自分だけの「俺ガンプラ」を作り、戦える『ガンダムブレイカー4』。長きに渡り続編が望まれ、発表された際には大いに話題になりましたよね。
とはいえ作品の核は『ガンダム』。
実をいうと『ガンダム』の知識にあまり自信がなく、私はプレイに至っていませんでした。盛り上がりを認識しつつも、「自分に楽しめるのか」という不安を感じていたんです。
しかし、オープンネットワークテストに参加してみると「あ、これ自分でも楽しめるぞ」と感じたんです。気付けば「俺ガンプラ」の胴体に、サイズアップした「大型対艦刀」をブッ刺して遊んでいました。
つまり『ガンダムブレイカー4』は、ガンプラ的なカスタマイズの楽しさを「誰でも楽しめる」作品だったんです。
たとえば本作の新要素として、プラモデルの「ジオラマ」を楽しめる新コンテンツ「ジオラマモード」が搭載されています。筆者はこのモードにも「操作はなんだか難しそうだし、ちゃんと使いこなせるだろうか?」なんて疑問を感じていました。
今回バンダイナムコエンターテインメントの田中聖憲氏と、クラフト&マイスターの福川大輔氏へインタビューでお話を聞いた限り、それは杞憂に終わりそうです。
なぜなら「ジオラマモード」を含め、本作は「誰でも楽しめるモードにしたい」という制作陣の想いがさまざまなところに根付いているから。本インタビューを通して、作品に宿る「初心者を楽しませる力」を感じて頂ければ幸いです。
ちなみに、インタビューは8月の初頭に実施。7月24日にあった公式配信から間もないタイミングということで、さっそく配信のテーマになっていた「ジオラマモード」から触れています。
文章中でも補足を行いますが、お時間があれば公式の配信もご覧いただけると、今回のインタビューをより楽しめると思います。
最初の「思想」で開発陣が割れながらも、誰もが遊べる「ジオラマモード」を目指して。
──「ジオラマモード」が作り込まれているのはもちろん、、中でもモーションをコマ送りしてポージングできる機能に驚きました。一般的に、ゲームのフォトモードでもキャラクターのカッコいいモーションの一瞬を切り取るのは難しい。だから『こういうのあったらいいのに!」と思ってました。
田中聖憲氏(以下、田中氏):
「ジオラマモード」も色々と苦労はしまして。配信を見ていただくと分かるのですが、できることがすごく多いです。その分、どうしても操作には慣れが必要ですが、極力どんな人でも「ジオラマモード」を楽しんでもらいたいという想いがありました。
たとえば、「ガンプラ」をジオラマの地面に置く時、最初は地面に接地せず、すり抜けて地面に潜る仕様になっていました。ただこれでは脚部を接地させる際の微調整が大変なんです。だから、地面で1回止まるようにしています。
田中氏:
また、「ガンプラ」を回転する際の軸も切り替えられるようにするなど、細かい部分の試行錯誤をしつつ、UIや使い勝手などのブラッシュアップとテストを重ねました。
そういった試みにより『ガンダムブレイカー4』をご購入いただいた全ての方に「ジオラマモード」を楽しんでもらうことを意識して作ってきましたね。
──配信の中でも、本作の開発中には制作陣の間でさまざまな議論があったというお話がありました。他に何か制作陣の間で意見が割れたようなことはありましたか。
田中氏:
ジオラマ画面で右スティックを右側に倒したときに、プレイヤーから見て「ガンプラ」を右に回すのか、それとも配置するオブジェクトから見た正面に対して右向きに回すか。というのも意見が割れたことがありましたね。
福川大輔氏(以下、福川氏):
単純に「こういうことができたらいいな」という考えから機能を作り始めるのですが、その段階では想定していなかった部分も色々出てきます。どう落とし込めば機能をユーザーに触っていただけるか。という点で試行錯誤がありましたね。
田中氏:
開発の皆さんは、ユーザーにも細かい調整をなんでもやらせてあげたいという気持ちが強いんです。だから「同時にいろいろなことを動かせるようにした方がいいんじゃないか」と。
だけど僕らとしては「やっぱりジオラマってちょっと難しいモードになるんで、1個1個の作業を終わらせて、次の作業に移っていくというステップを踏みましょう」と提案させていただいた。なので最初の思想の段階で意見が割れたこともあります。
──最初の時点で、ですか。
福川氏:
最初の「思想」で。
田中氏:
「思想」でね(笑)まぁどっちが正解ということはないので「これ結構難しいね」という話をしまして。
ただ、今回新しいナンバリングの『ガンダムブレイカー4』というタイトルにおいて「ジオラマモード」は大きな進化ポイントの1つだと思っています。我々というか僕個人としても、ひとりでも「できない、悲しい」と思う人を減らしたかったんです。
だから、皆さんにはなるべく簡単に「ジオラマモード」を楽しんでいただけるように。ということで、最終的には触りやすさ重視の方向で開発の皆さんにご理解いただく形になりました。
