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シリーズ最新作『S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl』のマップは64平方キロメートルの大きさに。実際に立入禁止区域に足を踏み入れて資料を撮影、草木と朽ちた建物のビジュアルが美しい

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11月21日に発売される、サバイバルホラーFPSの『S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl』。本作は、1986年に爆発事故を起こしたチョルノービリ原子力発電所の周辺を舞台にした作品だ。なお、タイトルに『2』と付けられているが、シリーズとしては4作目にあたる。

2009年に発売された前作『S.T.A.L.K.E.R.: Call of Prypiat』より15年ぶりの新作となる本作は、2012年にリリース予定でプロジェクトがスタート。

リリースに先駆けて行われたメディア向けの試遊会では、2時間ほどのゲームの試遊に加えて、ディープダイブビデオを観ながら開発陣による解説も行われた。また、ゲームを開発したGSC Game Worldのマーケティング・プロデューサーとテクニカル・プロデューサーへのインタビューも実施。

『S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl』プロローグプレイレポート、開発陣インタビュー_001

今回は試遊会の中から、ゲーム冒頭についてのレポートと、開発陣へのインタビューをお届けする。その後のオープンワールド部分のプレイは、後日別記事でご紹介する予定となっているので、こちらもチェックしてほしい。

文・取材/高島おしゃむ
編集/anymo


草木が茂る退廃的な世界で超常現象と対峙。アノマリーやアーティファクトなど過去作に登場してきた要素も健在

最初に、筆者はこれまでシリーズ作品をまったくプレイしたことがなく、本作がどのようなゲームなのか全く知識が無い状態で試遊を開始している。
 
事前にFPSであることは知っていたためバンバン銃を撃ちまくりながら敵をなぎ倒していくキャンペーンモードのようなプレイをイメージしていたものの、実際にゲームをプレイした感覚としては、戦闘がメインというよりも『Fallout』シリーズなどに近いものを感じた。

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▲本作では必ずしも戦闘は必須の手段ではない。

たとえば、本作においては必ずしも敵との戦闘を行うのは有効な解決手段とは限らない場合がある。ゲーム序盤のミッションで「3ヵ所にスキャナーを設置する」というものがあるのだが、3ヵ所目のポイントに向かおうとすると、複数の敵と戦闘状態になるポイントが設定されている。

筆者はこのポイントで何度やり直しても途中で倒されてしまい、ゲームオーバーになってしまった。回復薬などがほとんどないため、減ってしまった体力を回復することもできずじり貧の状態になってしまうのだ。

そこで、思い切って「敵をガン無視して3つの目のスキャンを行う場所に逃げ切ってしまう」という別の作戦を実行してみることにした。

やや強引ではあったものの、このときは見事に作戦がハマり、ミッションの目的を達成することができた。このように、そのときどきの状況に応じてプレイヤーがどのような選択肢を選ぶかといったところも、本作をプレイする上での醍醐味のひとつだと感じた。

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プレイが始まると主人公は車に揺られながら移動し、目的地である立ち入り禁止ゾーンに到着。プレイヤーは目的を達成するため、たったひとりでミッションをこなしていくこととなる。ここから始まる序盤はいわゆるチュートリアル的な内容になっており、まずは操作など本作の基本を学んでいく。

この場面では、パズル要素を解きながらやや狭い施設の中を探索。施設内にあるブレーカーのスイッチを入れることで電源が流れるようになるという仕掛けがあったのだが、このときにかなりオブジェクトに近づかないとインタラクトのボタンが表示されなかった。

ゲーム的なUIが画面に表示されないことで没入感ある体験が可能となっているので、もしゲームプレイに詰まったら怪しいポイントを見つけたときは間近で確認してみよう。

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また、本作にはプレイヤーの行動自体がそのゾーン内の世界そのものに影響を及ぼすという「A-Life 2.0ライフシミュレーティングシステム」が搭載。キャラクターとの会話では3つほど選択肢が選べるようになっていたので、選択によってどのように世界が変わっていくのかということも興味深い部分だ。

