10年も続くコンテンツって月並みながら“凄いな”と思う。とくに、365日休みなく運営し続けるソーシャルゲームならなおさらだ。
2024年3月10日にリリースから10周年を迎えたCygamesが誇る人気本格スマホRPG『グランブルーファンタジー』(以下、『グラブル』)も、そんな長い期間多くの人に愛され続けているタイトルのひとつである。
そんな『グラブル』のオーケストラコンサート「GRANBLUE FANTASY ORCHESTRA -SYMPHONY IN BLUE-」が、9月21日(土)、22日(日)に渡って開催された。
『グラブル』の楽曲演奏と言えば、毎年開催されている「グラブルフェス」をはじめとした様々なイベントでの、本作のコンポーザーである成田勤さん率いる「STELLA MAGNA」によるバンド演奏、3Dキャラクターが踊って歌うキャラクターライブや声優陣が歌うライブなどが思い浮かぶ方も多いだろう。
しかし、今回の“オーケストラ”はじつに8年ぶりの開催。めったにない機会に筆者自身も本コンサート開始前から心躍らせていた。『グラブル』の壮大な楽曲がオーケストラにアレンジされたら、どうなってしまうのか……。
本記事では『グラブル』のオーケストラコンサート1日目、夜公演に参加した筆者が、これまで『グラブル』が積み上げてきた10年の歴史を全身に浴びてきた体験レポートとなっている。数々の思い出が蘇った最高のコンサートだった。
※本記事では『グラブル』メインクエストの内容やシナリオイベントの内容に触れているので、まだプレイしていない方はご注意ください。
メインクエスト曲を中心に演奏された第1部、これまでの空の歩みを振り返る
本コンサートは2部構成。第1部に8曲、第2部に6曲、アンコールで4曲、計18曲の楽曲が披露された。
2時間を超えるコンサートの幕開け前には、「ルリア」や「シエテ」、「オロロジャイア」、「サンダルフォン」たちによる会話劇が会場に流れる。いよいよ始まるグラブルオーケストラ……開演が待ち遠しい。
楽しみに待っているのと、本日の奏者「東京フィルハーモニー交響楽団」と指揮者の栗田博文さんが登場。そのまま1曲目の「フレイメル島 -太古の工廠-」の演奏が始まった。
開幕から重厚な音楽で観客の心を鷲掴みにし、そのまま「天に散りし覇者との邂逅」と続く。途中にMCの星野貴紀さんと立花理香さん、成田勤さんのトークを挟みつつオーケストラは次の曲「人間との戦い」、「バトル4」が演奏された。
その後は「ナル・グランデ」空域から「ライヒェ島 -人住まう魔窟-」、「ナル・グランデの罪」へと続く。そして、成田勤さんがピアノで加わり「アウライ・グランデ」、ルリア役・東山奈央さんによるゲストボーカルで「Lyria」が演奏され、第1部は終了した。
第1部では全体的に、これまでの主人公たちの空の旅をなぞるような選曲となっていた。「ファータ・グランデ」から「ナル・グランデ」、そして「アウライ・グランデ」へと曲が移り変わってゆく様は、まるで『グラブル』のメインクエストを辿っているような感覚だった。
筆者がとくに良かったと感じた曲は、第1部の最後に演奏された「Lyria」だ。この曲はメインクエスト63章をクリアした後に流れるエンディング曲。故郷の空域「ファータ・グランデ」から、新たな空域「ナル・グランデ」へと主人公達が旅立つ際に、ルリアの歌にのせてこれまでの旅路を振り返り、これからの冒険を期待させる曲だ。
ルリアをはじめ、カタリナやラカムなどの仲間たちとの出会いなど、作中の印象深いシーンを思い起こしながら、東山さんの圧倒的な歌唱とも相まって、より没入感のある体験を味わうことができた。
筆者が該当クエストをプレイしたのはかなり前のことだったが、歌と演奏、そして映像がリンクして当時の記憶が鮮明に蘇ってきていた。「グランサイファー」での旅が始まり、メインクエスト第1部「蒼の少女編」だけでも色んな出会いと別れがあった。そして次の空域に旅立つワクワク感をもう一度思い起こすことができた。
