いま読まれている記事

Steamで「賛否両論」から約3週間で「非常に好評」に。釣りで世界を救うRPG『シーファンタジー』は、いかにして高い評価を獲得したのか。3人チームで最大火力を引き出すガッツと戦略を聞いてきた

article-thumbnail-250319d

少し残酷な話だが、発売タイミングで躓いてしまい、そこから輝かしい名誉を獲得できる作品は、そう多くないと思う。

発売当時から長い時を経てSteamの評価を「非常に好評」に持ち直した『No Man’s Sky』のような作品は、レアケースだ。好ましくないレッテルを引きはがすのは、なかなか難しい。

しかし、1月7日に国内でリリースされた“釣りで世界を救う”RPG『シーファンタジー』は、発売間もなくは「賛否両論」だったものの、発売から約2か月が経過した現在は「非常に好評」のステータスを獲得している。

Steamストアページのレビュー数も315件で、85%が好評。インディーゲームとしては、十分に熱量を持って評価されていると言えるだろう。

このたび、吉祥寺にて実施されたインディーゲームのイベント「TOKYO INDIE GAMES SUMMIT 2025」にて、『シーファンタジー』を手掛ける株式会社メタスラの中島克征氏飯島悠汰氏にお話を伺う機会を得た。

株式会社メタスラは3人でゲームを開発するデベロッパーであり、これまではスマホゲームを手掛けてきた。そんな同社が、はじめてPC/コンソール向けに展開する作品が『シーファンタジー』だ。

ゲーム自体はスローライフゲームにおける「釣りのミニゲーム」を独自にパワーアップさせた作品になっている。RPGの戦闘がそのまま「目押しの釣りゲーム」となり、プレイヤーは同システムを活用したボス戦や装備の強化などを楽しみながら、世界を救う冒険に挑むこととなる。

インタビューでは、どのように発売後の評価を覆したのか、そして「大型アップデート」をはじめとする今後の展望について伺うことができた。

インディーゲーム開発における戦略や、『シーファンタジー』の新コンテンツに関心がある方は、ぜひ本記事を楽しんでいただければ幸いだ。

また、本作の詳細について知りたい方は、下記のレビュー記事を先に読んでいただきたい。

文/りつこ


──本日はよろしくお願いいたします。
本作は発売後まもなくは「賛否両論」となっていましたが、アップデートなどにより現在では315件のレビュー中85%が好評とする「非常に好評」の評価を獲得しています。

どのように評価を持ち直したのでしょうか。

中島克征氏(以下、中島氏):
発売直後はSteamのレビューや『シーファンタジー』の配信に張り付いて、不満点を探していましたね。不満点をチェックして修正する作業を、しばらくは寝ずに取り組んでいました。

──ガッツが凄いですね。かなり頻繁にアップデートを実施されていた印象ですが、発売直後のチェック作業、修正作業が功を奏して、現在の評価に繋がっていると。

中島氏:
今でも低評価のコメントなどをいただいて、そこに改善可能な要素があれば即座に修正するようにしています。

──そういった発売後の対応は、あらかじめ方針として決めていましたか?

中島氏:
そうですね。不満点や改善点が出てくることは想像していたので、発売から2週間はとりあえず修正対応を頑張ろうと考えていました。

なので、その計画の成果が出たという印象はあります。

『シーファンタジー』インタビュー。Steamで「賛否両論」から、いかにして「非常に好評」へ覆したのか_001
▲1月中だけでかなりのアップデートを実施(画像はSteam:Sea Fantasy / シーファンタジーより)

──ちなみに、発売後の反響はいかがでしょうか。

中島氏:
僕らは「テンポの良いゲーム性」を意識して制作していたので、その点を評価していただけて、たいへんありがたいです。

──以前インタビューさせていただいた際に「釣りのゲームが好き」であることが、本作の釣りRPGというアイデアに繋がったことを伺いました。

現にそういった釣りゲー好きな方からの好意的なコメントも確認できますよね。

中島氏:
最近では釣りを題材にしたゲームが多いと思うんですけど、本作はファンタジーで2Dの作品です。そういった基本的な要素による差別化も、うまくできたように感じています。

飯島悠汰氏(以下、飯島氏):
狙いどおりですね!

『シーファンタジー』インタビュー。Steamで「賛否両論」から、いかにして「非常に好評」へ覆したのか_002

──今回のイベントに際して追加シナリオ「魔界編」を実装する大型アップデートが、2025年の6月を目安に予定していることが明かされました。

少人数の開発チームながら、かなり早いアップデートだと感じます。

飯島氏:
もともと追加シナリオは計画してまして、たとえ売れなくても絶対やろうと考えてました。なので、いまはその計画通りに着々と進めている段階です。

あと、現状だと回収できていない伏線もあるので、それらを回収するシナリオが描かれる予定です。

中島氏:
具体的に言えば、ストーリー内に主人公のお父さんの話が出てきますが、本編では一切姿が出てこないんです。

なので、これまで登場したそういった人物の過去やバックグラウンドも明かされる内容になっています。

──本作は「釣りのミニゲーム」にも敵によってギミックが異なっていたり、釣りゲーム以外にもミニゲームが用意されている点が特徴です。そういった要素も、DLCでは追加されるのでしょうか。

中島氏:
追加要素はたくさん用意しています。まず、登場するシーアズの数が追加されて、まったく新しいミニゲームも増えていきます。

飯島氏:
さらには、今まで2Dベースでしたが「2.5Dの表現も取り入れよう」という計画もありますね。

 