田中氏:
ただ、奥行きはないといけないという点は私たちも同意見なので、「ガンプラ」のモーションをコマ送りで決める機能や、 プロジェクションマッピングのようにテクスチャを貼る機能、ライトの細かさなど、そういったできる幅というのはキープしつつ、なるべくそのインターフェイス周りは簡単にするという流れで進んでいきました。
──長い衝突の末にお互い分かり合うことが出来たと。
田中氏:
衝突していたわけではないですが…長い間、どうすべきかという話はしました。
福川氏:
うん、長かった長かった(笑)
新たな遊びを切り開く「二刀流」のルーツや、カスタマイズの自由度について尋ねてみた
──本作の制作は2019年頃から開始されたと伺いました。これまでの作品に比べて入念に準備を進めてきたものと思いますが、制作期間の長期化による影響や、これまでと異なる苦労などありましたか?
田中氏:
今作『ガンダムブレイカー4』は ナンバリングの新作ということで、『ガンダムブレイカー』シリーズの1作目から3作目までを引き継ぎつつ、さまざまな新要素を加えてパワーアップした作品になっています。
ナンバリングの進化作であるという点で『ガンダムブレイカー3』から、変えるべきところ、残すべきところは何か、というのは、ディレクターの福川さんたちといろいろと検討してきました。
こういう部分を検討するなかで色々と迷った点もありますし、悩んで試行錯誤した点でもあります。どこを変えていくのが最適なのか、ゲームとしてよりクオリティを上げるために何が出来るのかという点は、やはり苦労はしてきましたね。
──本作ではPVEをメインとするナンバリング作品の遊びに戻りました。新機能であるジオラマモードの実装や、アクションの強化に関する試行錯誤を重ねるうえで、色々苦労があったと。
田中氏:
そうですね。魅力を伸ばし、更に改善するための苦労がありました。
また、今回「ジオラマモード」など新しい遊びとして入れているのですが、 アクション面でも右腕と左腕に別々の武器を装備する「二刀流」のアクションができることが進化点になっています。
ただ、単に「サーベル」と「アックス」というふたつの武器を持って振り回すだけではなく、「二刀流」に意味を持たせたかったので、今回は武器ごとにちょっとした特徴を設けています。
──「サーベル」は打ち上げ攻撃ができる、「アックス」ならチャージ攻撃が行えるといった部分ですね
田中氏:
左右の武器の組み合わせによって行えるアクションや立ち回りが変化することで、プレイヤーが試行錯誤しながら戦略を組み立てる遊びを強化したかったんです。そのなかでも苦労や悩みはありました。
『ガンダムブレイカー』シリーズは自分の好きな機体を組み立てて、それを実際に動かすという部分が最も重要なポイントになります。だからパーツの組み合わせに正解を作って、その組み合わせで遊ぶことを強いるようなことはしたくありませんでした。
その辺りのバランスを見極めて、色々と調整をするという点で結構な苦労がありましたね。
──カスタマイズ面では、本作はパーツの大きさも変更できるようになりました。私も色々考えた末に「対艦刀」という刀のパーツの大きさと位置を調整して、巨大化した刀が胸から飛び出しているヘンテコな機体を組んでミッションに飛び出しまして……
一同:(笑)
──シュールな光景で面白かった一方で、パーツを巨大化しすぎると「他のプレイヤーから見たら邪魔ではないか?」とも思いました。
カスタマイズの自由度と、視認性やゲーム性の両立という点に関して、どの程度開発の段階で制限して、どの程度をユーザーの裁量とするか、何か気をつけたことはありますか。
福川氏:
基本的にはユーザーの裁量に任せて、自由度を重視することにしました。
確かに、パーツを大きくし過ぎたり、ペイント時に光る部分を広くしすぎると見づらい状態は起こりうると思います。ですが、プレイヤーのやりたいことをできる限り制限せず、視認性なども含めて自由にカスタマイズを楽しんでいただく方向で考えていました。
──配信の際には、ユーザーからのフィードバックに真摯に向き合い調整を続けている姿をお見受けしましたユーザーの声を取り入れる上で苦労したことはありますか。
田中氏:
本作では、ネットワークテストなど複数回実施してきて、お客様からのフィードバックやご意見を沢山いただいてきました。
ネットワークテスト…ではあったのですが、いただいたお客様の声にはなるべく答えていきたいと思い、なるべく反映できるように努めてきました
ストーリーは世界観を継承しつつも、成長や出会いをテーマにした「王道」なものに
──前作『ガンダムブレイカー3』ではストーリーも高評価を受けていました。本作のストーリーに関してはまだ明かせない部分もあると思いますが、期待しているファンに何かコメントはありますか?
