦では雑魚とは一味違う、じっくりとした手に汗握る戦闘が楽しめる。
これら以外にも、一度体力がゼロになるとニンジャスレイヤーの内に秘められた「ナラク・ニンジャ」の魂が暴走し、より強化された状態で一度だけ死亡地点から復活できるシステムが存在する。技一つからシステムに至るまで、とにかく原作要素が盛りだくさんとなっている。
これまでにも、『ニンジャスレイヤー』を題材にしたゲームはリリースされている。だが、ここまでの完成度を誇るのは、間違いなく本作が初めてだろう。
そんなファンにとっては待ち焦がれた本作だが、開発チームは本作をどのように捉えているのか?
今回、開発のSkeleton Crew Studioで本作のディレクターを務める立石真基(たていし まさき)氏にお話を伺うことができた。
感想はここまでとして、ここからは立石氏へのインタビューをお届けしよう。
原作者による「忍殺語」に留まらない監修で「原作ファンに愛される作品」を目指す。ディレクター・立石真基氏インタビュー
—―本日はよろしくお願いいたします。ニンテンドーダイレクトで発売日が発表されてから、あれよあれよという間にもう発売日がやってきそうです。開発の期間は全体だとどれくらいの長さになるでしょうか?
立石氏:
企画段階から数えれば一年半くらいでしょうか。長くかかった方だと思います。だけど、発表から発売までの期間で見るとかなり短いと思います。Switch版に関しては発表から一か月で発売ということになりますね。
—―本作の開発のきっかけは?
立石氏:
企画自体はSkeleton Crew Studio側から立ち上がったものです。
もともと「ニンジャスレイヤー」は原作からしてアクション性豊かで、非常にアクションゲーム向けのIPなはずです。それにも関わらず今までアクションゲーム化はされてこなかった。
今回はそこを狙って、自分たちからKADOKAWAさんに企画を持ち込ませて頂きました。
—―始めからスピードアクションがコンセプトだったんでしょうか?
立石氏:
そうですね。スピードアクションは、スタート段階からコンセプトに組み込まれていました。もちろん全てがトントン拍子で進んだわけではなく、ゲーム制作中で原作者の方からもフィードバックを頂きながら開発を進めましたね。
—―原作側からはどのようなフィードバックがありましたか?
立石氏:
それが原作チームさんもかなりのゲーマーのようでして。
例えば敵を一掃しないと進めない箇所を作る際、始めは画面右端にブロックをするエフェクトを用意していなかったんですが「こういうのは進めないことをしっかりプレイヤーに表示した方がいい」とフィードバックを頂いて……もはや開発者のような意見ですよね(笑)。
—―なるほど、それはかなりのゲーマーですね(笑)。ゲームの調整以外にも、監修等ではどのようなやり取りが行われたのでしょうか?
立石氏:
今作はストーリーシーンを多数用意しているので、世界観の監修にはこだわって頂きました。
始めのうち、ストーリーシーンには原作やコミックのセリフをそのまま引用していたのですが、原作チームさんから「原作準拠よりもシーンに合ったセリフ」を重視してほしいと要望があり、全面的に改修することになりました。
—―そんなことが。
立石氏:
もちろんストーリーの軸は原作と同じものですが、シーンによっては展開をより『ニンジャスレイヤー』に相応しいものに書き直していただきました。
同じシーンでもセリフや展開はゲームならではのものになっているので、原作ファンの方にこそ楽しんでいただけるかと思います。
——ニンジャスレイヤーと言えば何といっても「忍殺語」が有名ですが、そういった言葉もシーンに合わせて新たに書き直されたわけですか。
立石氏:
そうです。もともと自分たちが用意していたセリフも原作から持ってきたものなので忍殺語なはずなんです。
けれど、原作者さんから直したものを頂くと「より忍殺語になってる」んですよね(笑)。
—―流石ですね(笑)。そういった監修もあって、原作ファンからの反響はどうでしょうか?
立石氏:
初公開のときもバズりましたし、ニンテンドーダイレクトでの公開時にはおかげさまでトレンド入りも果たせました。
ずっと望まれてたというよりも、『ニンジャスレイヤー』自体メディア展開が少ない作品です。そこに、ファンの方が喰いついてくれていると言う方が近いですかね。
—―ネットミーム的な側面もあるので、配信ウケも良いですよね。
立石氏:
ニンテンドーダイレクトをミラーしていた配信者の方の中には、いきなりコメント欄が忍殺語で埋まる……なんてこともあったらしいです(笑)。
「アイエエエ!?」の件が一気に流れてくるので、ニンジャスレイヤーを知らない方はさぞ困惑されたでしょうね(笑)。
—―同じくニンジャスレイヤーをモチーフにしたゲームでは、対応言語が日本語として認めてもらえなかったという珍事もあったとか……。
立石氏:
今回は大丈夫でした(笑)。
実は、僕たちも忍殺語を使って文章を作ってみたことがありました。でも監修に出すと、違いますと言われることが多かったんです。
—―かなりエミュレートするのが難しいイメージです。
立石氏:
一番言われたのは「実際」の使い方ですね。僕自身未だに使い方が分かっていません。
—―ヘッズ(※ニンジャスレイヤーファンの呼称)の立石さんでもですか!そう考えると、原作者さんの監修はますますありがたいですね。
立石氏:
テキストだけではなく、モーションやステージなども細かく監修していただきました。
やはりファンの方にこそ楽しんでいただきたいので、自分含めファンが納得できるようなニンジャスレイヤーのアクションを作れるように努力しましたね。「ニンジャスレイヤーはこんな動きしない!」とは言われたくないので(笑)。
—―原作ファンにとってはまさしく「これこれ!」となるようなゲームを目指したと。
立石氏:
そうなるようには狙いましたけど(笑)。自分たちなりの解釈を、ファンの方に受け入れてもらえると嬉しいです。
自身もヘッズであると語る立石氏。その言葉通り、実際のゲームプレイの中には数えきれないほどの原作要素、漫画要素がこれでもかと詰まっている。
ニンジャスレイヤーが連載を開始してから既に10年以上。漫画、アニメなど様々なメディア展開を経る中で、今回ついにアクションゲーム化という一つの契機を迎えることとなる。
これが後の起爆剤となるのかは、執筆時点で不明だ。しかし、今はただヘッズの視点で作られた『ニンジャスレイヤー』のゲームが生まれたことを、ファン全員で喜ぶとしよう。
『ニンジャスレイヤー ネオサイタマ炎上』は7月24日にSteam、Nintendo Switchで発売予定。