また、これまでの『S.T.A.L.K.E.R.』に登場してきた放射の汚染の影響からゾーン内に発生した超常現象「アノマリー」や、アノマリーから生まれた生成物「アーティファクト」といったシリーズならではの要素も、ゲーム序盤から登場するとのことだ。

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放射能汚染された危険地域。それだけではなく超常現象のようなものも発生する。

こうした本作の世界観は何も知らずにプレイを初めても魅力的なものだが、11月の発売までには過去作をプレイしておいた方が、よりゲームへの理解度を深めることができそうな印象であった。

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人間だけではなく、時には恐ろしいミュータントに襲われることも。

ゲームの舞台となる世界は、まるで本物の立ち入り禁止ゾーンに入り込んだかのようにリアルだ。草木は生えているものの人が住んでいないということもあり、どこか退廃的な印象である。誰も住んでいない建物なども、過去の遺物のようだ。

また、水場に近づいたときなどは、放射能の影響からかガイガーカウンターの音がチリチリと流れるのだが、それがすごく怖い。実際にこうした危険な地域をひとりで冒険することは非常に難しい。ゲームの世界で、こういった場所の空気感を擬似的に体験することができるというところも、本作の醍醐味だといえるだろう。

また、先ほど触れたチュートリアル部分に関しては、わずかな時間で、ゲームに関する最低限の情報をプレイしながら学んでいくことができた。チュートリアルが終わると、一気にゲームの世界が広がるオープンワールドに突入する。そこから先は、完全にプレイヤーの意志で自由に行動できるようなるので、こちらのプレイについても後日紹介させていただきたい。

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第14世代のintel Core i7を搭載した「自作PC」、GtG 1msの高速応答を実現したゲーミングモニターが会場に設置

メディア向け試遊会で設置されていたPCなどに関しても紹介しよう。
会場内には、ASUSから提供されたゲーミングPCが設置されていた。こちらはASUSのゲーミングブランドであるROG製品を中心に組み上げた自作のデスクトップPCになっており、CPUは第14世代のintel Core i7を搭載。GPUには、NVIDIA RTX 4090 / RTX 4080 Superが搭載されていたということもあり、快適にゲームをプレイすることができた。

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こちらが今回使用したデスクトップPC

特に本作はUnreal Engine 5でゲームが開発されているということもあり、その美麗なグラフィックをストレスなく楽しめるようになっていた。また、その美しい映像を余すところなく映し出すために、GtG 1msの高速応答を実現したゲーミングモニター『ROG Strix XG256』も用意されていた。

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PCゲームではマシンも重要だが、その性能を遺憾なく発揮するには最高のディスプレイも欠かせない。今回は『ROG Strix XG256』で、こちらも視認性もよくストレスなくゲームを遊ぶことができた。

「没入感のあるストーリーが体験できる」ことにフォーカスして開発、自ら足を運んで撮影した資料を基にグラフィックを構築した箇所も。『S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl』開発陣にインタビュー

今回の試遊会の最後には、本作を開発したGSC Game Worldのマーケティング・プロデューサーであるVlad Novikov(以下、ブラッド氏)とテクニカル・プロデューサーのEugen Kulik(以下、ユウジン氏)へのインタビューも行われた。

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写真左からテクニカル・プロデューサーのEugen Kulikと、マーケティング・プロデューサーのVlad Novikov氏。

──ゲームを何度か周回することで、ストーリーの全体像が見えてくるような作りになっているそうですが、1回あたりのプレイ時間はどれぐらいを想定されていますか?

ブラッド氏:
メインストーリーの探索には40時間ほど掛かります

それ以外にもオープンワールドを探索するときに、なにをやるのかわかった状態で遊んだ場合であっても100時間ぐらいかかりますね。もちろん、初めてゲームをプレイする人ならばそれ以上の時間がかかると思います。

──1作目の『S.T.A.L.K.E.R.: Shadow of Chornobyl』では縦長だったマップが、今作では横にかなり広がった印象です。マップのエリアは、だいだいどれぐらいの広さなのでしょうか?