田中氏:
内容についてはまだ多くは語れないのですが、今回は『ガンダムブレイカー3』の6年後という世界観をベースにしたストーリーが展開されます。
公開済みの情報ではありますが、『ガンダムブレイカー3』の登場キャラクターである「ミサ」など、『ガンダムブレイカー3』で登場したキャラクターが一部登場します。その辺りも含めてストーリーの展開を楽しんでいただければと思っております。
──現在公開されている情報の範囲だと、主人公と仲間たち自身、また、クランとしての「成長」というのは重要な要素かと推察します。他に例えばコンセプトやテーマなど、何か断片的なヒントはありませんか?
田中氏:
成長物語のような面もありつつ、『ガンダムブレイカー3』 でもあった、いろいろな仲間と出会い、成長しながら互いに絆を深めていく「王道」的なストーリーになっています。
もちろん、世界観が同じとはいえ前作のストーリーを知らなくても楽しめる内容になっています。なので、前作までは未プレイで本作から新しくシリーズに入っていただくプレイヤーでも無理なく楽しんでいただけると考えています。
ハックアンドスラッシュのバランスはサイクルを短く、何度も挑戦しやすいものに。ドロップのバランスについても聞いてみた
──本作ではハックアンドスラッシュの要素もかなり充実しています。ランダムドロップはユーザーのストレスに繋がる面もありますが、ドロップ面でのバランス調整について意識したことはありますか。
福川氏:
ハックアンドスラッシュという点では、「ビルド→ミッション」というひとつのサイクルの長さを調整していることが大きな点です。
前作ではワンミッションが長いものもあったと思います。本作は「あるパーツが欲しい」と思った際に何回も挑戦しやすいよう、短いサイクルで回せることに気を付けてミッションの長さを調整しています。
田中氏:
ミッションによって登場する機体が違いますし、「いろいろな機体を集めてもらいたい」という気持ちもワンミッションあたりの長さを調整した理由のひとつです。
その分、1ミッションという尺度で比較すると、ドロップするアイテムの数やパーツの数は過去作と比較すると少し抑えめになっています。いっぽうで、同じミッションのリトライや、別のミッションに挑戦することはスムーズに行えます。なので「さまざまなパーツを集めてビルドをする」という流れは快適になっていると思います。
また、ゲームを進めていくことで、ショップのラインナップに特定の機体が追加されますし、パーツの合成によって強化することもできます。もしも欲しいパーツがなかなかドロップしないということがあれば、ショップや合成といった機能も活用していただければと思っています。
──前回のオンラインネットワークテストでは、「星4」など高いレアリティのパーツも拾えたのが印象に残りました。製品版でも新要素の「ブレイクコンボ」(連続で敵機を撃墜することで増加するコンボ)によるボーナスを活用すれば、比較的序盤からレアリティの高いパーツを拾うことができますか?
