古き良き“あの”ゲームを強く意識したネタが満載。ステージクリア型と探索型のハイブリッド設計に思わずニヤリ
ところで、本作のゲーム性を説明すると、ステージクリア型と探索型のハイブリッド(混成種)という表現が適切だと思われる。
直線で構成されたフィールドを進みながら様々なエリアを突破し、大ボス「ペイジ」たちのもとへの到達および撃破を目指すというのが主な流れ。
時には一度突破したエリアに再び訪れて、新たに解放されたエリアの攻略に挑むといった展開も用意されているし、ダブルジャンプといった新アクションが解禁され、行動範囲が広がるという要素もある。
「それって探索型じゃ?」となるところだが、実は各エリアは切り離されて独立している。そのことから「ペイジ」と対決する場所はエリアの終点となっていて、そこから先に行こうとしても行き止まりで進めないのだ。

そのことからペイジを倒すとステージクリアっぽい音楽が流れ、自動的に主人公が次のエリアへと移動するという演出が入ったりする。こうした特徴もあり、ステージクリア型の特色も持ったハイブリッドと表すのが適切な作りになっている。
なお、一度訪れたエリアは「守護者の台座」というセーブ&チェックポイント経由で自由にワープ可能。エリアの中には「錬金術師(THE ALCHEMIST)」という、「力のクリスタルのかけら」を「力のクリスタル」へと錬成してくれる特殊スポットも用意されている。
そして、各エリアのフィールドは直線構造が基本で、迷路のように入り組んでいない。また、道中には上り下り可能な階段といった仕掛け、壊すとお金や回復アイテムを落とす燭台に壺などがあちこちに置かれている。
この一連の要素を見て、特定のプレイヤーは既視感を抱いたと思われる。そもそも、鎖を武器として扱う主人公の戦闘スタイルからしてバレバレだが、実は本作、露骨に某「悪魔の城」をオマージュしている。
それも、ステージクリア型だった昔のタイトルだ。昨今は探索型のイメージが強いシリーズだが、元々はステージクリア型のアクションゲームとして生を受けた作品であり、10年近くにわたって同種のシリーズ作を展開し、歴史を紡いできた【※】。
※時期的には1986年から1995年に発売されたシリーズ作。大半がステージクリア型である。2025年現在では、それらのシリーズ作をひとまとめにした復刻版も発売中となっている。

そんなステージクリア型としてシリーズを重ねていくにつれ、お約束となっていった要素が存在した。上り下り可能な階段、収縮自在な鞭を使ったアクション、プレイヤーの腕前がすべてな高難易度、そしてゆったりとした操作感だ。
これらはのちの探索型では、ゲームとしての方向性の相違などから見直しが図られ、無くなっていった要素だ。だからこそ、この一連のお約束はかつての「悪魔の城」特有の個性(象徴)として確立されるに至っている。
そんな歴史を踏まえて、本作を見てみれば……お分かりだろう。小ネタも含め、徹底してお約束を踏襲しているのだ。おかげで昔を知るプレイヤーや直撃世代なら、色んな意味でニヤニヤさせられることは確実だ。
特にゆったりした操作感には、モーレツな既視感を抱くはず。さらに、実は本作には某「魔界の村」のネタもチラホラある。とりわけ本編中盤の「セレステ山」で登場する翼を生やした人型の敵には、分かる人なら「ヒッ……!」となるかもしれない。
約36年ぶりの続編だが、前作の知識は一切無くても大丈夫!(というか、前作は日本未発売だし……)
ところで、2を冠したタイトルから明らかなように、本作には前作が存在する。前作は約10分規模の短編アクションゲームだったらしい。
発売されたのは約36年前の1988年で、本作はそれから大変ご無沙汰の続編という触れ込みとなっている。
しかし、36年前の前作を知っている人は決して多くないだろう。そもそも前作は日本で発売されていないし、発売されたプラットフォームはコモドール社が1982年1月に発表した8ビットホームコンピューター「コモドール64」。
よほどのマニアじゃなければ、知るはずもないタイトルなのである。筆者も今回のお話をいただいたのを機に、前作を含む『Beyond the Ice Palace』のことを知ったひとりだ。

ただ、前作のストーリーはオープニングで語られる上、内容自体もすごく単純。本作のストーリーにしても複雑ではなく、シンプルに「主人公の王を裏切った相談役で側近の「ペイジ」たちに復讐を果たし、王座に返り咲け」というもので、非常に分かりやすい。
ゆえに「前作未プレイだけど大丈夫か?」と心配する必要はない。本稿を読んで気になった方は、前向きに検討しちゃいましょう。

本作は、トドメの一撃を決める気持ちよさと適切な高難易度、そして古き良きゲームへの愛を感じさせられるアクションゲームに完成されている。
ドット絵で彩られたグラフィック、荘厳で印象に残りやすい音楽といった部分の完成度も高く、ボリュームもクリアまで約10時間近くを要する規模でなかなか濃密。
ただ、アクションのノロさゆえに機敏さ由来の気持ちよさは皆無で、難易度も一種類だけの基本実力勝負といった点で好みは分かれるかもしれない。

色々書いてはきたが、やり応え抜群でトドメを刺す快感が光るアクションゲームであることには違いない。歯ごたえのあるアクションゲームを探している人はもちろん、敵にトドメの決める時こそアクションゲーム至上の瞬間との思いを抱くならばぜひお試しを。
ノロいからといって侮ることなかれ。王の怒りは文字通り、怒髪天を衝く!
ちなみに、本作の発売を記念して、VTuber事務所「すぺしゃりて」所属の1期生「本阿弥あずさ」さんによる生配信が3月20日(木)20時より実施されるとのことなので、興味のある方はこちらもチェックしてみてはいかがだろうか。