本曲は2016年に公開されているのだが、8年経った今でも当時と変わらない体験ができる『グラブル』の長い歴史を実感した。プレイヤーの皆さんもプレイ開始した日にちは違うかもしれないが、「Lyria」を聴くとあの懐かしい冒険の記憶が蘇ること間違いないだろう。
ゲーム中のルリアノートのストーリーからメインクエスト「蒼の少女編」回想を選択することでいつでも聴くことができるので、今一度聴いてみてはいかがだろうか。
また、これは騎空士個人の目線の話になってしまうが、筆者は昔「討滅戦」を無限に周回していた経験があるので、「天に散りし覇者との邂逅」を聴くと戦力が整っていない頃のイフリート達との激戦が思い起こされて懐かしい気持ちになった。
こういった経験も10年という歴史があるからこそなんだろうな……と、しみじみ感じる。
シナリオイベント曲を中心に演奏された第2部、周年イベントの熱いシーンが蘇る
第1部から約20分の休憩がおわると、第2部が始まった。第2部は「命のカタチ」の演奏で開幕し、「Last Advent」、「ユグドラシル・アルボスマグナ」と続く。
その後は初となる「天元たる六色の理」戦BGM「Dragon’s Circle -Hexachromatic- 」、シナリオイベント「HEART OF THE SUN」フェニックス戦BGM「天と光、死と生」が演奏され、最後には会場みんなで手拍子して盛り上げた「ロボミ」が演奏された。
第2部では全体的に、周年シナリオイベントを中心とした選曲となっていた。メインクエストとは別に、定期的に開催されるシナリオイベントも『グラブル』の魅力のひとつと言えるだろう。毎年壮大なシナリオが展開される3月の周年イベントは、普段のシナリオイベントよりも大ボリュームの複数部で構成されることもあるほど力が入っている。
第2部で筆者が特に印象に残った曲は、「Last Advent」だ。これは、7周年記念シナリオイベント「STAY MOON」のメインBGMで、ゼタ、ベアトリクス、バザラガ、ユーステス、イルザなどが所属する「組織」イベント完結編のシナリオイベントである。
本イベントでは、合理的でない判断をしない月の戦士・カシウスが、「組織」のメンバーや主人公たちと行動を共にすることで徐々に空の世界と人間に興味を持つようになり、最終的に空の世界が恋しくなるほど魅力を感じるようにまで成長する、筆者個人としてもすごく好きなシナリオイベントだ。
本イベントは、重症を負ったカシウスが治療を受けるために月へと帰るのだが、地球での貴重な記憶を持ったサンプルとして囚われてしまう。
主人公たちは「組織」のメンバーと協力し、囚われてしまったカシウスを助けるために月へと向かう。月の最上位の戦士達との戦いや、超巨大な機神「ディアスポラ」から空の世界を守るための戦いなどが見どころのシナリオイベントとなっている。
「Last Advent」の演奏を聴いていると、カシウスをはじめ「組織」のメンバーのこれまでの活躍が脳裏に浮かぶ。「STAY MOON」やそれに至るまでの数々のシナリオイベント、月をルーツに持つアイザックの苦悩や葛藤、回を重ねるごとに成長し、それぞれの武器を解放して戦うカッコいいメンバー達……。
とくに「STAY MOON」では、ユーステスがカッコ良かったし、無事カシウスが月から帰ってきて最後にミートソーススパゲッティを食べている一枚絵もめっちゃよかったなど、周年イベントに相応しいスケールとボリュームたっぷりの素晴らしいシナリオイベントだった。カシウスには美味しいものをこれからもお腹いっぱい食べてほしい。
また直近では土属性有利の「決戦!星の古戦場」が行われていたのでマグナ3(通称)武器を集めるために「ユグドラシル・アルボスマグナ」を沢山周回した方も多いのではないだろうか。
筆者もそのひとりなのだが、マグナ3武器集めに勤しんでいた際に何回も聴いて勝手に覚えていた曲が演奏され、思わず「おっ」と反応してしまった。
最後はオーケストラおなじみの“アレ”。「どうして空は蒼いのか」を聴いて思わず珈琲を飲みたくなった
最後はオーケストラおなじみの“アレ”、アンコールが開幕。MCの星野さんや指揮者の栗田さんが会場を煽り、拍手と同時に大きな歓声があがって、コンサートは“アサルトタイム”に突入する。
