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世界の危機を「釣り」で救うって、ナニ?RPGあるあるを全部「釣り」で解決する『シーファンタジー』はその豪快さにホビーアニメっぽさを感じつつも、釣りとRPGの相性の良さに驚かされる男のコなアクションRPG

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「魚釣り」と言えば、仕掛けを水に投げ込んであとはゆったりと魚がかかるのを待つのが醍醐味。緩やかな時間の流れを感じつつ潮騒を楽しむ。ゆったりとした趣味ですよね。

今回紹介する『Sea Fantasy』(シーファンタジー)も釣りをテーマにしたゲームで、プレイヤーは釣り好きの少年として世界中のシーアズ(この世界の水場に棲む生き物の総称)を釣り上げる冒険の旅にでることになります。

おっと、そんなことを書いている間に仕掛けにアタリが、ちょっと失礼しまして……

うおおおおおお!!(魚だけに)

でぃりゃああ!

『シーファンタジー』レビュー・感想。世界の危機をまさかの「釣り」で救うアクションRPG_001

ふぅ、なんとか釣り上げることができました。こいつの名前は「サメガロス」。サイズは5メートル22センチ。現実の尺度では「デカっ!!」って思うところですが、このゲームにおいてはまぁまぁ大きいかなと思う程度。

さて、この攻撃的なビジュアルやサイズ感からも既にお察しかもしれませんが、本作は普通の釣りゲームとは一味違った作品となっていて、その最大の特徴は、釣りゲームにアクションRPGが合体している、ということ。

本作のキャッチコピーは「釣りで世界を救うRPG」。だからシーアズを釣り上げるのも命がけの戦いになるし、攫われた友達の捜索、新しい地域への移動手段の確保、そして迫る世界の危機みたいな、RPGでよくあるイベントも全部「釣り」でなんとかしてしまう。

カードゲームやベイゴマで世界を救ってきた物語に親しみのある世代としては、そんな一昔前のホビーアニメみたいなノリに懐かしさを感じるのは必然といっていいでしょう。しかし、いざ触ってみると争いごととは程遠い「釣り」と、むしろ争いまくる「RPG」という組み合わせは意外なほど新鮮でした(魚だけに)。

あまり釣りゲームを遊んだことがなかった私も気づけば、親友が誘拐されて急いで探さないといけないのに、新しい竿を作りたくて一時間近く没頭し、モクモクと釣り続けていたのです。

というわけで今回はそんな、懐かしいのに新しい、本作の独特な雰囲気と遊びについて紹介していこうと思います。

文/白熊のヨゥ
編集/司破ダンプ 


ちょっとしたおつかいから、世界の危機まで「釣り」一本で解決するストーリーはなんだか懐かしい

あらためて『Sea Fantasy』は「釣り」で世界を救うアクションRPG。最初は「釣りとRPG」という組み合わせのギャップが大きくて、どんなゲームなのか全くイメージできなかったんですが、実際に遊んでみるとすんなりと受け入れられたというか。変な話「懐かしさ」すら感じてしまいました。

本作の物語は、小さな島でシーアズを釣る毎日を送っている少年「ロッド」が、ある日親友である「アクセル」とともに世界中のシーアズを釣り上げる冒険の旅に出ることを決意するところからはじまります。

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「世界を回っていろんなシーアズを見つけてみたくない?」という親友からの提案に即決するロッドくん。すげぇ行動力……

しかしその道中、あるトラブルに巻き込まれアクセルくんは行方不明に。一方、かろうじて危機を脱したロッドは謎の金色の龍と出会い、これをきっかけに行方不明になったアクセルくんを探す傍ら、成り行きで世界の危機に対処していくことになります。釣りで。

その後も金色の龍にアクセルを探す手伝いをしてもらうため、薬の材料になる魚を釣ってきたり、新たな地域への移動手段を得るために魚を釣ってきたり、世界を救うために古代から生き続けている魚を釣ったりと、驚くほど「釣り」を中心に話が動いていきます。

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本来10万ゴールド必要な船の改造を手伝いだけでポンと引き受けてくれるいい大人

ちょっとしたおつかいや移動手段の確保、なりゆきで世界の危機に巻き込まれたりするのって、まさに「王道RPG」的なイベントだと思うんですが、それを解決する手段が本来は平和な趣味である「釣り」というのがなんとも面白い。

こういう「争いに関係ない概念+RPG」のゲームって、かつてカードゲームやベイゴマで世界を救ってきたお話を見て育った世代としては既視感を感じるし、ちょうどいいドット絵で描かれた世界の雰囲気も相まって少年誌的というか、不思議な懐かしさを感じました。

ちなみに他にも実に少年誌的だな~と思う要素があって、それが本作におけるモンスターである「シーアズ」のデザインと、武器である「釣り竿」のデザイン。ちょっとこれ見てくださいよ!