田中氏:
基本的にはゲームの進行度に沿ってドロップしたパーツを付け替えていくことで、順当に強くなり自然にゲームを進められるようレベルデザインをしています。
序盤からいきなりレアリティ「星5」のパーツがドロップするということは流石にありませんが、レアリティの高いパーツがないと難易度高くて進められないといったことはないはずです。
挑戦するミッションによりますが、序盤でもドロップ次第では「星3」や「星4」程度なら落ちることはある。という程度に考えて頂ければと思います。
田中氏:
また「ブレイクコンボ」のボーナスに関しても“フル活用しないとパーツの収集が辛い”ようなバランスには作っていません。
もちろん何度も周回するうえでは狙っていただいた方が効率は上がりますし、「ブレイクコンボ」を狙うこと自体は1つの目標です。しかしながら、ゲームを遊ぶ上で必須ではありません。
ドロップ率に関する影響も激的というわけではありませんし、ゲームの難易度やハードルを上げるものではないのでご安心ください。
本作にかける意気込み。そして、制作陣が本作を遊ぶユーザーに期待していることとは?
──『ガンダムブレイカー3』が発売された当時、PS4のシェア機能を使って「俺ガンプラ」の画像を共有するのがとても流行っていました。
今回更に「ジオラマモード」が実装されて、本作が創造性を発揮する場としても強化されていると思います。こういったSNS上の盛り上がりについてファンに期待することはありますか?
田中氏:
従来のシリーズ作品と同じように、作った「俺ガンプラ」をSNSで披露するということは、ぜひ今作でも楽しんでもらいたいと思っています。
くわえて、本作では自分の作った「俺ガンプラ」をゲームの中で披露する場をいろいろと設けていて、ジオラマモードもその一環です。
さらに、ビジュアルロビーで「俺ガンプラ」をアバターにしてお互いに見せ合うことや、ジオラマの写真や設計図などをギャラリーにアップロードして、プレイヤーのプロフィールから見ることもできるようになりました。
田中氏:
これらの機能を駆使して、ちょっとしたコミュニケーションができたり、ファンの間でのコミュニティができたりすると、僕たちとしてもすごく嬉しいです。
また、今回は左右の腕を異なるパーツに設定するなど、新しいカスタマイズの要素も広がっています。その辺りを駆使して、 過去作ではできなかったビルドなど色々と見せていただきたいですし、それをジオラマでかっこよく魅せてもらいたいなと思っています。
──発売が間近に迫って、本作を体験できる機会も少なくなってきました。店頭体験会への参加が難しかったり、発売日以降に口コミなどで本作に興味を持つユーザー向けに体験版の配信予定などはありますか?
田中氏:
今作では、体験版の配信については今のところ予定はありません。
──「ガンプラ」自体がそうであるように、『ガンダムブレイカー』シリーズも幅広い年齢層を持つ「ガンダム」ファンのコミュニケーションツールとしての側面があると感じています。
そんな本シリーズにかける意気込みを、ナンバリングを戻しての挑戦について語っていただけますか。
田中氏:
最初に情報を出した時にもファンの皆さんから「もう出ないと思ってた」みたいな声をいただいたりして、本当に愛されているシリーズだと思っています。その分プレッシャーもあるのですが(笑)
今後の展望としては、やはり今回の『ガンダムブレイカー4』を精一杯良い作品に仕上げ、お客様にシリーズの最新作として楽しんでもらうことが一番重要だと思っています。
無事発売した後も、お客様に楽しんでいただけるように精一杯頑張りたいなと思っております、
また、本作は『ガンダムブレイカー3』に続くナンバリング作というところで、ベースのゲーム性を引き継ぎつつ、色々な新要素を盛り込んでパワーアップしています。その辺りの新要素も含めて楽しんでいただきたいなと考えています。
ジオラマモードの仕様に関する制作陣での議論や、カスタマイズの自由度、ハックアンドスラッシュのドロップ面の調整。今回さまざまなお話を伺いました。全体を通して感じたのは「思いついたことを誰もが実現できる」ように細心の配慮がされているということ。
発売が間近に迫る本作ですが、ファンのみなさんは期待を高めつつ、もしもこのインタビューがきっかけで興味をもった人がいれば、体験会への参加も検討しつつ発売を楽しみにしていただければと思います。
また、「ガンダム」シリーズ公式のYouTube チャンネルである「ガンダムチャンネル」では、これまでに行われた本作のライブ配信のアーカイブが視聴可能。公式Xアカウントではジオラマの作例などの画像なども掲載されているので併せてご確認頂ければ幸いです。