アンコール演奏では最初に「アウギュステ列島 -白沫の瀑布- 」、サプライズ登場した霜月はるかさんのゲストボーカルで「ローズクイーン」が演奏され、「どうして空は蒼いのか」、最後に「メインテーマ」で締めくくる流れ。
どれも良い曲ばかりなのは確かなのだが、やっぱり「どうして空は蒼いのか」に触れないわけにはいかないだろう。『グラブル』の数あるシナリオイベントの中でも屈指の人気を誇る名イベントだ。
『グラブル』3周年記念シナリオイベント『どうして空は蒼いのか』から始まり、翌年の『失楽園 どうして空は蒼いのか Part.II』、最後の『000 どうして空は蒼いのか Part.III』へと繋がる、3年間かけて完結した超大作だ。
『グラブル』プレイヤーの中でも、本シナリオイベントに特別な想いを抱いている方も多いのではないだろうか。現に本イベントに登場したサンダルフォンをはじめ、ルシフェル、ベリアルなどは今でも非常に人気が高い。
ここでシナリオを事細かに語ってしまう訳にもいかないので詳細は割愛させていただくが、本イベントでは、ルシフェルのスペアとして造られ、“いつかはルシフェルの役に立ちたい”と思い続けたサンダルフォンが、自身が“役目を持たない天司”であることに絶望し、誰かに自分を認めて欲しい、必要としてほしいと切望した結果、自分の存在意義を証明するために世界を破壊しようとするところから始まるシナリオイベントとなっている。サンダルフォンの苦悩と、今では大分マイルドになった性格がこじれた昔の姿が見れる、ある意味、貴重なイベントだ。
『失楽園』でルシフェルの真意を知ったサンダルフォンは、彼の願いを守るため、壮大な戦いへと身を投じる。
紆余曲折を経て、自身も想定しえない形で「天司長」という役割を与えられたサンダルフォンだが、ルシフェルとの思い出の品である珈琲をまた二人で飲むその日のための一杯を探求しながら、いつか喫茶店を開く──という“彼自身の願い”に向かって歩みだすというめっちゃいいお話である。
なお、今回の公演では、サンダルフォンがかつて永い時間を過ごした中庭で、ルシフェルが二つ並んだ珈琲カップを前にわずかに微笑んでいるような描き下ろしイラストも公開され、多くの参加者たちが涙する様子も見て取れた。
筆者も、演奏中のスクリーンに映し出されていた数々のイラストを見て、無性に珈琲が飲みたくてたまらなかった。なので……
家に帰って淹れた。
普段は簡単に作れるものやペットボトルのもので済ましてしまうことが多いが、今回は少し手間をかけて淹れ、あのイベントに想いを馳せながらいただいた。
最後には『グラブル』のメインテーマで締め、音楽で空の旅を振り返るオーケストラコンサートは無事に終了。なんというか、終わった後凄く“満たされた”気分になった。普段ゲームでプレイしている作品の世界を、自分の身体で体感できるのはとても貴重な体験だと何回でも思う。
会場ではフォトスポットやイラストの展示、オリジナルフードやグッズの販売など、コンサート以外でのプレイヤーを楽しませる工夫が盛りだくさんで、会場を歩いているだけでも楽しい。
今年10周年を迎えた『グラブル』オーケストラコンサートはやっぱり最高だった。ゲーム内外問わずコンテンツの充実っぷりが半端じゃないし、モチベーションがさらに高まってくる。節目を迎えた『グラブル』の今後の展開から目が離せない。筆者も空の旅を楽しんでいこうと強く思った。
セットリスト
第1部
フレイメル島 -太古の工廠-
天に散りし覇者との邂逅
人間との戦い
バトル4
ライヒェ島 -人住まう魔窟-
ナル・グランデの罪
アウライ・グランデ
Lyria
第2部
命のカタチ
Last Advent
ユグドラシル・アルボスマグナ
Dragon’s Circle -Hexachromatic-
天と光、死と生
ロボミ
アンコール
アウギュステ列島 -白沫の瀑布-
ローズクイーン
どうして空は蒼いのか
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