ユウジン氏:
マップはリージョンに分かれており、リージョン自体は20程あります。しかし、それ以外にも探索するところはたくさん用意されています。

たとえば、ひとつのリージョンの中にもロケーションが複数用意されており、それらの中には小さいものもあれば大きなものもあります。面積でいうと、64平方キロメートルの大きさになります。

──過去のシリーズ作品には、いくつか訪れることができるトレーダーがいました。本作では、トレーダーによって売られているものが変わったり、装備をアップグレードする内容が変わったりといったことはありますか?

ブラッド氏:
はい、トレーダーによってさまざまなものが提供されています。また、派閥によってそれぞれ独自のトレーダーも存在していますし、販売しているものもユニークなものになっています。

また、ほかのストーカーと取引することも可能ですし、テクニシャンという存在から装備品や武器を入手することもできます。

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──前作の『S.T.A.L.K.E.R.: Call of Prypiat』がリリースされたのは2009年で、その間『Escape from Tarkov』など新しい世代のゲームが登場してきました。それらには、『S.T.A.L.K.E.R.』シリーズ的な要素を持ちつつも、ゲームとしても進化してきています。そうした中で、今回の『S.T.A.L.K.E.R. 2』を作るにあたり、どのようなコンセプトや方向性を意識したのでしょうか?

ユウジン氏:
製作には簡単な面もありましたが、難しい面も同時にありました。大きなフィールドや、よりシームレスで優れたオープンワールドを作るなど、我々の野望を新しいテクノロジーを活用していかに実現するかという点に注力して取り組んでいます。

ブラッド氏:
今回もこれまでのシリーズ同様に、シングルプレイにフォーカスしているという部分に関しては変わりありません。ゲームプレイに関しては、他の作品と比較するとそれほどアクションが中心というわけでもありません。

また、他のプレイヤーとコミュニケーションを取るタイプのゲームでもありません。「没入感のあるストーリーが体験できる」というところに、フォーカスしています。

ユウジン氏:
これまでの3部作で作りあげてきた、ユニークな雰囲気を維持することに注力しています。もちろん新しいテクノロジーも活用していますが、孤独感や隠れた場所を探索していくなど、基本的には『S.T.A.L.K.E.R.』らしいプレイや外観、体験などを本作でも踏襲しています。

ブラッド氏:
『S.T.A.L.K.E.R.』のコアとしては、他の作品と比較してそれほど複雑ではないものになっていますが、それでもゲームとしてはやり応えがあります。

これは、ゲーム内で用意されている要素が多岐にわたっているためで、単純にアクションもあれば、RPG的なものや没入感のあるものなど、様々な要素が組み合わさっています。そうした意味では、他と比べるものがないゲームに仕上がっています。

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──洞窟などプレイヤーが探索できる場所が増えたそうですが、そうした細かい場所を探索することのメリットとして、強い武器が手に入るといったことはあるのでしょうか?

ブラッド氏:
そうともいえますが……、ゾーン全体が宝くじのようなものになっています。巧妙に隠された場所にたどり着くためには、荒廃したエリアを進み多くのアノマリーと対峙するなど、様々な困難を乗り越えていかなくてはなりません。しかし、そうした苦労の末到達したとしても、何もなかったということもあります。

また、ランダムでたまたま遭遇した洞窟や墓地、ラボなどの中で欲しいものが見つかることもあります。そうした意味合いをふくめて、「宝くじ」のような要素となっています。

『S.T.A.L.K.E.R.』では、探索に出かける前の計画からスタートします。リソースは十分に揃っているのか、目標に向かうための能力は十分なのかなど、常にリスクを考えながらマネージメントする必要があり、そこがユニークで面白いところです。

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──植物などのビジュアルがリアルで美しい印象でした。そうしたデザイン面で最も力を入れたところはどこでしょうか?