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「その禍々しさから、狂気の象徴とされている。」
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「光と闇が混じった竿。光と闇どちらを支持するか汝次第…。」

どうですかこの「男の子ってこういうの好きでしょ?」と言わんばかりのデザイン。

ハァ~~~ッ……大好きだよ!!!!!

何度か触れている通り、友人が誘拐されて行方不明になったり、世界の危機が刻一刻と迫ってきていたりと本作のストーリーは結構シリアス。だから急いで世界を救いに行きたいところなんですが……

実は上の画像の「ダークネス」のように、普通に進めているだけでは遭遇できないシーアズもいるうえ、基本的にシーアズの素材を使って作るので、新しい竿の入手には寄り道が必要になってきます。

だから私もカッコいい釣り竿が欲しくて……もとい、戦力を強化して万全の状態で親友を救助するため、ついつい寄り道を沢山してしまいました。ざっと1時間くらい。

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アイテムが手に入る他、中にはボスが待ち構えていたりと、寄り道要素も豊富

戦闘は「タイミング良くボタンを押す」という釣りゲームらしさはそのままに、RPGの要素によって遊びの幅が広がり新鮮に

続いて本作の戦闘について触れていこうと思いますが、あらためて釣りとRPGが合体したゲームと言われると、なかなかイメージしにくいですよね。正直に言うと私もそうだったんですが、遊んでみると相性が良くとても新鮮に感じました。

まず本作の戦闘は簡単に言うとRPGの戦闘が釣りに置き換わり、タイミング良くボタンを押すミニゲームになっているとイメージしてもらえれば大丈夫。ただし、普通の釣りゲームに比べて異質なのは、釣られる魚がこちらに攻撃を仕掛けてくることです。

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上の画像の青と黄色のゾーン以外でストップしてしまったり、画面中央のタイマーがゼロになるなどのタイミングでダメージを受けてしまいます。

どれだけ上手くゲージを止めても時間経過でダメージを受けるというのがキモで、戦闘には実質的な時間制限があるなか、いかにしてシーアズのHPを削り切るか。というのが大事な部分になってくるわけですね。

さらに対峙するシーアズによっては攻撃だけではなく妨害を仕掛けてくることもザラ。しかもこの妨害が思いのほか苛烈で、ときには視覚を遮ってきたり、カーソルの速度に干渉したりと、釣りゲームに慣れている人でも一筋縄ではいかないようになっています。

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戦闘(釣り)中にはターゲットの干渉によってゲージがひっくり返ったりもすることも
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冒頭紹介した「サメガロス」。カウントが「0」になったときにカーソルがサメの口に重なっているとダメージを受けてしまう

これだけ見ると理不尽にも思えてくるんですが、観察をすれば対処できてくるのがまた面白いんです。

たとえばカーソルを加速させてくる妨害については、無理にクリティカルを狙って範囲の狭い黄色いエリアで止めようとすると、ウツボ……ではなくドツボにハマってしまう。だから狙いやすい青いエリアに止めて、小刻みにダメージを与えていくのが有効、みたいな感じ。

戦略、というと大げさかもしれませんがシーアズの行動に応じてどうすれば攻略をしやすいか考えたり、今のステータスで敵わないならレベルを上げたり、釣り竿を強化して挑戦することが大事になってくるというわけですね。

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竜巻を起こしてカーソルの速度を急加速させてくる無法者

個人的な意見ですが、釣りのゲームって完成しきったジャンルというか、楽しさの芯にあるのが「タイミング良くボタンを押して魚を釣る」というシンプルな要素なだけに、難易度のバランスを取るのがすごく難しいんじゃないかって思います。

簡単なミニゲームのままだとどうしても単調になってしまうし、かといってカーソルの動きを早くしたり成功判定をシビアにしたり、シミュレーターの要素を増やして釣るまでの手順を増やしすぎると初心者が楽しむハードルが上がってしまう。

本作はこの課題に対して、レベル上げや、釣り竿や釣り針、エサといったアイテムの組み合わせ。また、シーアズの妨害に合わせた攻略法を考えるなど、さまざまなアプローチをプレイヤーが選択出来るようになっていると感じました。

アプローチの方法を増やしつつ、遊びの幅を広げる。この部分こそ私が「釣りとRPGという一見謎の組み合わせが実は相性が良く新鮮!」とする理由なわけです。

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筆者のお気に入り。釣り針にかかると下からニョキッと出てくる。初見のときに思わず「見えねェ!!」って叫びました

釣って、売って、また釣って。素材が集まったらクラフトで強化。少しずつ強くなるハクスラ要素はモチベーション維持にも最高

実を言うと、本作が釣りをテーマにしたゲームだと知ったときにひとつ気がかりだったことがありました。それはずばり、普段釣りゲームを遊ばない私でもモチベーションを維持し続けられるのか?という点。

もちろん無心で魚を釣り続けることにも楽しさがあるとは思うんですが、釣りなんて大昔に家族といったきりの自分としては単調になりそうでちょっと厳しいかも。なんて思っていたんですよね。

ただ本作は釣りのサイクルの中にRPGの要素、特に装備品で自身を強化していく要素を盛り込むことで、そちらの課題も上手く乗り越えていると感じました。魚を釣ることで強くなっていく、ハック・アンド・スラッシュならぬ、ハック・アンド・フィッシング!