──まさに、これまでの魅力はそのままに、フレッシュな新要素も導入されると。
このほかに、今回のイベントではXbox Series X|S版の試遊機も展示されていますよね。開発中にはあらかじめ、コンシューマー向けの展開も計画されていましたか。

中島氏:
そうですね。もともとPC版での改善、バグの修正作業が終われば、コンシューマー向けに展開する予定がありました。

飯島氏:
Xbox Series X|S版以外にも、裏ではNintendo Switch版、PS5版の作業も進めています。

──ちなみに、コンシューマー向けの移植にはどのような狙いがあったのでしょうか。

飯島氏:
まず、本作はそんなに難しい作品ではないので、より幅広いユーザー層であると想像されるNintendo Switchとは相性が良いのではないかと考えていました。

Xboxに関しては、とくに海外のユーザーさんが多いと聞きましたので、国外でプレイされる環境を整えるために移植を行っている感じですね。

──インディーゲームであれば、移植作業を委託で実施するデベロッパーさんが多いと思うんです。メタスラさんはこれまでにスマホ向けゲームを中心に制作していましたが、コンシューマー版の移植作業において、苦労はありましたか?

中島氏:
今まさに初めてのコンシューマー移植をおこなっているのですが、ふたりで必死に公式ドキュメントを見ていますね。あと、ドキュメントを見ても分からないことはXboxの担当者さんに相談しながら、作業を進めています。

飯島氏:
まったく新しいことをやらないといけないので、やはり苦労がありますね(笑)

中島氏:
ただ昔、制作したスマホアプリをNintendo Switchで動かすところまでは作業したことがあったんです。なので「これ他のヤツも案外いけるんじゃね?」という気はしていました。

実際に今回のイベントに試遊機を出展することもできましたので、これまでの開発経験が活きているとも感じますね。逆に、過去に移植作業にチャレンジした経験がなければ、なかなか厳しかったようにも思います。

『シーファンタジー』インタビュー。Steamで「賛否両論」から、いかにして「非常に好評」へ覆したのか_007
(画像はは株式会社メタスラが手掛けたスマホ向けゲームローグダンジョンウォーカーズ – Google Play のアプリより)

──会場にはSteam Deckでの試遊機材がありますし、2月には公式に動作保証が認められました。こちらはコンシューマー版のように、最適化の難度があるものなのでしょうか。

中島氏:
Steam Deckに関しては、自分たちの場合はさほど大変ではなかったです。
というのも、僕らはもともとSteam Deckでテストプレイをしていたので、ゲームが完成した時点でSteam Deckの動作もほとんど問題がなかったんです。

飯島氏:
そもそもゲームの最適化を、Steam Deckで認証を受けるために実施していたフシはあります。理由としてはSteam DeckではFPSを確認できるので「Steam Deckで安定したFPSが出るのか」をひとつの基準にしながら、最適化作業を行いましたね。

──開発における利便性もあり、もともとSteam Deckで最適化の作業を行っていたんですね。

少し話が戻りますが、『シーファンタジー』は今後も継続的にアップデートをしていく予定なのでしょうか。

中島氏:
追加コンテンツが収録されるアップデートに関しては、6月に予定している大型アップデート以降はしない予定です。その後は、『シーファンタジー』に関連した新作の開発に取り掛かる予定です。

──つまりユーザーの視点では、興味があればすでに「非常に好評」となった今買っても良いし、修正/改善の区切りがついているであろう6月のアップデートにあわせて購入しても良い印象ですね。

最後に『シーファンタジー』を楽しんでいる方、作品に興味のある方に向けてメッセージをお願いします。

飯島氏:
発売後にはかなり頻繁にアップデートを実施しましたが、もちろん大型アップデートをリリースした後も、引き続きユーザーさんのコメントやレビューを受けて、改善や修正作業を行う予定です。

また、コンシューマー向けの移植も進行していますので、今後は「まだプレイしていない方」にゲームを届けていく工程に注力していきます。

大型アップデートはもちろん、そういった点も楽しみにしていただければと思います。


発売後には「寝ずの作業を行った」とだけ聞くと、一見ひたすらにガッツが必要であるかのように思えるかもしれない。

しかし、それを発売前に見越していた、という‟ぬかりなさ”こそが、『シーファンタジー』が発売直後の評価を覆した根本であるのではないだろうか。

たとえば、発売前には「クリアするとユーザーの名前がクレジットに乗る体験版」を配信したり、リアルイベントで試遊出展をする際には「パッケージ版風の体験版」を配布したりと、アイデアが光るユニークなプロモーション施策も、しっかりと実施していた。

3人の小規模な開発チームでありながら、そのポテンシャルを最大限に発揮しようという株式会社メタスラの発売前、発売後の取組み。これらは、インディーゲームを独自にプロモーションするアプローチのひとつとして、参考になるかもしれない。

ちなみに『シーファンタジー』は通常価格で1650円のところ、15%オフの1402円で購入できるセールを実施中だ。

期間は3月21日までとなっているため、「非常に好評」の釣りRPGに興味を持った方は、ぜひ実際にプレイして世界を救う冒険へ出かけよう。

編集者
ゲームアートやインディーゲームの関心を経て、ライター/編集をしています。

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合がございます

新着記事

新着記事

ピックアップ

連載・特集一覧

カテゴリ

その他

若ゲのいたり

カテゴリーピックアップ

インタビュー

インタビューの記事一覧