ユウジン氏:
実際に何度もその場所に足を運んで、写真を撮ってきました。もちろん、チョルノービリのアノマリーがあるゾーンではありませんが(笑)。実際の立ち入り禁止区域にも行き、写真を撮影し、それに基づいて製作をしています。そうしてスキャンしたアセットを、我々のアーティストがビジュアルとして作りあげています。

プロップ(ゲーム内に登場する小道具)についても、スキャンしたものだと気付かれた人がいるかもしれません。我々は、そうしたカスタムメイドで作ったアセットを持っています。

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──回復薬が切れた状態で死んでしまうと、オートセーブされたところから再スタートします。そのときに、残りのHPが少ない状態でリスタートするため、かなり難しく感じました。本作をプレイする初心者の人向けに、難易度の調整が行えるなどの救済策はございますか? また、今作から初めてプレイする人向けにアドバイスをお願いします。

ブラッド氏:
ゲーム開始時に、難易度を何段階か選べるようになっています。ゾーン自体は、ミスを許容しない難しい場所になっていますが、それでなかなかゲームが進まなくなってしまった場合は、難易度を下げることもできます。初心者へのアドバイスとしては、じっくりと時間をかけてあまり急がず、新しい場所についてひとつずつ学んでいくのがいいと思います。

ユウジン氏:
本作は体験としてユニークで、ひとつひとつじっくりと考えながらプレイしていくスタイルの作品です。ゾーンには、様々なアノマリーや放射能の影響を受けた場所、盗賊など、様々な危険が待ち構えています。十分に準備を整えていくことをオススメします。

もちろん厳しい戦闘などもありますが、ストーカーとしては必ずしも戦闘員として戦う必要はありません。様々な場所を覗いて回ったり、取引をしたり、キャラクターと会話を楽しむということを、じっくりと時間を掛けて探索していくスタイルです。

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──先ほどシングルプレイにフォーカスしたゲームであるというお話がありましたが、マルチプレイも実装される予定だとお伺いしています。こちらは、具体的にどのようなものになるのでしょうか?

ブラッド氏:
どんなアーティストであっても、拡大していきたいという気持ちはあります。我々もそうです。新たなフォーマットに合わせて拡大していたいという気持ちがありますが、我々は規模が小さいスタジオで開発は厳しい環境にあります。数千名も開発者がいるわけではないため、まずはシングルプレイに注力しています。できれば、その後新たな形で展開していきたいと考えています

ベースとなるのは、『S.T.A.L.K.E.R.』シリーズ3部作のマルチプレイモードです。それに加えて、ユニークなアーティファクトハントモードも検討しています。オリジナルの『S.T.A.L.K.E.R.』にあったマルチプレイモードを試していただければと思います。

──前作まではファストトラベルはお金を払っていましたが、今作ではどのような形になっているのでしょうか?

ブラッド氏:
ひとことでいうと、ファストトラベルにはかなりお金がかかります。そのため、プレイヤーは移動に使う時間を節約したいのかリソースを節約したいのかを判断する必要があります。

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──最後に発売を楽しみにしているファンに向けてメッセージをお願いします!

ブラッド氏:
時間がかかりお待たせしていますが、我々は最大限実現したいものに向けて注力しています。そうして、理想的なタイトルを作ってきました。忍耐強く待っていただきありがとうございます。そして、待っていただいただけの価値があるものになっています

ユウジン氏:
我々は、最高でユニークな体験な場所を作りあげることに注力してきました。(ゲームに登場する場所は)実際に私の家から車で1時間ぐらいのところにあり、ユニークなところです。慣れれば気に入り、そこから出たくないと思ってもらえると思います。(了)

ライター
ライター/編集者。コンピューターホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。 現在はゲームやホビー、IT、XR系のメディアを中心に、イベント取材やインタビュー、レビュー、コラム記事などを執筆しています。

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