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シーアズによっては、通常の素材アイテムと別にレア素材を持つものも。「レア」……いい響きです

またストーリーの項目でも触れた通り、本作は武器にあたる「釣り竿」や「釣り針」を自分で作るクラフト要素があるのも特徴。装備のアップグレードはキャラクターを強くするRPGの醍醐味としてはもちろん、これこそが楽しく本作を遊び続けられた秘訣だと思っています。

釣って、売って、また釣る。という釣りゲームのサイクルの合間に、経験値が貯まる、レベルが上がる。素材が手に入る、釣り竿や釣り針が作れるようになるというご褒美があるだけでもやっぱり違うんですよね。

それに、これも先に少し触れたんですが本作に登場する釣り竿というのが……その、またなんとも所有欲をくすぐってくるわけですよ。

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右腕に封印したあれやこれやが疼き出しそうなテキストだったり
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釣り竿というかモロに剣だったり
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観光地のお土産屋のキーホルダー並みにドラゴンがかたどられていたりする

こんなん全部欲しくなるジャン!

これらの「釣り竿」は、ベースになる竿とシーアズから獲得できる素材を消費することでクラフトするという仕組み。モンスターをハンティングする代わりに、シーアズをフィッシングしているとイメージしてもらえればいろいろと分かりやすいと思います。必要な素材もちょうど皮とか鱗ですし。

また、もうひとつの装備品である「釣り針」も、シーアズの素材を消費してクラフトするアイテム。こちらも「釣り竿」と同様に釣りに必要なステータスを伸ばす効果をもっています。装備やステータスの弱点を補うか、強い部分を伸ばすかはプレイヤー次第。

本作は一回の戦闘が短くてテンポが良く、歯ごたえはありつつも決して難しすぎないバランスになっているので「あともう少しで素材が集まるのに……」という状態からモチベーションが下がらないのも嬉しいポイントで、釣りゲームのサイクルに程よい刺激を与えています。

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こちらは実際に一番下の素材がひとつ足りなかったときの図

RPGの要素を取り入れることで釣りゲームが抱えがちな「単調さ」という弱点を解消している。というのは釣り(戦闘)はもちろん、ゲームのサイクル自体にも言えることで、これも本作独自の魅力だと感じました。


最初こそ「釣りで世界を救うアクションRPG」というフレーズに面を食らったんですが、実際に遊んでみると、かつてのホビーアニメのようなストーリーはどことなく懐かしくも面白いし、RPGという別ジャンルの要素を入れることで新鮮な遊びを実現していました。

また今回の記事ではあえて触れてこなかったんですが、本作は中盤に進むにつれアクション要素も増えていき、さらに遊びが広がるようになっています。序盤に誘拐された上で、筆者に一時間も放置された相棒・アクセルくんも、そちらで大活躍してくれるようになっています。

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注:釣りゲームです

TGS2024のインタビューによると本作は「飽きられない釣りゲーム」を目指した作品とのこと。振り返ってみれば確かにゲーム全体を通してプレイヤーが飽きないようにさまざまな工夫が盛り沢山で、釣りゲームをあまりプレイしたことがない筆者も黙々と釣りに没頭していました。

釣りやRPGが好きという人はもちろん、手軽なハクスラゲームを遊びたい人や少年誌のタイアップゲームを誌面で見て育った世代なんかにもオススメしたい『Sea Fantasy』はSteamで配信中です。

気になった方はこの機会に、釣り竿を片手に世界を救う冒険に出てみてはいかがでしょうか。

ライター
アクションゲームとアメコミ映画を愛する三十路ゲーマーで、前職は某ゲーム機のカスタマーサポートとのウワサ。一人用ゲームを好むが、人が好きなものの話を聞くのはもっと好きなので「誘われればどんなゲームでもやる」がモットー。そんなこんなで始めた「スプラトゥーン3」を気づけば1000時間遊んでいたチョロいやつでもありますが、私が書いた文章をきっかけに誰かが「好きなもの」を見つけてくれたらいいなと思っています。
編集者
85年生まれ。『勇者のくせになまいきだ。』シリーズの代表的プレイヤーとして名を馳せたツルハシの化身。 10代の頃、メックシューターゲーム『ファントムクラッシュ』とその続編『S.L.A.I.』の世界にハマり、 ディスプレイ越しに見た2071年に帰るべく日々を生きる。TCGとボードゲームも好物。
Twitter:@Dump29

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