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リバーシのコマを「上から重ね置き」できるようにしたら……。『デビルリバーシ』で楽しめる「リバーシ」とは違うユニークな戦略性。「重ね置き」「チェイン」「生贄」が‟出オチ”じゃない奥深さを生み出す

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たった一つのアイデアだけで、ゲームの遊びは大きく変わる—―。そのことを実感できるゲームが『デビルリバーシ』だ。

『デビルリバーシ』先行レビュー。「重ね置き」「チェイン」「生贄」が生み出す新たな戦略性_001

元ゲーム開発者であり作家でもある喜多山浪漫氏が手がける本作は、タイトルにもある通り、おなじみの『リバーシ』で対戦する……のだが、ここに一捻り加わっている。

本作のリバーシは「コマを重ねる」ことが出来るのである。相手のコマの上に重ねるもよし、自分のコマの上に「積み増し」するもよし、リバーシの根本となるルールを法外なまでに覆した意欲作となっている。

ここで、これを読んでいる皆さんは思うだろう。「それって破綻しない?」と。
確かに、普通に考えれば破綻するようなアイデアである。

しかし安心してほしい。このゲームは単なる「ちょっと特殊なリバーシ」というところに留まらず、コマの上に重ねられるというアイデアを何倍にも膨らませたもはや「別物」と言えるほどのゲームに仕上がっている。

この記事では、本作の非常にシンプルなアイデアが、どのように『リバーシ』に奥行きを与えているのかを紹介していこう。

文/植田亮平
編集/りつこ

『デビルリバーシ』は、もはやリバーシではない!?

まずは『デビルリバーシ』の根本である「コマの上にコマを置ける」という部分から始めよう。

通常のリバーシであれば、既にコマの置かれているマス目にコマを置くのは反則だ。

それはなぜか。
当たり前のことだけれど、そうすると試合がいつまでも続いて決着がつかないからである。

そのため、本作の勝敗は相手のコマを裏返すことによって得たポイントで決定される。相手の駒を裏返したらポイント獲得、裏返されたら相手のポイントにという具合だ。

つまり、本作はそもそものゲームルールからしてリバーシのような陣取り合戦ではないのである。本作ではマス目の存在が「奪い合うもの」から「活用するもの」へと見事に変貌している。

このルールを強調するため、ゲーム開始時には各プレイヤーのコマが「X」の字で既に置かれた状態からスタートする。初見だと非常に異質な光景だが、これはある意味でプレイヤーへの親切なチュートリアルにもなっている。

リバーシの王道戦略である「4隅」が始めから塞がれていることによって、このゲームは「普通のリバーシ的な考え方は一旦捨ててね」とプレイヤーに告げているのだ(どのみち上から重ねられて奪われるし)。

『デビルリバーシ』先行レビュー。「重ね置き」「チェイン」「生贄」が生み出す新たな戦略性_002

このポイントゲームを制し、相手プレイヤーより効率的にポイントを獲得していくにはどうすればいいか。

そこで本作が提示したのは「チェイン」「生贄」システムである。どちらも良くできたシステムだ。

まずチェインだが、これはほとんど『ぷよぷよ』と同種のパズル的なシステムとなっている。

リバーシで相手の上にコマを置いた場合、当然、その裏返した(上に置いた)コマの反転に付随するかたちで、隣接するコマもまた裏返るということが起こる。これが幾重にも連鎖してゆき……というのが本作のチェインである。

そしてもう一つが生贄のシステム。これは盤面にある自陣のコマを生贄に捧げ、特定のコマに対して「上から重ねられなくする」というもの。コマが裏返ったときのポイントは重ねられているコマの数に比例するかたちで増加していくが、このシステムによってポイントの際限ない増加を「打ち止め」することができる。

また、上から重ねることが出来なくなることによって自分のコマを固定化するのにも役立つ。

例えば4隅のコマを固定化してしまえば、そのコマが裏返る心配はもうない。このアドバンテージをどのように生かすか、生贄のコストに見合った戦略を展開できるかがプレイヤーに求められるシステムとなっている。

チェインや生贄などこれらテクニックを上手く使うことで、上級者はよりレベルの高いゲームを楽しめるようになるだろう。

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と、ここまでの説明を聞いて「分かったようで分からん」となった方も多いのではなないだろうか。
安心してほしい、私も分からない。

実際、本作を遊ばせていただいたときには、上記のテクニックをあまり理解できず終始”浅い”プレイとなってしまった。
が、これは私が自分で自分のプレイを”浅い”と感じられるほどに、本作が奥深いゲームとなっていることの証左でもある。

このゲームは間違いなく深い。極めれば極めるほどドツボにハマっていくタイプのゲームだということは誰にでもご理解いただけるであろう。近い将来、本作を極めた「ガチ勢」同士の戦いも見られるかもしれない。そしてゆくゆくは巨大なeスポーツタイトルになり……というのもありえない話ではない。

作者である喜多山浪漫氏がどのような野望を抱えているのかはまだ分からないが、本作が非常に高い競技性を備えたタイトルになるポテンシャルがあることはお伝えしておきたい。

豪華制作陣が彩る世界観

最後に、本作の制作陣を紹介してこの記事を終わりたい。

本作のキャラクターデザインを務めるのはヴァニラウェアの代表である神谷盛治氏、音楽を担当するのは『FINAL FANTASY TACTICS』等で知られる崎元仁氏と、非常に豪華な顔ぶれとなっている。

本作には2人用の対戦モード以外にも、魔王の使い魔から出されるお題をクリアしていくストーリーモードやAIと対戦できるシングルプレイモードなど各種モードが充実している。

可愛らしさ全開のキャラクターたちと迫力ある音楽が、本作をどのように盛り上げてくれるのかにも注目である。

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ポップな世界観と奥深いゲーム性……「もしリバーシのコマを上に重ねられたら」というアイデア一つから、これほどまでに戦略性あふれるパズル・ボードゲームとしてまとめあげたというのは、偏に喜多山浪漫氏の優れたディレクションの賜物だろう。

これからリリースに向けて本作がどのように進化していくのか、そしてリリースされた後、本作がプレイヤーたちの間でどのように受容され高められていくのか……今後の展開が非常に気になるインディータイトルである。

ライター
大阪在住のゲーマー。ゲームに限らずアニメ、映画など気になったものは何でも取り込む雑食系。オープンワールドのゲームやウォーキングシミュレーターなどが大好き。最近はオンラインゲーム『League of Legends』にドハマりしているが、プレイの腕はイマイチ。
編集者
ゲームアートやインディーゲームの関心を経て、ニュースを中心にライターをしています。こっそり音楽も作っています。

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